ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『三つ首塔』1988

2023-08-26 16:10:14 | 探偵・青春・アクションドラマ

1988年7月、テレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」枠で放映された、原作=横溝正史/脚本=佐治 乾/監督=野村 孝による単発2時間ドラマ。

我らが殿下=小野寺昭 主演による「名探偵・金田一耕助」シリーズの3作目で、1作目が『真珠郎』、2作目が『仮面舞踏会』、4作目が『夜歩く』と、ほとんど映画化されてないマイナーな原作を選んでるのが本シリーズの特長。

ただし『三つ首塔』は1972年、1977年、1993年にもTVドラマ化はされており、’77年版(連ドラ)と’93年版(単発)は共に古谷一行さんが金田一探偵を演じてます。

原作が比較的マイナーなのは金田一の出番が少ないせいもあり、’72年版ドラマには金田一が登場しないとか。

それを如何にして「金田一モノ」として成立させるかが腕の見せどころで、この土曜ワイド劇場版『三つ首塔』はキャスティング、すなわち金田一耕助=七曲署の殿下であることが最大限に活かされてます。



まず、原作に準じた袴姿が殿下の場合、純白カラーという爽やかさ。本来メンズ向けの娯楽小説だった金田一モノを、女性たちにも楽しんでもらおうっていう明確な意図を感じます。

そもそも殿下は『太陽にほえろ!』で女性人気ナンバーワンを誇った人。頭を掻くたびフケを撒き散らす金田一役には本来向かない貴公子キャラなんです。

そしてメインゲストがこの人。同じ七曲署の「山さん」こと、露口 茂さんですよ!



山さんはメンズにも人気があるけど、全身がエロで出来てる女優の太地喜和子さんが「理想の男性」として名前を挙げたほどの超セクシーガイでもある。

『太陽にほえろ!』を観て育った世代がそろそろ映像業界に入り始めた時期、っていう側面もあるにせよ、殿下+山さんの組み合わせは特に女性ファンたちの琴線に触れたはず。

いきなりネタバレになるけど、山さん扮する国文学者=上杉誠也が連続殺人事件の真犯人で、’72年版では仲谷昇さん、’77年版では佐分利信さんが演じておられます。(’93年版には未登場)

さらに’72年版で島田陽子さん、’77年版で真野響子さん、’93年版で安永亜衣さんが演じられたヒロイン=音禰(おとね)役には、ちょうど本作が放映された’88年から1年間『探偵!ナイトスクープ』の初代秘書役を務められた、松原千明さん。



お馴染みキャラの等々力警部役には、若けりゃ若いほど近藤春菜に見えちゃう角野卓造さん。



山さんの顧問弁護士役には西部署から「山村くぅ〜ん!」とハイトーンボイスで駆けつけた二宮係長こと、庄司永建さん。



おまけに事件の鍵を握る謎の青年役には、私鉄沿線の97分署から駆けつけた本城刑事こと、古尾谷雅人さん。



偶然にせよ必然にせよ、とにかくレビューしないワケにいかないメンツが揃ってるワケです。

で、冒頭シーンで山さんが殿下を自宅に招き、姪っ子で養女の千明さんを「嫁にどうだい?」と切り出したもんだから、大いに照れちゃう殿下。



ヒロインと金田一にほのかなロマンスが生まれるのも殿下シリーズの特長で、その辺りにも女性視聴者への配慮を感じます。

が、そこは横溝正史原作ですから、ほのぼのした場面はここまで。千明さんの遠縁にあたる資産家が、数千億円にのぼる遺産の相続人に彼女を指名したもんだから、血で血を洗う争奪戦が勃発!

遺産を狙うライバルたちを高林由紀子さん、水原ゆう紀さん、そしてボインぼよよ〜ん!と武田久美子さんが演じておられます。



山さんに何不自由なく育てられた千明さんは遺産なんか欲しくないのに、身の周りで次々と人が殺されるわ、警察には容疑者扱いされるわ、古尾谷雅人には再三レイプされるわで、踏まれたり蹴られたり犯されたり。



ただこの、清楚で儚げな松原千明さんの苦悶顔、あるいは困惑顔が、我々の奥底にあるSっ気を絶妙に刺激してくれて本当に素晴らしい!



