ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『グレートマジンガー』最終章―4

2018-11-13 17:10:06 | アニメーション









 
☆第56話(最終回)『平和の鐘よ、勇者の頭上に鳴り渡れ!!』

(1975.9.28.OA/脚本=藤川桂介/演出=山吉康夫/作画監督=森 利夫)

パイロットの剣 鉄也が気を失い、動かなくなったグレートマジンガーを押し潰すべく、戦闘要塞デモニカが突進して行きます。

科学要塞研究所の所長=兜 剣造博士は、グレートマジンガーの飛行強化ユニットである「グレートブースター」を遠隔操作する事で鉄也を救おうとします。

「弓博士! もしこの作戦が失敗したら、次の作戦に掛からなければなりません。皆と一緒に、地下の第二管制室まで行って下さいませんか?」

「いや、それは構いませんが、その作戦とは一体何ですか?」

「今それを話してる時間がありません。とにかく早く地下へ!」

弓教授と兜シローは、詳細を言わない兜博士に不安を覚えます。

「ねぇ、お父さん! あのブースター作戦は、失敗なんかしやしないよね!?」

「させないとも。ただ、万一のことを考えての第二作戦だ」

「お父さん、頑張ってね!」

兜博士を1人残して、所員たちは全員地下へと移動します。

博士は遠隔操作でブースターとマジンガーのドッキングを成功させますが、デモニカのミサイル攻撃により、あえなく撃ち落とされちゃいます。

それは想定内だったのでしょう、博士はすぐさまプランBを実行すべく、研究所の管制塔を浮上させます。この科学要塞研究所は土台部分を切り離して飛行する事が出来るんです。

「兜博士!?」

「お父さん!!」

「私は鉄也くんを救いに行く。みんなは研究所を潜水させて逃げるんだ!」

「お父さん! 行っちゃイヤだっ!!」

「私たちも一緒に行こう!」

「いや、いかん! あなたはシローやさやかさん、そして所員の諸君を頼みます!」

つまり、特攻です。鉄也を救う為に兜博士は、自らの生命と研究所を犠牲にしようとしてるのでした。

「甲児、シロー……またお前たちを、孤児にしてしまうな……今度はもう、生き返ることも出来まい。2人でしっかり生き抜いて行くんだ」

そして管制塔はデモニカに体当たりして大爆発! が、残念ながらデモニカを破壊するには至らず、機首を損傷させるに止まりました。それでも、鉄也の生命を救うという目的は果たせたのです。

「何だって、さやかさん!? もう一度言ってくれっ!!」

光子力研究所で戦闘獣グレート・マンモスと交戦中の兜 甲児は、弓さやかによる急報を聞いて愕然となります。ただし、兜博士の生死はまだ不明とのこと。

「くそーっ、鉄也なんかの為に、お父さんが!」

怒りに燃えた甲児=マジンガーZは底力を発揮し、ドリルミサイル、冷凍光線、アイアンカッターの連続技で戦闘獣を撃破すると、すぐさま科学要塞研究所へと駆けつけます。

兜博士は瓦礫の下敷きになりながらも、まだ意識がありました。マジンガーから飛び降りた甲児は、瀕死の父を抱き起こします。

「お父さんっ!!」

「甲児……シローを頼むぞ……」

「どうしてこんな無茶な事をしたんです!?」

「鉄也くんは、お前とのわだかまりを捨てて飛び出して行った……まるで兄弟のピンチを救おうとするようにな」

「…………」

「彼は私にとって、本当の子供と同じなんだ。父親が、子供のピンチを見捨ててはおけんだろう?」

「お父さん……」

「甲児……誰にも温かな気持ちを持つんだ。忘れてはいかんぞ……」

「はっ、お父さん!?」

兜剣造、絶命……甲児は二度、父を亡くした事になります。

地下・第二管制室のモニターで、弓教授らも兜博士の最期を見届けました。シローは泣きじゃくり、さやかは失意の甲児をフォローすべく出撃しようとしますが、再び父=弓教授に止められます。

「いかん! お前の手に負える相手ではないと言った筈だ! それより鉄也くんと兜博士を収容するんだ。甲児くんには要塞を防いでもらおう」

「お父様、そんな! 甲児くんは今……」

「泣く事はいつでも出来る! いま甲児くんがしなければいけない事は、二度とあのような悲劇が起こらぬようにと、災いの元を絶つ事だ。それが兜博士の死を無駄にしない事になるんだ!」

