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射程距離は180~200キロ。北朝鮮に韓国はお手上げ状態

2014年04月17日 19時18分59秒 | Weblog

北の脅威を一気に高める新兵器「KN-09」

射程距離は180~200キロ。韓国はお手上げ状態

 
これはロシアの300ミリ多連装自走ロケット砲BM-30「スメーチ」。「KN-9」もこのような外観だと想定できる(写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮が2月21日と3月4日に発射した、新型の300ミリ多連装自走ロケット砲(MRL)の「KN-09」に、米韓の軍事当局が一段と危機感を募らせている。

北朝鮮軍がこの大口径の長距離砲による一斉放射で韓国軍や在韓米軍の心臓部に先手必勝の奇襲攻撃を仕掛けた場合に、現実的な迎撃策がないとみられているからだ。

KN-09については情報が乏しく、ロケット砲ではなく誘導システムを備えたミサイルではないか、との見方も軍事専門家の間にある。

いずれにせよ、射程距離を伸ばし、命中精度や威力を増した北の新兵器が登場した。日本の防衛当局者も情報収集に追われている。

北朝鮮は2月21日と3月4日の両日、日本海に面する南東部の元山(ウォンサン)に近い葛麻(カルマ)半島の発射場から、北東の日本海の公海上に向け各日に4発、合計8発を発射した。

韓国国防省は155キロメートル程度飛行したとみている。

また、KN-09を含めた、ここ数カ月の一連のミサイルやロケット砲の発射の目的については、2月24日から3月6日まで続いた米韓による合同軍事演習「キー・リゾルブ」に対する意図的な挑発と分析している。

首都だけでなく在韓米軍基地をも射程に

KN-09の最大の注目点は、射程距離の長さだ。

KN-09の登場以前、北朝鮮の朝鮮人民軍が保有するMRLや野戦砲の中で最大で最長の射程距離を誇っていたのは240ミリMRLだった。

その最大射程距離は60~65キロメートル。

韓国の首都ソウルは、南北分断ラインの北緯38度線から約50キロメートルしか離れていないため、北朝鮮は北緯38度線付近に240ミリMRLを配備すれば、優に韓国の首都ソウルを射程に収めることができた。

しかし、ソウルより南に広がる韓国領土の大部分は射程外となっていた。

それに対し、KN-09の射程距離は、既存の240ミリMRLの約3倍の180~200キロメートルに及ぶとみられる。

こうなると、韓国中部・忠清(チュンチョン)南道、鶏龍(ケリョン)市にある韓国軍の陸海空三軍統合本部(通称・鶏龍台)を直接攻撃することが可能だ。

韓国中部・京畿(キョンギ)道、平沢(ピョンテク)市にある在韓米軍の2つの主要基地――米空軍の烏山(オサン)基地と米陸軍基地のキャンプ・ハンフリーズ――に対しても、一斉放射で直接の砲撃ができ、大ダメージを与えることができる。

韓国中西部の大都市である大田(テジョン)までも射程範囲に収め、実に韓国領土の半分を砲撃する能力を持つとみられている。

射程距離が伸びている分、北朝鮮から相対的により近場となるソウルを砲撃する場合の命中精度も高まっている。

つまり、北朝鮮が対南向けの威嚇発言として使ってきた、「密集都市ソウルを火の海にする」という言葉の現実味が一段と高まるわけだ

実際、ソウルでは家庭もオフィスビルもガス利用が多く、ガス管が張りめぐらさせているため、砲撃を浴びれば数珠つなぎに火災が広がる恐れがある。

KN-09で射程距離が伸びた分、同じソウルを狙うにしても、北緯38度線から離れた場所に発射場を設けることが可能になる。

これは韓国軍や在韓米軍にしてみれば、発射場を反撃のターゲットにすることが難しくなることを意味する。

韓国国防省報道官は、「KN-09は戦時に韓国の戦略施設を攻撃し、米軍の増援を妨げるために開発されたもの」と述べた。

ロケットなのかミサイルなのか

韓国軍によると、KN-09は12発の一斉発射が可能で、その破壊力は、2010年11月の延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件で使われた射程20キロメートル超の122ミリロケット砲の3倍に達するとみられている。

また、1分間に数十発までの一斉発射が可能だという。

実は、KN-09がテスト発射されたのは今回が初めてではない。

2013年5月17~19日に、今回と同様、北朝鮮の東海岸から4発を発射した。この時も日本海に向けて約150キロメートル飛んだとみられている。

北朝鮮はもともと対南向けの軍事戦略として、高価なMBT(主力戦車)では勝ち目がないとみて、より低価格で機動力がある自走ロケット砲の開発、製造、テスト発射に力を入れてきた。

