ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『噂の刑事トミーとマツ』#07

2018-11-09 17:17:20 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第7話『あぁ煙突のてっぺんで』

(1979.12.5.OA/脚本=江連 卓/監督=土井 茂)

地方から上京し、貧乏暮らしをしてる20歳の青年オサム(山田隆夫)が、友人に貸した1万円を返してもらう約束を破られ、持ち金が無くてつい無銭飲食をやらかし、逃走。

しかも、借金を踏み倒そうとする友人と揉み合った弾みで、そばにいた女性を2階から転落させちゃいます。すぐ病院に搬送されたものの、やがて女性は死亡。オサムはあれよあれよと傷害致死の指名手配犯になっちゃう。

『大都会PART II』に、駐車違反の切符を切られた中年男が職務質問に答えなかった為に連行され、身に覚えのない強盗の犯人にされそうになって脱走、行き掛かりであれよあれよと罪を重ねていく『別件逮捕』というエピソード(第19話)がありました。

罪を重ねる度にテロップで罪状が表示される手法もよく似てて、恐らく後発の『トミーとマツ』が影響を受けたものと思われます。

ただし『大都会~』の方は警察側が無駄に犯人を追い詰めたせいで事態が悪化したのに対して、本作の場合はオサムの若さゆえの愚行、ほとんどが自業自得なもんで、イマイチ同情は出来ません。

むしろ、トミー(国広富之)とマツ(松崎しげる)は何とか彼の暴走を食い止め、罪を軽くしてやろうと奔走するんだけど、ヤケになったオサムは借金に苦しむ幼なじみの恵子(坂上味和)を助ける為に、とうとう警官の拳銃を奪って銀行強盗までやらかしちゃう。

で、最後は死ぬつもりで工場の煙突を登るオサムを、トミーとマツも追いかけて「あぁ煙突のてっぺんで」ってワケです。

悠に200メートルはありそうな高い高い煙突を、スタントマンの方々でしょうけど実際に天辺まで登っておられて、高所恐怖症でなくとも見るだけでクラクラしちゃいます。

「オサムちゃん、やめて! 私を独りぼっちにしないで! 私、待ってるから! ずっと待ってるから!」

結局、オサムを正気に戻らせたのは、幼なじみの恵子の言葉。トミーとマツは何の役にも立ってませんw

とは言え、アホな若者を立ち直らせたくて必死に走り回る、二人の優しさが存分に描かれたエピソードではあります。

大して面白かったワケじゃないんだけどw、恵子を演じた坂上味和さんのセクシーショットを載せたくてレビューしました。

坂上味和さんは当時18歳。『刑事犬カール2』に主演された他、『明日の刑事』『太陽にほえろ!』『特捜最前線』『私鉄沿線97分署』等の刑事ドラマにゲスト出演。『噂の刑事トミーとマツ』は第1シリーズに3回、第2シリーズにも3回登場されてます。

16歳でデビューして以来、女優業一筋。'86年に俳優・三ツ木清隆さんと結婚して芸能界を引退されました。

ヌード写真は20歳頃に撮影されたもので、素晴らしいお尻をされてます!(20歳の記念に脱がれる方が多いんでしょうか?)
 
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『噂の刑事トミーとマツ』#01―2

2018-11-09 11:11:07 | 刑事ドラマ'70年代









 
『噂の刑事トミーとマツ』第1シリーズのヒロインは、トミー(国広富之)の姉=サッチこと岡野幸子(志穂美悦子)でした。

刑事ではなく、富士見署で市民相手に護身術を指導する武道家の設定で、ちょっかいを出して来るマツ(松崎しげる)を豪快に投げ飛ばすのがお約束になってました。

気弱な弟トミーを時に厳しく、時に優しく叱咤激励する理想的なお姉さん。だけど実年齢は国広さんより2つ歳下なんだそうですw(当時24歳)