そんな弓教授の指令を受けて、甲児は立ち上がります。

「見ていろ、要塞め!」

再びマジンガーZに乗り込んだ甲児は、すっかり影が薄くなっちゃった主人公=剣鉄也&グレートマジンガーをフォローします。

「鉄也くん、しっかりするんだ! もうすぐ助けが来るからな!」

「く、くそぉ……俺も一緒に行くぞ!」

「そんな身体ではムリだ。ここは鉄也くんの分まで頑張るぜ!」

駆けつけた炎ジュン&ビューナスAに鉄也を託し、マジンガーZは要塞デモニカへと突っ込んで行きます。

「あっ、マジンガーZめ!」

「ええい、ヤツを片付けろっ!!」

ヤヌス侯爵と地獄大元帥が喚きますが、デモニカ機内で大暴れするマジンガーZを誰も止めることは出来ません。

父の仇、そして1年前の屈辱を今、倍にして返す兜甲児&マジンガーZの晴れ姿! シリーズの主役はやっぱ甲児&Zなんですよね。

その時、本来の主役である鉄也は夢を見ていました。独りで闇の中をさまよう悪夢です。

「ここは何処だ? 戦いは終わったのか!?」

すると地面からにゅう~っと青白い手が伸び、鉄也の足首を掴みます。

「ああっ、誰だ!?」

現れたのはフードを被った悪霊で、鉄也を闇の底へと引きずり込もうとするんだけど、子供番組にこのビジュアルはいくら何でも恐すぎますw

「お前に取り憑いている死神だ。お前も兜剣造と同じく、俺の手元に来たというワケだ」

「兜博士が? 馬鹿を言うなっ! 俺は死ぬもんか! 死んでたまるかっ!!」

「鉄也! 鉄也、しっかりして!」

ジュンの声で目覚めた鉄也は、そこで初めて兜博士の死を知る事になります。

「それじゃあ、あの夢は正夢だったのか!」

一方、マジンガーZは悪霊型戦闘獣を束ねるハーディアス将軍の襲撃を受け、ピンチを迎えます。鉄也の悪夢も、ハーディアスが発する怨みの念波が影響したのかも知れません。

得体の知れない敵幹部に劣勢を余儀無くされるZを見て、甲児のパートナー=さやかが遂に痺れを切らします。

「みんなが命懸けで戦ってるのに、此処でノホホンと見物なんて出来ないわ!」

父の制止を振り切って出て行くさやかに、シローが叫びます。

「待って、さやかさん! 僕も光子力研究所のお父さんの所へ連れてって! お願い!」

「……分かったわシローちゃん。一緒にいらっしゃい!」

シローを後部席に乗せて、さやかが愛車=スカーレット・モビル(ダイアナンAの操縦席)をかっ飛ばします。

「甲児くん死なないで、甲児くん!」

今回あまりに出番が少ない弓さやかが、やっと彼女らしい姿を見せてくれました。甲児と直接絡むシーンが無いのは返す返すも残念です。

しかし、甲児はさやかの救援を待たずして、何とか悪霊将軍をやっつけます。『グレートマジンガー』の最終回にして、ほとんどの敵をマジンガーZが倒しちゃうワケです。

「要塞め、今度こそやっつけてやる! ブレストファイヤー!!」

必殺の熱線をデモニカに浴びせるZですが、科学要塞研究所の特攻にも耐えた巨大要塞ですから、戦闘獣と同じようには行きません。Zの機体がオーバーヒートを起こし、要塞とどっちが先に焼け焦げるかの我慢比べ。

「お父さんを殺した、貴様たちを地獄の底に叩き落とすまで、死んでたまるかっ!」

一方、グレートマジンガーはマトモに歩くことも出来ず、敵歩兵たちの銃撃を受けてフラつき、膝を着くという体たらく。

「くそぉ、何てザマだ! こんなヤツらに手こずるグレートマジンガーではなかったのにっ!」

「ジャンジャジャーン!」

そこに駆けつけたのがボスボロットです。

「あとは俺に任せておけよっと!」

いつも足手まといになって鉄也にバカにされるボロットだけど、今回ばかりは頼れる救世主として、歩兵たちを一掃してくれました。

「ボス! 何とかあの要塞をやっつけたいんだ! 俺の為に、大事な命を懸けてくれた所長への、せめてもの贈り物にするんだ! さぁ、早くあの丘に連れてってくれっ!」

「よぉし、任しとけ!」

取り柄の馬鹿力を発揮し、ボロットはグレートを担ぎ上げて丘の上を全力疾走、槍投げよろしく加速をつけてグレートを大空へと放り出します。

その勢いに乗せてスクランブルダッシュを成功させたグレートが、デモニカへの総攻撃にようやく参戦します。

「鉄也さん!?」

「大丈夫、鉄也!?」

既に兜博士の遺体を光子力研究所に収容したビューナスA、そしてダイアナンAも攻撃に加わってました。

「俺に掴まるんだ、鉄也くん!」

「ありがとう、甲児くん」

「さっ、もう一息だ!」

「よし! ブレストバーン!!」

マジンガーZの肩を借り、グレートマジンガーも必殺ビームを繰り出します。

心を1つにした鉄也&甲児、そしてジュン&さやかの想いを乗せた熱線が、ついに難攻不落の要塞デモニカを、地獄大元帥&ヤヌス侯爵もろとも木っ端みじんに吹き飛ばすのでした。

戦いは終わりました。実は黒幕である「闇の帝王」は健在ですからミケーネ帝国が滅びたワケじゃないんだけど、こうして戦力のほとんどを失った以上、しばらくは現れない事でしょう。

それよりも気になるのは、心身共に深手を負った剣鉄也です。ジュンに付き添われ、鉄也は病室のベッドにいました。

「兜博士……どうか俺の至らなさを許して下さい。所長は俺に、甲児くんやシローに劣らない愛情を示してくれた。所長は俺に、命を懸けて大きな愛を教えてくれたんだ……」

「鉄也……早く治って、所長の愛に応えなければいけないわ」

「……まったく俺はどうかしていた。孤児の境遇を恨みながら、シローや甲児くんを孤児にしてしまったんだ! 俺の浅はかな孤児(みなしご)根性が……!」

鉄也が涙を零します。恐らく、ジュン以外の人間には決して見せない涙でしょう。

「……鉄也、もう一度やり直しましょう。甲児くん達と手を繋ぎ合って、兜博士の大きな愛に応えるのよ」

「……ジュン、正直に言ってくれ。俺は、再起出来るのか?」

「鉄也、あなたはどんな苦しみにも耐え抜いて来た人じゃないの。絶対に再起するのよ。絶対に!」

「ジュン……」

「鉄也……」

手を握り合う2人は、恋人どうしというより兄妹に見えます。甲児&さやかのカップルとは、やっぱ背負ってるものが違うんですよね。

一方その頃、甲児、さやか、シロー、弓教授らは教会で、亡き兜博士の魂に祈りを捧げてました。その頭上で鐘が鳴り響きます。

「お父さん……もう全てが終わりましたよ。静かに眠って下さい」

「もう泣かないよ、僕。お父さんと暮らした日々は短かったけど、とっても楽しかった。お父さんを困らせてばかりで、ごめんなさい」

「シロー……」

ナレーションによりグレートマジンガー、マジンガーZ、ビューナスA、ダイアナンA、そしてボスボロットは、平和のシンボルとしてロボット科学博物館に展示される事、そして兜甲児は宇宙科学(UFO研究)を学ぶべく再びアメリカに旅立つ事が告げられます。(後番組『UFOロボ・グレンダイザー』への伏線になります)

剣鉄也に関しては「きっといつか再起するであろう」との事でw、救いが無いまま終わっちゃうのはやっぱ、’70年代の「挫折の美学」なんでしょう。

だけどご安心あれ、翌年公開の劇場映画『グレンダイザー・ゲッターロボG・グレートマジンガー/決戦!大海獣』において、剣鉄也はケロッと元気にグレートマジンガーを操縦してましたw

その際、兜甲児はマジンガーZに乗らずグレンダイザーのサポートに徹しており、再び我々ファンにフラストレーションを与える事になります。色んな意味でシリーズの主役は、やっぱ甲児なんですよね。

でも、だからと言って鉄也が主役を降ろされたワケじゃなくて、今回の挫折、言わば「ぶざまな姿」が描かれたのは、完全無欠な戦闘員として登場した剣鉄也を、最後にちゃんと生身の人間に戻してあげようっていう、創り手の愛だったんじゃないかと私は思います。

代わりに甲児&マジンガーZが大活躍したのも、1年前の雪辱を果たさせる意図も勿論ありつつ、より鉄也を人間らしく描く為の、言わば引き立て役だったんじゃないでしょうか?