ああそうさ、オレは変態さ。なにが悪いっ!?💢

けど変態はオレだけじゃなかったようで、松原千明さんは次作(シリーズ第4弾)の『夜歩く女』でも再びヒロイン役に起用されてます。

それはともかく殿下は気づいてしまう。あの山さんも変態の1人だったことに!



千明さんの周りで起こった連続殺人の犯人は、彼女を護りたい一心で……というより手放したくない一心で暴走した、我らが山さんだった!

そう、山さんは姪っ子で養女の千明さんを、ひとりの異性として愛しちゃった。

ひとつ屋根の下で一緒に暮らしながら、何年も何年もチョメチョメしたくてチョメチョメしたくてチョメチョメしたくて悶々としてたワケです。山さんが悶々とチョメチョメ。姪っ子とチョメチョメ。養女とチョメチョメ。



すべての元凶となった3人の男の首が並ぶ供養塔、すなわち三つ首塔についての説明は面倒だから(と言うかよく解らんから)省略しますが、そこで山さんは武田久美子も殺すつもりだった。



けど、その寝顔が千明さんとダブってどうしても殺せなかった……っていう甘さは横溝正史らしくなく、ちょっと蛇足に感じました。これはたぶん、山さん=露口茂さんのご要望により付け足された場面だろうと推察します。

見るからに聡明で、人生の成功者だった男を狂わせてしまった、老いらくの恋。そんなあまりに人間くさい犯人像にこそ惹かれて、露口さんは出演オファーを引き受けられたんでしょう。(ただの友情出演とは思えない)



最後は例によって犯人の自害(今回は三つ首塔と共に焼死)で幕を閉じますが、それじゃ後味悪いので千明さんと古尾谷雅人の結婚がエピローグで描かれます。

この古尾谷さんもまた、実は千明さんを護るために色々動いてたらしいけど、だったらレイプなどせず最初からそう言えよ!って話だし、山さんの恋とネタが被っとるやん!とも思う。

原作から大きく改変されてるのかも知れないけど、金田一シリーズの中で『三つ首塔』がマイナーなのは、そのへんにも理由がありそうな気がします。



まあしかし、ストーリーは正直どうでもいい。とにかく殿下と山さんの再共演をレビューしたかっただけで、正和さんや健さんはその前フリに過ぎません。

あと、ナイトスクープ初代秘書=松原千明さんのセクシーショットと。(ただし3枚しか見つからず、不足分は武田久美子さんにカバーして頂きます)


 

コメント (6)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『悪魔の手毬唄』1961

2023-08-20 21:41:37 | 探偵・青春・アクションドラマ

映像作品で名探偵・金田一耕助を演じた俳優たちを、Wikipediaに基づき(そしてパロディや番外編的なものは除いて)列挙すると、映画版が片岡千恵蔵、岡 譲司、高津清三郎、池部 良、高倉 健、中尾 彬、石坂浩二、渥美 清、西田敏行、鹿賀丈史、豊川悦司。

テレビ版は岡 譲司、舟山裕二、金内吉男、古谷一行、愛川欽也、小野寺 昭、中井貴一、片岡鶴太郎、役所広司、上川隆也、稲垣吾郎、長谷川博己、池松壮亮、吉岡秀隆、加藤シゲアキ、といった顔ぶれ。

加えて舞台やラジオドラマも挙げていくとキリがなく、これほど多くの俳優が演じてる「架空の人物」は空前絶後かも知れません。

だからこそ、同一人物でも演じる俳優によって味わいが違ったり、ストーリーの解釈が創り手によって変わる楽しさが「金田一耕助シリーズ」の肝じゃないかと私は思ってます。

中でも『悪魔の手毬唄』を初めて映像化した東映の1961年劇場版は、究極の異色作と言えるかも?