あらためてご紹介するまでもなく、志穂美悦子さんは日本で成功した唯一の女性アクションスターで、我々世代には特撮ヒーロー『キカイダー01』('74)におけるビジンダー=マリ役が忘れられません。なにしろブラウスの第三ボタンを外すと爆発するんです。

さらに『燃える捜査網』『大非常線』『新・夜明けの刑事』『明日の刑事』『爆走!ドーベルマン刑事』等の刑事ドラマや東映JACの時代劇、『女必殺拳』シリーズをはじめとする空手アクション映画や和製スター・ウォーズ『宇宙からのメッセージ』、大林宣彦監督『転校生』、つかこうへい作『二代目はクリスチャン』etc…と、記憶に残る作品は枚挙に暇ありません。『太陽にほえろ!』にもゲスト出演されました。

よりによって長渕 剛なんかと結婚して引退されてしまい、女優として円熟されていくお姿が見られなかったのは残念でした。我が青春のオナペット=石野真子さんの件といい、サノバ長渕ビッチ剛だけはホント、一生許しません。

ところで私は『トミーとマツ』を第2シリーズから観始めたもんで、私にとってこのドラマのヒロインは、交通課の「まりっぺ」こと森村万里子婦警(石井めぐみ)だったりします。

当初はほんの脇役だったのに、そのルックスの可愛さとキャラの面白さが人気を集め、回を追う毎に出番が増えて、気がつけばトミーとマツに次ぐ三番手、と言っても過言じゃない存在になっちゃった。

私も、まりっぺが好きでした。色気ムンムンってタイプとは全然違うのに、なぜか彼女にはエロを感じてました。

ちっとも優等生じゃないのが良かったですよね。自己チューで調子が良くて、なりふり構わずトミーへのラブアタックを繰り返す。さんざんマツから罵詈雑言を浴びても全然へこたれない。で、しょっちゅう犯人に捕まっては縛られる。それがまたエロいw

石井めぐみさんは当時、早稲田大学に入学したばかりの21歳。自主製作映画に主演したのがキッカケで女優デビューし、テレビ初出演が『トミーとマツ』でトントン拍子にスターの仲間入り。『オレたちひょうきん族』にもレギュラー出演されてました。

Wikipediaによると、けっこう波乱万丈な人生を送られており、現在は国立市議会議員になられてます。

ヌード撮影は1982年。巨匠・篠山紀信氏によるもので、ちょうど『トミーとマツ』第2シリーズの頃。ちっパイだけど、実に素晴らしいお尻をされてます。
 
 
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『噂の刑事トミーとマツ』#01―1

2018-11-09 11:09:31 | 刑事ドラマ'70年代





 
☆第1話『二人合わせて一人前?』

(1979.10.17.OA/脚本=長野 洋/監督=井上芳夫)

日本におけるバディ物刑事ドラマの元祖、とWikipediaには記されてますが、それ以前にも『俺たちの勲章』や『華麗なる刑事』『二人の事件簿』等、バディ物の傑作ドラマは存在します。

だけど『あぶない刑事』以前で最もヒットした、バディ物刑事ドラマの決定版と言えば、やっぱり『噂の刑事トミーとマツ』に尽きるかと思います。

とにかく「国広富之&松崎しげる」という、大映テレビならではの奇抜な組み合わせと、脇を固める実力派キャスト陣の充実。

そして『太陽にほえろ!』第1話も出掛けられた長野 洋さんを筆頭とする、優秀なライター陣。まだギャグが抑えめだった初期エピソードをあらためて観ると、基本のストーリーがしっかりしてるからこそ笑えるドラマになった事がよく分かります。(面白いコメディ全てに言える共通点ですね)

第1シリーズは1979年の秋から81年の春まで。水曜夜8時(TBS系)の放映で、『太陽にほえろ!』卒業生の宮内 淳さん主演『あさひが丘の大統領』(日テレ系)の裏番組だった為、私がリアルタイムで観たのは1982年放映の第2シリーズでした。