その証拠に、甲児の大活躍よりも鉄也の涙の方が、より強く我々の胸を打つ『グレートマジンガー』最終章でした。

「さようなら、グレートマジンガー! さようなら、マジンガーZ! 君達は、いつまでもいつまでも、我々の心の中で生き続けて行く事であろう!」

(完)
 
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『グレートマジンガー』最終章―3

2018-11-13 12:00:14 | アニメーション









 
さて、いよいよ今回、我らがヒーロー・剣 鉄也が豹変しますw

前回から何日後の話なのか判りませんが、半壊した光子力研究所が綺麗に復元されてますから、結構な月日が経ってるのかも知れません。

その間に何があったのか視聴者は知る由もなく、いきなり別人みたいになった鉄也を見て誰もが驚愕したんじゃないでしょうか?

簡単に言えば鉄也はノイローゼ状態に陥り、自分の殻に閉じこもっちゃう。アムロ(ガンダム)やシンジ(エヴァンゲリオン)の内省的キャラクターは、別に新しくも何とも無かったワケです。


☆第55話『明日なき総力戦!! 鉄也・甲児を地獄へ送れ!!』

(1975.9.21.OA/脚本=藤川桂介/演出=明比正行/作画監督=森下圭介)

冒頭、科学要塞研究所の周辺で飛行訓練するグレートマジンガー&マジンガーZの勇姿が描かれ、我々ファンがワクワクしたのも束の間、いきなりグレートがおかしな動きを見せます。飛行中のZに横から下から急接近し、接触事故になりかねない危険運転。

「危ない! 鉄也くん、何をするんだ!?」

「この位の事をしなくちゃ、訓練の内に入らないぜ」

面食らったZのパイロット=兜 甲児に対して、冷たく言い放つ鉄也。声のトーンもいきなり悪役チックになってますw その後もZの飛行をしつこく妨害するグレートに、甲児はただ困惑するばかり。

「やめろ、鉄也くん!」

すると今度は、急にバランスを失ったグレートが海中へと墜落して行きます。

「はっ、鉄也くん!? どうしたんだ!? 鉄也くん!!」

心配して海上を飛び回るZですが、不意打ちで浮上して来たグレートにバランスを崩され、自分が墜落する羽目になっちゃいます。

「甲児くん、油断をするな! そんな甘っちょろい事では、作戦のリーダーにはなれやしない!」

油断するなと言われても、ヒーロー番組の主人公が墜落事故を装ってまで嫌がらせして来るなんて、誰にも予想出来やしませんw

作戦会議においても、鉄也は甲児の意見に真っ向から反対します。

敵の本拠地を突き止め、ダブルマジンガーで総攻撃を仕掛け、一気に戦いを終わらせよう!っていうのが甲児の意見。かつてドクターヘルとの戦争もそうやって終結させたのです。

「だからさっきから言ってる通り、俺は反対だ! 無用の刺激をするべきじゃない!」

「無用の刺激? 鉄也くん! そんなこと言ってると、被害を大きくして行くだけなんだ。一刻も早く奴らの本拠地を叩き潰して、みんな安心して生活出来るようにしなければ!」

「しかし甲児くん、そう簡単に本拠地が突き止められると思っているのか? 突き止める前に、万一敵に感づかれでもしたら、かえって奴らを凶暴化させ、今まで以上に被害を出す事になるかも知れないんだ!」

「意外だなぁ、鉄也くん。キミらしくないぜ。こういう事には決断が必要だよ。いつまでもグズグズと戦いを続けているべきじゃないと思うんだがな」

確かに、剣鉄也はこんなに保守的な性格じゃなかった筈。もしかすると、戦いを終わらせたら自分の居場所が無くなっちゃうから?なんて、邪推したくなって来ます。

鉄也は、結論を兜 剣造博士に委ねます。

「所長! 所長の意見を聞かせて下さい。これじゃあいつまでも平行線です」

「お父さん」

「!!」

甲児としては何の他意も無く、自分の父親を「お父さん」って呼んだだけですが、鉄也が過敏に反応します。甲児に対する過剰なライバル心が鉄也に芽生えたのは、やはり兜博士が原因みたいです。

その兜博士は、光子力研究所から出向中の弓教授と相談する、との結論でお茶を濁します。実の息子だから甲児の意見を却下出来ないんだ、と鉄也は邪推したかも知れません。

鉄也と甲児の結束が完全に崩れた最悪のタイミングで、また新たなミケーネ戦闘獣が接近して来ます。

「鉄也くん! 甲児! 冷静に行動するんだ。いいな!」

グレートマジンガーとマジンガーZの出撃が(それぞれのテーマ曲も)交互に描かれるという、本来ならば最高に燃えるシチュエーションなのに、鉄也のモノローグは甲児に対する罵詈雑言ですw

「くそっ、兜甲児なんかに負けられるか! 俺は誰にも救われない孤児なんだ。兜博士の手の中で、ぬくぬくと生活出来るアイツとはワケが違うんだ!」

念を押しておきますが、剣鉄也はこの番組の主人公であり、全国のチビッコ達の模範となるべきヒーローなんですw

「鉄也くん、戦闘獣を爆破するな。負傷させて相手の本拠地に向かわせよう」

「そんな呑気な事をしていられるか! 1年前の作戦とは違うんだ! 今はスピードだよ。挑戦して来るヤツは、叩き潰すんだ!」

そう言って鉄也は、なぜかグレートマジンガーを海中へと潜らせます。

「おい、鉄也くん! 決定した作戦だ! 勝手に変更しちゃダメだ!!」

作戦決定は後延ばしにされた筈ですが、兜博士が甲児の提案を採用するシーンがカットされたのかも知れません。だとしたら、ますます鉄也の対抗心を煽った事でしょう。

グレートが海から出て来ないもんで、Zは単独で戦闘獣ゴールド・フェニックスと戦う羽目になります。思えば毎回、どんなスペックを備えてるか全く不明な敵を迎え撃つワケですから、マジンガーのパイロットってのは実に恐ろしい職業です。

