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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#521

2025-04-26 16:40:04 | 刑事ドラマ'80年代

殉職エピソードばかり話題にされがちな『太陽にほえろ!』だけど、私は辛気臭い殉職編よりも新鮮なサプライズに満ちた新刑事登場編こそが大好きで、特にこのボギー登場編はベスト1に挙げたい傑作エピソードだと思ってます

このエピソードがなぜ、それほど面白いのか? 後から知った事だけど、本作は『太陽にほえろ!』のエッセンスが全て詰まった第1話『マカロニ刑事登場』の'80年代版リメイクなんですね。脚本&監督も同じコンビが担当されてます。




☆第521話『ボギー刑事登場!』

1982.9.3.OA/脚本=長野 洋/監督=竹林 進)

ある朝、ドックこと西條 昭(神田正輝)が遅刻ギリギリで七曲署捜査一係室に滑り込んで来ます。

「ふぅ、やべぇやべぇ! ビリかと思ったらそうでもねえや。ロッキーも長さんも……」

そこまで言ってドックはフリーズします。ロッキーこと岩城 創(木之元 亮)がカナダで殉職し、その捜査を指揮した長さんこと野崎太郎(下川辰平)が警察学校教官に転職したばかりである事実を、なんとドックは忘れていたのでしたw

んなヤツはおらんやろ~って当時は思ったけど、あまりにショックなことが起きたとき、人はその記憶を潜在意識下に封じ込める自己防衛本能を有することを知った今では、こんなことも有り得るだろうと納得できます。

すぐ我に返って謝るドックを、ゴリさんこと石塚 誠(竜 雷太)が穏やかにフォローします。

「別に謝ることは無いさ」

「……でも、なんだか部屋が広く感じませんか」

「ああ、寂しくなったな」

しんみりと言うラガーこと竹本淳二(渡辺 徹)とゴリさんに、最近すっかり副指揮官としてチームのまとめ役となった山さんこと山村精一(露口 茂)が言います。

「なあに、じきに賑やかになるさ」

「え? 山さん、それじゃあ……」

「うん。ボスがまた一人、ヘンなの拾って来たらしい」

新登場する刑事が歴代あまりにクセモノばかりで、それはボスこと藤堂俊介係長(石原裕次郎)の趣味である事を、番組開始10周年に至って山さんは悟ったみたいです。ちなみに「七曲署」という警察署名には「七人の曲者」という意味が込められてるんだとか。

さて、その新たなるクセモノ=春日部一(世良公則)は、愛車の黄色い中古ルノーを運転し、呑気にラジオ番組を聴きながら七曲署へと向かってました。先程のドックが滑り込み出勤って事は、春日部はもうとっくに遅刻なんだけど、さすがクセモノ!

春日部のルノーは番組ファンから「ヘイチ号」と呼ばれ、ボギー殉職編の直前まで活躍することになります。「ヘイチ」という名前の由来は、すぐ後に分かります。

ラジオではアナウンサーが「仔犬のコロ」にまつわる美談を朗読しており、それを聴いてもらい泣きしてた春日部は完全に前方不注意、交差点で前の車に軽く追突しちゃいます。

そのちょっとイカツい車に乗ってたのは、中田譲治・長谷一馬・河合 宏が扮する若者三人組。ツッパリ系でちょっとヤバそうな連中です。

「どこ見て運転してんだよ、てめえ」

すぐさま車を降りたリーダー格が凄んで見せますが、春日部は運転席に座ったまま、自分のネクタイで涙を拭いてましたw

「ど……どうしたんだよ、お前」

「……良かったなあ」

「良かった?」

「ラジオ聴いてなかったのかよ? 産まれて1年も経たない仔犬のコロだよ」

「バカ野郎、ひとの車ぶつけといて何が仔犬のコロだよ!」

「あれ、ぶつかったか?」

「降りろ、この野郎!」

三人組に引っ張られて衝突箇所を確認しても、春日部はどこ吹く風で気にも止めません。

「大した事ないよ。だいたいな、バンパーなんてのはぶつける為にあるんだよ」

「ふざけんな、この野郎!」

頭に血が上ったリーダー格が春日部にパンチを浴びせます。

「痛いよ、お前」

「当たり前だ!」

リーダー格がすかさず2発目をお見舞いしようとしますが、春日部は素早く回避。続いて襲いかかる残り2人のパンチも慣れた調子でかわします。が、今度は背後からキックを食らってさすがに怒り心頭。

「しつこいんじゃ、お前らはっ!」

春日部は演じる世良さんと同じく広島出身&大のカープファンという設定で、興奮すると広島弁が飛び出ます。結局は乱闘となり、春日部は矢追二丁目派出所に連行され、そこでドック、ラガーと初対面する事になります。

「3人? へえ~、結構やるじゃない」

どうやら暴走族のメンバーらしい3人を相手に喧嘩して、自身は擦り傷1つ負ってない春日部に感心する素直なラガーと、満面のどや顔を見せる春日部。

「得意そうな顔するなよ。で、喧嘩の原因は何だ」

冷静に尋問するドックに、交番の巡査がいきさつを説明します。

「追突? 免許証持ってるのかね」

「はあ、一応」

「じゃあ一応見せてごらん」

春日部の「一応」という口癖に大雑把な性格が表れてるんだけど、一応持ってる筈の運転免許証をなかなか出そうとしません。

「おい、どうした。お前、まさか無免許じゃないだろうね」

「いや冗談じゃないです、持ってます」

ようやく示された彼の免許証を見て、ドックは一風変わった名前の記述に気づきます。

「ハルヒヘ……イチ」

「ヘイチ?」

「春日部一(かすかべ はじめ)ですよ!」



「いや、だって、ここにハルヒヘイチって」

どうやら警察のコンピュータによる誤読なんだけど、ドックとラガーは爆笑し、交番巡査も含み笑いw 以来、同僚に独自のあだ名をつけるのが好きなドックは、春日部を「ヘイチ」あるいは「イチ」と呼び、それが愛車の通称にも流用されるワケです。

「お前、それより何処へ行こうとしてたんだ?

