在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定(全文)

2009-02-19 20:46:24 | 沖縄
第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する
日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ
合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づく日米安全保障体制が共通の安全保障上の目標を達成するため
の基礎であることを確認し、
 二千六年五月一日の日米安全保障協議委員会の会合において、関係閣僚が、安全保障協議委員会文書「再編の
実施のための日米ロードマップ」(以下「ロードマップ」という。)に記載された再編案の実施が同盟関係にお
ける協力において新たな段階をもたらすものであり、かつ、沖縄県を含む地域社会の負担を軽減し、もって安全
保障上の同盟関係に対する国民の支持を高める基礎を提供するものであると認識したことを想起し、
 グアムが合衆国海兵隊部隊の前方での駐留のために重要であって、その駐留がアジア太平洋地域における安全
保障についての合衆国の約束に保証を与え、かつ、この地域における抑止力を強化するものであると両政府が認
識していることを強調し、
 ロードマップにおいて、沖縄における再編との関係で兵力の削減及びグアムへの移転の重要性が強調され、並
びに第三海兵機動展開部隊の要員約八千人及びその家族約九千人が部隊としての一体性を維持するような方法で
二千十四年までに沖縄からグアムに移転することが記載されていることを再確認し、また、このような移転が嘉
手納飛行場以南の施設及び区域の統合並びに土地の返還を実現するものであることを認識し、
 ロードマップにおいて、合衆国海兵隊CH-五十三Dヘリコプターは第三海兵機動展開部隊の要員が沖縄から
グアムに移転する際に海兵隊岩国飛行場からグアムに移転し、KC-百三十飛行隊はその司令部、整備のための
施設及び家族のための施設と共に海兵隊岩国飛行場を本拠とし、並びにその航空機は訓練又は運用のために海上
自衛隊鹿屋基地及びグアムに交替で定期的に展開することが記載されていることを想起し、
 ロードマップにおいて、第三海兵機動展開部隊のグアムへの移転のための施設及び基盤の整備に係る費用の見
積額百二億七千万合衆国ドル(一〇、二七〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)のうち、日本国は、沖縄県の住民が同部隊
の移転が速やかに実現されることを強く希望していることを認識して、同部隊の移転を可能とするようグアムに
おける施設及び基盤を整備するため、合衆国の二千八会計年度ドルで二十八億合衆国ドル(二、八〇〇、〇〇〇
、〇〇〇ドル)の直接的に提供する資金を含む六十億九千万合衆国ドル(六、〇九
〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)を
提供することが記載されていることを再確認し、
 また、合衆国は、グアムへの移転のための施設及び基盤の整備に係る費用の残額、すなわち、合衆国の二千八
会計年度ドルで算定して三十一億八千万合衆国ドル(三、一八〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)の財政支出に道路の整
備のための約十億合衆国ドル(一、〇〇〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)を加えた額を拠出することがロードマップに
記載されていることを再確認し、
 ロードマップにおいて、その全体が一括の再編案となっている中で、沖縄に関連する再編案は、相互に関連し
ていること、すなわち、嘉手納飛行場以南の施設及び区域の統合並びに土地の返還
は、第三海兵機動展開部隊の
要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転を完了することにかかっており、並びに同部隊の沖縄からグアムへ
の移転は、普天間飛行場の代替施設の完成に向けての具体的な進展並びにグアムにおいて必要となる施設及び基
盤の整備に対する日本国の資金面での貢献にかかっていることが記載されていることを想起して、
 次のとおり協定した。

第一条
 1 日本国政府は、第九条1の規定に従い、アメリカ合衆国政府に対し、第三海兵機動展開部隊の要員約八千
人及びその家族約九千人の沖縄からグアムへの移転(以下「移転」という。)のための費用の一部として、合衆
国の二千八会計年度ドルで二十八億合衆国ドル(二、八〇〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)の額を限度として資金の提
供を行う。
 2 日本国の各会計年度において予算に計上されるべき日本国が提供する資金の額は、両政府間の協議を通じ
て日本国政府が決定し、及び日本国の各会計年度において両政府が締結する別途の取極(以下「別途の取極」と
いう。)に記載する。