ゴールド・フェニックスは素早い動き&大量の速射ミサイルで、マジンガーZに一撃を食らわせます。

「うわあぁぁ! てっ、鉄也くぅーん!!」

海に墜落するZをモニターで見ながら、鉄也はほくそ笑みますw

「馬鹿だなぁ。ヤツらが攻めて来てるのも忘れて、何が作戦だ。用も無いのに海に潜ったとでも思ってるのか!」

急浮上したグレートは、ゴールド・フェニックスに背後から攻撃を仕掛けます。

「ドリルプレッシャーパンチ!!」

不意を突かれ、弱点である人面部分に風穴を開けられたゴールド・フェニックスは、もはや戦闘能力を失った状態。泳がせて本拠地まで案内させるにはうってつけ、なのですが……

「生き残る為には、こうしなくちゃならないって事を分からせてやる! ブレストバーン!!」

グレートは間髪入れずに必殺技を浴びせます。

「鉄也くん! そいつをやっつけてしまったら、敵の本拠地が突き止められないぞ!」

「うるさい、黙って見てろ! 俺のやり方に口を出すなっ!」

「鉄也くん、逃がせ! 逃がすんだっ!」

慌てて浮上したマジンガーZの目前で、爆発したゴールド・フェニックスは海の藻屑となっちゃいました。

「鉄也くん、どうしてキミは!?」

「ふんっ、あばよ!」

捨て台詞を吐いて、グレートはサッサと引き上げて行きます。全国のチビッコ憧れのヒーローが「ふんっ、あばよ!」ですよw

「見損なったわ! あなたってそんなにちっぽけな人間だったの!?」

さすがにパートナーの炎ジュンも、帰還した鉄也に食ってかかります。

「ちぇっ、俺にお説教するつもりかい。兜甲児と俺とは、根っから違うんだよ。何と言っても、所長と俺とは血の繋がらない、赤の他人だからな!」

ジュンは思わず鉄也にビンタを繰り出します。

「鉄也! あなた、いつからそんなヒガミ根性を持つようになったの!?」

「……俺だって血の通った人間だぜ。感情だってあるんだ。所長に庇われて、ぬくぬくと暮らしてる兜甲児のお坊っちゃんぶりが、気に入らねえんだよ!」

甲児は別にぬくぬく暮らしてるワケじゃないですから、こりゃ言いがかりもええとこです。

「アイツのやり方がまかり通ったら、俺たちはどうして今まで命を懸けてやって来たのか、分からないじゃないか!」

「…………」

「これで弓さやかが帰って来てみろ。2つの家族の間で、俺たちはハミダシ者になるだけなんだ!」

「…………」

アメリカにいる甲児のパートナー=弓さやかは、光子力研究所の所長である弓教授の一人娘です。そんなサラブレッドな2人に対して、鉄也とジュンは兜博士に拾われた孤児。気持ちが解るだけに、ジュンは何も言えなくなっちゃいます。

「俺たちが生き残る為には、兜甲児に勝つしか無いだろう!?」

「鉄也……」

被害妄想と言ってしまえばそれまでだけど、肉親の愛に恵まれなかったがゆえ、それに執着せずにいられない心理は理解出来ます。過酷な訓練&実戦に耐える心の拠り所が、鉄也にとっては兜博士の存在だった。

そんな2人のやり取りを、物陰で兜博士が聞いてました。今、一番ツラいのはこの人かも知れません。

さて、それにしてもミケーネ軍団の諜報スキルには目を見張るものがあります。整列する部下たちを前に、地獄大元帥はこんな指令を下しました。

「いよいよ我々にもチャンスが来た。強敵・剣鉄也と兜甲児の間がうまくいっていない! 今こそヤツらの隙につけ込んで総力戦を挑み、一気に世界制覇を成し遂げてしまうのだ!!」

せ、せこい……w けれども、実に理に適った立派な作戦です。まずは諜報部隊のキャットルー軍団が、光子力研究所に戻った甲児を襲撃します。それを知った弟=兜シローが鉄也に助けを求めるのですが……

「大変だよ! お兄ちゃんが、甲児お兄ちゃんがキャットルー達に襲われているんだ!」

「ええっ?」

「助けて、早く助けて! ねえ早く!!」

敵の襲来となれば、さすがに鉄也も動かざるを得ない……と思いきや、兜博士の無線連絡を受けて再び心を閉ざしちゃいます。

「鉄也くん! 至急、管制室まで来てくれたまえ! 鉄也くん、聞いてるのかっ!?」

「…………」

敵は更に戦闘獣グレート・マンモスを光子力研究所へと送り込み、マジンガーZにドッキングしようとするジェットパイルダーを今回も執拗に攻撃させます。

一方、科学要塞研究所にいる鉄也は管制室まで足を運んだものの、まるで魂が抜けたかのように無表情です。

「鉄也お兄ちゃん! 甲児お兄ちゃんの兄貴は、鉄也お兄ちゃんじゃないか! 僕たちみんな兄弟みたいなもんじゃないかっ!! ねえ、何をそんなに怒ってんだよぅ!?」

「…………」

シロー必死の叫びにも、鉄也は反応しません。眼が完全にイッちゃってますw

「鉄也くん、つまらん事にこだわらんでくれ。シローの言う通り、私たちは親でも子でもない。お互いに心の通じ合った兄弟として、この日本を悪の手から救わなければならんのだ!」

「…………」

つまり、血の繋がりなんか関係ない。甲児も鉄也も、所員みんな含めて分け隔てなく兄弟なんだ!って兜博士は言ってるワケだけど、言い方が難解で鉄也に伝わらなかったかも知れませんw

「鉄也のバカ!」

見かねたジュンが、ビューナスAを出撃させ、光子力研究所に向かいます。

そして『マジンガーZ』からのファンが待ちに待った、我らがヒロイン=弓さやかもようやく帰国し、赤いスポーツカーで颯爽と登場します。(声優さんのギャラとかスケジュールの問題で登場が遅れたんでしょうか?)