「……七曲署」

「七曲署? 何しに?」

「……仕事」

「仕事!?」



ここで舞台は七曲署捜査一係室へと移動、春日部がボスに挨拶する場面となります

「申告します! 警視庁・大神島警察署勤務・春日部一、本日付をもって七曲署勤務を命ぜられ、赴任致しました! よろしくお願いしますっ!!」

「……随分でかい声だな」

「はっ、何しろ周りじゅう海ですから、大声出さないと聞こえないもんで。申し訳ありません!」

私は最初、世良さんが『太陽』にキャスティングされたことを知って、もっと斜に構えたキャラクターと演技を想像してたんだけど、意外にも世良さんは超がつく熱血&純情キャラ、そしてド直球の演技で、二枚目を気取る素振りが皆無なんですよね。

「で、拳銃持って来たか?」

「はい!」

ここで春日部はコルト・ローマンMk-III2インチのニュータイプを取り出しますが、グリップを上に突き出す奇妙な持ち方をし、射撃の名手であるゴリさんとボスにツッコまれます。

「なんだ、そりゃ?」

「変わった持ち方だな」

「は、何かとこの方が使い易いものですから」

その持ち方がなぜ彼にとって使い易いのかは、後々のシーンで明かされます。



ここで、山さん以下レギュラー刑事たち全員と、マスコットガールのナーコこと松原直子(友 直子)が春日部に自己紹介。これも第1話以来、10年ぶりに見られる光景です。

「俺は石塚だ。ゴリって呼んでくれ」

「ゴリラですか?」



「わははははっ! ゴリラじゃないよ、ただのゴリだよ!(怒)」

春日部はさらに、若手刑事たちには警察学校を何期に卒業したかを尋ね、38期のドックには「失礼しましたっ、先輩です!」と頭を下げ、40期のジプシーこと原 昌之(三田村邦彦)には「ああ、同期の桜か。よろしく頼む」と慣れ慣れしく対応し、45期のラガーに至っては「よし、頑張れ!」といきなり先輩風を吹かせます。



単なるメンバー紹介の場面にも細かくギャグを入れ、同時に新刑事のキャラクターとその魅力を視聴者にアピールする、脚本&演出の手腕が本当に素晴らしいです。

さて、ボスの指示により、春日部はドックと一緒に七曲署管内一円を、ヘイチ号で視察がてらパトロール。これまでゴリさんが請け負ってきた新人刑事の指導役を、これからはドックが担っていくワケです。

マイカーだと無線連絡が出来ないだろうとドックに突っ込まれ、春日部は警察無線の盗聴ラジオを得意気に披露します。送信は出来ないけど捜査情報や緊急指令はこれで聴けちゃうワケです。

「お前、それ違法じゃないか!」と一応イエローカードを示しながらも「面白えな、これ」って、すぐに受け入れちゃうドックの柔軟さが新時代の『太陽〜』を象徴してます。

で、そのラジオから「東亜銀行矢追支店にて強盗事件発生」との緊急連絡が流れ、ちょうど近くにいる2人はヘイチ号で現場へ急行!



そしてバイクで逃走する犯人を見つけた春日部は、道路交通法無視の荒っぽい運転でドック先輩をヒヤヒヤさせながら、犯人を袋小路へと追い込むのですが……





「あっ、いけね!」

そこは軽自動車1台がギリギリ侵入できる幅の狭い路地で、ドアを開けて車を降りるだけのスペースが無く、何も出来ない二人の刑事を尻目に、犯人はバイクを捨てて悠々と逃走しちゃうのでした。

「バカバカバカバカ!! もう少しアタマ使ったらどうなんだ、お前はっ!!」

いやいや、そう言うドックも七曲署に着任した初日に、全く同じミスをやらかしてましたw

せっかく追い詰めた銀行強盗犯を新入りのドジによって取り逃がした藤堂チームだけど、強奪された800万円の中に新札が含まれていたことが判明し、そのナンバーを手がかりに捜査を開始します。

そして翌日、件の新札が自動車販売店で使用されたことが判り、一括払いで新車を買った田上賢一という若者に容疑が絞られます。コピーされた免許証の顔写真を見て、春日部はまたもや大声を張り上げます。

「あっ、こいつ! あいつだっ!!」



田上は、初出勤の道中で春日部が車を追突させ、乱闘騒ぎになったツッパリ三人組の一人なのでした。

暴走族連中から三人がよくタムロする場所を聞き出した春日部は、レストラン「パークサイド」で田上の仲間二人を見つけます。第1話で犯人(水谷 豊)たちの溜まり場として登場した店も同じ「パークサイド」でした。

しかし二人は、春日部が刑事を名乗っても信じようとしません。警察手帳を見せても「どこのオモチャ屋で買ったんだよ」と鼻で笑われ、怒った春日部はまたもや乱闘開始。駆けつけたゴリさんに叱られるのでした。

「俺もこいつと同じデカだが、信用出来んか?」

ゴリさんに睨まれ、途端にショボンとなるツッパリ二人組ですが、田上の居所は知らないと言います。自分のクルマを持たない田上を、彼らは正式なメンバーとして認めてないのでした。

「ま、見習いみたいなもんですね」

「なんで俺の顔見るんだよ!?」



いちいちカッカする春日部に、田上が現れるまで店の表で張り込むことを命じたゴリさんは、二人組とコーヒーを飲みながら、巧みな尋問で田上の恋人の存在を聞き出すのでした。

一方、表で張り込む春日部は、ネクタイで汗を拭きながらw、ふと広島にいる姉=春日部正子(有吉ひとみ)に想いを巡らせます。





春日部のネクタイは、交番巡査から刑事に昇格したお祝いに正子がプレゼントしてくれた物。それを汗拭きに使っちゃう春日部に悪気は無く、ただ単にガサツなだけ。

「姉ちゃん……俺、頑張るけぇの」

仕事中に感傷に浸ってた春日部は、尋問を終えたゴリさんに呼ばれ、慌てて立ち上がります。



「この通りを五百メートル行った所にラボンヌという喫茶店があるんだ」

「いや、コーヒーだったらこの店でいいじゃないですか」

「その店で田上の恋人が働いてるんだよ」

「恋人ですか? だってアイツまだ未成年じゃないですか!(激怒)」

「未成年だって恋人ぐらいいるさ」

そりゃそうですw 田上の恋人=大島裕子を演じるのは、『太陽にほえろ!』常連ゲストの一人・立枝 歩さん。第1話で水谷さんの恋人を演じた鹿沼えりさんと同じ役どころです。

