ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『トクメイ!/警視庁 特別会計係』2023

2023-10-30 20:35:13 | 刑事ドラマ HISTORY

2023年秋シーズン、フジテレビ系列の月曜夜10時枠でスタートした、関西テレビ放送&共同テレビの制作によるコメディータッチの警察ドラマ。

緊縮財政の一環として所轄署の“経費削減”の特命を背負い、本庁から専任担当者として万町署・刑事課強行犯係に派遣されてきた“特別会計係”の警察官・一 円(はじめ まどか)を“1000年に1人の美少女”こと橋本環奈さんが演じておられます。

確かにまるでCGキャラクターみたいに整いすぎたお顔立ちで、人間味が感じられないから「この人は売れないだろう」と私は思ってたのに、持ち前のガッツと“コミュ力”ですっかり売れっ子になられました。

今回は融通が利かないガッチガチの“数字マニア”って設定だから、もしかするとCGっぽいお顔立ちがかえって活かせるハマり役になるかも?

そんな一円に振り回される昭和気質のバイオレンス刑事=湯川班長に、またアンタかよ!?ってまた書かなきゃいけない、沢村一樹。

バツイチ・マミーにして湯川班の紅一点・藤堂刑事に、たぶん連ドラにおける刑事役は初めての、松本まりか。

同じく湯川班の中西刑事に徳重 聡、大竹刑事にJP、月村刑事に前田拳太郎。

会計・人事・総務を担当する万町署の金庫番=警務課の須賀課長に、佐藤二朗。

同じく警務課でボインぼよよん担当の門倉婦警に、結城モエ。

公に出来ない金銭問題を抱えてそうな副署長の中塚に、鶴見辰吾。



あらゆる業界で“経費削減”が重要視されてる今、経理係の目線から事件捜査を描くっていう発想が新鮮で、これは面白くなるかも!って、最初はちょっとワクワクしたんだけど……

観てるうちに気づいちゃいました。これって、多部未華子さんが3年前に主演されたNHKのスマッシュヒット作『これは経費で落ちません!』の警察バージョンやんって。

パクリとは言わないけど……いや、むしろ面白くなるならどんどんパクればいいと思うけど、私はあの作品に“ドはまり”しちゃったもんで、どうしても比べてしまう。近年じゃ指折りの傑作だっただけにハードルも自ずと上がっちゃう。

最初の2話を観た限りだと、これは無謀なチャレンジだったと言わざるを得ません。あらゆる意味で格が違う。面白いんだけど、あの面白さには到底及ばない。

だから私としては、本作の新しさよりもむしろ、古き良き時代の刑事ドラマのパロディーとして楽しみたいところ。

ちょっと前に“マジンガーZの格納プールを実際に造るとしたら予算はこんな額になる”っていうコメディー映画があったけど、それと一緒ですよね。昭和の刑事ドラマみたいな捜査を実際にやったら警察が破産しちゃうよっていうw


転がっていく一円玉を追って刑事たちが“走る”オープニングのタイトルバックも、いにしえの刑事ドラマや大ヒット映画のパロディーで構成されてるし。

それが毎回、演じるキャストが入れ替わってたりなんかして、ここまで凝ったOPタイトルも近年の連ドラじゃ珍しく、それだけで私は応援したくなっちゃいます。

一円と湯川班長の対立も、例えば『太陽にほえろ!』でマイコン刑事が登場した時のことを連想させたりするんです。

データを最重視して捜査するマイコンも、金額ですべてを判定する一円も、“勘”や“足”で捜査する昔気質の刑事たちには宇宙人みたいに見えてしまう。

経費なんぞ気にしながら捜査してられるか!?ってハイパー激怒する湯川班長に、一円は言います。

「湯川さんは正しいと思います。しかし、お金が無ければ捜査は出来ません。事件が起きても、それを解決すべき警察がいない。そんな恐ろしい未来がきてもいいんですか?」

それはまさに今、あらゆる業界が抱えてるジレンマですよね。お金が無いから人を雇えない、人手が足りないから業務が回らない、そしてまた赤字がかさむっていう負の連鎖。まるで悪夢です。

けど、意気消沈する一円に金庫番の須賀課長が言ったセリフには、私もちょっと励まされました。

「一番の経費削減は、事件の早期解決。キミだって警察官だろ?」



確かに、沈んでても仕方がない。自分が動くことでほんの僅かでも光が見えるなら、とにかくやるっきゃない。

『これは経費で落ちません!』とは比較にならないけど、これも観て損はしないドラマと言えそうです。

ただし! 毎回ラストシーンでオマケみたいに挿入される、主人公の“秘密”と“裏切り”を匂わせる“取ってつけたような謎”さえ無ければ!っていう条件付きで。



そこはコメディーですから他愛ないオチがつくんだろうけど、ホントにもう心底ウンザリです。たぶん、創ってる人たちも本音じゃ「こういうの、もうやめません?」って思ってるはず。

なのに、やめるにやめられない何らかの事情、忖度ってヤツがあるんでしょう。ついにジャニーズがあんな末路になっても、テレビ業界は何ら変わりそうにありません。

セクシーショットはもちろん橋本環奈さんと松本まりかさんです。


 