ビューナスAとボスボロットの参戦により、ようやく甲児はマジンガーZの起動に成功しますが、今回の戦闘獣はグレート・マンモスと名乗るだけあって強敵です。

そこでいよいよ、我らが剣鉄也が動き始めます。どのタイミングで我に返ったのか描かれてないんだけど(カットされた?)、主人公がいつまでもノイローゼじゃ話が進みませんからw

「所長、俺はどうかしていたんだ。甲児くんより兄貴のクセに、変にひがんだりして……甲児くん、いま助けに行く! 待っていてくれっ!」

しかし、出撃の遅れは敵にとって大チャンス。グレートマジンガーの出撃を待ち構えてた、今回3機目の戦闘獣=バルカニアの奇襲攻撃により、あっけなくグレートは墜落しちゃいます。

「残念だ。我々の戦力は完全に分散させられてしまった!」

兜博士の言う通り、ミケーネ軍の術中にまんまとハマった科学要塞研究所は、またもや戦闘要塞デモニカの猛攻撃を受ける羽目になります。残る戦力は、さやかが搭乗するダイアナンAのみ。

「お父様! 私に出撃させて!」

「ま、待て! グレートマジンガーでさえ手に負えないのだ。お前の手に負える相手ではない!」

娘のムチャを諫める弓教授に、兜博士がある覚悟を胸に秘め、進言します。

「弓博士、お願いがあります。下の避難室に移って頂きたい!」

「兜博士……」

「私は、鉄也くんを見殺しには出来ん。残された手段がある限り、彼を助けます!」

「お父さん……」

「シロー、行くんだ」

「兜博士、私があなたを1人置いて避難する事が出来るでしょうか? あなたが甲児くんと同じように鉄也くんやジュンくんを想う気持ちはよく解ります。いや、私だって鉄也くんやジュンくんの父親と同じなんです!」

「弓博士……」

一方、何とか闘志を取り戻した鉄也は、満身創痍になりながらも捨て身の攻撃で戦闘獣を撃破! ところがその爆風をモロに受けたグレートマジンガーが断崖の下へと転落し、鉄也は気を失ってしまいます。

1年前、絶体絶命のマジンガーZを圧倒的な強さで救った、あの神々しいまでのグレートマジンガーの勇姿が、まるで幻みたいに思えてしまう体たらく。

どんなに強い戦士であっても、心の弱点だけは克服出来なかった。完全無欠な戦闘員として登場した剣鉄也だからこそ、この脆さ、人間臭さは痛烈に我々の心を揺さぶります。

さて、いよいよ地獄大元帥はグレートにトドメを刺すべく、要塞デモニカを方向転換させます。

「兜博士、要塞が方向を変えている! グレートマジンガーを攻撃するつもりらしい……」

「…………」

超合金ニューZで装甲されたグレートとは言え、巨大要塞の体当たりをマトモに食らったらどうなるか分かりません。少なくとも、生身の人間である鉄也の生命は……

頼みの綱であるマジンガーZもビューナスAも、まだ戦闘獣グレート・マンモスと交戦中で鉄也を助けることは出来ません。

グレートマジンガーは、一体どうなってしまうのか? そして剣鉄也の運命や如何に!?

(つづく)
 
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『グレートマジンガー』最終章―2

2018-11-13 05:30:13 | アニメーション









 
前回、科学要塞研究所の危機を救うべく駆けつけた兜 甲児&マジンガーZの姿を見ても、地獄大元帥が大したリアクションをしなかったのが不満だと書きました。

地獄大元帥とは、マジンガーZによって地獄に送られたドクターヘルが、ミケーネ帝国の支配者=闇の帝王によって戦闘獣に改造され蘇った、暗黒大将軍に代わる大幹部です。

だからマジンガーZに対しては特別な畏怖、あるいは憎しみがあって然るべきなのに……って思ったワケですが、この第54話じゃ一転、冒頭からZの等身大人形(わざわざ造ったの?w)に激しく八つ当たりする、実に大人げない地獄大元帥の姿が描かれてます。

その様子を見ていた、ミケーネ諜報部を束ねるアルゴス長官が、大元帥に戦闘獣のレンタルを依頼して来ます。

「貴様がその様に興奮していては、返り討ちに遭うのは目に見えている」

だからアルゴス長官が代わりに指揮を執るよう、闇の帝王から命令が下った次第です。

「俺が行くのはあくまで貴様の身代わりだ。だから戦闘獣も貴様の物を連れて行くのだ。俺が必ずドクターヘルの恨みを晴らして来てやる!」

帝王からの命令とは言え、何となく男気も感じさせるアルゴス長官の申し出に、地獄大元帥も渋々ながら戦闘獣ゴーグラーの貸出を承諾します。

前番組『マジンガーZ』における、あしゅら男爵やブロッケン伯爵といった敵幹部たちのいがみ合い、罵り合いは実に無邪気で子供じみたもんでしたが、『グレートマジンガー』は敵組織もやや大人っぽい感じに演出されてます。

そんなワケで、敵が今回狙うのはマジンガーZ&兜甲児。主役であるグレートマジンガーの影がだんだん薄くなりつつあるのは、決して偶然ではありません。


☆第54話『打倒デモニカ!! 無敵のダブルアタック!!』

(1975.9.14.OA/脚本=藤川桂介/演出=大貫信夫/作画監督=上村栄司)

さて、甲児は死んだものと思ってた父=兜 剣造博士と、十数年振りに涙の再会を果たします。

「甲児……」

「お父さん……」

「……立派になったな、甲児」

剣造だけじゃなく、弟のシローや悪友のボス、ヌケ、ムチャらも甲児の帰還を手放しで喜びます。

科学要塞研究所で祝賀パーティーも開かれ、すっかりお祭りムードの中、我らが主人公=剣 鉄也だけは表情が冴えません。

「鉄也?」

パーティー会場からそっと出て行く鉄也を、パートナーの炎ジュンが追って行きます。兜、剣、弓といった苗字は実在しそうな気がしなくも無いけど、さすがに炎さんはおらんやろ!って思いますよねw

