ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『大激闘/マッドポリス'80』#01

2018-11-17 17:17:25 | 刑事ドラマ'80年代










 
☆第1話『マフィアからの挑戦』

(1980.4.8.OA/脚本=永原秀一/監督=関本郁夫)

1980年代、日本の暴力団は幾多の内部抗争と政治との黒い癒着の末、全国統一を成し遂げ、更に海外のマフィアと手を結び、日本全土を制覇する巨大な犯罪組織を形成した。ジャパンマフィアの誕生である。

警察庁はこの巨大組織の壊滅を目的とし、選りすぐりの精鋭部隊を編成し、ジャパンマフィアに戦いを挑んだ。この部隊の唯一の目的は、ジャパンマフィアの壊滅である。

恐れを知らぬ彼らの行動を、組織は「MP」すなわち「マッドポリス」、命知らずの警官と呼んで恐れおののいた!

↑ 毎回オープニングで語られるナレーションですが、これが本作の全てですw 描かれるのはマッドポリスvsジャパンマフィアの果てなき殺し合いのみ。謎解きはおろか捜査シーンも無く、ひたすら暴力!射殺!暴力!破壊!暴力!乳首!暴力!足の裏!の繰り返し。

マッドポリスは警察手帳も手錠も持ってません。必要無いからですw 逮捕などせず射殺するだけなもんで、銃さえあれば万事オッケー。

そして彼らには、銃よりも恐ろしい「顔」という究極の武器がありますから、警察手帳なんか無くても簡単に情報を聞き出せちゃう。

「おい、質問にだけ答えい。答えへんかったらワレ、殺すぞ」

いちおう肩書きは刑事だけど、台詞は普段やられてる凶悪犯の役とちっとも変わらないw

そんなマッドポリスのメンバーは、当時「狂犬俳優」と呼ばれた渡瀬恒彦(氷室キャップ)、「不良番長」こと梅宮辰夫(松村刑事)、「ピラニア軍団」の志賀 勝(芹沢刑事)と片桐竜次(新田刑事)、「ミスタースリムカンパニー」の中西良太(原田刑事)、4代目「クラリオンガール」の堀川まゆみ(緑川刑事)。

そしてジャパンマフィアの首領に島田正吾、幹部に仲谷 昇。第1話ゲストに土屋嘉男、中尾 彬、原 良子、辻 萬長と、とにかく怖い顔しか画面に映りませんw 意図的に悪役俳優だけを揃えたワケです。

放映枠の日本テレビ系列・火曜夜9時は当時、石原プロの『大都会』シリーズを筆頭に東宝の『大追跡』、セントラルアーツの『探偵物語』と続くアクションドラマの固定枠で、もう刑事アクションに関しては「やり尽くした」感があり、創り手たちはとにかく新しいこと、既成の枠から外れたことをやりたかった。

そこでメインライターの永原秀一さんが持ち出したのがドン・ペンドルトンのシリーズ小説『マフィアへの挑戦』で、第1話のサブタイトルにそれが反映されてます。

家族をマフィアに殺されたベトナム帰還兵が、たった1人で全米各地のマフィアを壊滅させて行くというハードな小説の世界観と、今回製作にあたった東映東京撮影所の不良性感度を融合させ、さらに当時大ヒットしたオーストラリア映画『マッドマックス』の「近未来」というモチーフを取り入れたスタイリッシュなハードアクションTV映画が『大激闘/マッドポリス'80』という企画。

ところが、この第1話の仕上がりを観たら、マッドポリスがその辺のドブ川とか採石場とか廃車処理場でドンパチやってたり、ジャパンマフィアが商工会議所みたいな部屋で集会やってたりして、あまりに泥臭くて近未来感ゼロなもんでw、永原さんは激怒されたそうです。

要するに監督の関本郁夫さんにそういったセンスが無く、企画の意図する世界観がほとんど表現出来てなかった。まぁ、ちゃんと表現出来てても結果は同じだったかも知れないけどw、とにかく視聴者は戸惑い、現場のスタッフ&キャストたちも混乱しちゃったそうです。

私は当時観てなくて、ちゃんと観たのは近年になってからだけど、確かにこれじゃ単に『西部警察』のバッタもんにしか見えず、創り手の目指す「新しさ」には程遠いと感じました。