第二条
 アメリカ合衆国政府は、第九条2の規定に従い、グアムにおける施設及び基盤を整備する同政府の事業への資
金の拠出を含む移転のために必要な措置をとる。

第三条
 移転は、ロードマップに記載された普天間飛行場の代替施設の完成に向けての日本国政府による具体的な進展
にかかっている。日本国政府は、アメリカ合衆国政府との緊密な協力により、ロードマップに記載された普天間
飛行場の代替施設を完成する意図を有する。

第四条
 アメリカ合衆国政府は、日本国が提供した資金及び当該資金から生じた利子を、グアムにおける施設及び基盤
を整備する移転のための事業にのみ使用する。

第五条
 アメリカ合衆国政府は、日本国の提供する資金が拠出される移転のための事業に係る調達を行う過程に参加す
るすべての者が公正、公平かつ衡平に取り扱われることを確保する。

第六条
 日本国政府は日本国防衛省を実施当局に指定し、アメリカ合衆国政府はアメリカ合衆国国防省を実施当局に指
定する。両政府は、実施当局が従うべき実施のための指針及び次条1(a) に規定する個別の事業について専門家
間で協議を行う。そのような協議を通じて、アメリカ合衆国政府は、日本国政府が当該事業の実施に適切な方法
で関与することを確保する。

第七条
 1(a) 日本国の各会計年度において日本国の提供する資金が拠出される個別の事業は、両政府間で合意し、及
び別途の取極に記載する。
(b)アメリカ合衆国政府は、日本国政府が資金の提供を行う合衆国財務省勘定を維持する。アメリカ合衆
国政府は、当該勘定の下に日本国の各会計年度において日本国が提供する資金のための小勘定を開設し、及び維
持する。
 2 日本国が提供した資金及び個別の事業に支払うことが契約上約束された当該資金から生じた利子は、前条
に規定する実施当局の間で合意される指数を用いた計算方法に基づき、合衆国の二千八会計年度ドルで二十八億
合衆国ドル(二、八〇〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)の額を限度として日本国が提供すべき資金の総額に繰り入れら
れる。
 3(a) (b) に規定する場合を除くほか、日本国の同一の会計年度において日本国の提供した資金が拠出され
たすべての個別の事業に係るすべての契約の終了後に日本国が提供した資金に未使用残額がある場合には、アメ
リカ合衆国政府は、日本国政府に対し、当該未使用残額を返還する。契約の終了は、更なる財政上及び契約上の
責任からアメリカ合衆国政府を解除する文書の受領によって証明されるものとする。
  (b)アメリカ合衆国政府は、未使用残額を、日本国政府の実施当局の同意を得
て、日本国の同一の会計年度
において日本国の提供した資金が拠出された他の個別の事業のために使用することができる。
 4(a) (b)に規定する場合を除くほか、日本国の提供した資金が拠出された最後の個別の事業に係るすべての
契約の終了後、アメリカ合衆国政府は、日本国政府に対し、日本国が提供した資金から生じた利子を返還する。
契約の終了は、更なる財政上及び契約上の責任からアメリカ合衆国政府を解除する文書の受領によって証明され
るものとする。
  (b)アメリカ合衆国政府は、日本国が提供した資金から生じた利子を、日本国政府の実施当局の同意を得て
、日本国の提供した資金が拠出された事業のために使用することができる。
 5 アメリカ合衆国政府は、日本国政府に対し、毎月、合衆国財務省勘定(日本国が提供した資金に関係する
すべての小勘定を含む。)における取引に関する報告書を提出する。

第八条
 アメリカ合衆国政府は、同政府が日本国の提供した資金が拠出された施設及び基盤に重大な影響を与えるおそ
れのある変更を検討する場合には、日本国政府と協議を行い、かつ、日本国の懸念を十分に考慮に入れて適切な
措置をとる。