「おう、甲児。この際言っとくけどよ、あの剣鉄也にだけは負けねーでくれよ」

遂に最後まで本名が明かされなかったボスは、いつも鉄也にバカにされ、見返してやる機会を待ってたみたいです。

「いやぁ、彼には適わないよ。何て言ったって僕には1年のブランクがあるからな」

「なぁに、その分はボスボロットが応援するって!」

ボスに悪気は全く無いんだけど、鉄也が孤立しちゃう図式がこうして出来上がって行くワケです。

「やっぱり此処だったのね」

研究所の管制塔で独り佇む鉄也に、ジュンが声を掛けます。2人とも幼少期に兜博士に拾われ、プロの戦闘パイロットとして育てられた孤児なんです。

「私達には、此処が似合いの場所なのね」

「ふっ……俺達には何年経っても、巡り会う肉親なんて無いんだもんな」

親の顔も知らない2人にとって、兜博士は父親そのもの。実の息子である甲児やシローよりも、一緒に過ごした月日はずっと長いんですよね。

と、その時、管制塔のレーダーが未確認飛行物体の移動を捉えます。

「光子力研究所に向かってるわ!」

「まだ誰にも知らせるな。俺が調べて来る!」

祝賀パーティーを台無しにさせまいとする気遣いと、自分自身の存在意義を確認したい気持ちが、鉄也の中にあったのかも知れません。彼のアイデンティティは戦うことでのみ保たれる。

ところが、そんな鉄也のコンプレックスに追い討ちをかける事件が起こってしまいます。グレートマジンガーと合体すべく発進したブレーンコンドルが、途中でいきなり制御不能に陥り海中へと墜落、そのまま鉄也は気を失っちゃうのでした。

実はアルゴス長官の片腕=ヤヌス侯爵がパーティーの招待客を装い、研究所に潜入してブレーンコンドルに細工を施したワケです。

「ふふふ……アルゴス長官、我々はもう勝ったも同然です!」

そんなセコい細工しなくても、時限爆弾でも仕掛けて研究所ごと吹っ飛ばした方が早いと思うんだけどw、今回の目的はあくまでマジンガーZへの復讐なんですよね。

つまりグレートマジンガーさえいなければ、マジンガーZなど簡単に捻り潰せると敵は思ってる。ところがどっこい、前回も書いたように今のZは1年前のZとは違うんです。

素早い動きが特徴の戦闘獣ゴーグラーは、緊急発進したジェットパイルダーとマジンガーZがドッキングする瞬間を狙って攻撃を仕掛けて来ます。

パワーアップはしたものの、出撃プロセスにかかる時間だけはグレートに大きく劣るZ。敵はその弱点を突いて来るワケです。

ドッキングを妨害され、棒立ち状態のマジンガーZに戦闘要塞デモニカのミサイルが降り注ぎ、爆撃の衝撃でZは倒れちゃうんだけど、甲児はその瞬間こそチャンスと判断し、アクロバット飛行で見事ドッキングを成功させます。

英才教育を受けたプロのパイロット=鉄也が出撃に失敗した一方で、本来アマチュアの甲児がこうして天才的な操縦テクニックを発揮する。ますます鉄也のアイデンティティを揺るがせる、創り手の意図が感じられます。

とは言え、甲児にも1年間のブランクがあり、スピードが自慢のゴーグラーを簡単には仕留められません。逃げ回るゴーグラーを追うのに必死なマジンガーZを見て、アルゴス長官は一計を案じます。

「今だ! 光子力研究所を破壊し、科学要塞研究所を襲うのだ!」

ドクターヘルの仇討ち代行という本来の目的から逸脱し、アルゴス長官は二兎を追い始めちゃう。グレートマジンガーが出撃不可能という大チャンスですから、そんな色気が出ちゃうのも無理からぬ事です。

まだ実力を出し切れてないマジンガーZを見て、油断した側面もあるかも知れません。だけどZ=甲児には、捨て身で戦ってくれる仲間がいる事を忘れちゃいけません。

「ジャンジャジャ~ン!」

自分の口でファンファーレを奏でるのは、ボスを演じる声優=大竹 宏さんのアドリブなんだそうですw

「兜のヤツと力を合わせてヤツらをやっつけ、鉄也のヤツをギャフンと言わせてやるわよ!」

この、今で言う「オネエ言葉」も元はと言えば大竹さんのアドリブで、アニメキャラクターも演じる人によって創り上げられる側面があるんですね。

ボスボロットの参戦により、少なくとも戦闘獣の眼を撹乱させることは出来ます。やっぱ、持つべきものは友です。

一方、光子力研究所にある程度ダメージを与えた要塞デモニカは、続いて科学要塞研究所への攻撃を開始します。

「甲児! 早く戦闘獣を片付けてこっちに来てくれ。鉄也くんの出撃が遅れているんだ!」

「分かりました、お父さん。ようし、こうなったら空中戦だ!」

剣造からの無線連絡を受け、がぜん甲児は張り切ります。鉄也がアテにならず、甲児に運命が託される状況が前回から続くワケです。

急襲を受けた科学要塞研究所はバリアを破られ、ジュンは鉄也の救出に向かってるんでビューナスAも使えず、抗う術がありません。

「兜剣造、無駄な抵抗をやめて研究所を放棄せよ。もはや貴様たちがこのデモニカを防ぐことは不可能になったのだ!」

復讐代行にかこつけて奇襲作戦をモノにしたアルゴス長官ですが、天下を取った気分もこれまで。ジュンの活躍により鉄也&ブレーンコンドルが復活し、グレートマジンガーがいよいよ登場したのです。

「ドリルプレッシャーパンチ!」

らせん状のカッターを複数備えた必殺ロケットパンチに、アルゴス長官はあっけなく首チョンパされちゃいます。

「あっ、アルゴス長官!?」

「む……無念じゃ……」

片腕で愛人の(?)ヤヌス侯爵に看取られ、アルゴス長官は絶命します。二兎を追う者、一兎も得ず!

