ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

2023-03-12 15:55:44 | 外国映画

久し振りに「これは観たい! 今すぐ観たい!!」と直感したので、大阪の映画館へ行って来ました。

絶対ヒットするし、アカデミー賞の目玉にもなるだろうから、流行りものと権威に弱いマジョリティどもが群がる前に!っていう目算もあり、公開されてすぐの平日(それもWBCの韓国戦当日)を狙いました。

もちろん私はヒットや賞に惹かれたワケじゃなく、ハリウッドのアクション映画でありながら物凄く新鮮なものが観られそうな予感と、主演女優=ミシェル・ヨーのファンであること、しかもその夫を演じてるのが『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』のショートラウンド(キー・ホイ・クァン)であることも大きな動機になりました。



長らく裏方に回ってたらしいキー・ホイくんが本作で俳優復帰し、そのプレミア上映か何かのイベントで別宇宙の私(ハリソン・フォードと名乗ってる)と感動の再会を果たした!っていうネットニュースも読んでましたから。

いや実際、この映画によるマルチバース(我々世代で言うパラレルワールド)の解釈だと、ハリウッドのトップスターになってる私だって有り得るワケです。

もしくは、プータローになって腎臓結石と頭痛と鬱症状に悩みながらマジンガーZのプラモを組み立てるハリソン・フォードも!

っていうか全てのハリソン・フォードが私であり、私がハリソン・フォードなんです。ご不満ならトム・クルーズかブラッド・ピットで我慢します。鬱病なんです。

まあ、それくらいバカげたストーリーってことですw



アメリカで冴えない夫のウェイモンド(キー・ホイ・クァン)と小さなコインランドリーを経営してる中国移民のエヴリン(ミシェル・ヨー)がある日、別宇宙からジャンプして来たメチャクチャ冴えてるウェイモンドに「キミは全宇宙をカオスから救える唯一の救世主だ!」と告げられ、その瞬間から恐ろしく壮大な戦いに巻き込まれていく。

……てなストーリーは『マトリックス』を彷彿させるし、マルチバースの概念を本格的に取り入れたアクションなら『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』をこないだ観たばかりだけど、それでも本作が新鮮に感じられるのは、御年60歳のミシェルさんが演じるエヴリンの「平凡中の平凡さ」と「ダメっぷり」に尽きるかと思います。



つまり、スパイダーマンは言うに及ばず『マトリックス』のキアヌ・リーブスも救世主になることを運命づけられたスペシャルな人だったけど、エヴリンは本当にただの平凡な初老女性。だから誰でも自己投影できちゃう!

そんなエヴリンが救世主に選ばれた理由が、あまりにダメすぎて何をやっても長続きせず、これまで職を転々として来たから。つまり経験豊富なワケですw

例えば、この宇宙にいる私は映画監督の夢を諦めたけど、別宇宙の私は何かの巡り合わせでスピルバーグ監督みたいな大物になってるかも知れない。役者もちょっと噛じったから、それこそハリソン・フォードみたいになってる私も別宇宙には存在する! っていうかハリソン・フォードがプータローになってマジンガーのプラモを作ってるワケです。

で、更にユニークなのが、今この宇宙にいる平凡なエヴリンが、別宇宙でカンフーの達人になってるエヴリンから、カンフーの技を吸収することが出来ちゃう設定。

そう、誰よりも多種多様な分岐点を持つエヴリンだからこそ、誰より多種多様な能力を得ることが出来る!