喫茶「ラボンヌ」でバイト中の裕子を張り込むことになった春日部は、店の向かい側にある名画座でリバイバル上映中の映画『カサブランカ』の看板を見つけ、眼が釘付けになります。つくづく集中力のない男ですw

「ボギー……」

『カサブランカ』の主演スターは、言わずと知れたボギーことハンフリー・ボガード。どうやら春日部は、大の広島カープ・ファンであると同時に熱狂的なボギー・ファン。ポケットからダサい帽子を取りだし、其処に来た目的も忘れてボギーの物真似を始める春日部は、通りがかりの女子高生たちに笑われるのでした。



さて、バイトを終えた裕子は一人で公園へと向かいます。どうやら田上と待ち合わせているようで、春日部はジプシーと合流して様子を伺います。



するとタイミング悪いことにナンパなチンピラたちが裕子に絡み始め、放っておけなくなった春日部はジプシーの制止を振り切り、またもや乱闘をおっ始めます。

すぐ近くまで来ていた田上は、それを見て逃走。またもや春日部の純情・熱血キャラが裏目に出ちゃいました。

しかしピンチを救ってくれた春日部に心を許した裕子は、田上が強盗に走った理由はたぶんクルマが欲しかったからだと打ち明けます。

「バカヤロウ! たかがクルマの為に銀行強盗までやるこたねえだろうがっ!!」

「私に怒ったってしょうがないじゃない!」

「あっ、わりぃ、ごめん」



「……でもね、彼の気持ちも解るような気がするの。だってさ、私たち何にもないんだもん」

「何にもない?」

「そう。田舎から出てきて、安いお給料であくせく働いて、自分をすり減らしていくだけだもん。たまんないわよ」

貧乏でクルマも持てないせいで、暴走族にさえ正式に入れてもらえなかった田上に、春日部はシンパシーを抱き始めます。

「せめて、暴走族の仲間内ぐらいでは一人前の顔がしたかったのよ」

「……俺だって、広島の田舎から出てきたんだよ。一つ間違えば、あんたの彼氏みたいになってたかも知れないな」

「でも、あなたはお巡りさんになったわ」

「いや正直言うとな、俺が警官になったのは白バイやパトカーに乗れると思ったからなんだよ」

「うそ」

「ホントさ。でも間違って刑事になっちゃった」





「ふふ、バカみたい」

この辺りも、拳銃を撃ってみたかった第1話の犯人と、拳銃を持ちたくて刑事になったマカロニとの関係を彷彿させます。



すっかり春日部と打ち解けた裕子は、田上が訪れるかも知れない自分のアパートへと案内しますが、いざ実際にアパート前で裕子を待ってた田上を見つけると、反射的に叫んでしまいます。

「賢ちゃん、逃げてっ!!」

「バカヤロウ、なんちゅうこと言うんじゃお前はっ!!」

広島弁で裕子を怒鳴ってから、今度こそ逃がすまじと田上を追いかける春日部。すると今度は、例の仲間二人組が拳銃を持って田上に襲いかかります。その目的は、田上が銀行で強奪した現金の詰まったバッグ。

「テメエら、それでも田上の仲間かっ!? 汚ねえっ!」





怒った春日部は、田上を追うことも忘れて二人と乱闘を始めますw そして春日部も拳銃を取り出しますが、逆さまに持ってグリップを突き出す例の持ち方で、これじゃ撃つことは出来ません。



そう、春日部にとって拳銃は撃つものではなく、悪党を殴る為の道具なのでした。





ところが乱闘中にチンピラが持ってたブローニングの拳銃が弾き飛ばされ、それを田上が拾ってしまいます。

市民の通報によりゴリさんたちが駆けつけた時には、すでに田上の姿は無く、チンピラ二人に夢中でパンチを浴びせる春日部の、満足そうな姿だけが残ってました。

「バカもんっ! 肝心のホシを取り逃がして、お前それでもデカかっ!?」

ゴリさんに怒鳴られ、春日部はようやく我に返ります。この「お前、それでもデカかっ!?」という台詞も、第1話でマカロニがボスに怒鳴られたシーンの再現でしょう。

それでマカロニはやる気を無くし、刑事を辞めようとしてゴリパンチ第一号を食らうワケだけど、そこは'80年代の今回。あまりウェットにはならず、暴走の方向へと向かう春日部に、一係の重鎮・山さんが言葉のパンチを浴びせる運びとなります。



裕子のアパートに上がり込んだ春日部は、田上の居所を強引に聞き出そうとしますが、威圧的になればなるほど裕子は頑なに口を閉ざす。それでも愚直に詰問を繰り返す春日部を、山さんがたしなめるのでした。

「止めないで下さい。田上を逃がしたのは俺の責任です。どうしても俺がやります!」

「やめろと言ってるんだ!」



「捜査というのは1人で勝手にやるもんじゃない。お前、そんなことも分かってないのか? 表で張り込め」

「…………」

「表で張り込めと言ってるんだ」

「……はい、命令には従います。でも、最後の行動だけは自分で決めます。誰が何と言おうと、俺の人生ですから」



その言葉どおり、翌朝、春日部はせっかく応援に駆けつけたドックを置き去りにして、田上に呼び出された裕子を一人で尾行します。

裕子がタクシーを拾って向かった先は、銃撃戦でよく使われるヒューム管工場。ヘイチ号でついて来た春日部は、そこで拳銃を持った田上と鉢合わせします。





田上は震えながらトリガーを引きます。これだけの至近距離なら、いくら相手が射撃の素人でも春日部は無事じゃ済まなかった筈ですが、運良く田上の拳銃は弾切れでした。



役に立たなくなった拳銃を春日部に投げつけ、田上はなおも逃走します。それを追って春日部が走り出した瞬間に流れるのは、あの名曲中の名曲「ジーパン刑事のテーマ」!



