韓国ポスコ、新日鉄住金に完敗 技術盗用の和解金300億円が経営直撃…
2015.09.16
ZAKZAK夕刊フジ
韓国の鉄鋼最大手ポスコに特殊な鋼板の製造技術を盗用されたとして、
新日鉄住金(旧新日本製鉄)が東京地裁などで起こした訴訟をめぐり、
ポスコが新日鉄住金に和解金の名目で3000億ウォン(約304億円)を支払う方針だと韓国紙が報じた。
韓国企業が海外企業の機密侵害について支払う金額としては過去最高レベルとなり、
四半期で赤字になる恐れもあるという。
一時は日本企業を上回っていた業績も低調で、株価も急落、韓国の検察当局から捜査を受けるなど創業以来最大の危機を迎えている。
ハンギョレ新聞によると、ポスコは今後、鋼板の輸出の際に技術使用料を支払い、地域別の輸出量も新日鉄住金と協議する。
新日鉄住金は日本や米国などで起こした関連訴訟を取り下げることにしたという。
ポスコは「訴訟はまだ進行中で(和解金支払いなどで)決定したことはない」とし、新日鉄住金も「裁判で係争中であり、コメントできない」と話している。
訴訟の対象となったのは、電気を家庭に送る変圧器などに使われる「方向性電磁鋼板」。
電力インフラに欠かせない変圧器の心臓部である「鉄心」に使われ、技術の粋を凝らした“鉄の芸術品”ともいわれる。
旧新日鉄の独壇場だったが、2005年ごろからなぜかポスコの製品技術が急激に向上。シェアも拡大してきた。
ポスコの技術盗用疑惑が浮上したのは07年。
韓国・大邱での刑事訴訟で、ポスコの機密情報を中国メーカーに流したとされるポスコ元社員が「技術は、もともとは新日鉄のものだ」と衝撃的な証言を行った。
旧新日鉄は、製造技術を持ち出したとされる元部長級社員の自宅から、ポスコとの通信履歴などの証拠を裁判所を通じて確保。
不正に入手した情報を基に同品質の製品を造ったとして12年4月、ポスコなどに約1000億円の損害賠償と製造販売の差し止めを求める訴訟を起こしていた。
3000億ウォンの和解金負担はポスコにとって深刻だ。
14年の最終利益5566億ウォン(約565億円)の約54%にあたる。
前出のハンギョレは、「和解金の支払いが第3四半期の業績に反映されると四半期の業績が赤字となる可能性が高い」とするポスコ幹部の話を紹介した。
業績への打撃は一時的なものにとどまらない。
ポスコは今後、方向性電磁鋼板の技術を使う際には新日鉄住金側に使用料を支払うことになるため、輸出競争力で劣ることになるのは確実だ。
一方で、低価格の市場では中国の鉄鋼メーカーが強く、
ポスコは日中メーカーに挟み撃ちされて埋没しかねない。
ポスコに対する投資家の視線も厳しさを増している。
韓国の経済メディア、マネートゥデイによると、
昨年末から今年9月10日までの間、ポスコグループ全体の株式時価総額は29%減少し、
主要財閥企業の中で下落率が最も大きいという。
世界トップクラスの富豪で、
最強の投資家としても知られるウォーレン・バフェット氏(85)率いる投資会社、バークシャー・ハサウェイは、
約4・5%を保有していた同社株を14年4~6月期の時点ですべて売り払ったことも知られている。
また、ポスコをめぐっては、系列企業の裏金疑惑に関する韓国地検の捜査が長期化している。
李明博(イ・ミョンバク)前政権の「資源外交」をめぐる国策捜査の面もあり、経営陣にも波及しつつある。
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は「ポスコはそもそも旧新日鉄の前身である八幡製鉄や富士製鉄から技術支援を受けたことで始まっている。
その後、独自の基礎技術を育てないまま成長してきたツケがここにきて一気に噴出しているのではないか」と指摘した。
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