まず、これが生涯一度きりの金田一役となった高倉健さんの、この出で立ち!



スーツ姿は片岡千恵蔵シリーズを踏襲したにせよ、グラサンにオープンカーという軽薄さは「健さん映画」として観てもかなり異色。

唯一、石坂浩二シリーズの坂口良子さんを彷彿させる、天真爛漫な旅館の女中さんだけが「金田一映画」っぽさを感じさせます。



その女中さん相手に、金田一がよく喋るんですよね! 実写版『ゴルゴ13』が「チョー無口な殺し屋を演じる健さん」を楽しめばいい映画だったように、本作も「やたらおしゃべりな健さん」を楽しむべき映画と言えそうです。

なにせ金田一のキャラだけでなくストーリーも原作とかけ離れてて、手毬唄になぞって人が殺されていく「見立て殺人」の要素すらバッサリ削除されてる!(最初の殺人シーンで偶然ラジオから手毬唄が流れるだけ)

これは監督の渡辺邦男さんがボツにしたシナリオを、脚本家の結束信二さんが原作を読まずに書き直した(!)ことによる改編で、本来ヒロインである筈の青池リカ(石坂浩二シリーズで岸惠子さんが演じた役)も登場しない!

で、その替わりに(?)金田一探偵に白木静子(北原しげみ)という美人秘書がいる!



白木静子は原作シリーズの第1作『本陣殺人事件』のみに登場するキャラだけど、片岡千恵蔵シリーズでレギュラー化され、本作にも受け継がれた模様です。

ほか、石坂浩二シリーズで若山富三郎が演じた磯川警部に、神田 隆。



ちなみに本作における金田一耕助は警視庁「嘱託」の探偵という設定。いわばフリーランスの刑事で、これはもう金田一モノであることを忘れて「若き健さんの刑事モノ」として楽しむのが得策かと思います。



入浴シーンまでサービスしてくれるし!



けど、それだけじゃない。本作では石坂浩二シリーズで永島暎子が扮した「里子」がヒロインになるんだけど、演じる若手女優(当時)の志村妙子がとってもキュート!



当時まだ高校生だった志村妙子さんは、東映ニューフェイス第6期生としてデビュー後、俳優座から文学座へと移籍され、いつしか「杉村春子の後継者」と言われるほどの大女優に成長。

その頃には芸名を「太地喜和子」と改め、本作の約11年後にゲスト出演されたTVドラマ『太陽にほえろ!』第11話では山さん(露口 茂)を誘惑しまくる悪女役で、番組屈指(おそらくナンバーワン)のお色気シーンを演じて下さいました!



「1970年代半ばには、大河ドラマ『風と雲と虹と』で共演した俳優、露口茂の名前を理想の男性として挙げていた」ってWikipediaに記されてるけど、きっかけはこの『太陽〜』第11話だったかも知れません。


 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『八つ墓村』1969

2023-08-19 21:44:26 | 探偵・青春・アクションドラマ

ご存知、横溝正史さんの大人気ミステリー小説「金田一耕助シリーズ」の中でも特に名の知れた、幾度となく映像化されてる作品。

本作は1969年7月から12月までNET(現テレビ朝日)系列で全24話が放映された、土曜夜10時半スタートの60分枠ドラマ『怪奇ロマン劇場』の一篇(第12話)で、片岡千恵蔵 主演の映画版(’51)に次ぐ2度目の映像化作品。



’77年の映画版では渥美清が、’96年版では豊川悦司が、そしてテレビ版では古谷一行、片岡鶴太郎、稲垣吾郎、吉岡秀隆らが演じた名探偵・金田一耕助を、本作では田村正和さん!……ではなく、この方が演じておられます。



誰やねんっ!?