で、視聴率も低迷し、このままじゃマズイってことで、長谷部安春さんや村川 透さんら東映外部の監督さん達が参入し、軌道修正が図られていく事になります。

それで徐々に面白くなり、熱烈なファンもつくようになるんだけど、その反面、ひたすら暴力しか描かれない内容に対する批判やクレームも増えて行ったそうです。

それでも創り手たちは「この番組には銃撃戦と人殺ししかテーマが無いって? その通りだ!」「単なる暴力番組? 何が悪い!?」ってw、意に介さず我が道を突き進んだ。そこが素晴らしいですよね。現場のスタッフ&キャストはみんな燃えてたそうです。

ところが! 2クールの折り返し地点を過ぎた第16話で、唐突にナレーターが「ジャパンマフィアは壊滅した」と宣言、翌週からタイトルが『特命刑事』に変更され、桜木健一&山岡 健という顔がちっとも怖くないレギュラーキャストが加わっちゃう。

つまりソフト路線への変更&テコ入れが敢行されたワケだけど、その回の台本が届くまでプロデューサーすらそれを知らされてなかったというw

つまりテレビ局の上層部やスポンサーたち=会議室の連中が、現場の意向をいっさい無視して路線変更を強行したワケで、それはそれでメチャクチャ面白い話ですよねw

その件も含めて『大激闘』『特命刑事』という番組、その魅力と変遷の歴史を今、あらためて見直すべきかも知れません。

セクシーショットは、マッドポリスの紅一点・緑川悠子に扮した堀川まゆみさん、当時21歳。

スペイン系フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれたハーフで、沖縄出身。4代目クラリオンガールに選ばれモデルとしてデビュー後、松任谷正隆プロデュースにより歌手デビュー。

女優としては本作がデビュー作で、内容が内容だけに当然ヌード&濡れ場が期待されたものの、せいぜいチャイナドレス姿で拉致監禁、そして緊縛によるオッパイ強調が関の山。パンチラすら見せない不真面目さで視聴者を裏切ってくれました。いったい何をしに出てきたのか?

'82年には武智鉄二監督の本番映画『華魁』に主演することが発表されながら、クランクイン直前に「本番の意味を取り違えていた」との理由で突如降板。タイアップ企画のヌード写真集のみリリースされるも、所属事務所との関係がこじれて女優業は休止。

'85年以降はMAYUMI名義で音楽活動を再開し、作曲家として稲垣潤一、今井美樹、斉藤由貴といったアーティストらに楽曲を提供されてます。

美人ではあるけど強い個性も演技力も無く、それで脱ぎもしないという覚悟の無さでは、女優としての居場所が無くなるのは仕方なかったと言わざるを得ません。初回から意味なく脱ぎまくる『警視庁殺人課』の一色彩子さんを見習うべきでした。

だけど作曲家としては成功されてるので、人生のちょっとした寄り道に『大激闘』があったという感じでしょうか。当時のアクションドラマには、そういう女優さんも多かったように思います。
 

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『大激闘/マッドポリス'80』1980

2018-11-17 12:00:04 | 刑事ドラマ HISTORY








 
バキュン!バキューン!ドガガガガ!キキーッ!! ドッカーン!! なんじゃワレェーっ!?

↑ 擬音だけで表現すれば、こんな番組ですw せっかくドル箱番組に育てた『大都会』シリーズをテレビ朝日に奪われた(『西部警察』と改題)、日本テレビ火曜夜9時=伝統のアクションドラマ枠。

その腹いせに(?)渡 哲也の弟である渡瀬恒彦を主演に迎え、ド派手なアクション路線で1980年の4月からスタートさせた番組が『大激闘/マッドポリス’80』でした。制作は日本テレビ&東映、通算26話。

舞台を近未来(と言っても198X年)とし、全国の暴力団が結集した悪の巨大組織「ジャパンマフィア」を叩き潰すべく、警視庁が極秘裏に結成させた特命部隊が「マッドポリス」である、ってな設定。

だから一応は刑事ドラマなんだけど、描かれるのはマッドポリスvsジャパンマフィアの果てしなき抗争劇であり、捜査もしなければ逮捕もしない。ただひたすら撃ち合い、殺し合うのみw キャッチフレーズは「1秒に1発撃ち、1分に1人死ぬ!」

