米・財政再建策で超党派議員ら提言 高まる軍事費削減論、『沖縄海兵隊は不要』/東京新聞

2010-11-14 17:11:44 | 沖縄
高まる軍事費削減論、『沖縄海兵隊は不要』 「軍事費削減で財政再建を」という声が米議会で強まっている。先月中旬には、超党派の上下両院議員が連名で「海外基地の必要性再検討」を促す書簡をオバマ大統領の諮問機関に送付した。横浜で開催中のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で13日行われる日米首脳会談を前に、その活動の中心人物で民主党重鎮のバーニー・フランク氏が「こちら特報部」に「沖縄の海兵隊不要論」などをメールで伝えてきた。 (鈴木伸幸)

 オバマ大統領が外遊でホワイトハウス不在の十日、米議会に動きがあった。大統領の諮問機関で超党派で構成される「財政責任・改革国家委員会」が、二〇二〇会計年度までに四兆ドル(約三百二十兆円)近い財政赤字の削減を求める草案を発表した。その中に、一五会計年度までの国防予算一千億ドル以上の削減が含まれていた。

 国防費削減の具体策として、日本とは明記されていないものの、海外基地の人員の三分の一削減、次世代戦闘機F35や垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの調達縮小が列挙されている。

 オスプレイは、主翼端のローターとエンジンの向きを変えることで垂直離着陸やホバリングが自在にでき、沖縄への配備計画がある。

 この草案に影響を与えたとされるのが、フランク氏や共和党のベテラン議員ロン・ポール氏ら超党派の大物四議員が、十四人の軍事専門家に依頼して、今年六月に作成した報告書「借金、欠陥と国防」だ。

 フランク氏から寄せられた報告書では、米中枢同時テロがあった〇一年と一〇年の歳出を比較。テロ後、ブッシュ前政権はアフガン、イラク戦争に突入し「国防総省の歳出は約三千二百億ドルから約六千九百億ドルへ二倍以上に膨張した」と指摘。

 「冷戦終結後、唯一の超大国となった米国の軍備レベルは量、質とも必要以上に過剰な状態。核開発の縮小や保有核の整理が必要。通常兵器でも、F35やオスプレイなどの開発や配備計画の縮小、凍結が求められる」と提言した。

 また海外基地の兵士配備にも言及。「欧州には東西対立の構図が消えた」「台湾海峡、朝鮮半島では、以前と比べて緊張は、大幅に緩和している」として、欧州とアジアの基地の兵力を合計で五万人減らし、欧州は三万五千人、アジアは六万五千人をそれぞれの上限とするよう求めている。

 フランク氏は「報告書にあるすべての提案に同意はしていない」と条件を付けながらも、報告書には直接の言及はない在日米軍について積極的に発言。「東アジアの安定のために、空軍と海軍は必要だが、沖縄駐留の海兵隊には必要性を感じない」と断言した。

 海兵隊は約一万五千人おり、米政府は一四年までに約八千人をグアム島に移転する予定だが、フランク氏はこう続けた。
「第二次世界大戦後に旧ソ連が軍事的に台頭。米国は求められれば、その国に派兵して、守る役割を演じてきた。戦後六十五年がたち、その正当性が失われても、米軍は世界の軍事費のほぼ44%を単独で使い、いまだにその役割を果たそうとしている」

 七月にフランク氏と米国ワシントンで面会した民主党の斎藤勁衆院議員によれば「フランク氏は報告書を手に『自分たちの考え方を浸透させ、賛同議員を集めたい』と話していた」と言う。

 実際に、フランク氏はポール氏とともに、賛同者を集め、超党派で上下両院議員五十七人の連名で「財政責任・改革国家委員会」に、報告書とともに軍事費削減を求める書簡を提出、米メディアの注目を集めた。

 米国では今月二日に中間選挙があった。フランク氏は米紙ニューヨーク・タイムズの取材に「欧州は、米国の核の傘に守られ、軍事費の支出が少ない。だから、われわれより優遇された年金や早期退職制度、長期の休暇や健康保険制度がある」と、選挙民受けを狙っての発言もあった。

 中間選挙では、景気の低迷や失業問題から、オバマ政権への批判が集中。フランク氏は「国民に働く場を与えるには、経済の立て直しが必要。それには財政再建が不可欠で、まずは軍事費削減から」と主張。根底には国内問題が横たわる。

ただ、現実問題として軍事費削減のハードルは高い。まずは、米国内の基地や軍需企業は、全米各地に分散して存在。各地で雇用を生み、地域経済を支えている。特に景気低迷時には、軍はいい就職先で、低所得者にはありがたい存在だ。また、軍需企業は政治献金を通じて、議会へ強い影響力を持っている。

 フランク氏自身も、地元マサチューセッツ州での戦闘機エンジン製造計画は支援する。それをメディアに突かれ「軍事費削減は主張を続ける。削減されない限りは、製造計画を支える」と苦しいコメントをした。
ただ、今回は軍事費削減に多くの議員が賛同した。

 「軍産複合体のアメリカ」などの著書がある静岡県立大学の宮田律准教授は「米国の軍需経済を変えるのは難しいが、『海外にコミットしすぎた』という現実はある。孤立主義という伝統はあり、海外基地を縮小しようという機運は生まれるかもしれない。世論次第」と話した。

 中間選挙で注目されたのは、「ティーパーティー(茶会)」と呼ばれた草の根運動だ。キリスト教右派や南部の人種差別主義者などの保守層に、失業者が加わった。〇八年の金融危機に際し、金融機関や大手自動車メーカーのGMなどに財政出動したことから「市民生活は苦しいのに、税金で救済するのか」とオバマ政権を批判。

 「州政府だけで十分。連邦政府は外交、国防などに限った小さな政府でいい」と主張し、後押しした共和党の候補者が数多く当選した。

 この茶会運動は「日本など、われわれの税金で守る必要などない」という考え方に行き着く可能性もある。米社会に詳しい明治大学の越智道雄名誉教授は「総論としては、国防費は削減せざるを得なくなる。ただ、軍産複合体をなくすことはできず、一時的な削減にとどまる」とみる。

 また、こうした事情から米国は日本に、駐留米軍の経費を一部負担する「思いやり予算」の増額を求めている。

 同予算は本年度、千八百八十一億円。日本は財政が厳しい中でも削減せず、日米同盟の基軸を優先して来年度予算では「総額維持」を打ち出す配慮を示しているが、“決着”はこれからだ。

 前出の宮田准教授は「沖縄を含めた海外基地の縮小問題は、結局は米国内の財政問題が発端。日本に外交戦略がなく、今回の米議会の動きにも注視していない。本来は、それも利用して、したたかに動くのが外交なのだが」と指摘した。

<デスクメモ> モンロー主義は、米の有名女優のまねではない。一八二三年に米大統領モンローが表明した外交方針だ。欧州と南北米大陸は相互不干渉の考え。米はこの孤立主義と「世界の警官」を行きつ戻りつしてきた。再び覇権の色濃い中国は途上国への“ほほ笑み外交”が巧みだ。日本のさなぎ外交は限界か? (呂)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2010111302000074.html


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