何かのスポーツ選手にしか見えない、このサッパリしつつも濃ゆいおじさんは、大河ドラマを中心とした時代劇や『ザ・ガードマン』『キイハンター』等のアクションドラマに多数出演され、声優やナレーターとしても’90年頃まで活躍された、金内吉男さん。

短髪&背広姿の金田一には違和感ありまくりだけど、原作通りのモサモサ頭&袴姿が定着するのは’76年公開の角川映画『犬神家の一族』における石坂浩二さん以降のこと。

それまでは片岡千恵蔵さんのダンディースタイルが主流でした。



そして『八つ墓村』と言えば’77年の映画版におけるこの方、渥美清さんの金田一がまた俺ジナルに溢れてました。



まぁ、どんな格好をしたところで「ただの寅さんやん!」ってツッコまれるのは織り込み済みだった事でしょう。

そもそも『八つ墓村』の主人公は寺田辰弥という天涯孤独の青年であり、金田一耕助はその友人という立場のゲストキャラに過ぎず、出番が少ないんですよね。

’77年の映画版で萩原健一さんが、’96年版で高橋和也くんが演じた寺田辰弥を、この『怪奇ロマン劇場』で演じたのが田村正和さんなのでした。



戦国時代に毛利氏の追撃から逃げ延びた8人の落武者たちを匿い、だけど褒賞金に眼がくらんで裏切り、惨殺した「祟り」によって、村人たちが次々に狂死したと云われる岡山県のとある寒村、通称「八つ墓村」。

そこに東京からやって来たのが主人公の辰弥。彼はどうやら村一番の資産家=田治見庄左衛門の子孫で、家系を継ぐべく当代家主の久弥に招かれたんだけど、着いた当日にその久弥が毒殺され、連鎖的に次々と関係者が殺されていく。祟りじゃあ〜っ!?



八つ墓村にはさらに、大正時代に田治見家の先代=要蔵が起こした大量殺戮事件の秘密もあり、どうやら辰弥はその要蔵が村娘をレイプして生ませた息子らしい。

それもこれも落武者の「祟りじゃあ〜っ!?」と信じて疑わない村人たちに、お前が来たせいで呪いが復活したんじゃあ〜っ!?と虐待され、辰弥は「それならいっそ殺じてぐれえ〜っ!!😭」と泣き崩れます。



あの眠狂四郎が、あの古畑任三郎が、あのニューヨーク恋物語が「ぴえ〜ん!」って。

で、そこに颯爽と駆けつけたのが、短髪&背広姿の金田一耕助!



この金田一さんはなんと探偵ですらなく、大学の法医学博士という設定で「やめたまえキミたち!」なんて口調だったりするから面食らっちゃう。

けど、当時の映像作品における金田一耕助のイメージは前述のとおりダンディー、かつ質実剛健で腕っぷしも強かったりする。

主役たるものスーパーマンとして描かなきゃダメ、みたいな空気が当時はあったんでしょう。次回レビュー予定の映画(’61)に登場する金田一耕助には、もっと面食らっちゃうこと請け合いです。



かように金田一のキャラ設定が大きく違うし、60分枠の尺に収めるためストーリーもかなり省略されてるけど、大筋はほぼ原作通り。

ただ、怪談のドラマ化がコンセプトの『怪奇ロマン劇場』ですから、テイストは完全にホラー映画。怖いのがニガテな方にはオススメできません。

だからこそ、本作における金田一耕助がスーパーマンとして描かれることに意味が生まれる。彼が登場するとホッとできるワケです。

’77年の映画版における渥美清さんも、また違った意味でホッとさせるw そこが『八つ墓村』の魅力なのかも知れません。

その’77年版で山本陽子が、’96年版で萬田久子が演じた辰弥の異母姉=春代に、夏川かほる。



そして’77年版で小川真由美が、’96年版で浅野ゆう子が演じた未亡人にしてヒロインの美也子に、大映ドラマ『赤い疑惑』のレビュー記事でもご紹介した実相寺昭雄 監督夫人の、原 知佐子。