だから個人的に愛着があるせいもあるんだけど、それを抜きにしても、このドラマ独自のノリが存分に楽しめるのは、やっぱり脂が乗り切った第2シリーズの方かと思います。

ベタなイメージが強くて、敬遠しておられた昭和世代の方も多いでしょうが、これはホントに面白いドラマですから、機会があれば是非(特に第2シリーズを)試しに観てみることをオススメします。

さて、トミーこと岡野富夫(国広富之)と、マツこと松山 進(松崎しげる)を囲む、警視庁富士見署捜査課の面々です。

御崎課長(林 隆三)、片桐警部補(清水章吾)、高村部長刑事(井川比佐志)、南田刑事(神山卓三)、西山刑事(井上和行)、東刑事(成川哲夫)、そして本庁の相模管理官(石立鉄男)。

お目付け役の相模管理官が御崎課長と警察学校の同期生で、殉職したマツの父親の部下だった縁もあり、トミーとマツが繰り返し問題を起こしても何とか収めてくれるという設定。

だけど第43話で行き過ぎ捜査が問題視され、御崎は課長職を追われて左遷、同時に降格処分となった相模が課長に就任します。

この人事異動は、番組が好評につき放送延長が決定し、林隆三さんが当初の契約通り1年で降板された事によるもの。

2人いたボス格が1人となって人物相関図がシンプルになり、またトミーとマツに振り回される直属の上司は石立鉄男さんが演じた方が圧倒的に面白く、結果的にはプラスに働いたと思います。

スタイリッシュな林隆三さんが抜けた事で、よりコメディ色が強くなり、脇役の刑事たちがアドリブギャグをエスカレートさせる中、名優・井川比佐志さん1人だけが頑なにシリアス演技を貫いておられるのが、また可笑しかったりします。

その井川さんの七三分け姿にとても違和感があるんだけどw、第3話の回想シーンではお馴染みの短髪姿だったので、初期はあえてヅラを着用されてたのかも知れません。

地味と言えば地味なメンバーだけど、安定感バツグンで実にバランスの良いキャスティングだったように思います。
 
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『噂の刑事トミーとマツ』1979~1982

2018-11-09 09:09:09 | 刑事ドラマ HISTORY







 
古き良きTVドラマの黄金時代は、各放送局あるいは製作会社の作品カラーがハッキリ分かれてて個性豊かでした。

そんな中でも大映テレビ製作のドラマは、何の前情報も無くテレビをつけた時にたまたま放映されてたとしても、ちょっと観ただけで「うわっ、これってもしかして大映ドラマ!?」ってw、すぐに判っちゃう位に個性的でした。

とにかく極端な設定が特徴で、シリアスにしろコメディにしろ、役者さん全員が常にオーバーアクションの熱い芝居をしてて、端的に言えば「ベタ」で「クサイ」んだけど、それが逆にクセになっちゃう不思議な吸引力がありました。

例えば山口百恵さんが何作もヒロインを務められた『赤い○×』シリーズや、堀ちえみさんの『スチュワーデス物語』、山下真司さんの『スクール・ウォーズ』等が代表的ですね。『ヤヌスの鏡』だとか『高校聖夫婦』なんてのもありました。

そんなコッテコテの大映さんがバディ物の刑事ドラマを作ったら、一体どんなコッテコテな作品が出来上がるのか? その答えが『噂の刑事トミーとマツ』でしたw

TBS系で毎週水曜夜8時、第1シリーズが1979年10月から約1年半(全65回)、第2シリーズが’82年1月から約1年間(全41回)放映される程の人気を博し、私も(第2シリーズからではありますが)よく観てました。

スタート時は和製『刑事スタスキー&ハッチ』と謳われてましたが、蓋を開けてみればやっぱ「ベタ」で「クサイ」コッテコテのハチャメチャコメディになってましたねw

東京・富士見署捜査課を舞台に、生真面目で気弱な優男・岡野富夫ことトミー(国広富之)と、がさつで猪突猛進型の短足刑事・松山進ことマツ(松崎しげる)の対照的なコンビが、お互いの欠点を補い合う事も無くw、どちらかと言えば足を引っ張り合いながら事件を解決して行きます。

この2人のダメっぷりがまた極端でしたねw 刑事ドラマの主役がここまで三枚目に徹した作品って、そうそう無いんじゃないでしょうか?