別名「青春のテーマ」で、いくら時代が変わってもこの曲が流れると『太陽にほえろ!』らしさが全開になります。

ドックやラガー、ましてやジプシーにこの曲は似合わないけど、春日部=ボギーだと違和感がありません。この瞬間、世良さんがいよいよ七曲署の一員として、我々視聴者に認知されたワケです。



さあ、歌のステージじゃ華麗すぎるアクションを見せて来た世良さんが、『太陽〜』では一体どんな立ち回りを見せてくれるのか?

さぞやスタイリッシュなアクションが見られるかと思いきや、春日部刑事が披露したのはなんと、ただひたすら田上の脚にしがみつくというw、スタイリッシュのスの字も無いぶざまな姿。





だけど、その格好悪さにこそ、もう何があっても絶対に逃がさない!っていう春日部の必死な想いと、この役に全身全霊で取り組む世良さんの本気が感じられます。

そしてこれもまた、マカロニ刑事へのオマージュなんですよね。第2話『時限爆弾 街に消える』の中盤でショーケンさんが全く同じことをやってました。

ジーパン(松田優作)やスコッチ(沖 雅也)の華麗なるアクション、ゴリさんやテキサス(勝野 洋)のダイナミックなアクションも無論すばらしいけど、土足で顔面を踏まれながらも愚直に食らいつく、この究極に泥臭い立ち回りこそが青春アクションドラマ『太陽にほえろ!』の原点であり、真骨頂なんだと思います。





遂に田上の腕に手錠を打ち込んだ春日部は、離れた場所から山さん、ゴリさん、ドック、ラガーがずっと見ていたことに気づきます。

「そりゃ無いですよ、俺一人しゃかりきになって……みんな高みの見物ですか」

不満そうな春日部に、ゴリさんが笑顔で言います。

「そう思うか? 山さん、ドック、ラガー、みんなハラハラしどおしだよ」

そう、加勢したいのはヤマヤマでも、新人刑事を成長させるためあえて手を出さないのも、七曲署藤堂チームの伝統と言えます。そこには「お手並み拝見」の意も含まれるかと思いますが、春日部のスッポン戦法は確実に先輩たちのハートを掴んだことでしょう。



「……感激ですよ」

「お前の人生は確かにお前のものだ。だがな、人間一人では生きて行けないんだ。解るか?」

「はい」



「裕子……」

春日部と同じく泥まみれの顔で、田上はドックの横にいる裕子を睨みますが、春日部がすかさずフォローを入れます。

「彼女はな、最後までお前を庇おうとしたんだよ。それだけは忘れるな」



さて後日、春日部は中盤で見せたダサいのよりちょっとマシな帽子を被って、あらためて捜査一係室に出勤します。

ちなみに世良さんの帽子姿が見られるのは、この登場編オンリーワン。前任のロッキーも最初は帽子を被るキャラだったけど、全力疾走シーンがやたら多い『太陽〜』では(すぐ脱げそうになって)邪魔にしかならず、殉職編のみ例外として被らなくなってました。

それはともかく、なぜ春日部がイマイチ似合わない帽子を被って来たのか、一係の同僚たちには理解できません。

「分かりませんか? ハンフリー・ボガードですよ。今日から俺のことをボガー……いや、ボギーって呼んで下さい」

新人刑事のニックネームは伝統的に先輩刑事たちが決めるもんだけど、ドック以降は自ら名乗るパターンも増えて来ました。

ドックは着任早々「ドックって呼んでくれよ」なんて、普通は言わんやろ~な台詞でやや違和感があったけど、春日部の場合は藤堂チームがあだ名で呼び合ってるのを数日間見てきた上でなので、まあ自然な流れかと思います。

けど、本人が提案した「ボギー」というあだ名に、同僚たちは全員爆笑w



「ボガードっていうよりアボカドじゃねえか?」

そう言うドックはともかく、本人としては不本意なあだ名であろうゴリさんやジプシーからすれば、ボギーの名は格好良すぎて納得いきません。

ところがボスは、春日部の希望をあっさり認めちゃいます。

「まぁいいだろ。お前、今日からボギーだ」

「さすがボス! 有難うございます!」

「冗談じゃないですよ、こんなヤツのどこがボギーなんですか!」

「慌てるな。同じボギーでもな、お前のはゴルフのボギーだ」

「は?」

「なるほど、ゴルフのボギーというのはチョンボして1つ多いヤツですよ」

「パーですか?」

「いやいや、もひとつ駄目なボギー」

ここで再び全員大爆笑w





“ゴルフのボギー”は慌てて抗議しますが、もちろんボスは聞く耳を持ちません。

「文句言うんだったらお前、チョンボにする。ん?」

そう言ってボスは、ボギーの帽子を取り上げます。

「ああっ、ボス!」

それを目深に被ってポーズを決めたボスは、日活時代の盟友=宍戸錠にソックリなのでした。



PS. このレビューは2018年12月に3回に分けてアップした記事を短縮&再構成したものです。
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「七曲署捜査一係’82」ー4

2025-04-23 17:53:29 | 刑事ドラマ'80年代
 
#514『ドックの苦手』では武装強盗団を追うドック(神田正輝)&ジプシー(三田村邦彦)のフォーメーション射撃が見られました。





こういうシーンをもっともっと私は観たかったです!

このときジプシーはちゃんと愛銃コルト・パイソンを使用してますが、たまに同じエピソード内でも違う機種(コルト・ローマン)をシレッと使ったりする。



登場編でも同じ現象が見られ、私は「試射でローマンがしっくり来なかったからパイソンに持ち替えたんだろう」と解釈しましたが、どうやら違うみたい。

パイソンもローマンも両方ジプシーの愛銃であり、彼は常時二つのリボルバーを携帯する「二丁拳銃の使い手」だと考えれば全ての辻褄が合う。つまり西部署の鳩村(舘ひろし)や港署の鷹山(舘ひろし)と同じです。

実際のところは小道具係の単なるミスか、あるいはガンマニアの眼など無視した大雑把な演出なんでしょうけど。



#515『生いたち』はそんなジプシー屈指のアクション編。大企業のエリート社員からスーパーの金庫荒らしにまで転落した男=内村(剛たつひと)は、ジプシーの高校時代のクラスメイトだった!

