ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『プロハンター』#13

2018-11-04 18:00:07 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
☆第13話『北北西に向かって走れ』

(1981.6.30.OA/脚本=長坂秀佳/監督=小池要之助)

回が進んでますます内容は荒唐無稽さを増し、本エピソードはいにしえのサイレント喜劇映画を彷彿させるスラップスティック・コメディ。あの超シリアス刑事ドラマ『特捜最前線』のメインライターである長坂秀佳さんがこの脚本を書かれてることに驚きますw

物語はいたってシンプル。某国の日本大使館から盗まれたダイヤモンドを極秘裏に奪還することを、CIAから依頼された竜崎(草刈正雄)&水原(藤 竜也)が、同じダイヤを狙うヤクザ達と全編ひたすらレイダースする冒険活劇。

今回、竜崎は出番少なめで、そのぶんセミレギュラーの元怪盗・五島(柴田恭兵)が水原と組んで大活躍。この『大追跡』コンビに『大激闘/マッドポリス'80』の堀川まゆみさん、内田朝雄さんも加わってひたすらドタバタ走り回ります。

途中、カーチェイスに巻き込まれた養鶏場のトラックが横転し、逃げ出したニワトリがダイヤを呑み込んでしまうんだけど、最後はそのニワトリが産んだ卵からダイヤが出てくるんですよねw

前回も書いた通り、そういう100%あり得ない描写があると、いくらコメディとは言え私はシラケちゃう。もしかしたらあり得るかも?っていうリアリティーの境界線を越えて欲しくないんですよね。

それを平気で越えちゃうのがセントラル・アーツ製作のドラマで、数年前まで私は受け入れられませんでした。ところが、あまりにリアリティーに囚われ過ぎる昨今のドラマを観てる内に辟易し、その反動で楽しめるようになったことも前回書いた通りです。

そもそも、こういう走りっぱなしのドラマ、謎解き要素ゼロのドラマ自体が今や絶滅状態で、あらためて観ると新鮮なんですよね。当時は「中身が無さすぎる!」って残念に思ったことが、今となっては魅力に感じちゃう。

やっぱりドタバタ喜劇は映画の原点。国も時代も越えて楽しめる普遍的な面白さがある。観た後にはホント見事に何も残らないけどw、それでいいんです。そういう作品も必要なんです。

長坂さんも、そう思ってこの脚本を書かれたんでしょう。『特捜最前線』だけじゃ息が詰まっちゃいますからねw(『プロハンター』で手掛けられたのはこれ1本のみ。そもそもセントラル・アーツ作品への登板自体がレアです)

そんなワケで、今観ればこそ素直に楽しめるお馬鹿エピソードでした。

余談ですが、藤竜也さんは相手が女性であろうが男性であろうがコミュニケーションの「距離が近い」人で、スキンシップも人一倍多く、草刈さんとのやり取りは見方によれば「イチャイチャ」してて「おっさんずラブ」スピリットを感じなくもありません。

熱いキャラを演じるために意識的にされてる事かも知れないけど、そっち方面の人たちにもめちゃくちゃモテるんだろうなぁ、なんて思ったりします。

セクシーショットは、番組のマドンナ的存在・花屋のユミ役でレギュラー出演の名取裕子さん、当時23歳。既にポーラテレビ小説『おゆき』主演や『3年B組金八先生』の悦子先生役などで知られた人気女優さん。

'80年代にやたら流行った「翔んでる女」キャラで、思いっきり弾けた演技を見せてくれてます。ホントに、'80年代の若者向けドラマや映画のヒロインって、皆こんなキャラでしたね。翔んでる女、あるいはツッパリ女かの2種類しかいなかった気がしますw
 
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『プロハンター』#06

2018-11-04 12:00:10 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
1981年の4月~9月に日本テレビ系列・火曜夜9時枠で全25話が放映された探偵ドラマ。制作は『探偵物語』のセントラル・アーツで、本作が『大都会/闘いの日々』から連なる日テレ火9アクションドラマの最終作となります。

舞台は横浜。元新聞記者の竜崎駿介(草刈正雄)と元刑事の水原 淳(藤 竜也)が一攫千金を夢見て立ち上げた「M&R探偵事務所」に持ち込まれるのは、警察が手を出さない犯罪スレスレの危険な仕事ばかり。