しかも、我らがヒーローであるべきマッドポリスの顔ぶれが… 上の画像をご覧ください。あれはジャパンマフィアの幹部たちじゃないんです。いちおう皆さん正義の味方である刑事さんなのです。聞き込み捜査をしてもカツアゲしてるようにしか見えませんw

当時は野良犬キャラで売ってた渡瀬さんを筆頭に、不良番長の梅宮辰夫にピラニア軍団の志賀 勝、さらに片桐竜次、中西良太、堀川まゆみという、ワイルドを通り越して凶悪犯専門アクターのカタログみたいな顔ぶれが勢揃い!

特に志賀さん片桐さん中西さんは、他の刑事ドラマですっかりお馴染みの人達でしたからね、連続殺人犯や前科者としてw 3人共この仕事が終わったら早速『太陽にほえろ!』で悪役復帰されてましたから、水を得た魚のようにw

そんな怖すぎる顔のオッサン達がショットガンとかマシンガンを撃ちまくる姿は、どう見ても趣味で暴力や殺戮を楽しむ狂った傭兵軍団にしか見えず、マフィアの皆さんがかえって気の毒に思えて来ちゃう始末。

だから、誰もが憧れるハンサムなヒーローが悪を駆逐する、従来の刑事ドラマみたいなカタルシスがこのドラマにはありません。そこで展開されるのは、悪vs悪のひたすら野蛮な暴力と殺戮のみ!

そういう作品もあって良いと私は思います。刑事ドラマなんて五万と創られてるワケですから、これくらい思い切った飛躍をしないと埋没しちゃうだけです。

『西部警察』に負けないド派手なアクションを描く為にも、モラルや人情を一切排除したハードな世界観が必要だったのでしょう。創り手として、実に正しい判断だと私は思います。素晴らしい!

ただ1つだけ問題なのは、そんなドラマを観て、視聴者が果たして面白いと感じるのか?って事ですw

私は最近になってようやくCATVで観ましたが、ひたすらバキュン!ドガガガ!!という騒音を聴きながら睡魔と闘うハメになりましたw

自己投影出来るキャラクターや感情移入出来るドラマが無いと、やっぱキツいですよね。気持ちが入らなければ、いくら鉄砲を撃とうが車がひっくり返ろうがカタルシスは得られません。

なので残念ながら視聴率は振るわず、良識派の視聴者からは「内容が野蛮すぎる」「意味の無い暴力が多すぎる」等のクレームが殺到したんだとか。似たような事やってる『西部警察』は大歓迎されてたのに、やっぱ見た目がいかに大切かって事ですよねw

テコ入れとして第17話から爽やかキャラの桜木健一と中途半端イケメンの山岡 健を投入し、タイトルも『特命刑事』に変更したものの効果は上がらず、低空飛行のまま何とかノルマの2クール(半年)に辿り着くのがやっと……という寂しい顛末。

だけど、この作品ならではの魅力も少なからずあったんです。まず、大野雄二 作曲によるオープニングテーマがめちゃくちゃ格好良かった。ルパンよりも大追跡よりも大野さん、良い仕事をされてます。

タイトルバックの映像も格好良いんだけど、ライバルの『西部警察』に比べると破壊される車や爆破の火薬量に金銭的な格差が感じられ、B級の匂いに拍車がかかりますw

キャラクターに感情移入しづらいって書きましたけど、見かけによらず純情な志賀さん&気のいいツッパリ青年・中西さんの掛け合いは楽しかったし、片桐さんの松田優作チックなアドリブが毎回スベってる感じも好感持てましたw

そして何と言っても、自衛隊を敵に回しての血みどろの戦争を描き切った、伝説の最終回ですよね。普通なら「防衛隊」とか架空の組織に設定するところを、はっきり名指しで「自衛隊」を悪役にしちゃうアグレッシブさが素晴らしい!(恐らく空前絶後でしょう)

やはり伝説となった『警視庁殺人課』最終回(レギュラー刑事全員殉職!)と同じく、コケた番組だからこそ出来ちゃうヤケッパチの最後っ屁……だったのでしょうか?