「うぬぬぅ~! 引き上げだぁ!!」

目の前で上官を殺されたヤヌス侯爵は逆襲に燃えるかと思いきや、迷わず撤収の道を選びますw そこはやっぱ女性らしく(?)現実的です。

「逃げる気だな? そうはさせねえぞ! ブレストバーン!!」

ようやく鉄也らしさが戻った所で、ゴーグラーを片付けたマジンガーZも駆けつけます。

「鉄也くん!」

「甲児くん、すまない。迷惑を掛けたな」

「ようし、2人揃ったところで同時攻撃だ!」

「オーケー!」

「ミサイル発射!」

「ネーブルミサイル!」

せっかくダブルマジンガーが揃ったのに、意外と地味な攻撃でw、逃げて行くデモニカに塩をまいた程度で今回はゲームオーバー。油断した幹部を1人やっつけたものの、グレートマジンガーが戦闘獣と戦わない珍しい回となりました。

そして前回に引き続き、マジンガーZがいなければ両研究所はどうなってたか分かりません。戦って勝利する事でしか自分の存在意義を見いだせない鉄也にとって、これは決して喜ばしい状況とは言えないでしょう。

そう、既に鉄也のアイデンティティは崩れ始め、心には闇が蠢いてる。

次回、我らがヒーロー=剣鉄也が豹変しますw

(つづく)
 
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『グレートマジンガー』最終章―1

2018-11-13 00:11:04 | アニメーション









 
映画『マジンガーZ 対 暗黒大将軍』、そしてTVシリーズ『マジンガーZ』最終回で颯爽と登場し、無敵の強さを見せつけたグレートマジンガー。

それゆえに新番組『グレートマジンガー』の作劇にはかなりの苦労があったらしいこと&その理由は、以前の記事に書かせて頂きました。

要するにグレートマジンガーとそのパイロット・剣 鉄也(声=野田圭一)に弱点が無さ過ぎたって事ですね。

例えばマジンガーZの場合、ジェットスクランダーを開発して空を飛ぶだけで一大イベントが組めたのに、グレートは最初から飛べるワケです。

それで更に高速で飛べる「グレートブースター」なるメカが開発されたりするんだけど、観てる我々にとって大したカタルシスにはなりませんでした。

剣鉄也のキャラクターもあまりに「出来上がった人」過ぎて感情移入しづらいって事で、2クール目あたりから年齢設定が引き下げられ、髪型や眼つきがソフトな感じに描き変えられました。

更に、政治情勢など時代の変化により「都市を破壊する描写を控えるように」とのお達しもあったそうで、戦場が山間部中心になって緊迫感も出しづらくなっちゃった。

そんなこんなで、イケイケだった『マジンガーZ』の頃とは違った苦労を強いられた『グレートマジンガー』の製作現場。この最終章(4話構成)にしても、考えに考え抜かれたであろう痕跡が見て取れます。

まだガキンチョだった当時の私は、その内容をほとんど理解出来てなかったかも知れません。何しろマジンガーZ&兜 甲児(声=石丸博也)が再登場すること以外、全く記憶に残ってなかったんです。

大人になってからビデオソフトで観直して、私は衝撃を受けました。こんなにもシリアスかつ残酷な人間ドラマが描かれてたなんて!

それはマジンガーZが新たな強敵にズタボロにやられちゃうみたいな、言わば単純なお話とは全く違うんですよね。同じ挫折でも、グレートマジンガー&剣鉄也が最強のヒーローとして登場したからこその、かなり屈折した挫折なんです。

しかも、その引き金を引いたのが実は、帰って来た我らがマジンガーZ&兜甲児だった!という残酷さ。

果たして、グレートマジンガー&剣鉄也はどうなってしまうのか!? このレビューも4部構成でお届けします。


☆第53話『偉大な勇者!! ファイト鉄也・ダッシュ甲児!!』

(1975.9.7.OA/脚本=安藤豊弘/演出=大谷恒清/作画監督=中村一夫)

グレートマジンガーの初陣から1年の月日が流れ、宿敵=暗黒大将軍もグレートとの一騎打ちに敗れ、今やミケーネ帝国軍の陣頭指揮は新キャラ「地獄大元帥」に委ねられてます。

宿敵=グレートマジンガー&科学要塞研究所との長い戦争に終止符を打つべく、地獄大元帥は右腕=ユリシーザー将軍と共にとっておきの作戦を実行に移します。

それは、戦闘獣ドカイダーを東京に、戦闘獣ギランを大阪に送り込み、グレートマジンガーとビューナスAを個別に誘き出し、そのスキに戦闘要塞デモニカで科学要塞研究所を破壊するという陽動作戦。

そんな事が出来るんなら、もっと早くやりゃ良かったやんって思うんだけど、都市破壊の描写は控えるように言われてたから仕方ありませんw

どうせもう最後だから思いっきりやっちゃえ!って、番組スタッフが思ったのかどうか分かんないけど、グレートとビューナスが駆けつけた時には既に、東京と大阪は壊滅状態でした。

ただし、戦闘獣が街を破壊する過程や、逃げ惑う市民たちの姿はやはり描かれてないんですよね。だからイマイチ緊迫感が無い。(『マジンガーZ』の頃はちゃんと見せてました)

それはともかく、地獄大元帥も今回とっておきの戦闘獣を送り込んだらしく、東京のグレートマジンガーは苦戦します。

大阪に駆けつけたビューナスAを操るのは、炎ジュン(声=中谷ゆみ)。恐らくアニメ史上初と思われるアフリカ系アメリカ人と日本人とのハーフで、ボインぼよよ~ん!なヒロインです。

ビューナスAは戦闘スキルも高く、スクランダーと合体して空を飛んだり、光子力ビームを発射したり等、マジンガーZを彷彿させるスペックも備えてます。

もちろん光子力(おっぱい)ミサイルも備えており、今回はマシンガンの如く撃ちまくるんだけど(数百発撃ってる! あのか細い身体のどこから湧いて来るのか!?)戦闘獣ギランには通用せず、右腕と左脚を切断されてあえなく戦線離脱。

「待てギラン、もういい。直ちに東京のドカイダーの応援に行け」

ビューナスAにトドメを刺そうとする戦闘獣ギランを、ユリシーザー将軍はなぜか止めちゃうんですよね。

敵の戦力は1つでも排除するに越した事ないのに、この詰めの甘さ。意図不明ですw 昭和のヒーロー番組にはよくある事で、我々は子供ながらに「なんでやねん!」って、よくツッコんだもんです。

さて、ギランが東京に移動した為、グレートは2機の戦闘獣を相手にしなくちゃいけません。

初登場時に圧倒的な強さを見せつけられたもんで、たった2機を相手に苦戦するグレートマジンガーには違和感を覚えますが、1年の間に敵もグレートを研究し尽くしたって事でしょう。