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『相棒 season22』#01~#02

2023-10-28 21:21:15 | 刑事ドラマ2000年~

雑誌『昭和40年男』最新号の“バディ”特集をブログで取り上げたのをキッカケに、初めて『傷だらけの天使』をレビューし、その流れから『俺たちの勲章』を起点とするバディスタイルの刑事ドラマを連続レビューして来ました。

その歴史に刻まれた作品たちを並べてみると、けっこう傑作が多いことに気づかされます。


 

バディ物に限定せず「ダブル主演」と謳われた作品も挙げていくとキリが無くなっちゃう。たとえば2011年にテレビ朝日の深夜枠で放映された、あの『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』。



黒木メイサ&多部未華子の組み合わせによる“女性版『俺たちの勲章』”ってな触れ込みにどれだけ期待したことか!

ところが蓋を開けてみたら二人が同じ部署にいるのは最初の2話だけで、あとは最終話までほとんど顔を合わさないという意表を突きまくった構成。それを抜きにしてもツッコミどころ満載のカルト作で、今となってはとても懐かしい!

それはともかくとして、フジテレビの“月9”枠で『東京DOGS』が放映されたのが2009年ですから、’80年代に『あきれた刑事』と『ベイシティ刑事』がコケて以来、このジャンルにはけっこう長い“冬の時代”があったワケです。

そんな中で突如現れ、2002年以降「刑事ドラマの代名詞」の座を独占し続けてるのが『相棒』というテレビ朝日水曜21時枠のお化け番組。今秋、いよいよ“シーズン22”に突入しちゃいました。

アキラ=水谷豊さんの主役回である『傷だらけの天使』#19から始めたバディ特集なので、ラストも水谷豊さんで締めようと思います。



このシリーズに関しては今まで悪口ばっか書いて来たし、全ての刑事ドラマを“刑事がただ突っ立って謎解きするだけの紙芝居”にしちゃったA級戦犯って捉え方を変える気は無いけど、一方で「観ればたいてい面白い」し「とっくに死に体だった刑事物ジャンルをここまで延命させた救世主」だと認めても来ました。

あらゆる理由で’70年代や’80年代みたいな創り方が不可能となった今、どうすれば刑事物がサバイブして行けるかっていう指標を示してくれた番組なのは間違いなく、好き嫌いは置いといてリスペクトするしかありません。



やっぱり実際、観ればたいてい面白いんですよね。前シーズンの1話&2話がそうでもなかったからそろそろ限界か?って思ったけど、今シーズンの1話&2話はしっかり面白かった。

やり手の弁護士である栗山千明さんが、失踪した婚約者の捜索を警視庁“特命係”の杉下右京(水谷 豊)に依頼し、上手く乗せられた右京がバディの亀山(寺脇康文)と共に探っていくと、話はカルト教団が引き起こしたテロ事件へと繋がり、さらに教団の壊滅を企む公安部(引いては政府)の陰謀論へと拡がっていく。

時事ネタを積極的に取り込み、国レベルにまでスケールを拡げるこの作劇スタイルも『相棒』以降の刑事ドラマ群がこぞって真似した筈で、今やすっかり手垢が付いたにも関わらずちゃんと面白いのは、やっぱり凄いと認めざるを得ません。



今回は右京たちがカルト教団の本部に潜入し、脱出するスリラー的要素もあり、実年齢71の水谷さんが格闘アクションまで見せてくれて私は感動しましたよ!

基本的にはインテリジェンスながら荒唐無稽なことも平気でやっちゃう。だから『相棒』は面白いワケだけど、それは“水谷豊が演じればこそ”かも知れません。



やっぱり、今さらだけど、俳優さん個々の力量とその組み合わせが“面白さ”に与える影響は計り知れない。それをつくづく感じました。

水谷さんのバディは寺脇さんが一番しっくり来るし、今回はゲスト=栗山千明さんの持ち味を120%活かした創り手たちの功績もデカい!



刑事役を数多く演じて来られ、このブログにも何回登場されたか判んない栗山千明さんが初回ゲストと知って、満を持してのご登場だなと思う反面、新鮮味は皆無だろうとも私は思ってました。

けど、それは杞憂に終わりました。近年の作品で見せておられる天真爛漫さから、失踪した恋人を想う女性としての憂い、そして最後は……



完全にネタバレだけど、こんな恐ろしさを特殊メイク無しで表現できる女優さんはそうそういない筈。ホラーのジャンルから頭角を表された栗山千明さんの面目躍如です。



それにしてもまぁ、レギュラーキャスト陣の平均年齢が異常に高いw 若いシュッとしたイケメンが1人もいないのがホント素晴らしい!