例えば、本来はルックスの良さだけが取り柄だった青年が、ホームランバッターになってる別宇宙の自分と、豪速球ピッチャーになってる別宇宙の自分からそれぞれ能力を吸収し、今の大谷翔平くんが出来上がった!みたいなお話。ていうか彼も私なんです。



観ながら私は、大地真央さんが出てらっしゃる「アイフル」のCMを連想しました。あれも毎回違った宇宙にいる大地さんが登場するようなもんだし、あのカンフー篇のバカバカしさがまさに本作の世界観とよく似てます。

けど、ただ斬新で面白いだけならアカデミー賞の候補にはならなかった筈。本作が評価された最大の理由は、縦軸となるストーリーが実は単なる親子喧嘩で、これまた誰にでも身に覚えがある話だから。

なもんで、私はアイフルのCMと同時に、この前レビューしたNHKの深夜ドラマ『超人間要塞ヒロシ戦記』も思い出しました。誰でも思春期に経験する恋の葛藤を「巨大戦艦の操縦」に喩えて描いたSFラブコメディーで、一見ぶっ飛んでるけど実はすこぶる普遍的で小さな話である点がよく似てます。

つくづく、映画やドラマで描けるストーリーなんか、指で数えるほどのパターンしか無いんですよね。肝心なのは、それを如何に新鮮なやり方で魅せられるか。

それはキャスティングにも言えることで、大手スタジオの製作じゃないからこそ可能だったであろう、アジア系の主演コンビがアカデミー賞候補になってる事実も歴史的な快挙。

まさに新鮮なものが観たい方、王道に飽き飽きされてる方にオススメしたいです。『ハロウィン』『ブルースチール』『トゥルーライズ』のジェイミー・リー・カーティスさんとも意外な形で再会できますから!


 

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『ブレット・トレイン』etc…

2023-02-26 22:44:08 | 外国映画

今、時間だけは余ってるもんで、映画もちょこちょこ(レンタルDVDやCATVで)観てます。

基本的にハリウッドのアクション映画が一番好きなのは相変わらずで、シネコンがもっと近くにあれば確実に劇場で鑑賞したであろう近作から順番に観てます。

が、どれも良く出来てて面白いんだけど、だからこそ、あんまりレビューを書こうって気になれない。不特定多数の観客が楽しめるようにちゃんと創られてるから、私から口添えしたいことが何も浮かばない。みんなが「面白い」って言ってる作品をここで「面白い」って復唱しても仕方ないですから。



『トップガン/マーヴェリック』がその代表格。これは劇場で観たらもっと面白いだろうなあっていう、当たり前の感想しか浮かばない。

実は1作目も最近レンタルDVDで初めて観たもんで、約35年ぶりの再会!っていう感慨もなく、ホント良く出来てるよなあっていう感想しかありません。



『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』も、観た人が言うことはみな同じでしょう。歴代3シリーズのピーター・パーカーとヴィランたちが勢揃いしちゃうという、マルチバースって設定の面白さと便利さ。

結果、とんでもない豪華キャスティングになっちゃうのをホントに実現させちゃうディズニーって会社の凄さですよね。

日本でこういうのをやるとすれば(みんなご存命だと仮定して)映画とテレビ全ての金田一耕助が大集合!とか、大河ドラマ歴代の織田信長が勢揃い!みたいな……ってのも皆が言ってそう。



『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』もまさに同じ! 旧三部作と新三部作の主役たちが一堂に介する楽しさと懐かしさ。やってること(恐竜から逃げ回る)は毎回同じだから、そこしか取り上げようがない。

もちろん最初の『ジュラシック・パーク』から全部劇場で観てきた私は存分に楽しめました。けど、完結編だけ自宅鑑賞になっちゃったのはちと残念。『インディアナ・ジョーンズ5』は何があっても劇場に行きますから、思い入れがそれ程じゃ無かったワケですね。



『バッドマン/史上最低のスーパーヒーロー』はフランスのコメディー映画だけど、ネタは『バットマン』『アベンジャーズ』などアメコミ映画のパロディー。

普通の人がスーパーヒーローに「なりすます」パターンの話だけど、主人公が売れない俳優で、やっと掴んだヒーロー映画の撮影中に交通事故を起こし、コスチュームを着たまま記憶を無くしちゃう。