当時から自分の損得も考えずに弱者の味方をする“正義のヒーロー”だったジプシーに、なぜか激しく嫉妬していた内村は、今でもヒーローであり続けるジプシーと惨めな自分とのギャップに怒りを爆発させ、幼児誘拐という最も卑劣な手段で対決を挑みます。


「ジプシー、振り向いてみろ」




「あ、ナーコの……」


「……私がなにか?」


「いや…………」

そう簡単にナーコ(友 直子)のおっぱいが成長しないのと同じで、内村の卑屈な性格も高校時代からちっとも変わってない。山さん(露口 茂)はそう言いたかったに違いありません。

まだ世の中が“挫折の時代”だった初期の『太陽にほえろ!』ならともかく、みんなが浮かれてる’80年代において正義が悪に屈することは、殉職編のみ例外としてほぼあり得ません。







人質を盾にしてジプシーをさんざんいたぶった内村だけど、小者はしょせん小者。あっという間に形勢を逆転され、みっともない姿を晒します。





「どうした? 死んでもよかったんじゃないのか? 望みどおりにしてやる。騒ぐな」

「わ、わかったよぅ! もう許じでぐれえええ〜っ!!」



完膚なきまでの一方的ヒーロー圧勝! ニヒル&クレイジーなジプシーが久々に見られて当時の私は狂喜乱舞したけど、人生経験を積んだ今は内村が気の毒に思えてなりませんw



一方、勝利したジプシーも決して後味は良くないというラストシーン。単なる勧善懲悪で終わらなかったのはグッドだけど、このときのボスの台詞が「育ててくれたお袋さんのいい供養になったな」。

容疑者がジプシーのクラスメイトってことで、捜査過程でジプシーの生い立ち(両親を亡くして助成金目当ての義母に引き取られた)も明かされ、それがサイドストーリーになってたワケだけど、内村をやっつけることが亡くなった義母の供養になるっていうのはムリを感じるし、テーマが分散したようにも思う。ここは一言「ご苦労だったな」で良かったのでは?





吉野巡査(横谷雄二)が少ない出番ながらとても良い味を出した#517『落書き』は、小心者の男=浦山(下塚 誠)がストレス発散のために公衆トイレ等に書き殴った殺人指令が、見ず知らずの何者かに実行されてしまうという、後にやって来るインターネット社会の歪みをまるで予言したようなストーリー。奇しくも、パソコンが初めて『太陽にほえろ!』に登場したのもこのエピソード。

主役の山さんが浦山に自白を迫るシーンもまるで、正義を気取って誹謗中傷を繰り返す昨今のネット民たちに向かって言ってるみたい。

「証拠はそのお前だっ!!」



「何もやってない人間がなぜそんなに怯える? 浦山、もうそんなことは止めるんだ。落書きの中でしか本音を吐けない、楽しめない。そんな暮らしは止めるんだ」



「父親はお前を叱ってばかりいたかも知れん。イジケたお前は誰にも好かれなかったかも知れん。だがな、浦山。お前は仕事熱心だし、落書きを除けば何一つ間違ったことはしていない。もっと胸を張って生きたらどうなんだ? 落書きなど書かずに、腹が立ったら堂々と怒りをぶつけたらどうなんだ?」

つまり、時代は変わっても人間の本質は変わらない。いや、ネット社会はそこに集団心理も加わるから余計にタチが悪い。実際には殺さなくとも社会的にターゲットを抹殺する“指殺人”の恐ろしさ。

落書きが殺人ゲームを引き起こすというアイデアは、おそらく脚本を担当された四十物光男さん(小川英さんと共作)のものと思われますが、先見の明が凄いです。





#518『忘れていたもの』は殉職編を除くロッキー(木之元 亮)最後の主演作。果たしてロッキーは一体、なにを忘れていたのか?



愛妻=令子さん(長谷直美)のやけに色っぽい部屋着姿を見て「はっ、久々にチョメチョメしないと!」って気づいたのか?




ジプシーこそ自分が一匹狼であることを忘れているんじゃないのか?











忘れたくても忘れられないトラウマを植え付けられたのは、マグナムを持った髭面の大男に追い回され、袋叩きにされた犯人でしょう。


なにがそんなに可笑しいっ!?

そもそも、自分はなぜ刑事になろうと思ったのか? その原点に立ち還るため、休暇をとったロッキーはカナダへと旅立ち、夢だったロッキー山脈登頂を目指すのでした。



番組スタート10周年を記念するカナダロケ編。#519『岩城刑事 ロッキーにて殉職』で地元の人々とふれ合い、久々に大自然と向き合ったロッキーは、大切な生命たちを守りたいという初心を思い出し、刑事の仕事を続ける意志を確固たるものにします。もちろん、それはいわゆる死亡フラグ。

なんと、東京で起きた殺人事件が海外旅行先まで追って来るという、昭和ドラマの恐ろしさ!





珍しく長さん(下川辰平)が陣頭指揮を執るのも何かの伏線です。







犯人=杜丘(小野進也)がロッキー山脈へ逃げ込んだと悟ったロッキーは、登山客からちょっと聞き込んだだけで居場所を予想し、かなりの標高までノンストップで駆け上がります。そして……







恋人である光子(高瀬春奈)を盾にして逃げようとするド外道の杜丘が、一体どこで調達したのかダイナマイトに火をつけ、放り投げた! ここで爆発したら動物たちの生命が、ロッキー山脈の自然が破壊されてしまう!

思わず駆け出したロッキー刑事は、ど外道野郎の発した弾丸を腹に受け、絶景のなかで絶命するのでした。



長さんからの国際電話を受け、氷像と化するボス(石原裕次郎)。



そりゃそうでしょう。長年の夢を叶えに旅立った部下を捜査に巻き込んだ挙げ句、死なせてしまったんだから。

そして、いきなり未亡人にされてしまった二児の母=令子さんもまた氷像化します。



なんという残酷な番組! なんという呪われた警察署! (だから殉職編はレビューしたくないんだけど、なにせ今回は10周年記念作にしてカナダ編)

しかし令子さん=後のマミー刑事はさすがに逞しい。日も経たずして職場(七曲署交通課)に復帰し、夫の遺骨をロッキー山脈で風葬して欲しいとボスに懇願するのでした。



つづく#520『野崎刑事 カナダにて最後の激走』はロッキーの仇討ち編。もはや解説は不要、刑事ドラマで最も燃えるシチュエーションです。








再びガンマニアの視点からツッコむと、ドックの使用拳銃がいつものM59(2列弾倉)ではなくM39(1列弾倉)だったりします。M59の調子が悪かった?