内閣情報官“社 美彌子”役の仲間由紀恵さんもすっかりベテランの風格だし。



阿部寛さんとバディを組んだ『トリック』からもう23年ですよ! その頃の私はまだ30代前半(ギリギリだけど)。今年もあっという間に残り2ヶ月。言葉が見つかりません。

とにかく、水谷豊さんはやっぱり凄いし、バディ物には傑作が多い。そんな気づきが今回の収穫でした。


 

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『もっとあぶない刑事』最終回

2023-10-22 21:35:14 | 刑事ドラマ'80年代

松田優作&中村雅俊の主演による東宝作品『俺たちの勲章』の続編、というより“リブート”的な内容だった中村雅俊&根津甚八『誇りの報酬』のあとを受け、1986年10月に日本テレビ系列の日曜夜9時枠でスタートしたのが、舘ひろし&柴田恭兵を主演に迎えてセントラル・アーツ社が制作したTVシリーズ『あぶない刑事(デカ)』。

すでに’80年代ならではの遊び感覚を備えた『誇りの報酬』に“オシャレさ”を付加し、それが舘ひろし&柴田恭兵のみならず浅野温子、仲村トオルという当時“トレンディー”だった俳優陣の個性とも見事にマッチして、2016年公開の完結編『さらばあぶない刑事』まで7本もの劇場版が製作される大ヒットシリーズとなりました。(またまた復活するとの噂もあり)

で、今回レビューするのは放映枠を金曜夜8時台に移して1988年10月からスタートしたTVシリーズ第2弾『もっとあぶない刑事』の第25話=最終回。

日テレの金曜夜8時と言えば『太陽にほえろ!』や『ジャングル』、そして後の『刑事貴族』シリーズへと繋がる伝統の刑事ドラマ枠。そういう意味でも最後はちゃんと締めて欲しかったのですが……

この最終回は酷い。第1シリーズには大いにハマった私だけど、劇場版2本を挟んで制作されたこの第2シリーズは内容が空虚すぎて初回から乗り切れず、途中で脱落したもんで最終回を観たのは今回が初めて。

呆れました。これはマジで酷い! 人気にアグラをかいて視聴者を完全にナメてる、と言わざるを得ない内容です。元凶はおそらく、石原裕次郎さん亡き後に石原プロモーションをさんざん迷走させた、あの“専務ーK”だろうと思いますが……

そのK専務の操り人形だった舘ひろし氏や、忖度して逆らえなかった日テレとセントラル・アーツにも責任はあるでしょう。

あんまり酷いからレビューは簡単に済ませます。なので今回は早めにアップ出来ると思いますw




☆第25話(最終回)『一気』(1989.3.31.OA/脚本=大川俊道/監督=長谷部安春)

『ベイシティ刑事』の最終回にも登場した本牧のレストランバー「ゴールデンカップ」に二人組の強盗が押し入り、港署・捜査課の“あぶない”コンビ=ユージ(柴田恭兵)&トオル(仲村トオル)が駆けつけます。

で、途中から唐突に現れたタカ(舘ひろし)が強盗の片割れを仕留めるんだけど、ユージ&トオルはもう片方に逃げられた上、覆面パトカーを奪われるという大失態までやらかしちゃう。



「モ……モラルが無いよな、近頃の犯罪者は💦」

このテのドジは“あぶない”コンビにとって日常茶飯事なワケだけど、ちょっと待ってくれ。何かが違う。

「お二人さん、また派手にやらかしたんだって?」



それを知った少年課の狂女=カオル(浅野温子)が冷やかしたり騒いだりするのも見慣れた光景……の筈なのに、めちゃくちゃ違和感がある!

そりゃそうです。派手にやらかしたのはユージ&トオルであって、タカはほとんど絡んでない。なのに、なんでタカが冷やかされるのか?



「どうする?」

「いやあ、パトカー盗られちゃってっからなあ」

いやいやユージさん、あんたはそうでもタカさん関係ないですやん!

そう、本来こういう騒動はタカ&ユージが起こすもんであって、トオルの役目はそれに巻き込まれて迷惑がることだったはず。

そもそも港署の“あぶない”コンビはタカ&ユージの専売特許でしょう?

なのに、奪われた覆面パトカーが接触事故を起こし、それで初めて顛末を知った近藤課長(中条静夫)が言うワケです。

「ロクでもないコンビだな、あの二人は!💢」

いやいやいやいや、違うでしょう? ロクでもなきゃいけないのはタカ&ユージであって、トオルは馬鹿だけど決して“あぶない刑事”じゃない。そうでないとバランスが大きく崩れちゃう。もう手遅れだけど。

これは恐らく……いや間違いなく、本来はタカ&ユージがパトカーを奪われる設定だったのを、無理やりユージ&トオルに置き換えた結果でしょう。



以降のシーンも、タカが登場するのは刑事部屋とか病院とか、ほとんどセット内で撮影できる場面だけ。

番組ファンの間じゃ常識的な話でしょうが、当時すでに石原プロモーションがテレビ朝日の新番組『ゴリラ/警視庁捜査第8班』の撮影を始めており、舘ひろしはそっちを優先して『もっとあぶない刑事』の終盤は登場シーンが激減しちゃう!