いずれにせよ、あの時代でなければ創れないし、放送も出来ないドラマである事は間違いありません。こんな代物がゴールデンタイムに、平然とお茶の間で流れてたという奇跡!

昭和という時代が恐ろしい。マッドポリス達の顔は、もっと恐ろしいw
 

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『爆走!ドーベルマン刑事』1980

2018-11-17 00:00:15 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1980年の4月から10月、月曜夜8時にテレビ朝日系列にて、空前の刑事ドラマブームの中、どさくさに紛れて放映された番組の1つですw 制作はANB&東映、全22話。

原作は武論尊&平松伸二の漫画『ドーベルマン刑事』ですが、そのタイトルとキャラクターの名前を借りただけで、中身は全く違うお話でした。

警視庁晴海分署に創設された、白バイならぬ「黒バイ隊」と3匹の警察犬の活躍を描いた刑事アクション物で、何故これに「ドーベルマン刑事」って名前が必要なのかサッパリ解りません。警察犬はシェパードだしw

原作の知名度が欲しかったのでしょうが、原作ファンが観たら怒って二度と観なくなるんじゃないでしょうか?

ちなみに主人公=加納錠治は原作だと『俺たちの勲章』の松田優作さんをモデルにしたような、クールで一匹狼キャラのバイオレンス刑事でした。

それがこのドラマじゃ黒バイ隊の熱血隊長で、しかも演じてるのが黒沢年男さんですからねw いや、当時はクールでセクシーなキャラで売ってたのかも知れないけど、黒彪みたいにシャープな原作の加納刑事とは、あまりにイメージがかけ離れてます。

ただ、これより先に公開された劇場版『ドーベルマン刑事』の加納刑事は千葉真一さんですから、実写になると濃くて暑苦しいオジサンが演じるシステムになってたんですねw て言うか、この役が似合うのは優作さんしかいなかった事でしょう。

まぁキャスティングに対するブーイングは原作物の宿命としても、ドラマ版は作品の世界観まで漫画とは似ても似つかない、全くの別物になっちゃってました。

せめてカッコいい世界観になってれば、原作とは切り離して楽しめたと思うんだけど、これが何だかどうも、ダサかったんですねw (私感)

刑事ドラマってのは大抵、内容はイマイチでもオープニングのタイトルバックだけは格好良く出来てるもんだけど、この番組だけはオープニングの音楽からしてダサかったw (私感)

何だかやたら陽気な曲調に、青年たちの「ゴーゴー! レッツゴーファイト! ゴー!」みたいな掛け声が繰り返し入ってる上に、女性コーラス達が「パ~ヤパ~ヤ、パヤパヤパヤパヤ~♪」って唄うんですよ! 斬新すぎますw

シェパードが活躍するのは多分『太陽にほえろ!』の警察犬シリーズや『刑事犬カール』等のヒット番組を後追いしたんでしょうけど、タイトルに「ドーベルマン」って入ってるもんだから「なんでシェパード?」って思っちゃうんですよね。

……とまぁ、ツッコミどころ満載の『爆走! ドーベルマン刑事』ですが、だからこそ、この時代のTVドラマは楽しいんです。それだけ個性的って事だし、何とか他の番組とは違う事をやろうっていう、創り手達の心意気が伝わって来ます。

謎解き一辺倒の、保守的で無個性でツッコミようも無い昨今の刑事ドラマ群、その団子レースに辟易してる今だからこそ、こういう強い個性を持った作品が「素晴らしい!」って、心底から思えるんですよね。

黒バイ隊のメンバーは黒沢隊長の他に、名高達郎、星 正人、新井康弘、神保美喜、矢吹二朗、その上司に荒井注、本庁の刑事に志穂美悦子、署長に夏木陽介といった布陣。

毎回見られるバイク・スタント、そして志穂美さんがセミレギュラーって事で、ジャパン・アクションクラブの立ち回りも見所になってました。第1話にはJACのエース・真田広之さんがゲスト出演されてます。

事件物としては正直、デタラメな内容だった印象だし、黒沢年男さんは外見のみならず芝居も暑苦しかったですw

だけど、それでもやっぱり、こうして話題に事欠かないだけの個性を持った作品は、本当に素晴らしいと私は思います。
 
コメント (4)
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