それはともかく、遅れて応援に駆けつけたゴリさん(竜 雷太)の頼もしさたるや! 外国でも容赦なし!







やっぱりこの人がいてこその『太陽にほえろ!』だとつくづく思うんだけど……

そして、恋人の脚を撃ってまで逃げようとする杜丘のド外道ぶりたるや!





クライマックスはカルガリーの都市部、スタンピード(ロデオのお祭り)パレードを背景に激走するニッポンの刑事さんたち!







本気で怒らせたら誰が一番怖いかを、長年の番組ファンはよく知ってます。小柄な体格&温厚な性格からは想像もつかない、長さんの狂気を孕んだ眼と天井知らずの戦闘力!







番組史上トップ5には入りそうな凶悪犯が、ついに逮捕されました。

いや〜、これは見応えあり! 殉職編と仇討ち編、さらに退職編まで兼ねてるとはいえ、全ての地方ロケ&海外ロケ編の中でもベストのクオリティーかと思います。

そう、この回は10年に渡って活躍して来た長さんの退場編。ロッキーを死なせてしまった責任を取るのではなく、ロッキーみたいに優秀な刑事の卵を育てるべく、以前から受けていた警察学校教官のスカウトに応じる長さんなのでした。

積み重ねて来た年数の重みが、いやが上にも涙を誘います。特に山さんとの挨拶シーン。





「楽しみにしてるよ、長さん。長さんが育てた刑事と一緒に、働くときをな」

そして翌年に登場するのが長さんの愛弟子=ブルース刑事(又野誠治)ってワケです。その時のみならず、長さんは番組の節目節目にゲスト出演するばかりか、なんと後番組『太陽にほえろ!PART2』でレギュラー復帰しちゃう!

さらに’90年代後半の復活スペシャル編=舘ひろし氏をボス役に迎えた『七曲署捜査一係』でも旧シリーズから唯ひとり、ちょっとだけ顔を出してくれます。(『太陽にほえろ!2001』のシンコ、あれは別人でしょう)







しかしこのカナダロケ編、ミスターど外道こと杜丘の悪辣ぶりも凄いけど、それ以上に番組ファンの反感を買ったのが、脚を撃たれてもなお杜丘を庇い続ける恋人=光子でしょう。





何より、杜丘がロッキーを射殺した瞬間を間近で目撃しながら尚、ですから共感しようがありません。その罰として、演じた高瀬春奈さんの素晴らしいセクシーショットを載せておきます。















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「七曲署捜査一係’82」―3

2025-03-11 16:40:59 | 刑事ドラマ'80年代

#508『ドックと天使』は、持ち込んだシナリオが採用されて『太陽にほえろ!』後期を支えるライターの1人となり、やがて『あぶない刑事』『ベイシティ刑事』『あいつがトラブル』など日本のアクションドラマに欠かせない存在にもなられる大川俊道さんの記念すべき脚本家デビュー作。





自由奔放な少女にヒーローたちが振り回される典型的“大川節”のアクションコメディーだけど、少女役の代ゆかりさんに「天使」と呼びたくなるほどの華を感じないのがまあ、いつも通りの『太陽にほえろ!』ではあります。











その替わりってワケじゃないでしょうが、普段より気合いの入ったカーチェイスと、スポーツ万能のドック(神田正輝)が水上スキーでヒロインのピンチに駆けつけるという見せ場が用意されてます。

しかしその水上スキーがいまいち見せ場として機能してない(と私は感じる)。なにせモーターボートに引っ張られて移動するだけで、実際にやればハードなのか知らないけど画的には迫力ありません。



ガンマニアとして知られる大川さんのことだから、本来はドックにM59を撃たせまくりたかったろうに、「この回に発砲は無用!」とばかりに師匠(小川英さん)の洗礼をさっそく受けられたのかも知れません。




ラガー(渡辺 徹)が愛用するのは世界で最も有名なリボルバーの1つ=コルト・パイソン357マグナムだけど、これもまた発砲する機会は滅多にありません。



#510『ラガーの大追跡』は、とある目的のために誘拐された人気アイドル歌手=立花茜(岩田法子)を救うべく、彼女のファンであるラガーが奔走するストーリー。

立花茜役には本物のアイドル歌手を起用するぐらいじゃないと説得力が無かろうに、『太陽にほえろ!』はわざと華のない人を選んでるとしか思えません。



演じた岩田法子さんは劇団ひまわりから抜擢された生粋の役者さん。“喉を手術したばかりで声が出せない”という設定、すなわち細やかな感情表現が必要だと生真面目な『太陽〜』制作陣は考えたんだろうけど、むしろセリフを言わなくていいならルックス最優先でええやん!って私なんかは思っちゃう。





しかし今回は、誘拐犯役の名優=西村晃さんがその穴を充分すぎるほど埋めて下さいました。オートマチック拳銃を構えるとまるで『007』シリーズの敵ボスみたいにキマる!






西村さん扮する誘拐犯は元軍人で、南部十四年式ピストルを大切に保管してたのに、経年劣化で不発に終わるというオチがつきます。MGCモデルガンのルガーP08を南部十四年式に見立てたプロップかと思いきや、ちゃんと南部してますね。(東京マルイかLSのプラモデル?)