そのへんの事情は以前から知ってたけど、まさか最終回までこんな事になってるとは! 今更ながら呆れるしかありません。

さすがは、後に自社制作の『代表取締役刑事』を優先して東宝の『刑事貴族』を途中で降りた舘ひろしです。

いや、おそらく本人はそんな不義理はしたくなかっただろうに、上から“ゴリ押し”でそうさせたのが石原プロの専務ーK(当時の最高権力者)だろうと私は思うワケです。

お陰で、最終回なのに残りのシーンもこのありさま。



トオル君には何の罪もない。けど、『あぶない刑事』におけるキミのポジションはそこじゃない。

そりゃあ、何十本もやってりゃ途中でそんなエピソードもあっていいとは思う。けど、初回と最終回だけはダメでしょう? それも2つしか無いTVシリーズの大ラスですよ? いくら次の劇場版が控えてるからって。テレビを馬鹿にしとんかい!?って話です。



ストーリーは、ゴールデンカップを襲った強盗二人組が図らずも相当ヤバいものを盗んでしまい、覆面パトカーを奪って逃げたヤツが殺し屋に狙われ、ユージが命懸けでそいつを護る。

どんな事情があろうと犯罪者にだけは肩入れ出来ない私ですから、このテの話にもとうてい感情移入できません。



で、ユージが満身創痍になって戦ったにも関わらず、結局そいつは殺されちゃう。

一方、冒頭でタカが仕留めた犯人も、軽傷だった筈なのに病院で息を引き取っちゃう。そこにも刺客の手が回ったらしく、黒幕はどうやら県警本部内にいるらしい。またかよ!?💨



「結局、強盗が二人と殺し屋が一人死んだ。ただそれだけの事だ」

「誰かがどっかで笑ってんだろうな」

「だが、そいつは重大なミスを冒した」



「俺たちを生かしておいた事だろ?」



「必ず後悔させてやろうぜ。いつか、必ずな」

いやいや、あんた。ハズキルーペのあんた。今回ずっと病院のベンチに座ってただけやん!



で、最後は取ってつけたようにタカ&ユージのアクションをちょっとだけ見せて、続きは映画館でね!って言わんばかりにジ・エンド。

おフザケが過ぎたこの第2シリーズの中じゃ比較的ハードな展開(いわば挫折の美学ごっこ)に僅かなスペシャル感があるものの、主役コンビの片方しか活躍しない最終回なんて聞いたことがない。相変わらず木の実ナナも出てこんし!

もう一度言う。テレビをナメとんかい!? わたしゃ生粋のテレビっ子なもんで、ちょっと許しがたいもんがありますよホントに。


 

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『ベイシティ刑事』最終回

2023-10-21 21:57:12 | 刑事ドラマ'80年代

時は’80年代後半。『Gメン’75』『西部警察』『特捜最前線』、そして『太陽にほえろ!』といった“刑事ドラマの代名詞”たちが長い歴史にピリオドを打ち、それらと入れ代わるように現れて大ヒットしたのが日本テレビの『あぶない刑事(デカ)』。

そしてフジテレビが月9枠“トレンディドラマ”の第1弾『君の瞳をタイホする!』をスタートさせ、グラサン姿の井上陽水さんが日産セフィーロのCMでニヤニヤしながら「皆さんお元気ですか?」と語りかけて来たのが1988年で、世はまさに「食う寝る遊ぶ」の時代。

その前年の4月にテレビ朝日&東映コンビが現在の『相棒』へと連なる“水曜21時枠の刑事ドラマ”第1弾『大都会25時』をスタートさせるも不発に終わり、第2弾として10月に送り出したのが『ベイシティ刑事(コップ)』全24話でした。

誰がどう見ても『あぶない刑事』の亜流ではあるんだけど、横浜・港町署に設置された捜査課の左遷部署“別動班”って設定は、むしろ藤竜也さんが’78年にレギュラー出演された日テレ火曜21時枠の刑事ドラマ『大追跡』を彷彿させ、これは世良公則さんとの“バディ物”というより石川秀美さん、いかりや長介さんも加えた“チーム物”と捉えるべきかも知れません。

アドリブ満載の軽〜いノリも『大追跡』ですでに完成されてたし、そのチームに柴田恭兵さんもおられたことを思えば、『あぶない刑事』も『ベイシティ刑事』も『大追跡』から派生したブラザーであり、たまたま放映時期が少しズレただけ。(つまり二番煎じとは違う)

『あぶデカ』のブランドスーツとは対照的にラフなファッションや、オールディーズ・ナンバーを使ったBGM等にも“時代に迎合しない”反骨心が感じられ、あえてヒューマン路線に回帰する後番組『はぐれ刑事純情派』にも同じことが言えそうです。

けど、残念ながら『ベイシティ刑事』はヒットしませんでした。とっても分かりやすい『あぶデカ』のオシャレさと違って、ちょっとひねくれた『ベイシティ〜』のソレは視聴者たち……ことに若い女性層には伝わりにくかった。

オッサンの懐古趣味とか銃器へのこだわりとか、いかりや長介とか石川秀美とか、そんなのがチャンネル権を握る女性たちに受けるワケがないw

だからコケるべくしてコケた番組ではあるんだけど、今となっては時代にも女性にも媚びなかった、創り手たちの頑固な姿勢がとっても眩しいです。




☆第24話 (最終回)『男たちのラストショー』(1988.3.23.OA/脚本=日暮裕一/監督=村川 透)