とは言え、クライマックスに描かれるトミーの「変身」は凄かったです。危機に陥ると怖じ気づいて身動き取れなくなっちゃうトミーに、怒ったマツが「お前なんか男じゃない! このオトコオンナのトミコ!」と叫ぶと、トミーの人格が変わっちゃう。

初期は凄腕のスーパー刑事に変貌するだけだったのが、回を重ねる毎にエスカレートして、まるで特撮ヒーローみたいに超人的なアクションで敵をバッタバッタと倒して行くw、もはや刑事ドラマの域を超越した世界になっちゃってました。

でも、そんな突き抜けた製作姿勢こそが私は大好きでした。毎週トミーの変身が楽しみで仕方なかったし、創り手もそれを意識して、マツがなかなか「トミコ!」って言わなかったり、言おうとすると周りから妨害が入ったりして、視聴者を焦らす工夫を凝らしてました。

だいたい、自分が「トミコ」と叫ばないとトミーが変身出来ない事に、いつまで経っても気づかないマツが馬鹿すぎますw

ちなみに、トミーがあんなに強いのは過去に特訓を重ねた成果なんだけど、その強さゆえに犯人を死に至らせてしまったトラウマから、彼は自分の強さを潜在意識下に封印してしまい、普段は忘れてしまってるんだそうです。あのバカげた変身にそんなダークな裏設定があったとは!w

2クール程度の放映予定が延長を重ねた為、課長役の林 隆三さんと、トミーを叱咤激励する姉役の志穂美悦子さんはスケジュールが合わず途中降板。代わりに本庁のエリートから格下げになった新課長として、大映ドラマの顔=石立鉄男さんが就任。

やたらキザな中堅刑事の清水章吾さんをはじめ、レギュラー陣がみんな大仰なコメディ演技でアドリブ合戦を繰り広げる中、ただ1人だけ真面目に台本通りの芝居を淡々とやり通す名優・井川比佐志さんのベテラン刑事ぶりが、かえって可笑しくて印象に残ってます。

それともう1人忘れられないのが、トミーに熱烈アタックを繰り返す交通課婦警=森村万里子こと「まりっぺ」役の石井めぐみさん。決して色気があるタイプじゃないのに、思春期だった私にとっては妙にエロティックな存在でした。

人目もはばからずトミーに抱きつき、やたら胸を押しつけるオープンなキャラクターと、お堅い婦警の制服姿とのギャップに萌えたんでしょうか? 変態ですねw
 
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『太陽にほえろ!』#400―3

2018-11-09 00:00:23 | 刑事ドラマ'80年代









 
渚に佇むスコッチ(沖 雅也)を見つけたスニーカー(山下真司)は、本当に2つ数えた時点で手島(森 大河)を射殺するつもりだったのか問いただします。

「よく分かったな」

半笑いで答える渚のスコッチにハイパー激怒したスニーカーは、彼の襟首をつかんでシャウトします。

「あんたって人は、人の命なんか何とも思っちゃいねえんだな!」

「触るなっ!」

スコッチはとりあえず、粗野なスニーカーの両手を振り払います。バッチリ決めたスリーピースの一張羅に、シワでもつけられちゃ困るからでしょう。

「何をカッカしてるんだお前は」

「分かってるよ。手島は3人も殺した凶悪犯だ。だからアンタがあそこでアイツを撃ち殺したって誰も何とも言わないだろう」

スニーカーは、スコッチを誤解してるみたいです。彼は決して殺人狂なワケじゃなくて、人質を救うと同時に手島を逃がさない為の、最も合理的な手段を選んだだけ。その事によって自分が責められるのを全く恐れない男なんです。殺すこと自体が目的なら、とっくに射殺してた事でしょう。