山中湖ロケで富士山が綺麗に映っており、目前まで迫ってるカナダロケを彷彿させます。




ロッキー(木之元 亮)とジプシー(三田村邦彦)の珍しいツーショットも。





令子さん(長谷直美)と毎晩チョメチョメしてつくった双子の赤ちゃんがすくすく育ってるなか、生後10ヶ月の赤ちゃんが誘拐される事件が発生し、#511『爆発!ロッキー刑事』となります。







今回の誘拐犯役は『太陽〜』の…というより刑事ドラマの常連ゲスト、伊佐山ひろ子さん。哀しみを秘めた平凡な女の役がホントによく似合う女優さんです。








焼身心中という凄まじい最期を遂げようとする伊佐山さんを、レスキュー隊出身のロッキーが救おうとして窓から突入、うっかり爆発しちゃいます。




#512『婚約者の死』では、晴子さん(水沢アキ)との結婚を間近に控えるゴリさん(竜 雷太)が、本庁への栄転を間近に控えながら婚約者を殺され、復讐に走ろうとする後輩刑事(三ツ木清隆)の代わりに爆発します。










晴子さんのおっぱいに全神経を集中させるゴリさん。






「すみません、調子に乗りました。」




ボス(石原裕次郎)と西山署長(平田昭彦)が
、どう見ても格下にしか見えない本庁の偉いさん(『俺たちの勲章』で優作さん&雅俊さんのイヤミな上司を演じた早川保さん)から密命を受ける#513『真相は……?』。


つくづく二枚目なミスター東宝、平田昭彦さん。


その密命とは、敏腕として名高い捜査二課の高松警部(踊らない『大捜査線』で杉サマの頼れる上司を演じた山内明さん)から、その身に降りかかった殺人容疑の真相を24時間以内に聞き出すこと。

頑として口を割らない高松警部とボスによる心理戦と……



「時間が無いから」という大義名分のもと証人(勤め先は暴力団)に体罰を与えまくる藤堂チームの猛者たち。







ロケ撮影は難しい裕次郎さんの体調を逆手にとった、静と動のコントラストが光る一篇。真相は愛する一人娘(香野麻里)をレイプされた高松警部の殺人“未遂”で、もちろんボクサーあがりの真犯人は猛者たちのサンドバッグとなります。



裕次郎さんの出演場面が限定されるため、ボス編はおのずとチーム編になる。お陰で本ブログの「七曲署捜査一係」シリーズにピッタリな場面が満載です。








こうした何気ない場面でも、ボスと山さん(露口 茂)の“立ち姿”のカッコよさに惚れ惚れします。刑事ドラマは立ち姿と走る姿が全て!と言っても過言じゃない。つくづくそう思います。



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「七曲署捜査一係’82」―2

2025-02-28 10:52:32 | 刑事ドラマ'80年代
歯医者さんに行ったら「経年劣化で歯にヒビが入ってます」と言われ、メガネ屋さんに行ったら「老眼と乱視がかなり進んでますね」と言われました。

さて、もはや年に一度だけの行事となりつつある『太陽にほえろ!』レビュー。なにかと忙しくなってしまったせいもあるし、愛が深いだけに軽く扱えないせいもあります。

しかしこのままじゃ先に進めないので、もうちょい軽く扱うことにします。……って、過去にも何度かそんなこと書いてますが。

ともかく自分にとって重要な回だけしっかりレビューし、それ以外は画像中心の「七曲署捜査一係」シリーズ(言わばネット版“太陽にほえろ!名場面集”)でサラッとご紹介し、どんどん先へ進めたいと思ってます。


1982年4月に放映された#502『癖』はドック(神田正輝)とロッキー(木之元 亮)の名を語った結婚詐欺師(阿藤 快)の正体を暴く地味なストーリーだけど、主役コンビの軽妙な掛け合いと児島美ゆきさんのオッパイが光る逸品。


児島さんに加えて新海百合子さん、藍とも子さん等、阿藤さんに騙される被害者たちのキャスティングがまた豪華!

殺人や強盗といった“THE刑事ドラマ”なネタには目もくれず、身近で起こりうる事件を女性ならではの視点で描く脚本家=亜槍文代さん“面目躍如”の作品でもあります。





#503『山さんとラガー』より。ゲストは常連の辻萬長さん。やっぱりボス(石原裕次郎)と山さん(露口 茂)のツーショットがたまらん!ってことで載せたけどごめんなさい、内容はよく憶えてません。




#504話『バイオレンス』は定期的にやってくるゴリさん(竜 雷太)のボディーアクション編で、今回の対戦相手は『ワイルド7』の小野進也さん。竜さん以上に殺陣が上手い人じゃないと盛り上がりませんから。




これまた常連ゲストの立枝歩さんと松本留美さんを迎えた#505『ジプシーの涙』はタイトル通り、世間から孤立した姉妹の姿がジプシー(三田村邦彦)の暗い少年時代とオーバーラップする哀しいストーリーでありつつ、後の『相棒』を彷彿させる二重三重のどんでん返しも用意されたミステリーの力作。





永島暎子&谷隼人という豪華布陣による#507『この街で――』は、アイドル街道まっしぐらのラガー(渡辺 徹)を全面フィーチャーしたハートブレイク編。



この回は若手が全員、やけにラフな衣装でした。




「ミワカントリオ」の活躍。


なぜか正座する長さん(下川辰平)。





「友 直子 in 太陽にほえろ!’82」―2。

……つづく。
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『さよならも言わずに消えた!』

2024-03-27 11:22:19 | 刑事ドラマ'80年代

1981年10月20日に日本テレビ系列で放映された『火曜サスペンス劇場』の第4作『さよならも言わずに消えた!』(脚本=清水邦夫/監督=石橋 冠) が先日、BSのジャパネットチャンネルで放映されました。

『太陽にほえろ!』フリークの1人としては、その翌年に登場する“ボギー刑事”のプロトタイプみたいなキャラを世良公則さんが演じてる点で見逃せない作品。

世良さんは’78年にロックバンド“世良公則&ツイスト”として大映ドラマ『明日の刑事』#27に特別出演はされてるけど、俳優・世良公則としての本格始動は本作から。実際、今回の刑事役が『太陽〜』レギュラー出演に繋がったとご本人やプロデューサー陣も証言されてます。

とはいえ主役は世良さんじゃなく、桃井かおりさんと原田芳雄さん。比較的マイナーな映画での共演が多いお二人を『火サス』で観られる点でも面白いし、前回レビューした『五番目の刑事』の主人公がそのまま中堅になったみたいな原田さんのキャラクターも大きな見どころ。

ちなみに原作はポーラ・ゴズリングのスリラー小説『逃げるアヒル』で、これより5年後にハリウッドでもシルヴェスター・スタローン先生が『コブラ』として映画化されており、それと比べてみるのもまた一興。(言うまでもなく片や『火サス』、片やスタローンですから作風は180度違います)