この時代のアクション物にドラマ性を求めても仕方ありません。テーマだのメッセージだの、マジメに伝えようとすればするほど「ダサい」とか「寒い」とか言われ、だから倉本聰さんや山田太一さんといった大御所の脚本家たちがテレビから次々に手を引いちゃった。

今回はさすがに最終回ってことで、お荷物部署“別動班”に解散命令が下るというイベントはあるにせよ、そこに悲壮感はカケラもない。



「ダメだこりゃ」

もはや老齢で家のローンも残ってる山崎班長(いかりや長介)だけは異動命令に従うしか無いけど、まだまだ若い小池(藤 竜也)、星野(世良公則)、河合(石川秀美)はすぐに転職先を思案。そりゃあの時代ですから仕事はいくらでもあります。

「俺だってな、潔く辞表を叩きつけてえよ。女房やガキがいなけりゃな」



「でもな、短い間だったけど一応、親方気分を味わわせてもらったんだ。お前らには感謝してるよ」

「…………」

本当は小池たちだって、悔しいし哀しいに決まってます。そんな想いを’70年代なら夕日や海に向かって叫ぶところだけど、’80年代は地下射撃場で弾丸を湯水のごとく撃ちまくって発散するという贅沢さ。



そう言えばあの時代、私自身はバブルの恩恵を受けた実感があまり無いんだけど、唯一、通ってた映像専門学校の課題制作で16ミリフィルムを湯水のように使っても叱られなかったのが、現在だとあり得ない贅沢さだったと思います。



足元に転がる空薬莢をわざわざ撮るなんてマニアックな演出が、日本のTVドラマで見られたのも多分『ベイシティ刑事』が初めて。だけど喜ぶのはガンマニアだけで、肝心の顧客(女性視聴者たち)には何も響きませんw

さて、別動班の解散を決めたのは捜査課長の桜井(神山 繁)なんだけど、その張本人が恥も外聞もなく、小池たちに協力を要請して来ます。



ヤクザだけをターゲットにする凄腕の“始末屋”を逮捕に向かった捜査課の部下たちが全員、逆にそいつに捕まったから救出して欲しいと言う。

基本は事なかれ主義の山崎班長もさすがに黙ってられません。

「そいつは身勝手過ぎやしませんかね?」

「そうか、それじゃキミもこいつらと一緒に退職するのか?」



「……仕方ありません。私は、小池たちに命令することは出来ません!」



家のローンが残ってる班長をクビにさせるワケにも行かず、小池と星野が立ち上がります。

「どこへ行くんだ?」

「ちょっと、こいつと別れを惜しみに」

そう言って小池は“ジョン”ことS&W・M29センチネルアームズカスタムを、そして星野は“マギー”ことコルトM1911ゴールドカップナショナルマッチ・コンバットカスタムを取り出すのでした。

「そう、それにはちょうど手頃なヤマよ」

ピストルの名前が何であろうと女性たちは知ったことじゃないけど、ここがこの最終回で一番熱いシーン。胸を打つような展開はもう二度とありませんw それがバブルという時代。

凄腕の“始末屋”=水谷を演じるメインゲストも、喜ぶのは私みたいな『太陽にほえろ!』ファンだけで、その中でも女性にはあまり人気が無かったであろう、この人。



『ベイシティ刑事』には2度目のご登場となる、元“ブルース刑事”の又野誠治さん。私は好きだったけど、この人が意識しまくってた松田優作さんほどのスケール感やカリスマ性を皆が感じないのも、まあ理解できます。

時代が違えば“ボギー”世良さんと再び組んでの刑事役もあり得たと思うのに、悪役専門アクターに収まっちゃったのは個人的に残念です。

それはともかく元ブルースは、自分が囚人として乗せられる予定だった護送車を港町署の表に乗りつけ、人質にした捜査課のボンクラ刑事たちを並べて、プラスチック爆弾を掲げます。



「このスイッチ押せばどうなるか分かるよな?」

「ハッタリかまして後で恥かくなよ」

「星野、あの男にハッタリはねえぞ」



又野さんが第7話で演じた悪党とは別キャラみたいだけど、今回も藤さん演じる小池刑事と因縁がある設定。

そんな元ブルースの要求は、裏切った雇い主にギャラの2億円を取り立てろというもの。タイムリミットは翌日の午前8時。

雇い主の正体を知ってるのは、連絡役を担ってた謎の美女(日向明子)だけ。捜査課に密告して元ブルースを「売った」のもこの女。



県警本部は元ブルースの要求を無視して強行逮捕する構えだけど、小池&星野は謎の美女を探し出して命懸けで拉致し、雇い主の正体が暴力団の幹部であることを聞き出します。

県警本部による強行逮捕を阻止する意図もあり、小池は進捗状況を元ブルースに伝えるべく護送車に乗り込みます。



「小池さんよ、俺は楽しみだぜ。あんたみたいなヤツと張り合えるのがよ」



「水谷、俺と相棒はワンセットだ。俺が二人いると思ってくれ」

そしてワンセットの小池&星野が決行したのは、第9話で刑務所へ送った金庫破りの名人(三上 寛)を脱獄させ、一緒にヤクザ幹部の屋敷に忍び込んで隠し金を全て盗み出すという、本気で刑事を辞める前提のミッション。