第九条
 1 第一条1に規定する日本国の資金の提供は、第二条に規定する措置においてアメリカ合衆国政府による資
金の拠出があることを条件とする。
 2 第二条に規定する合衆国の措置は、(1)移転のための資金が利用可能であるこ
と、(2)ロードマップに記載
された普天間飛行場の代替施設の完成に向けての日本国政府による具体的な進展があること及び(3)ロードマッ
プに記載された日本国の資金面での貢献があることを条件とする。

第十条
 両政府は、この協定の実施に関して相互に協議する。

第十一条
 この協定は、日本国及びアメリカ合衆国によりそれぞれの国内法上の手続に従って
承認されなければならない
。この協定は、その承認を通知する外交上の公文が交換された日に効力を生ずる。


 以上の証拠として、下名は、署名のために正当に委任を受けてこの協定に署名し
た。
 二千九年二月十七日に東京で、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通
を作成した。
 
 日本国政府のために
  中曽根弘文
 
 アメリカ合衆国政府のために
  ヒラリー・ロダム・クリントン
***************************

チャモロネーションに対する植民地支配を強化するグアム移転計画もろとも
協定を粉砕しよう。辺野古新基地建設や高江ヘリパット建設などを阻止し
沖縄から基地を撤去しよう。国会承認での与野党対立をどんどん煽ろう。
ガルルーたろう(きょうと)


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[グアム協定署名]
むなしく響く負担軽減/沖縄タイムス

 中曽根弘文外相とクリントン米国務長官は、オバマ政権発足後初めての日米外相会談で「在沖米海兵隊のグアム移転に関する協定」に署名した。

 協定締結の動きが突然、表面化し、内容(全文)も知らされないまま、あっという間に協定が交わされる。一九五一年九月、サンフランシスコ講和条約と同じ日に締結された旧安保条約もそうだった。

 グアム移転協定の中身は、県民生活に深くかかわり、県の将来を大きく左右する。県議会が昨年七月、「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書」を賛成多数で可決したのは、問題の重大さを認識したからだが、県議会の意志は今回、一顧だにされなかった。

 衆院選で民意を問うならまだしも、なぜ今、唐突に協定なのか。いくつもの「なぜ」が次から次に浮かび、疑問はふくれ上がるばかりだ。

 日米両政府は二〇〇六年五月、在日米軍再編に関する最終報告(「再編実施のための日米のロードマップ」)をまとめた。

 協定は、ロードマップに記載された米軍再編案の実施と、グアム移転のための日本側の資金拠出を約束したものである。

 ロードマップを国会承認が必要な協定にあえて「格上げ」したのはなぜなのか。

 衆院で三分の二の勢力があるうちに、条約と同レベルの拘束力を持つ二国間協定を結び、政権交代が実現しても、合意内容が変更されたり破棄されることがないよう縛りをきつくする―政府の隠れた意図は明白である。

 一九九五年十一月に設置された日米特別行動委員会(SACO)の取り組みと、米軍再編に基づく取り組みが決定的に異なるのは、米軍再編に基づく普天間移設が事実上、地元の頭越しに進められたことだ。

 丁寧な合意形成を図るというもっとも大事な手続きが軽視されてきたことは、ロードマップの「正当性」を疑わせるものだと言わなければならない。

 憲法第九五条は、一つの地方公共団体にのみ適用される特別法は、住民投票で過半数の同意を得なければこれを制定することができない、と定めている。

 グアム移転協定は沖縄だけを対象にした特別法ではなく、今回、この条文を適用することはできないだろう。しかし、多くの県民が、ロードマップに盛り込まれた日米合意案には「合意していない」と思っていることも確かだ。

 協定に盛り込まれた日本側拠出額二十八億ドル(上限)の積算根拠は、依然として不透明である。

 海兵隊のグアム移転経費であるはずなのに、二〇〇九年度政府予算案に計上された日本側負担分の一部は、グアムの米海軍、空軍の施設整備に充てられることも明らかになっている。

 ロードマップの協定化は、沖縄にとって、あまりにも問題が多い。国会は、小の虫が踏みつぶされることのないよう、問題点を洗い出し、沖縄の「目に見える実質的負担軽減」を実現してもらいたい。
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-02-18-M_1-005-1_001.html?PSID=d9715c31393272b5220bc6a044610f4d


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