だからこそ冒険心をくすぐられ、命懸けのミッションを楽しみながら遂行する、自由人コンビの活躍が遊びごころ満載で描かれます。

藤竜也さんが横浜を舞台に同じ「水原」という名の刑事を演じた火9アクション『大追跡』の軽いノリを継承し、それを更にエスカレートさせたような「ぶっとんだ」作風は、後の『あぶない刑事』や『ベイシティ刑事』の原型とも言えましょう。

加えて、二人に半ば無理やり協力させられる元怪盗の五島 (柴田恭兵)、二人に儲け仕事や情報を提供する雑誌編集長の礼子(小川真由美)、M&R探偵事務所と同じビルで花屋を営むマドンナ的存在のユミ(名取裕子)、セントラル・アーツの探偵ドラマに付き物のずっこけ刑事コンビ・菊島(宍戸 錠)&木戸(小林稔侍)、といったメンバーが脇を固めます。(柴田恭兵さんは出たり出なかったりで、残念ながら今回は欠席です)


☆第6話『俺の愛した赤い靴』

(1981.5.12.OA/脚本=那須真知子/監督=小澤啓一)

ある日突然、竜崎が「結婚した」と言いだして水原を驚かせます。

相手は10億円もの遺産を遺して死んだ富豪・佐々木の隠し子だという小夜子(森下愛子)で、彼女に遺産を相続させる条件として婿を取るよう佐々木が言い残し、小夜子の叔父にあたる画商の桂木(根上 淳)が弁護士の山田(北村総一朗)と相談し、何でも屋みたいな探偵・竜崎に偽装結婚を依頼したのでした。

隠し子で母親も他界したという小夜子の境遇に同情する竜崎は、100万円の報酬にも眼がくらんで引き受けたワケだけど、小夜子と桂木に単なる親戚関係を超えた何かを感じた水原は、二人の身辺を調査します。

で、遺産を狙うヤクザたちも絡んですったもんだがあり、竜崎は命を狙われるんだけど、なぜ小夜子じゃなく竜崎が狙われるのかが解らない。

一方、水原は死んだ佐々木が実は無精子症だった=小夜子が佐々木の隠し子でも何でもないという事実を掴みます。これは一体、どういう事なのか?

真相は、桂木と山田弁護士が竜崎を殺そうとした事で明らかになります。なんと、佐々木が遺産を相続させようとしていたのは、小夜子じゃなくて竜崎だった! 竜崎本人も知らなかったその事実を知った桂木が、山田弁護士と結託して小夜子を利用し、遺産を横取りしようとしたワケです。

なぜ、佐々木は遺産相続人に竜崎を指名したのか? その理由は、15年前に川で溺れていた佐々木の愛犬を助けたから。

で、めでたく10億円を頂けると思ったのも束の間、よく調べたら犬を助けたのは竜崎と同姓同名の別人だった事実が判明し、チャンチャン!という実にアホらしいお話でしたw

これが『プロハンター』の世界観、'80年代セントラル・アーツの作風ですw 東宝製作の『大追跡』や『俺たちは天使だ!』が、おちゃらけながらもギリギリ守ってたリアリティーを、本作はあっさり放棄しちゃってるんですよね。面白ければ何でもアリの世界。

それを「んなヤツはおらんやろ」って言ってシラケるか、マンガと割りきって受け入れるかで、本作への評価は大きく違って来るかと思います。

以前の私は前者でした。同じ日テレ・アクションドラマでも東宝製作の『太陽にほえろ!』という、とても生真面目な作品を長年観て育ちましたから、ほぼ100%あり得ないような話にはどうしても気が乗らない。

『大追跡』や『俺たちは天使だ!』はオチャラケ度じゃ『プロハンター』に近いんだけど、ストーリーそのものは意外にちゃんとしてるんですよね。やっぱ東宝だから根は真面目なんです。

セントラル・アーツの作品は、根っからフザケてるw 私は数年前までそれが受け入れられなかったんだけど、最近はちょっと変わって来ました。その「あり得なさ」こそを楽しめるようになっちゃった。

理由は恐らく、あまりに昨今のTVドラマがリアリティーに囚われ過ぎてるから。それが作品を(特にアクション系のドラマを)つまらなくしてると思うから。

いや、リアルな作品はリアルな作品で面白いんだけど、それ一辺倒になっちゃってるのがつまんない。一方でリアリティーなんか気にしないハチャメチャな作品も無いとバランスが取れない。

同じコメディ路線の探偵アクションでも、『プロハンター』と『俺たちは天使だ!』とじゃ世界観(におけるルール)に違いがあった。どっちの世界観に乗っかるか、当時の私たちには選択肢があったんです。