「よし、最後のお勤めだ。締まって行こうぜ!」



一方、桜井課長らに逃走用の高速艇を用意させた元ブルースは、このまま逃げるべきだと手下に言われても聞き入れません。

「ダメだ。約束だからな、小池との」

「信じるんですか? 相手はデカですよ!」

「テメエらには解んねえよ!」

ヤクザしか殺らない元ブルースに小池は一目置いており、そんな小池に元ブルースもシンパシーを抱いてる。

殺し屋と刑事の友情になんか、私はまったくリアリティーを感じないし共感もしないけど、このあたりは香港映画の影響かも知れません。


ともかく、タイムリミットぎりぎりに到着した小池&星野は、高速艇に乗り込んで約束どおり2億円を元ブルースに手渡し、港で見守る同僚たちに宣言します。

「人質を無事、解放しました! 小池警部補、只今をもって退職します!」

「星野巡査長、右に同じ! お世話になりました!」



「ところで相談なんだが……」



「俺も約束は守る。おたくらの行きたい所へ連れてってやる」

小池&星野が行きたい場所とは、警察官でなくてもカネさえあれば拳銃がいくらでも撃てる、ハワイという名の楽園。

そこで永住する夢に一步近づいたその時、何者かがライフルで元ブルースたちを、そして星野にも弾丸をぶち込んだ!



えっ、なんで? 撃ったのはどうやら警察側のスナイパーらしいけど、いったい誰の命令で? なんで星野まで撃っちゃうの?

……って、釈然としないまま展開が進んじゃうんだけど、そう言えば元ブルースの雇い主を探す過程の中で、ヤクザ幹部のバックにさらなる黒幕=県警本部の人間が絡んでることを臭わせてました。

それって、今回はレビューを書くために注意深く観てたから思い出せたものの、最初に観たときは完全に忘れてたから「なんじゃこりゃ?」って感じでした。

説明過多になるのも良くないけど、説明不足はもっと良くない。ましてや最終回のラストシーンなんだし!



「星野、いよいよ憧れのハワイだ! 向こうに着いたら、すぐにお前の射撃場の土地探しだ、な?」

「そいつはいいな……楽しみだ」

ところが! 元ブルースの手下が撃たれたときに手放した時限爆弾は、午前8時に起爆装置がセットされており……



『傷だらけの天使』や『俺たちの勲章』における“挫折の美学”がアメリカン・ニューシネマのダイレクトな影響だったとすれば、この『ベイシティ刑事』最終回のそれはオマージュというか、もはやパロディですよね。

別に笑わせようって意図は無いにせよ、ストレートに(哀しげに)それをやるのは照れくさい。だからあえて軽〜くやっちゃう。なにせ「食う寝る遊ぶ」の時代だから。

返す返すも、そして良くも悪くも、あの頃、僕らのニッポンがホントおかしな事になってましたよね。いや、2023年現在はもっとおかしいかも知れないけれど……


 

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『噂の刑事トミーとマツ』#02

2023-10-16 20:58:52 | 刑事ドラマ'70年代

いよいよ始まる「’80年代」という一大イベントの前夜祭みたいに、1979年10月からTBS系列の水曜夜8時枠で賑やかにスタートしたのが、『噂の刑事トミーとマツ』という伝説的なポリス・コメディー。

同時期にやはりTBS系列で始まった『3年B組金八先生』と並んでサプライズヒットを飛ばし、延長を重ねて’81年3月まで全65話が放映され、さらに’82年の第2シリーズ全41話も加えて通算106話。バディ物の刑事ドラマとしては『相棒』『あぶない刑事』に次ぐ成功作と言えましょう。

制作は、同じ放映枠であの坂上二郎さんを主役に迎えて『夜明けの刑事』『新・夜明けの刑事』『明日の刑事』をヒットさせた、あの大映テレビ。

国広富之&松崎しげるという意表を突いたキャスティングも、シリアス人情路線だった『夜明けの〜』シリーズから内容を180°転換させた大胆さも、大映テレビのアナーキーさと’80年代ジャパンの勢いがあればこそ、だったかも知れません。




☆第2話『トミーの初恋・夢見街』(1979.10.24.OA/脚本=長野洋/監督=井上芳夫)

クラブ「バッカス」のバーテンダー・田島(沖田駿一)が他殺体で発見され、富士見警察署・捜査課の刑事たちが捜査に乗り出します。

で、「バッカス」に務めるホステスたち(ホーン・ユキ、鶴間エリetc)への聞き込みを命じられたのが、女性を大のニガテとする新米刑事“トミー”こと岡野富夫(国広富之)。

若くてハンサムで母性本能をくすぐるタイプのトミーが、ギラギラしたオヤジどもの相手に飽き飽きしてるホステスたちの巣(マンション)に飛び込めば、当然こんな羨ましい状況に。



結局なにも聞き出せないどころか、ホッペやスーツにしこたまキスマークと香水の匂いをつけられ、仕方なく着替えようと自宅に戻ったら、その姿を姉の“サッチ”こと幸子(志穂美悦子)に見つかって……