桃井さんが演じるのは中学校のごく平凡な理科教師・中沢みずえ。ところがある男が訪ねて来てから僅か5日間で、彼女の人生はまったく非凡なものに変わっちゃう。


「コーヒー牛乳飲む? コーヒー牛乳」

それが原田さん演じる“西新宿署”の乾刑事。(『五番目の刑事』は東新宿署でした)

函館でみずえの弟=中沢和夫らしき焼死体が発見されたので「北海道まで同行して遺体を確認して欲しい」というのが乾刑事の用件。コーヒー牛乳はまったく関係ありません。(牛乳が北海道産だった可能性は有り)


道警で捜査本部を指揮し、黒幕の匂いをプンプンさせてる新田警部に扮したのは、2年後に『太陽にほえろ!スペシャル』でも世良さんと共演することになる高橋幸治さん。


その部下であるベテラン刑事役に『ジャングル』の山谷初男さん。


新田警部とは旧知の仲で、中沢和夫が勤めてた大企業・幌平開発の札幌支社長である木村役には『代表取締役刑事』の高松英郎さん。

もうお察しでしょうから先に書きますが、その幌平開発の大規模な汚職の証拠を、中沢和夫が握っていた。東京でも支社長が不自然な自殺をしており、それを捜査してる乾刑事が和夫の行方を追ってたワケです。

ところが、どうやら焼死体が和夫じゃないことを密かに知ってる姉・みずえが命を狙われちゃう。

乾刑事は何故みずえが狙われるのか知らないまま、たった1人で彼女を護らなきゃいけなくなる。ぶっきらぼうな刑事・乾と謎多き女・みずえが、さんざん対立しながら函館→長万部→島内→歌別へと舞台を移し、行動を共にするうち恋愛感情とはまた違う絆を育んでいく。


『コブラ』はスタローン刑事がヒロイン(当時の妻=ブリジット・ニールセン)とすぐチョメチョメな感じになるし、事件もそんな複雑な話じゃなく(ただ彼女が殺人現場を目撃して狙われるだけ)、ひたすらドンパチを見せ場とする単純かつ荒唐無稽な(つまり私向けの)内容でした。

で、ライフルで狙ってくる敵に対抗すべく、乾が新田警部に「頭はパーでもいいから腕の立つのをよこして下さい」と要望し、派遣されて来たのがボギーのプロトタイプこと、梅木刑事。



若い! おぼこい! ボギーより真面目で素直なキャラ設定だから、あえて若造っぽく演じられたのか、あるいはオンエアを観た世良さんが「刑事にしちゃガキっぽいな」と反省し、『太陽〜』や『ベイシティ刑事』では眼つきを鋭くするよう意識されたのか?



そうして島内パートから梅木刑事も加わり、ロードムービーとしての面白さも増して来ます。個人的にはやはり、後の東映Vシネマ第1弾『クライムハンター』(主役が世良さんで、その上司役が原田さん) の前日譚を思わせる2人の関係性にワクワクしちゃいます。



ぶっきらぼうな乾と違って物腰柔らな梅木に、弟の面影を見たみずえは彼が気に入ったご様子。そこには俗に言う「死亡フラグ」の匂いも漂ってます。



そして決戦の地、歌別へ。まさに『クライムハンター』を彷彿させる場面。



世良さんの銃器の扱い方はまだ『クライムハンター』レベルには程遠く、のちに『太陽〜』で神田正輝さんと共演してガンマニアの世界に引きずり込まれ、そこから腕を磨かれたのでは?っていう私の想像もまんざらハズレじゃなさそうです。



そして此処でようやくアホな弟=和夫が登場。扮したのは『二人の事件簿』の高岡健二さん。確かに世良さんと雰囲気が似てると言えば似てます。



この時点ではもう、和夫が「俺が死んだら姉が情報(汚職の証拠)を警察に伝える」と敵に牽制をかけてた事実もバレてます。つまり、自分が生き延びる為と、敵から口止め料をふんだくる為に、実際は何も知らない姉を(保険として)和夫は利用したワケです。

前回レビューした『五番目の刑事』#14 に出てくる義弟を超えた“アホ中のアホ”だけど、すっかり寂れた炭鉱の町(国に切り捨てられた地方都市の象徴)で生まれ育った姉弟の不遇と、そんな町を復興させたいが為に汚職に手を染めた幌平開発の黒幕たちっていう、社会問題が裏テーマになってる深さが『コブラ』とは180度違う最大のポイント。

当然ながら結末も、筋肉と銃弾で並居る敵を全滅させ、美女と結ばれてオールハッピーな典型的’80年代ハリウッドアクション(私は大好きだけど)とは真逆にならざるを得ません。



まずは梅木刑事が和夫を庇って凶弾に倒れ……



結局は和夫も殺られて、乾刑事の怒り爆発!



だけどスタローン先生みたいにバリバリドッカーン!と並居る敵を皆殺しとはいかず、やむなく新田警部に応援を要請することに。



けれどそれは、黒幕が誰であるかを確かめる為のトラップでもある。行く先々で敵に襲われ、さすがに乾も内通者が道警内にいることを察してました。



現れたのはやっぱりこの人。高橋幸治さん独特の棒読みっぽい台詞回しが、冷血なラスボス役によくハマってます。



最終的には乾刑事もあっけなく爆死!

そして弟に似た梅木刑事の遺したライフルを、みずえが構えます。



が、5日前まで平凡な理科教師だった彼女にスタローンの真似事が出来る筈もなく、バッドエンドが確定したところで突き放すようにドラマは幕を閉じ、岩崎宏美さんの大ヒット主題歌『聖母(マドンナ)たちのララバイ』が流れるのでした。

’70年代の“挫折の美学”を彷彿させる内容で、本放映(’81年)当時の浮かれた空気とは合ってないように思うけど、創り手のターゲットはきっと’60〜’70年代に青春を過ごした大人世代で、だからこその“桃井かおり&原田芳雄”だったんでしょう。

当時まだガキンチョだった私にはピンと来なかっただろうけど、渋いキャスティングといい緩めのテンポといい、今の私にはとても居心地のよい世界観でした。


 

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