手島を殺したいほど憎んでるのは、むしろスニーカーの方であり、だけど刑事としては人命を尊重しなくちゃいけないっていうジレンマで、やたらカッカしてるんだろうと思います。

「俺だって手島は憎い。誰よりもアイツを憎んでるのは、この俺だ」

「沖縄出身者を殺したからか」

「…………」

手島に殺された共犯者=沼沢は沖縄生まれで、恵まれない環境のなか妹と2人、肩を寄せ合って生きて来た境遇がスニーカー自身とよく似てるのでした。1つ間違えれば、自分が沼沢みたいになってたかも知れない…… スニーカーは、自らの生い立ちを語り始めます。

「俺と妹がまだ子供の頃、親父とお袋は米軍のトラックにはねられて死んだ。犯人は判ってたらしいんだが、なぜか日本の警察は手を出そうとしなかった……そんなバカな話ってあるか?」

「…………」

「それからしばらく、俺は妹を放り出して方々グレて歩いた。もしあの時、田口さんに会わなかったら……」

「田口?」

「そうだよ。あの人に会わなかったら、今ごろ俺はきっと……」

街のチンピラに絡まれたスニーカーを救ったのが、たまたま通りがかった在りし日の田口 良=ボン(宮内 淳)なのでした。正確に言えば、救われたのはチンピラの方で、放っておけばスニーカーは彼を半殺しに……いや、たぶん死なせちゃったかも知れません。

ボンは穏やかにチンピラを説得し、和解させたばかりか、ボロボロになったスニーカーのスニーカーを見て、新しいスニーカーをスニーカーにプレゼントしたのでした。感動したスニーカーは刑事になる事を決意し、ボンに貰ったスニーカーを履いてスニーカー刑事となり、現在に至るワケです。

「ほう……ボンがお前の人生を変えたのか」

スコッチが一瞬、懐かしそうに微笑みます。七曲署に赴任した当初、頑なに閉ざしてたスコッチの心を、誰よりも熱心に開かせようとしたのがボンでした。

今、やたら熱くなって真正面からぶつかって来るスニーカーに、スコッチはボンの面影を見たのかも知れません。でも、そんな感傷もほんの一瞬だけ。

「捜査だ」

あくまでクールに任務を全うすべく、さっさと単独捜査に向かうスコッチ。その後ろ姿の上空をジャンボ旅客機が横切るショットが、たまらなく格好良いです。

しかし手島は、順調に悪事を重ねて行きます。今度はパトロール中の巡査を襲い、拳銃を強奪するのでした。密輸の取引相手から調達するつもりが、現金がなかなか届かなくて無理だった為でしょう。

一方、東京・七曲署の藤堂チームは、殺された沼沢が現金輸送のコースを知らなかった事実をつかみ、他にも共犯者が存在する事を推理します。そう、輸送車に同乗してた銀行員の麻田(佐々木勝彦)です。

故郷の大阪に帰ってる筈の麻田が沖縄に飛んだ事実も判明し、推理は確信へと変わります。その麻田の足取りから、どうやら手島と久米島で合流するつもりらしい事を突き止め、スコッチ&スニーカー、そしてゴリさん(竜 雷太)とロッキー(木之元 亮)もフェリーで久米島へと向かいます。