「仕事サボって一体ナニしてたのっ!?」



言い訳するスキもなく、富士見署でインストラクターを務める武術家サッチの背負い投げを食らうハメに。そりゃこんな姉ちゃんと同居してたら女性が怖くもなるでしょう。



「あら、そういう事だったの。ごめんね、てへ!」

「そんなんだからお嫁に行けないんだよ!」

「言ったな、この!」

そんな牧歌的な姉弟喧嘩に昭和という時代を感じます。そしてお懐かしや林隆三さん演じる捜査課長=御崎警部が振るう愛のムチにも。

「もういっぺん行って来い! なにか掴めるまで戻って来るんじゃないっ!!」



「そっ、そんな……」

そんな羨まぴぃ〜!!って、先輩刑事で相棒の“マツ”こと松山進(松崎しげる)が聞いたら悶絶&激怒しそうだけど、今回はトミーが主役なんで出番少なめ。

番組が始まったばかりで、しかも刑事ドラマとしては前例が無いほど振り切ったコメディーなもんで、まずは人気も実力も保証済みの国広さんで様子を見ようって算段なんでしょう。(歌手の松崎さんはこれが連ドラ初出演)

てなワケで、今度は直接「バッカス」に赴くトミーだけど、結果は同じw



今度は高級酒をしこたま呑まされそうになったトミーが、ひときわ若いホステスを見て驚きます。

「マリちゃん!?」



「富夫さん……!」

トミー以上に驚き、その場から逃げ出したホステス=真理子(石原初音)は、かつてトミーの実家にいた“お手伝いさん”なのでした。

孤児で、中学を卒業してすぐ住み込みで働くなんて設定は、当時でもリアリティーが感じられなかったかも知れません。

が、創ってるスタッフの人たちにはまだ、貧しかった戦中戦後の記憶が残ってる。まさに当時が時代の転換期であり、過渡期だったんだと思います。



「富夫さんはずいぶん立派になりましたね……すっかり刑事さんらしくなって」

「どうして僕が刑事になったこと知ってるの?」

「風の噂かしら……うふふ」

故郷に戻ったはずの真理子がなぜか東京にいて、しかもクラブのホステスなんて似合わない仕事をしてる。

イヤな予感を覚えたトミーは、勇気をだして再びホステスたちの巣を訪ね、ホーン・ユキさんのおっぱい攻撃に耐え抜いて、殺された田島がユスリの常習犯だったという情報をついに引き出します。

ということは、ユスられてた被害者たちの中に田島を殺した犯人がいる可能性が高い。

徹底的な聞き込みの結果、“おやっさん”こと高村刑事(井川比佐志)が有力すぎる情報を掴んで来ます。



どうやら畑中(江木俊夫)という運送会社のドライバーが半年前、配達中に田島をトラックで轢きかけたらしく、ほんのかすり傷だったのに田島がしつこく治療費を要求し、事故が会社にバレることを恐れた畑中は言われるまま払い続けた。

で、給料だけじゃ払い切れなくなり、畑中の妻が「バッカス」で働く羽目になったという。

「その奥さんの名前は?」

「ああ、たしか真理子とかいったな」

「!!」

だからマリちゃんがあんな仕事を……

妻まで巻き込んでしまった畑中が、いよいよ思いつめて田島を殺したに違いない!と推理し、きっとヤツはマリちゃんに会いに来るだろうと確信したトミーは、連日徹夜で彼女のアパートを張り込むのでした。



↑ここでようやく合流した松山先輩は、このありさまw スケベで粗暴で短足で顔が必要以上に黒く、そして何より不真面目。刑事ドラマの主人公としては画期的なキャラクターで、“アナーキー”大映テレビの面目躍如です。



で、昼間は一般企業の事務員として働く真理子を尾行し、ついに畑中の隠れ家に辿り着くのですが……

「あなた、逃げて!」



真理子に追跡を妨害された上、高所恐怖症のため階段を登れなくなったトミーは、あえなく撃沈。ここまで情けない主人公もまた画期的でしょう。

そんなトミーを責め立てるマツに、彼の後見人である本庁の相模管理官(石立鉄男)がいつものカミナリを落とします。



「目くそが鼻くそを笑うとはお前たちのこった、まったくいい勝負だな! ま、たまには失敗もやむを得んが……」



「そうですよね、失敗は成功の元って言いますからね!」



「バカヤローッ!! 俺はたまには失敗してもやむを得んと言ったんだ、お前たち一度でも成功したことがあるかーっ!?💢」

マツみたいな男には絶対なりたくないけど、その果てなきポジティブ思考には憧れを禁じ得ません。ウジウジ悩んでばかりの自分に心底ウンザリしてる今日この頃の私です。トミコトミコトミコォーッ!!💨



