ウォン高・韓国にジワリ迫る「輸出氷河期」 23万人雇用消失も…輸出依存のツケ重く
ZAKZAK夕刊フジ
2015.06.23
韓国経済に異変が起きている。
今年に入り景気を牽引(けんいん)する輸出の月次実績の前年割れにいっこうに歯止めがかからない。
今月公表された5月実績は、
ついに前年同月比10.9%減の423億9200万ドルと、
リーマン・ショックによる金融危機当時の2009年8月(20.9%)以来、
最大となる約6年ぶりの減少幅を記録した。
■「売ってももうからない」
1~5月の輸出総額は前年同期比で132億7800万ドルも減少。
中央日報(電子版)が提供する韓国経済新聞の報道によると、
この傾向が続けば輸出額は年間で319億2000万ドル減少する計算。
韓国貿易協会は輸出による雇用増効果を100万ドル当たり7.2人と推計しているといい、
これを当てはめると年間で23万人分もの雇用が消し飛ぶ状況だ。
「製品は好調に売れて市場シェアも高まっているのに、売上高も利益も前年より大幅に減ってしまう」。
韓国を代表する輸出企業の現代自動車では、こんなきつねにつままれたような事態も起こっている。
現代自のブラジルでの4月の販売シェアは1992年の進出後、最高となる約8.7%を記録した。
現地生産する小型ハッチバックの「HB20」の売れ行きが堅調に推移し、
景気低迷で市場全体の需要が減る中でも同社は1~3月期に前年並みの販売を維持。
HB20の高級モデルに限れば前年より10%以上も販売を伸ばしたという。
しかし、同社の1~3月期決算は売上高が前年同期比で3.3%減、営業利益は18%減と苦戦。
好調だったはずのブラジル販売の売上高(ウォン建て)も11.2%減と落ち込んだ。
異変の火元は「ウォン高」だ。
世界の金融市場では、日本と欧州が大規模な金融緩和を実施している中、
景気回復が進んでいる米国が従来の金融緩和から引き締め方向に転じた。
米国の金融政策を担う米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は年内の金利引き上げを視野に入れており、
外国為替市場ではドル高基調が強まっている。
投資マネーの多くは、リスクが小さく、より高い利回りが得られる資産に向かうのが常。
新興国の経済成長の減速もあり、
為替市場ではドル買いの裏返しで、円安ユーロ安、
そして新興国通貨安が同時進行。
結果的に、
政策金利が日欧より高く、
経常黒字国でもある韓国の通貨ウォンは相対的に上昇し、ウォン高の勢いが増している。
1~3月期、ウォンに対してロシアのルーブルは1年前に比べて40.9%値下がり。
ブラジルのレアルは16%、ユーロは15.4%それぞれ下落した。
■円安、ユーロ安、新興国通貨安の三重苦
現代自の1~3月期はブラジルの通貨レアルが対ウォンや対ドルで大幅に下落した影響などで収益が目減り。
ブラジル工場は輸入部品(ドル建て)を高く仕入れ、組み立てた完成車(レアル建て)を安く売る形となり、
損失が膨らんだというわけだ。
もちろん、為替相場の急変動は日本企業にとっても無縁ではない。
トヨタ自動車は2016年3月期に新興国通貨の下落影響などで為替が450億円の減益要因(15年3月期は2800億円の増益要因)になると見込んでいる。
ただ、韓国企業は自動車や電機など主要な輸出産業で日本やドイツの企業と競合している。
円安ユーロ安を価格競争の追い風にできる日欧の輸出企業に比べると、
まさにトリプルパンチ(円安、ユーロ安、新興国通貨安の3重苦)を受ける構図で、
韓国勢のダメージは大きい。
そもそも韓国は国内総生産(GDP)に占める輸出の割合が約45%と、
15%程度の日本や世界平均の約25%に比べて突出して高い輸出偏重の経済構造にある。
しかもリーマン後の急激な円高を経験し、
為替変動への耐久力を高めた日本企業に対し、
韓国企業の為替リスク対策は遅れている。
聯合ニュース(電子版)の報道によると、
日本企業と競合する韓国の輸出企業約300社を対象とする大韓商工会議所の調査では、
約7割が「円安リスクへの対策を用意してない」と回答。
韓国貿易協会が会員企業に実施した調査でも、5月に平均100円=900ウォンと、
前年に比べて約10%上昇した円安ウォン高水準について、
回答企業の約7割が「日本製品に対する競争力を維持できない」と悲鳴を上げた。
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