経済的に八方ふさがりの習政権 中国人の“爆買い”はいつまで続くのか
(産経新聞特別記者・田村秀男)
2015.09.25
上海株の暴落、
人民元の切り下げと景気の不振でも、
中国人の海外「爆買い」ブームは相変わらずだ。
10月1日から1週間の国慶節休暇。
東京の中国人団体専門の旅行代理業者は、「上海株? 影響は全くない。
とにかく食事をする時間もないほど忙しい」とうれしい悲鳴を上げる。
中国人客の多くは、9月初旬の「抗日戦勝記念日」休暇にうんざりさせられたという。
市内繁華街の店の多くが休みなので、
家にいてテレビをつけてみると、
どのチャンネルも抗日戦争ドラマばかり。
内容は間抜けで乱暴な日本兵を、
超人的な解放軍兵士がやっつけるという、お定まりのパターン。
「国慶節のテレビも同じようなドラマばかりになるので、
つまらない。距離も近い日本に行こう、ということになる」とのコメント。
北京や上海で売られるブランド物の値段は東京などの2倍近い。
8月11日には元をドルに対して4%強切り下げたが、
外国為替市場での対円基準レートは1元=20円で以前と変わらない。
元預金をそのまま使える銀聯カードさえ持っていけば、銀座で手軽に買い物できる。
中国の預金量は急増している。
正常に景気が回転している場合、
預金は貸し出しと連動する。
預金が増えれば銀行は貸し出しを増やし、
貸し出されたカネは預金となって還流するからである。
ところが、
中国では貸し出しの伸び率を上回る速度で預金が増えている。
株価の上昇局面と連動している。
株価がいい加減上がったとみた、
抜け目のない投資家はさっさと株を売って利益を出して、
とりあえず預金口座に振り込んだのだろう。
グラフは預金残高から貸し出し残高を差し引いた余剰貯蓄の兆円換算データで、
7月時点で838兆円、日本の同216兆円の4倍近い。すさまじいばかりの余剰マネーである。
これらの預金の大半を持つとされる中国の中間層以上の階層は
食料品、医薬品から家電製品など国内製品を信用しないし、
輸入物はとにかく値段が高すぎる。
海外向け爆買いは当然の結末だ。
爆買いブームはいつまでも続くだろうか。
鍵になるのは、やはり元相場と景気動向である。
習近平政権は過剰生産と需要不足からくる景気低迷対策のために、
預金金利を下げ、
元安に誘導を試みたが、
資本逃避が加速し、
銀行間で資金を相互融通する短期金融市場では資金が不足する始末である。
中国人民銀行はあわてて人民元押し上げ介入に出動する羽目になっている。
したがって、
当局のほうは元安を進めたくてもできない。
だが、
元高水準が続くと、
輸出は伸びず、
過剰生産不況は続く。
中間層は海外に出かけて「強い元」による買い物を楽しむのだが、
使われる預金は外に流出し、景気の足を引っ張る。
当局が海外への旅行と買い物に規制を加えるときが、いずれ来るのではないか。
八方ふさがりの習政権ならありうる事態だ。
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