で、行方をくらませた畑中を誘き出すべく、真理子を泳がせるように指示されたトミーは、またもや寝ずの番。

畑中を捕える為というより真理子のことが心配で、雨に打たれても張り込みをやめないトミーを見かねて、真理子は彼をアパートに招き入れるのでした。



「富夫さんは、ご両親いっぺんに(交通事故で)失くしちゃったけど、まだお姉様がいらっしゃるでしょ? 私たちには誰もいなかった」

「…………」

故郷に戻っても身寄りはなく、孤独な日々を送ってた真理子にとって、同じ孤児である畑中との出逢いは特別なもので、お互いどうしても手放せなかった。

「私にはあの人しか、あの人には私しかいなかったんです」

「マリちゃん……」



「富夫さん……私、本当は……」



「え……なに?」



「本当はあなたが好きだったの! 抱いて! アレ見せて! しゃぶらせて!」



「ええーっ、ダメだよマリちゃん! 誰か助けてえーっ!!💦💦」

↑ていうのは実は冗談で、真理子が何か言いかけたところで畑中が現れ、追いかけたトミーは再び階段を駆け上がるハメになり……



まったく同じ轍を踏みそうになったところで、駆けつけたマツがあの台詞を叫びます。



「またかよ、この腰抜け! お前なんかトミーじゃねえ、トミコだ! トミコーッ!!」

「!!!」



トミーがトミコと呼ばれてハイパー激怒し、いきなりスーパーコップに豹変してあっという間に犯人を逮捕しちゃう。

これが毎回のお約束になるんだけど、メインライターの長野洋さんにそんなつもりは全然なく、第1話で気弱なトミーが犯人に立ち向かうキッカケとして、1回きりのつもりで使ったアイデアなんだそうです。

それが好評で回を追うごとエスカレートし、トミーの耳がピクピク動いたり、立ち回りもどんどんアクロバティックになって特撮ヒーロー化していっちゃう。

ストーリー自体もどんどん荒唐無稽になっていくし、キャスト陣の芝居もアドリブの応酬が増える中、井川比佐志さんお一人だけシリアス演技を貫いておられるのがまた可笑しくて、私も大いにハマったもんです。

だけど今回のレビューはまだ試行錯誤中の第2話で、ギャグもアクションも控えめだし、『夜明けの刑事』シリーズのヒューマニズムが残ってたりもします。

一件落着かと思いきや、ラストに哀しいどんでん返しが待ってました。



「田島を殺したのは、私です」



「えっ?」

「そんなバカな!」



「本当なの。マリちゃんがウチに来て何もかも話してくれた」

畑中夫婦へのユスリをエスカレートさせた田島は、独立資金として100万円を要求した挙げ句、許しを乞いに来た真理子をチョメチョメしようとした。



そりゃこんな形相で襲い掛かられたら、私だってこうしちゃうだろうと思います。



で、真理子はすぐ自首しようとしたけど、夫の畑中が全力で阻止した。なぜなら、二人で毎晩チョメチョメしてつくった子供が、彼女のお腹に宿ってるから。



たとえ正当防衛が認められたとしても、刑務所行きは免れない。二人の愛の結晶を、そんな場所で産ませたくない。だから畑中が罪を被ったのでした。



孤児どうし、温かい家庭をつくるのが二人の夢だった。それが、ちょっとした事故を誤魔化そうとしたばかりに……



「勘弁してくれ。みんな俺のせいだ」

「いいのよ。夢が破れても、その分だけ夢を見ることが出来たんですもの」



「そんな事あるもんか! これからだよ! これからお前たちの本当の生活が始まるんじゃないか!」 



「そうだよ! キミたちの夢は決して破れてなんかいない! これからだよ、これからキミたちの本当の夢が大きく広がるんだよ!」

もちろん決して容易な道じゃないだろうけど、まだこんなに若い二人なら、きっとやり直せることでしょう。



「お前、彼女のこと好きだったんじゃないか?」

「嫌いになる男がいますか?」

「まあ、そうだな。タバコ」

「今は吸いたくありません」

「オレにくれって言ってんだよ」

「タバコぐらい自分で買ったらどうですか!」

「いいじゃないかよ、オレは先輩だぞ?」

「イヤですよ、もう!」



こんなにシリアスなストーリーでも、最後はやっぱりバカをやって終わるのが『トミーとマツ』の流儀。そこはスタート時からブレてません。

かくも突き抜けた感じが大映テレビの個性であり、これに限っては’70年代も’80年代も関係無いのかも知れません。

この作品、初期の22話分しかDVD化されておらず、交通課婦警の“マリッペ”こと森村万里子(石井めぐみ)が頭角を表し、相模管理官が降格して課長に就任する第1シリーズの後半から第2シリーズが現在は観られない。

本放映時、第1シリーズは裏で『あさひが丘の大統領』をやってたもんで、私はリアルタイムで観てないんですよね。だから私にとっての『トミーとマツ』はマリッペがいる第2シリーズなんです。DVDマガジンでもいいから商品化熱望!



素晴らしい演技を披露されたゲストの石原初音さんは、1975年の『必殺仕置屋稼業』における「おはつ」役でデビューされた後、映画『杳子』や平凡パンチ、週刊プレイボーイ等のグラビアで素晴らしいヌードも披露。

刑事ドラマは『特捜最前線』第100話にもゲスト出演されてますが、芸能活動そのものが短かったようで、数少ない出演作の1本として本作は貴重なものになるかと思います。


 

コメント
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