つまり、主人公が勝手に自分がスーパーヒーローだと思い込み、なんの超能力も無いのに凶悪マフィアに戦いを挑んじゃうw

周りの人々が勘違いして主人公をスーパーヒーローと思い込むパターンが多い中、当の本人が勘違いしちゃってる点が新しいし、小さな子供にもいっさい容赦しないブラックユーモアもアメリカや日本とはひと味違う。下ネタも満載でめっちゃ笑えますw



『ピクシー/復讐の女神』はイギリス映画で、母親を死に追いやった男どもにオリヴィア・クック扮する娘が復讐していくストーリーだけど、アクション映画じゃなくてこれもブラック・コメディー。

ヒロインも含め悪党しか出て来ないから感情移入しづらいけど、展開が全然読めない点でハリウッドの王道大作より面白いんですよね。(それにしても『復讐の女神』って邦題の外国映画がなんと多いことか!)

で、それと似た路線のブラックユーモアと、しっかりアクションも魅せてくれた『ブレット・トレイン』が、今回のラインナップの中で私は一番楽しめました。



『アトミック・ブロンド』『デッドプール2』のデビッド・リーチ監督による2022年公開のアメリカ映画で、主演はブラッド・ピット。

伊坂幸太郎氏の小説『マリアビートル』をハリウッド映画化した作品だから、舞台も我らがジャパン。決してリアルな日本じゃないけど、ストーリー自体がぶっ飛んでますから気になりません。



ブラピ扮する小悪党が、東京から京都に向かう新幹線の車内で、指定されたブリーフケースを盗むだけの簡単なミッションを引き受けるんだけど、そのケースを狙う殺し屋たちが次々と現れて……



襲ってくる殺し屋たちにもそれぞれ背景があり、それを面白おかしく見せる序盤で人がポンポン死んでっちゃうから、これも最初は感情移入しづいんだけど、我慢して観ていくと知らず知らず彼らを憎めなくなって来る。

ブラピ扮する小悪党がホントに小物でw、だけどすこぶるチャーミングで、ただ悪運だけで生き延びてく様が妙に可愛くて笑えちゃう。

バイオレンス度はかつてブラピがプロデュースした『キック・アス』と同じくらい。そう言えばキック・アス役のアーロン・テイラー=ジョンソンも殺し屋の1人として登場します。

あと、日本人スターのこの人も!



真田広之さんって、もっともっと動ける筈なのに、ハリウッド映画じゃいつも半分も実力を発揮させてもらえてない印象。どうやら実際に「もっと動きを抑えてくれ」って指示されてるみたいです。

ほか『スーサイド・スクワッド』の福原かれん、『デッド・プール2』のザジー・ビーツ、『CSI:科学捜査班』のジョーイ・キング、そして『オーシャンズ8』のサンドラ・ブロックがブラピの雇い主として登場します。



アクション映画はあくまでアトラクション、と割り切って観れば、豪華キャストにド迫力アクション、摩訶不思議なクールジャパン描写、そして先が読めない展開とブラックユーモアが存分に楽しめます。王道ファミリー路線がつまんなく感じてる方にオススメです。

 



セクシーショットは女子高生の殺し屋「プリンス」に扮したジョーイ・キングちゃん。ボインぼよよんです!


 

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『ガンパウダー・ミルクシェイク』

2022-10-03 16:18:51 | 外国映画

2022年3月に公開されたばかりの、ナボット・パプシャド監督によるフランス&ドイツ&アメリカの合作映画をレンタルDVDで観ました。

暗殺組織に所属する凄腕の殺し屋=サム(カレン・ギラン)がうっかりマフィアの息子を殺してしまい、他のミスも重なってマフィアと自組織の両方から命を狙われる羽目になっちゃう……てなストーリーはキアヌ・リーブスの『ジョン・ウィック』シリーズとよく似てます。