マジンガーZがズタボロにやられるまで、すなわち息子=兜甲児がいよいよ殺されそうになるまで、兜 剣造博士(声=柴田秀勝)が人類の切り札=グレートマジンガーを出撃させなかったのは、こうして敵に研究されるのを防ぎたかったから。……って解釈するファンもおられたそうで、確かにそう考えると納得出来ます。

グレートが東京で足止めを食ってるスキに、地獄大元帥は戦闘要塞デモニカで科学要塞研究所を集中攻撃。バリアも破られ、爆撃の煽りを食らった所長=兜剣造が負傷(故障?)しちゃいます。

「いかん、このままでは科学要塞研究所が危ない!」

見かねてヘリコプターで駆けつけたのは、光子力研究所の所長である弓教授(声=八奈見乗児)。兜博士に代わって陣頭指揮を引き受けた弓教授は、アメリカ・ワトソン研究所に留学中の、あの人に電話をかけます。

「今、科学要塞研究所を救うには、君がマジンガーZで出動するしか無い!」

そう、あの大惨敗から丸1年、我らが兜甲児がいよいよ再登場です。とは言え場所はアメリカ。チャーター便ですぐに出発したとしても、日本に到着するまで何時間かかる事やら……

と思いきや推定・約5分後には、甲児を乗せたジェット機が富士山の上空に!w せめてもっとSF的なメカで、ワープ移動とかして欲しかった!

「やっと着いたぞ」

やっと?w

細かい事は置いといて、とにかく甲児はパラシュートで光子力研究所に緊急降下、すぐさまジェットパイルダーに乗り込みます。1年振りに見るマジンガーZの出動シーンに、当時の視聴者は全員、鳥肌を立てた事でしょう。

科学要塞研究所を守ろうとしたボスボロットとロボットジュニアはあっけなく敗退しますが、上空を見て歓喜の声を上げます。

「あっ、マジンガーZだ! 甲児お兄ちゃーん!!」

「ななな何っ? やっ、甲児だ!!」

ロボットジュニアとは、甲児の弟=シロー(声=沢田和子)に与えられた、言わば操縦訓練用のロボット。少年野球をモチーフにしたそのデザインは、一般公募により選ばれたもの。

だけどこれ、人気無かったですねw チビッコ視聴者が自己投影出来る(そしてオモチャが売れる)キャラクターにしたかったんでしょうけど、チビッコは(少なくとも当時の私は)そんなもんに自己投影したりしません。自己投影する対象は甲児や鉄也であり、乗りたいのはマジンガーなんだから!

それはともかく、ボス(声=大竹 宏)とシローの声援を受けて頷き、陥落寸前の科学要塞研究所前を通過するマジンガーZを、兜博士&弓教授の背中越しに捉えたショットの格好良さたるや!

「あなたが甲児を呼んだんですか……」

兜博士は1年前、切り札のグレートを出撃させて甲児の生命を救ったワケですが、彼がアメリカに旅立つまで姿を現しませんでした。サイボーグになった姿を晒して動揺させたくなかったのでしょう。

つまりこの父子は今回、甲児の幼少期以来の再会となり、それが剣鉄也の心を大きく揺らす事態へと繋がって行くのです。孤児だった鉄也にとって兜博士は、師弟関係を超えた「父親」そのものなんですよね。

「マジンガーZごときに何が出来る? よぅし、叩き落としてやれ!」

地獄大元帥はマジンガーZの姿を見ても動揺しません。そりゃそうでしょう、1年前のZはミケーネの戦闘獣に手も足も出なかったんだから。

でも、それにしたって地獄大元帥よ、あんたの正体はドクターヘルじゃなかったの? マジンガーZは誰よりも憎い仇であるからして、恨み言の1つ位こぼしても良さそうなもんです。

とにかくマジンガーZをナメてかかる地獄ジジイだけど、実はこのZ、1年前のZとは違うんです。

なぜか劇中では説明されず終いなんだけど、あれからZは装甲をグレートと同じ「超合金ニューZ」に変更、同時に大幅なパワーアップ改造が施されたっていう裏設定が、当時のテレビ雑誌に掲載されてました。

つまり今のマジンガーZは、グレートマジンガーと同等のポテンシャルを秘めてるワケです。そんな事も予想せずにZをほったらかしにしてたミケーネ帝国は、なかなかのオマヌケちゃんですw

一方、東京都心のグレートは、飛行ニユットであるグレートブースターを切り離し、戦闘獣に体当たりさせるというヤケクソな戦法で何とか勝利を収め、急いで科学要塞研究所へと駆けつけます。

「甲児くん!?」

「鉄也くん!!」

「来てくれたのか!? よぅし甲児くん、行くぜ!」

「おうっ!」

ファン待望の、ダブルマジンガー揃い踏みが遂に実現した瞬間です。

映画『マジンガーZ 対 暗黒大将軍』でも共闘はしてるけど、あくまでもグレートがZを助ける形だったし、テレビ版のグレートはZが完全に動けなくなった後の初登場でした。

「マジンガーZさえ現れなければ勝てたものを! だが今に見てろ~」

予想外のダブルマジンガー連携攻撃に、慌てた地獄ジジイ達はなすすべ無く退散して行きます。「マジンガーZさえ現れなければ」っていう台詞に、1年前に悔しい想いをしたZ&甲児のファンは溜飲を下げた事でしょう。

「今日の勝利は、キミのお陰だ」

「いや違う。みんなで力を合わせたからだ」

「ホントによく来てくれた。ありがとう」

この時の鉄也は、本当に心から甲児に感謝してただろうと思います。だけど1年前は完全に逆の立場だったワケで、心のどこかにわだかまりが芽生えたとしてもおかしくない。

そう、1年前のあの時こそが、グレートマジンガー=剣鉄也にとって最高の晴れ舞台だった。最も存在意義が認められた瞬間なんですよね。

「よっ、ご両人!」

ジュンの掛け声にみんなが笑い声を上げ、今回のところは大団円。だけど、やがて我らがヒーロー=剣鉄也がアイデンティティを見失い、それがとんでもない悲劇を招く事になるのです。

(つづく)
 
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