それが今やリアリズム一辺倒ですから、そうじゃない『プロハンター』がとても輝いて見えるワケです。ああ、なんて自由なんだ! なんてバカバカしいんだ!ってw

とは言え、今の若い役者さんでこれと同じ事をやっても、たぶんダメなんでしょう。やっぱり草刈正雄、藤竜也、柴田恭兵といった人たちが演じてこそサマになる世界。

だから、本放映当時よりも今観た方が『プロハンター』は面白い。こんなドラマはもう、新作では二度と観られないですから。

セクシーショットはゲストの森下愛子さん。最初は冴えないメガネっ子として登場しますが、それでも超絶に可愛くて、萌えますw
 
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『探偵物語』#05

2018-11-04 06:06:06 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
☆第5話『夜汽車で来たあいつ』

(1979.10.16.OA/脚本=丸山昇一/監督=澤田幸弘)

福井県の田舎町から上京した田村(水谷 豊)という男が工藤(松田優作)の事務所を訪ね、半年前に上京してから連絡がつかなくなった妹=由美(原田美枝子)の捜索を依頼します。

調べると、由美は恋人のゴロー(古尾谷雅人)が起こした事故の慰謝料を払うために、風俗の仕事をしているのでした。市役所に勤務する生真面目な兄に、変わってしまった自分を見られたくないと由美は言います。

工藤は理由を伏せたまま「会えない」とだけ田村に伝えますが、彼はどうしても会いたいと言って聞きません。実は田村は癌に冒されており、もう時間が無いと悟った矢先に妹の借金苦を知り、急いで大金を工面し東京へやって来たのでした。

ところが、その大金が悪徳企業の賄賂を横領したもので、工藤と田村はヤクザたちに追われる羽目になり……

松田優作さんと水谷豊さんは『太陽にほえろ!』の第54話(ジーパン刑事編の2作目)で出逢って以来の大親友で、今回のゲスト出演は『熱中時代 刑事編』の撮影を終えた水谷さんが友情出演的に駆けつけて実現したもの。(お返しに優作さんが水谷さん主演の『あんちゃん』にゲスト出演されたことも当時話題になりました)

加えて原田美枝子さん、古尾谷雅人さんも登場しちゃう豪華さで、このエピソードは後に第1話とのカップリングでブローアップ&再編集され、映画『蘇る優作/探偵物語特別編』として劇場公開されることになります。

キャストの豪華さもさることながら、素朴な田村と工藤が意気投合し、友情を育んでいく楽しさや、お互いツラい秘密を隠したまま笑顔で再会する兄と妹、そして希望に向かって歩み出すラストシーンなど、優作さんが目指された「ハートボイルド」を象徴するような温かいエピソードで、前回レビューの渋い第2話とは対照的ながら、これも名作の1本として記憶に残る作品です。

セクシーショットは、工藤探偵事務所と同じビルに住む女優の卵=かほりに扮した竹田かほりさん、当時20歳。ファッションモデルのルームメイト=ナンシー(ナンシー・チェニー)と二人で何かと工藤の世話を焼く、マスコット的なポジションで番組に花を添えてくれました。

にっかつロマンポルノ『桃尻娘』シリーズで人気を集め、優作さん絡みでは映画『殺人遊戯』『俺達に墓はない』や2時間ドラマ『死の断崖』にも出演、同じセントラル・アーツの探偵ドラマ『探偵同盟』に『プロハンター』、そして『Gメン'75』『大空港』『太陽にほえろ!』『爆走!ドーベルマン刑事』等の刑事ドラマにもゲスト出演されてます。

'82年にミュージシャンの甲斐よしひろさんと結婚、芸能界はきっぱり引退されましたが、もっとご活躍を見ていたかったのは私だけじゃないだろうと思います。
 
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『探偵物語』#02

2018-11-04 00:00:27 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
言わずと知れた日本テレビ系列・火曜夜9時枠で1979年秋から全27話が放映された、松田優作 主演、セントラル・アーツ製作による伝説的な探偵ドラマ。

当時の視聴率はそんなに良かったワケじゃないんだけど、優作さんの逝去を機に再注目され、そのユニークさとクオリティーの高さで不動の評価を得た作品です。

セントラル・アーツ作品は越えちゃいけないリアリティーの境界線を越えちゃう(そこで私はシラケちゃう)って何度も書きましたが、この『探偵物語』は違います。

当初の企画は徹底したハードボイルドであり、各ライターさんもそのつもりで脚本を書かれたのに、主演の優作さんが「いや、ハードボイルドじゃなくハートボイルドで行く」って言い出して、本筋はそのままに枝葉をどんどんコミカルにアレンジしちゃった。それがあのシリアスとコミカルの独特なバランスを生んだワケです。