主人公がめっぽう強い女性で、ぶっ殺す相手がアホな男ばっかなのは前回レビューした『シャドウ・イン・クラウド』とも似てる。

さらに、自分が殺した相手の幼い娘(クロエ・コールマン)を連れて逃避行する『グロリア』的展開や、サム・ペキンパー的スローモーション演出、クエンティン・タランティーノ的ポップな画づくりとミュージック等々、古今東西のアクション映画にオマージュを捧げた感じもします。



だから新鮮味に欠けるし詰め込み過ぎの感もあるけど、映画愛がすごく伝わって来るから最後まで心地よく観られます。『シャドウ・イン・クラウド』に負けず劣らずの「おバカ」映画だけどw、私は楽しめました。

身長180センチ(!)のヒロイン=カレン・ギランは何をやってもサマになるし、その母親で元殺し屋のレナ・ヘディ、そして彼女の古い仲間たち=カーラ・グギーノ、アンジェラ・バセット、そしてミッシェル・ヨー!と、出てくる女の人が皆べらぼうに強くてカッコいい!



彼女たちが意外と銃に頼らず、ハンマーなど打撃系の武器を多用するのはガンマニア的に物足りないし、せっかくのミッシェル・ヨーさんがカンフーを使わないのも残念だけど、そのへんが本作のオリジナリティーかつリアリティーとも言えそうです。

白眉は、敵の罠により両腕を麻痺させられたヒロインが、8歳の相棒に協力させて銃を撃ちまくり、二人羽織りで車を運転させながらチェイスする、コントすれすれのアクションシーン。私が大好きなブラック・ジャック&ピノコの名コンビを彷彿させます。

子供が足手まといになるどころか、ヒロインの手足になって活躍する姿は爽快だし、演じるクロエ・コールマンちゃんがまた上手くて、この場面だけでも観る価値充分にあり!



実の母娘と疑似母娘の絆、そして女どうしの友情と、男が入り込む余地は1ミリもありませんw だから恋愛要素も皆無で、男はただ女の人にぶん殴られ、ぶっ殺される為にだけ存在する。最近、そんな映画が増えて来ました。

それが男として不愉快かと言えば全然そんなことなく、むしろ私は大歓迎。男なんて生きものは所詮、種を造るだけのマシーンですよw

いやホントに、本来は女性に仕える為に生まれて来たのに、それがイヤなもんだから腕力を誇示し、戦争を起こしたりするどうしょーもないチンカス生物です。

フェミニズムでもファンタジーでもない。この『ガンパウダー・ミルクシェイク』や『シャドウ・イン・クラウド』で描かれた世界こそがリアル。男なんぞ皆、家にこもってモデルガンでも愛でてりゃいいんです。

そしてカレン・ギラン様のセクシーショットを拝みながらオナニーでもしてなはれ。🤌 

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『シャドウ・イン・クラウド』

2022-10-02 00:00:05 | 外国映画

2021年に製作された、ロザンヌ・リャン監督によるニュージーランド&アメリカの合作映画をレンタルDVDで観ました。

’10年の『キック・アス』以来、その成長を見守らせてもらってるクロエ・グレース・モレッツちゃんが空軍の女性ソルジャーを演じ、男どものセクハラを受けまくるらしい!との噂を聞けば私が観ないワケありません。

が、その内容は想像してたのと全然違ってましたw だからこそ面白い! もし興味がある方は、何も知らずに観た方が楽しいからこの先は読まないで下さい。

決してコメディーじゃないけど深刻にもならず、男性優位社会を徹底的にコケにしたチョー痛快「おバカ映画」なので、むしろ女性にこそオススメしたい作品です。



1943年、すなわち第二次世界大戦の真っ只中、ニュージーランドからサモアへと向かう爆撃機に、クロエちゃん扮する女性大尉が急きょ乗り込んで来ます。

クロエ大尉は軍の「最高機密」が入った鞄をサモアへ届ける密命を負ってるらしいんだけど、乗組員の男どもは「たかが女」とハナから見下し、定員オーバーだからと彼女を銃座に閉じ込め、無線を通して「今夜、泊まってけよ」とか「死ぬほど抱いてやる!」とか「チュバチュッチュしてチョメチョメしたい!」などと聞くに耐えないセクハラ・ワードを浴びせ続けるのでしたw(実際はもっと下品なワードです)