到着するや麻田が滞在するホテルに直行したスコッチ&スニーカーですが、一足遅く、既に麻田は手島と合流した模様。

この突入場面で、部屋のドアが静かにゆっくり開いたかと思ったら、スコッチが床に伏せて銃を構えてた、という描写があります。

大抵の刑事ドラマだと、主役の刑事たちはそんなセコい事はせず、大胆に踏み込んじゃうもんだけど、もし敵が銃を構えて待ち構えてたら一巻の終わりです。

冷静で合理主義のスコッチなら、そんな無謀な事はしない。恐らくこれは、沖雅也さんが現場で提案されて実現した演出なんだろうと思います。そこまで考え抜く努力とセンスの有無も、役者が一流かそうでないかを計るポイントの1つですよね。

ただし、これは沖雅也さんだから格好良く見えるんであって、もしスコッチを演じるのが温水洋一さんだったらw、ただの小心者にしか見えない事でしょう。そこで笑いが取れる温水さんもまた、一流の役者さんです。

それはさておき、麻田の所持品に現金は見当たりません。となると、彼が沖縄にやって来た真の目的は……

「麻田は手島を殺す気かも知れん……」

この辺りの展開がワイルド過ぎてw、ちょっと話が分かりにくいので整理しておこうと思います。

まず、輸送車から奪った現金1億円は、手島が自分で沖縄に郵送したんじゃなかったの?っていう疑問。これは、共犯者がみんな手島に殺されたものと思いこんでた、刑事たちの読み違いだったんでしょう。

実際にはもう1人、麻田という共犯者が存在した。たぶん手島は、麻田に現金を郵送させ、その金の一部で拳銃を調達した上で麻田を呼び寄せ、殺すつもりだった。

で、それを読んでた麻田は何だかんだ理由をつけて郵送を拒み、沖縄に直接持って行くと手島に伝えた。もちろん、最初から金を独り占めする=手島を殺すつもりで。

手島が沖縄にこだわる理由は、拳銃密輸の拠点が沖縄にあり、ゆえに土地勘がある事と、犯人の1人である沼沢の実家に金を送らせれば、手島自身に足が着く恐れが無くなると計算したのかも知れません。

たぶん脚本の長野 洋さんは、手島と麻田に電話か何かで会話させて、その辺りの事を説明させるつもりだったと思うんだけど、何しろ『太陽にほえろ!』は徹底して「刑事のドラマ」ですから、そういう描写(犯人側のドラマ)は真っ先にカットされちゃう事でしょう。

さて、様々な情報からスコッチたちは、手島と麻田は島尻岬で密会してると読み、急行します。その読みは的中し、今にも麻田が手島を崖から突き落とそうとしてる現場に刑事たちが乱入します。

麻田はゴリさんとロッキーが押さえ、銃を乱射して逃走する手島を、スコッチ&スニーカーが全力疾走で追う。ここであの名曲「ジーパン刑事のテーマ(青春のテーマ)」が流れます。

番組ファンにとっては「見慣れた光景」で、放映当時は特別な感慨は無かったんだけど、それから約13年後に発売されたビデオソフトでこの場面を観た瞬間、思いがけず私の涙腺が決壊しちゃいましたw

まず、当時は「見慣れた光景」だったものが過去の産物となり、もう二度と新作が観られないこと。(数年後に復活版が製作されますが、全くの新メンバーが走ったところで何の感慨もありません)

そして、こんなに元気いっぱいで走ってる沖雅也さんが、もうこの世に存在しないという現実。さらに、番組自体が『金八』に圧されて危機的状況だった背景や、その頃の自分自身の心境なんかも絡み合い、一気に感情が噴き出したんだろうと思います。

それにしても、沖雅也さんの疾走は実に美しい! ジーパン=松田優作さんと同様、全ての動作に美学があり、指先1本にまで表情がある。まさに「全身役者」そのものです。

「手島! 止まれっ!!」

浜辺をいくら走ったところで埒が開かず、スコッチの一言で手島は静止します。しかしお互い拳銃を持ってますから、こんな至近距離で撃ち合えば相討ちになりかねません。さぁ、どうする?