同じキャラクター、同じストーリーでも、創る人や演じる人、創られた時代背景などの違いによって、味わいが変わってくる。

レギュラーキャストが入れ代わりながら何年も続く連ドラを愛好して育ったせいか、私はそういうところに面白さを凄く感じます。


 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『映画村殺人事件』

2023-08-17 22:06:55 | 探偵・青春・アクションドラマ

1980年に放映された、原作=山村美紗/脚本=中島貞夫&関本郁夫/監督=中島貞夫による単発2時間ドラマ。テレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」の1編で、正式タイトルは『映画村殺人事件/愛の邪魔ものを消せ』。



冒頭、まさに京都太秦の映画村における時代劇の撮影中、古株チーフカメラマン(西村 晃)が高さ数十メートルある撮影用の足場から転落死するんだけど、彼がアルコール依存症で、転落直前にも水筒に入れた酒を飲んでたことが判り、警察は事故死と判断します。

ところがどっこい!(←死語?) 実は、普段から西村チーフにシゴかれてたカメラ助手(田村正和)が、そのときも理不尽に怒鳴られてカッとなり、背後から突き落としたというのが真相。



あの田村正和さんが殺人犯!? いやそれ以前に、正和さんが撮影所のカメラ助手役って!

当然、こんなハンサムなスタッフがいたら女優たちが放っとくワケがなく、死んだ西村さんに代わってチーフカメラマンに昇格した正和は、めでたく人気女優のしのぶさん(金沢 碧)とゴールイン。



余談ですが金沢碧さんは当時レギュラー出演中だった青春ドラマ『あさひが丘の大統領』でも役名が「しのぶ」で、学園きってのハンサム教師(谷 隼人)と結婚されてました。

それはさておき、人殺しの正和がこのまま幸せになって良いワケがなく、ちょっとご都合主義だけど、西村チーフが転落死した当日、観光で太秦に来てたセールスマン(成田三樹夫)が、その現場をたまたま8ミリカメラで撮影していた!

そう、これをネタに正和は脅迫され、新婚早々1千万円を要求されちゃう。

あんなにスターのオーラを発してても、しょせん裏方スタッフに過ぎない正和さん。いきなりそんな大金は用意できず、異変を察したしのぶさんに詰問され、ついに西村チーフを殺した事実を泣きながら告白するのでした。



あの眠狂四郎が、あの古畑任三郎が、あのニューヨーク恋物語が、新妻の前でビービー泣きながら「殺すつもりは無かったんだよ、ぴえーん!😭」って。

だからこそ正和さんは、この役を引き受けられたんでしょう。強くてカッコいいヒーロー役はもう飽きた、弱くて情けない姿もたまには見せたいんだよって。私も常日頃そう思ってます。

「今日から私も共犯者よ」



正和と絶対的な秘密を共有して、何だか嬉しそうなしのぶさんは、このとき初めて彼と夫婦になれた気がしたのかも知れません。

そう、相手はあの田村正和です。モテモテなんです。実は2人が結婚したことで密かに嫉妬の炎を燃やす、もう1人の美女が身近にいた!



その人は、正和に殺された西村チーフの一人娘(夏 純子)。

かつて正和は彼女と毎晩チョメチョメする仲だったのに、このまま結婚したら職場でさんざんシゴかれてるチーフの息子になっちゃうことに気づき、「私生活まで師匠に縛られたくない!」と一方的に別れを告げたのでした。



夏純子さんはこれより3年ほど前にも、やはりとびっきりハンサムな婚約者だったスコッチ刑事(沖 雅也)に「尊敬する先輩刑事を自分のミスで死なせて、オレだけ幸せになるワケにいかない」ってな理由で一方的に別れを告げられちゃう役を『太陽にほえろ!』で演じておられました。

あのときは最期まで徹底して悲劇のヒロインだったけど、果たして今回は……?