前半はほぼ、銃座に閉じ込められたクロエちゃんのひとり芝居。無線越しの会話でクロエ大尉がかなり優秀なソルジャーであること、そして鞄の中身が軍にとって……ではなく、実は彼女自身にとって命より大事なものらしいことが、徐々に分かって来ます。

以下、ネタバレになります。



実はクロエ大尉、DV夫から逃れて空軍のイケメン兵士とチョメチョメな仲になり、子供を宿したんだけど、そのイケメンは怖気づいて父親になることを拒否。

誰にも頼れない状況下でクロエちゃんは、軍の指令書を密かに偽造し、DV夫から避難すべく爆撃機に乗り込んだのでした。そう、鞄の中身は生まれて間もない赤ちゃんだった!

で、その爆撃機が嵐に見舞われるは、日本軍の零戦に襲撃されるは、挙句の果てに伝説のグレムリン(凶暴な未確認生物)に破壊されそうになるわで大変なことに!



さんざんデカい口をきいてた男どもはギャーギャー騒ぐだけで何の役にも立たず、クロエちゃんは赤ちゃんを護るために1人で零戦とグレムリンを撃ち落とし、閉じ込められた銃座から空中アクロバットで操縦席へと移動し、制御不能となった爆撃機をなんとか不時着させ……



そして最後はグレムリンを素手でフルボッコしてぶっ殺す!w 母は強しどころの話じゃない!(なにせ元ヒットガールです)

その直前、実は乗組員の1人だったイケメン兵士(赤ちゃんの父親)がクロエちゃんに惚れ直し、ひざまずいてプロポーズするんだけど、そのスキに鞄をグレムリンに奪われて「だから眼ぇ離すな言うたやろボケっ!!」ってw、クロエちゃんに一喝されちゃう。

かくも男どもは徹底的にマヌケな役立たずとして描かれ、最後の最後までクロエちゃんの一人舞台。共同で脚本も手掛けられたロザンヌ・リャン監督は女性ですから、恐らくまだまだ男性優位の映画業界で溜まりに溜まった鬱憤を、ここで思い切り晴らしたる!ってなコンセプトで創られたんでしょう。

いや、男からしたってパワハラやセクハラは不愉快の極みですから、誰が観てもきっとスカッとします。

グレムリンの存在意義がいまいち解んないけどw、これはあくまで寓話だから真に受けて怒んないでねっていう、たぶんエクスキューズなんでしょう。



とにかくひたすらカッコいいクロエちゃんの『キック・アス』以来となる大暴れが観られるだけで価値あり! 「おバカ映画」でもよろしければっていう前提つきで、一応オススメしておきます。


 

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『ラッキー』

2022-09-08 00:45:32 | 外国映画

日本では2018年に公開された、ジョン・キャロル・リンチ監督によるアメリカ映画をレンタルDVDで観ました。

メキシコ近くの田舎町に住む「ラッキー」と呼ばれる90歳の男(ハリー・ディーン・スタントン)の、単調な日常が淡々と描かれてますw

この映画を観ながら、私は2つの疑問の答えをずっと考えてました。

まず1つは、なぜ私が、このDVDを宅配レンタルの予約リストに入れたのか?っていう疑問w

以前レンタルしたDVDに収録された予告編を観て予約したんだろうけど、ほとんど老人しか出てこない、この淡々とした映画を、なぜ!?w

たぶん、クリント・イーストウッド御大がよく好んで演じておられる、孤独な偏屈男のキャラクターと同じ匂いを感じ取り、きっと共感できると直感したんでしょう。

それは確かに間違っておらず、お陰でちっとも退屈せずに最後まで楽しめました。



そしてもう1つは、なぜ「ラッキー」っていうタイトルなのか?っていう疑問。

もちろん主人公の名前(あだ名)がそのままタイトルになってるのは分かるけど、ロッキーやランボーとは意味合いが違いますよね?