「3つ数える!」

その台詞を聞いた途端、手島とスニーカーが同時にギクッとするのが笑えますw

「その間に拳銃を捨てて、こっちを向け! ……ひとつ」

「手島ぁーっ!!」

スコッチに撃たせない為に、スニーカーが捨て身で犯人に向かって突っ込みます。かつて、ボンも全く同じ行動を取りました。やっぱりスニーカーは、ボンの魂を受け継いだ男なんですよね。

手島は振り向きざまにスニーカーを撃とうとしますが、スコッチが素早く華麗にコルト・トルーパー6インチを抜き撃ちし、手島の拳銃を弾き飛ばします。

スニーカー怒りの運動靴キックが炸裂し、派手に波しぶきを上げながらの格闘を、カメラはハイスピードで捉えます。クライマックスの格闘をスローモーションで見せるのは、ジーパン時代から始まったと思われる『太陽』独特の演出です。

アクション物が好きなファンからすれば、スピード感が削がれちゃう上に(パンチが当たってない等の)粗がまる見えになって興醒めしちゃうデメリットがあるんだけど、それよりもエモーションを優先する『太陽にほえろ!』は「アクション物」じゃなくて、やっぱ「刑事(人間)ドラマ」なんですよね。

びしょ濡れになりながら凶悪犯と必死に闘うスニーカーを、浜辺に座ってタバコを一服しながら見物してたスコッチはw、頼もしい後輩に逮捕を任せ、再び独りで去って行きます。

ようやく手島の手首に手錠を掛けたスニーカーは、英国製のタバコを空高く放り投げるスコッチの、あまりにも絵になる後ろ姿を見て、思わず呟くのでした。

「キザなやつ……」

何となくイラッと来ちゃうその気持ち、私にはよ~く解りますw

さて、事件はめでたく解決。七曲署にボス(石原裕次郎)以外の一係メンバーが久々に揃い、麻田が廃坑の奥に隠した現金1億円も無事に回収された事が発表されるのですが……

「金は戻ったが、3人の命は戻って来ない」

せっかく盛り上がりかけた空気に、チョー冷静な一言で水を差すのは山さん(露口 茂)の得意技ですw が、すっかり気まずくなった所にタイミング良く(?)、ボスが帰って来ました。

「ボス、どこ行ってたんスか?」

「いや、ちょっとね。よそでクビになったヤツを拾って来た」

「よそでクビって……」

「あっ、もしかしてソイツは……」

「おい、入って来い」

ちょっと照れ臭そうに入って来た一匹狼のハードボイルド、その名はもちろん……

「スコッチ!」

「やっぱり!」

「山田署勤務、滝隆一。本日付けをもって再び、七曲署勤務を命じられました。え~……よろしくお願いします」

古参のメンバー達が温かい眼差しで迎える中、スコッチ転勤後に赴任したお茶汲みガールのナーコ(友 直子)は「誰、この人?」と怪訝な顔。そしてもう1人、スニーカーにも笑顔はありません。

スコッチとスニーカーの確執は次回、第401話『紙飛行機』にまで持ち越され、堪忍袋の緒が切れたスニーカーが刑事を辞める事態にまで悪化しちゃいます。

「まぁみんな、そういうこった」

そんな近未来を予測しての事か、ボスの締め台詞も何だか投げやりですよねw

でも、こういう波乱も無いとドラマはマンネリ化する一方です。このスコッチの再加入を皮切りに、すっかりマジメ一直線で硬直状態だった『太陽にほえろ!』が、再び活性化していく事になります。

CS放送などで初めてこの時期の『太陽』を観て、あまりの辛気臭さに辟易される方もおられるんじゃないでしょうか?

でも大丈夫ですw 太陽は再び昇り、又これから新たな時代に入って行きますので、チョー格好良いスコッチの勇姿と共に、どうかお楽しみ下さい!
 
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