閑話休題。奥さんのお陰でなんとか1千万円を成田三樹夫に支払い、やばい8ミリフィルムを回収した正和だけど、当然これで終わるワケがありません。

三樹夫は自動車のセールスマンであり、今度は西村チーフの遺産が転がり込んだ純子さんに狙いをつけ、新車を売ろうとするんだけど断られ、あの切札を出します。

「あなたのお父さん、殺されたのかも知れませんよ?」



警察が事故と判断したのに、なにをバカなと一笑に付す純子さんだけど、そこで1つのアイデアが閃きます。もし、あのとき父と一緒にいた愛弟子の正和が、師匠を突き落としたんだと仮定すれば…… 面白いミステリー物語になり得るかも知れない!

実は純子さん、脚本家志望でずっとネタを探してたのでした。

その閃きは『落日の五重塔』というタイトルの脚本として結実します。五重塔の建築を手掛けた大工の親分を足場から突き落とし、その名声をまんまと引き継いじゃう愛弟子のストーリーは、明らかに西村チーフと正和の関係を模したもの。

純子さんは本当に正和が父を殺したとは(この時点では)思ってないんだけど、正和からすれば「バレてたのか!?」と疑心暗鬼になるし、そのうえ映画化が決まった『落日の五重塔』のメインカメラを自分が担当することにもなり、どんどん追い詰められて精神を病んでいきます。

そして勿論、味をしめた三樹夫に再び脅迫されるに至り、正和は決意します。三樹夫をぶっ殺す!



西村チーフはあくまで事故死と認定されてますから、本当の「映画村殺人事件」はここから。

三樹夫を映画村に呼びつけた正和は、撮影の本番スタートと同時に忍者のからくり人形に化け、カットが掛かるまでの約1分の間に移動して三樹夫を殺し、またカメラの所まで戻る(そうしてアリバイをつくる)という、まるで『古畑任三郎』に出てくる犯人みたいな密室殺人を企て、実行に移すのでした。



それは成功したかに見えたけど、「お父さんは誰かに殺された」と言ってた三樹夫が死んだことで、純子さんは察してしまう。正和が父を殺し、口封じに三樹夫も殺したことを。

やはり父に可愛がられてた助監督(火野正平)の協力も得て、純子さんの推理はやがて確信となっていきます。



さて、純子さんはどう出るか? すぐ警察に知らせるのか、それとも三樹夫と同じように正和をユスるのか?

いずれにせよ、すでに2人の命を奪ってる正和はもう、後戻り出来ません。



ところが! 映画雑誌に載せるポートレート撮影を口実に、正和を山間部に連れてきた純子さんから出た言葉は、「自首して」でも「金を払え」でもありませんでした。



「今からでも遅くない。しのぶさんと別れて!」

そう、西村チーフが亡くなった今、2人を縛る「愛の邪魔もの」はいないのです。

「私、あなたとなら地獄に堕ちてもいい。いいえ、堕ちたい!」

「…………」




けれど、遅かった。殺しが、また次の殺しへと繋がっていく負の連鎖!

間一髪! 助監督の正平が忽然と現れて、3つめの殺しは未遂に終わりました。



正平はいったい何をしに現れたのか? なぜこの場所が判ったのか? その理由は「火野正平だから」としか言いようがありません。



「私の愛は終わった……これで私のシナリオは完成する」

映画『落日の五重塔』は本来、師匠を転落死させた愛弟子が栄光を手にして終わるブラックな物語だったけど、ラストシーン撮影の直前、純子さんは結末を書き換えます。

それは、歓びの雄叫びをあげる主人公に、五重塔が語りかけてくる、というもの。

「貴様は人殺しだ! 人を殺した血塗られた手で、貴様はオレを建てた!」



「そうよ、あなたは人殺しよ! あなたはその血塗られた手で、父が回す筈だったカメラを回し続けたのよ!」



そして錯乱した主人公が崖から身を投げる!という脚本のト書き通りに、正和も自ら転落死しちゃうのでした。



実はこのドラマの主人公は、正和じゃなくて純子さんだった!