低価格な分、大量生産も可能になるからだ。

『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』の分析によると、KN-09は6輪あるいは8輪の車両から300ミリの「発射体」が放たれる。発射体と記したのは、『ジェーンズ』でもいまだに、このKN-09がロケット砲なのか、あるいはミサイルなのか断定できていないためだ。

MRL、つまりマルチプル・ロケット・ランチャーと言えば「多連装ロケット発射機」の意味で、間違いなく発射体はロケット弾なのだが、KN-09はロシアの人工衛星測位システム「GLONASS」を利用して誘導されるミサイルとの情報もある(「ミサイル」と「ロケット」の違いは、基本的にミサイルはターゲットを定めた「誘導」、ロケットは「無誘導」ということだ)。

しかし、KN-09がミサイルではなくロケット砲だったとしても、韓国にとって大きな脅威であることに変わりはない。

ロケット砲はミサイルと比べ、より簡素化・単純化されて製造される分、実戦時の兵器としての信頼性も高くなる。このため、ミサイルより大きな脅威とみる向きもある。

KN-09は、北朝鮮の軍需工業部の下で少なくとも3年以上にわたって開発が進められてきたものだが、ベースとなる技術がどこから由来しているのかはわかっていない。

ロシアの300ミリ多連装自走ロケット砲BM-30「スメーチ」や、中国の302ミリ4連装自走ロケット砲WS-1B 、あるいは、シリアの302ミリ地対地ロケット弾M302から派生したとものとみられている。

後者2つから派生した場合、KN-09の口径も300ミリではなく302ミリである可能性が残されている。韓国の『朝鮮日報』は、KN-09の開発が2000年代初頭に中国の技術支援で始まったと報じた。

「次元の違う威嚇手段」

韓国の『中央日報』は国策研究機関の関係者の言葉を引用し、「従来の放射砲は首都圏を目標に多量の砲弾を無差別的に落とす武器」と位置付ける一方、「KN-09は短い発射準備時間で遠距離の目標物を正確に打撃できる、次元の違うミサイル級の威嚇手段だ」と報じた。

その言葉通り、韓国にとって、KN-09から一斉発射されるロケット弾を迎撃することはほぼ不可能といっていい。

そもそも韓国は、主に中国への配慮と財政面の課題から米国主導のミサイル防衛システム(MD)への参加を見送っている。

韓国政府はその代わりに、北朝鮮の核兵器とミサイルを探知、識別し、地上段階で打撃する「キル・チェーン」を構築中だ。

地対空誘導弾パトリオット「PAC2」を改良するなどし、敵ミサイルを着弾前に迎撃する韓国型ミサイル防衛(KAMD)システムの構築を目指している。

しかし、完成時期は2020年代前半だ。

完成後もKN-09の迎撃は難しい。

弾道ミサイルと違い、ターゲットとして定める発射体が小さく、一斉放射の連発で飛んでくるため、迎撃することは難しいとみられる。

弾道ミサイルのように大気圏の内外を弾道を描いて飛んでくるミサイルより低高度で飛来してくるため、探知自体が極めて難しい。

また、多くのMRLと同様、KN-09も固体燃料を使っているとみられる。

このため、発射準備を極めて短時間で終わらせることができ、発射の兆候を韓国軍や在韓米軍が探知することも難しくなっている。

4月2日にワシントンで開かれた下院軍事委員会公聴会で、在韓米軍のスカパロティ司令官は次のように危機感をあらわにした。

「金正恩体制は危険で、ほとんどあるいは全くの前触れなしで韓国を攻撃できる能力を持っている」

続けて、いざ戦闘が長期化した場合の在韓米軍の後続部隊の準備態勢に懸念を表明した。

北朝鮮が、KN-09という新たな武器を手に入れ、鶏龍台にある韓国軍の司令本部や平沢市にある在韓米軍の主要基地、さらにはソウルに対して、先手必勝で奇襲攻撃を行い大ダメージを与えた場合(つまり、第二次朝鮮戦争が起きた場合)、韓国軍と在韓米軍は北に勝利できるだろうか。

そのような不安を私たちに抱かせただけでも、すでに北朝鮮は大きな抑止力を手に入れた、と言えるかもしれない。



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