若いとき海軍にいて、調理係を任されたもんで(一番安全なポジションだから)ラッキーと呼ばれるようになった、っていう設定はあるけど、それはたぶん後付けのもんでしょう。

主人公が並外れて幸運なのか、あるいはその逆であるのを皮肉ってるか、何かしらの意図が無ければこんなタイトルにはしないはず。

さて、その答えは見つかったのか?



結婚歴なしで天涯孤独のラッキーの日常は、同じルーティンの繰り返し。朝起きてまずストレッチし、牛乳を飲んで、歩いて、行きつけの店でクロスワードパズルを解きながら食事して、歩いて、行きつけの店で牛乳やタバコを買い、また歩いて、行きつけの店で酒を飲み、常連客たちと会話する。

タバコはよく吸うんだけど、規則正しい生活と運動が功を奏してか、これまでほとんど医者要らず。ところがある日、ふと意識を失くして倒れちゃう。

幸い大事には至らず、病院での検査結果も「異常なし」で、原因は「加齢によるもの」としか考えられないと医者は言う。

それを境に、ラッキーは初めて「死」を意識するようになります。いつも屁理屈と憎まれ口ばかりのラッキーが元気を無くし、顔なじみの人たちは心配し、それぞれのやり方で励まそうとします。



確かにラッキーは幸運です。ヘビースモーカーなのに90歳まで健康だったし、偏屈者なのに町の人たちに愛されてる。

私が何よりラッキーが幸運だと思うのは、頭が全然ボケてないことです。うちの両親が2人とも認知症で、特に父は坂道を転がり落ちるように幼児化しちゃったもんで、終末期をボケずに過ごせることが如何に素晴らしいか、それに勝る幸運などこの世に無い!って、私は思うワケです。

それを踏まえて思い返すと、ラッキーは毎日クロスワードパズルを解いて、頭の運動も欠かさずやってるんですよね。単に暇つぶしでやってるだけかも知れないけど、間違いなくボケ防止になってるはず。

ストレッチも散歩も牛乳も、町の人たちとの会話も、うちの両親はやってませんでした。つまりラッキーの幸運は、努力とまでは言わないにせよ、日々の積み重ねの結果なんです。

もしかしたらこの映画は、そういうことを言いたかったのかも知れません。「ラッキー」は待ってるだけじゃ来ない。自ら動いて招くもんだよって。



死を意識するようになって元気を無くしたラッキーだけど、ダイナーで見かけた元海兵隊員(トム・スケリット)に話しかけ、彼が太平洋戦争中の沖縄で出逢った日本人少女のエピソードを聞いて、なんとなく吹っ切れた様子。

戦地の真っ只中にいたその少女は、敵兵たちを前にして(つまり死を目前にして)微笑んでたそうで、その姿が神々しいほどに美しかったと元海兵隊員は言います。微笑んだのはたぶん、仏教の悟りじゃないかとも。

その話でなぜラッキーの心が救われたのか、今の私にはピンと来ません。いつか自分が死を意識するようになって、初めて理解できるのかも?

いずれにせよ、弱ってる時にそんな話を聞けたラッキーはやっぱり幸運だし、それもまた自分から話しかけた結果=能動的に引き寄せてるって事ですよね。

たぶん、それがタイトルの意味だろうと私は解釈したけど、全然違うかも知れません。是非、皆さんの感想も聞いてみたいです。



いつか迎える終末期を、自分はどんな風に過ごすんだろうか?って、それだけは間違いなく、誰もが考えさせられる事でしょう。

ボケるのだけはイヤ。絶対イヤ。だからと言って、身体だけ弱っちゃうのもイヤ。そうなる前に地球ごと消滅しちゃうのが、私の偽らざる希望です。


 

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