だから、どんなにオチャラケても根本はハードボイルドだから、リアリティーの境界線を越えることはまず無い。そこが最初からオチャラケを狙った他の探偵コメディと大きく違う点で、本作が伝説的ドラマになった所以じゃないかと私は思ってます。

特にこの第2話はコミカルさが抑え気味で、本来のハードボイルドな味わいが色濃く残ってます。ドタバタ喜劇に走っちゃった第1話も決して嫌いじゃないけど、私はこれくらいのバランスが一番好きです。


☆第2話『サーフ・シティ・ブルース』

(1979.9.25.OA/脚本=那須真知子/監督=村川 透)

資産家の内藤家に呼ばれた私立探偵・工藤俊作(松田優作)は、美貌の内藤夫人(中島ゆたか)から、2年前に家出した前妻の娘・リカ(栗田洋子)の行方を探して欲しいとの依頼を受けます。入院中の主人の死期が迫り、意識のある内に会わせてやりたいのだと言う内藤夫人。

彼女のミステリアスな色気に惹かれつつ、調査を開始した工藤は裏社会の情報網を駆使し、ソープランドで働くリカをあっさり見つけ出します。が、荒れた生活を送るリカは両親との面会を拒否。立場上それ以上介入することも出来ず、リカの居場所だけ夫人に伝えて、工藤の役目は終わったかに見えたのですが……

リカが悪い仲間たちと銀行強盗をやらかした事で、事態は急展開を迎えます。リカを含む強盗一味が何者かに拳銃で皆殺しにされ、さらに工藤も命を狙われる羽目に。

警視庁殺人課の服部刑事(成田三樹夫)らは強盗一味の仲間割れと断定しますが、工藤は気づいていました。自分を殺そうとしたのは、内藤家で夫人に対して特別な想いを秘めてる、使用人の郷田(河原崎次郎)であることに……

そう、仲間割れに見せかけてリカたちを殺したのは郷田。影で糸を引いたのは、遺産の独り占めを狙う内藤夫人だった。それを工藤に見破られた夫人は、黙って服を脱ぎ、「好きなの」と迫りますが、工藤は言います。

「やだね。俺は自由でいたいんだよ、奥さん」

最終的に内藤夫人は不倫相手に殺され、リカたちを殺した罪は全て郷田が被りますが、あえて工藤は警察に何も言わないのでした。夫人を守りたかった郷田の気持ちを汲んだのでしょう。

セクシー下着で迫る美人妻に見向きもしない工藤の姿は、まさにハードボイルド。普通の探偵コメディなら主人公が(最終的には我慢するにせよ)鼻の下を伸ばして笑いを取ろうとした筈です。

優作さんがアドリブでおかしな言動をいちいち挟むのは、別に自分がウケたいからじゃなくて、とにかく作品に個性を持たせたかったから、なんだろうと思います。気質がクリエイターなんですよね。

だから、渋くキメるべき所はちゃんと渋くキメる。そのメリハリこそが『探偵物語』最大の魅力なんじゃないかと私は思います。

あと、あらためて観ると何から何までオシャレですよね。スタイリッシュな映像と音楽に加えて、今風で言えば「ダサかっこいい」ファッションや仕草。おんぼろ原付バイクのベスパや火力最大の100円ライター等、優作さんでなければ格好良く見えないものが格好良く見えてしまう。それを多くの男子が勘違いして真似ちゃうワケですw

その「ダサかっこいい」美学の原点は『傷だらけの天使』のショーケンさんにあるかと思いますが、それを誰にも再現出来ないレベルにまで昇華させたのが優作さん。オシャレさで『探偵物語』を超える作品はもう現れないんじゃないかと思います。

そこまで虚構の世界を追究できたのは、リアリティーの境界線を平気で越えちゃうセントラル・アーツ作品だからこそ、かも知れません。「あり得ない」とか言い出したら成立しない世界観ですから。

内藤夫人役の中島ゆたかさんは当時26歳。優作さんとは既に映画『殺人遊戯』で濡れ場も演じた仲。その現実離れした美貌から数々の刑事物、探偵物でミステリアスな悪女を演じられ、特に『Gメン'75』は通算10回もゲスト出演されてます。
 
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