メインカメラマンが撮影中に自殺するというトラブルも何のその、映画『落日の五重塔』はみごと大ヒットを飛ばし、一躍売れっ子脚本家となった純子さんは、京都の実家を売り払って上京するその日、西村チーフの位牌に語りかけます。

「実は私もお父さんを殺そうとしてたのよ、あの日」



独善的な父親のせいで正和にフラれ、そのうえ父が愛人と暮らすために自分を家から追い出そうとしてることに気づいた純子さんは、あの日の撮影で父が高台に登ることを知り、お酒の水筒に睡眠薬を混入させた。

だから最初は、正和が突き落としたとは夢にも思わなかったワケです。

「あなたが邪魔しなければ、私はあの人と結婚して、平凡な女の幸せを掴んでたかも知れない」

一時は「金と名誉さえあれば愛なんて要らない」と開き直り、仕事に打ち込んできた純子さん。

「だけど私も女。あの人のことでは随分と苦しんだわ。最後の最後まで」



結局、本当に愛を棄てて「金と名誉」を手にした純子さん。そりゃ笑いが止まりません。

けど、それで終わって良いワケがありません。たった1人、正平だけは純子の裏の顔に気づいてました。理由は、火野正平だからです。



「僕も一緒に東京へ連れてって下さいよ」

「ダメよ。昔のものは何もかも京都に棄てていくの」



「この水筒の酒、僕も呑んでみました。よく眠れましたよ」

「…………」

正平はカネを要求したりしません。殺人未遂の証拠となり得る水筒と引換えに、西村チーフの位牌をくれと言うのでした。

「あなたのそばじゃ、師匠も安心してお酒が呑めないでしょ?」



「ふふ、そうね。本当にそうだわ」

因果応報。いくら金と名誉を掴んだとて、あの火野正平に弱みを握られたまま楽しい人生を過ごせるワケがありません。



同じミステリーのジャンルでも、真犯人や裏切者を予想するゲーム感覚の(つまり昨今の)ドラマとは違って非常に見応えありました。

ましてや田村正和&西村晃&成田三樹夫&火野正平ですからね! 日曜劇場がいくら看板スターを並べたところで、このメンツの重厚さとオーラには到底及びません。まさに、格が違います。

いや〜、凄かった。凄い時代でした。


 

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「号泣しながら書いてます」

2023-08-14 21:35:21 | 日記

暴風雨のなか帰宅して、NHK『ファミリーヒストリー』草刈正雄編を観て大号泣!

観られました? あれを観て泣かなかった方は今すぐ私の飛行機から出てって下さい。

いや〜、まいったまいった草刈正雄。間違いなく番組史上ダントツの最高傑作でしょう。



ところで、休日が明けたら『ぷるるん捜査線』改訂版と『淫ら姫の大冒険』が両方消えてましたw それなら仕方ないと諦めがつくんですよ。片方だけ残ってるのが意味不明で気持ち悪かったワケで。

しかしそれにしても、この時間差は何なんだ?っていう疑問は残りますよね。もし電子頭脳の判断で消されてるなら、もっと早く消えてなきゃおかしいし。

自慢じゃないけど、過去、軽く100は超える数の記事を消されて来たw、筋金入りの不良ブロガーである私が思うに……

まずは電子頭脳が常時パトロールして問題ありそうな記事をリストアップし、最終的な審査はやはり事務局の人間がやってるんじゃないでしょうか? 

だから休日明けに消されるワケです。これまで積み上げてきた誇るべき経験を思い返しても、日曜祝日に記事が消えたことは無いんですよね。



もちろん通報された場合も「消す候補リスト」に並ぶんでしょう。

「公開停止」を100回以上食らってる我がブログなんか、とっくにブラックリスト入りしてるでしょうから、よそより厳しく審査されてるに違いありません。

そうでなきゃ面白くないですよw やっぱ人間が相手でなきゃ! 画像もCGより生身の方が良いでしょう?

ともかく、審査するヤツにしろ通報するヤツにしろ、ホントお暇なことで羨ましい限りです。これからもよろしく✋


 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする