ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『あさひが丘の大統領』#01―2

2018-11-01 11:11:04 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
可愛い教え子の二宮(田中浩二)に、あわやレイプされそうになった涼子先生(片平なぎさ)ですが、駆けつけたハンソク先生(宮内 淳)の必殺もみあげパンチで、何とか事は収まりました。

現在ならば生徒のレイプ未遂よりも教師の暴力の方が問題視されそうだけど、この当時はまだ体罰1つでいちいち騒がれたりしない時代でした。

涼子先生はしかし、生徒たちが自分の色気に惹かれてラグビーをやっていた現実を目の当たりにし、打ちひしがれます。自分の理想とする教育が出来てると信じていたのに……

体育館で独り佇む涼子先生に、ハンソク先生が声を掛けます。

「あいつらが落ちこぼれたのは、それなりにそれぞれ理由があるんだ。他人がどうこう出来る事じゃないんだよ」

「……よく解るのね、あの子たちの気持ちが」

「ああ。俺も、あいつらと同じ落ちこぼれだったんだ。学校のお客さんだったんだよ。勉強が出来ないから落ちこぼれた……そんな簡単な問題じゃないんだ。先生にどうこう出来るって、そんな簡単な問題じゃないんだ」

「じゃ、先生は何だって言うの? ただ教壇の上に立って、知識を教えていればそれでいいって言うの? それだけが先生だとしたら、私は先生になんかなりたくなかった……」

多くの教師は、そんな理想を抱いて教職に附き、それとは程遠い現実の壁にぶち当たり、日々闘っておられる事でしょう。

この当時(’70年代末)は、校内暴力や学級崩壊の問題が表面化して来る少し前で、偏差値教育について行けない「落ちこぼれ」をどう扱うべきかが大きな問題になってる時代……だったように記憶します。

「青春シリーズ」って、娯楽フィクションの形を取りながら、そういった問題に対する提言を真面目に続けて来た番組だと思うんだけど、鼻で笑うような反応を示す視聴者も多かった気がします。

「私、陰口言われてるの知ってます。テレビの見過ぎだとか何とか……でも先生って、人を相手にするものでしょ? 人と人とが触れ合っていくものでしょ?」

涼子先生のこの台詞は、そんな世間に対する創り手からの反論なんだろうと私は思います。

「あんなものはテレビの中だけの出来事だって言うの? 私はそんなのイヤ。現実がどうであろうと現実に合わせて生きて行けなんて、そんなのイヤ! 私は、私の考える先生でいたいの。そうなりたいのよ!」

一見、ガキ大将がそのまま大人になっちゃったハンソク先生よりも、涼子先生の方がオトナに見えるんだけど、理想に凝り固まって壁にぶつかると脆くも崩れちゃう彼女の方が、実は未成熟なのかも知れません。

「私が触れ合えそうだったのは、この学校じゃあの子たちだけだったの。それが間違いだって言われたら、私……明日からどうやって生きて行けばいいの? どうやって生きて行ったらいいのよ!?」

返す言葉が見つからないハンソク先生は、彼女を立ち直らせてやれるのは生徒たちしかいないと考えたのか、川べりでふてくされてる水野(井上純一)らラグビー部員たちに声を掛けます。

「よお、もう一度ラグビーやってやれよ。あんなに生徒のことで一生懸命な先生、俺たちの頃にはいなかったぞ?」

しかし、二宮のレイプ未遂で自分たちのダメさ加減をあらためて思い知らされたせいか、水野らはイジケて殻に閉じこもるという醜態を晒します。

「いい仲になったのかい、涼子先生と」

「なに?」

「二宮を殴って、それで仲良くなったってワケかよ! 生徒のことで一生懸命だ? 要するにあの先公だって、俺たちと一緒にラグビーやって、それで欲求不満晴らしてただけの事だろうが!」

今度は水野のイケメン面に、必殺もみあげパンチが炸裂します。元・応援団長としては、最も許せない若造の言い草だった事でしょう。

「自分の心が汚いからって、人の心まで汚いと思うな! だからお前たち落ちこぼれるんだよ! そうやってな、いつもツルんでなきゃ1人で生きて行けないんだよ! 一生そうだお前らっ!!」

このハンソク先生の台詞には共感しました。どんなに格好つけてようが、しょせん不良や極道の本質なんてそんなもんでしょう。

痛いところを突かれた水野らは、ハンソク先生をフルボッコにしようとしますが、七曲署で4年間も鍛えられて来たボンの敵ではなく、全員1人残らずもみあげパンチを食らう羽目になります。

そしてハンソク先生は、あらかじめ野口先生(秋野太作)が用意してくれた辞表に、さっそく署名する羽目にw 町中で生徒たちと乱闘騒ぎを起こせば、まぁ当然の結末と言えましょう。

「あんた、辞めんのか? 俺たちのせいか?」

顔に青あざを作った水野が、同じく顔を腫らしたハンソク先生に声を掛けます。

「いや。俺はやっぱり、先生になれるような人間じゃない。そいつが分かったんだ」

「先生なんて、誰だってなれるさ」

「水野。お前、自分が先生になれると思うか?」

「まさか」

「そうだろう。俺もお前と同じ人間なんだよ。お前、1回落第してるんだってな。おんなじじゃねえか、俺と」

そう言って笑うハンソク先生に、水野は何やらシンパシーを感じた様子です。

そして迎えるクライマックス……って、めちゃくちゃ展開が速いですけどw、別にレビューするのが面倒になって省略したワケじゃありません。ほぼリアルタイムで進んでます。

東京へ帰ろうとするハンソク先生を、水野らラグビー部員たちが駅で待ち構えてました。

「よお、最後に1度ぐらい、先生の気分味わいてえだろ? 俺たちが味わわせてやろうか?」

青春シリーズ自体は好きなんだけど、生徒が先生に対してタメ口を聞くのだけは、当時も今もあまり感心出来ません。現実をドラマが反映してるのか、ドラマの影響で現実もそうなったのか判りませんが、私の世代でも先生にタメ口を聞く同級生が少なからずいました。

私はイヤでしたね。先生は先生であって、家族でも友達でもない。そういうケジメ…って言うと堅苦しいけど、区別はしなくちゃイカンやろって、昔も今も変わらず思ってます。

それはともかくホームに入った水野らは、線路を隔てた向かい側のホームにハンソク先生を立たせて、1人ずつ声を掛けていきます。

「先生!」「帰って来てくれよ先生!」「みんなが先生を待ってるんだ!」

これは中村雅俊さんのデビュー作『われら青春!』で、同じ鎌田敏夫さん脚本による第1話(あるいは最終回だったかも?)で描かれたクライマックスと全く同じです。

リメイクというよりも、あのドラマを観て育った水野らが、同じシチュエーションをハンソク先生にプレゼントしてあげてる……みたいな裏設定があったんじゃないでしょうか?

レイプ未遂をやらかし、記念すべき第1発目のもみあげパンチを食らった二宮くんも、懸命に声を掛けます。

「先生! 好きなんだろ? 先生って職業が好きなんだろ?」

「好きなことは、そう簡単に諦めんじゃねえよ! もう一度、一緒にやってくれよ先生!」

感動したハンソク先生はホームから駆け出し、水野らとラグビーボールを投げ合うと、あっという間に海辺まで移動しw、砂浜をあのボン走りで全力疾走しながら、叫びます。

「俺はやっぱり先生がやりたい! お前たちと一緒にやりたいんだ!」

そんなに言うほど、先生と生徒たちとの絆がまだ描かれてないもんだから、イマイチ感動出来ないんだけどw、これぞ青春シリーズ!っていう場面を、初回できっちり見せてくれたのは良かったと思います。

しかし、いくらハンソク先生が教師を続けたいと思っても、起こした問題が問題だし、辞表も既に受理されてます。そこで助けに現れるのが、最愛のお母ちゃん=里枝(藤間 紫)です。

そもそも伝説の問題児だった「ハンソク」が朝日丘学園に教師として赴任出来たのは、居酒屋のママさんゆえに情報通な里枝が、教師たちの弱み(リベートやセクハラ等)を握っていたから。

「あなた! 私を脅迫するんですか!?」

「はい。あの子を私の手元に置くためなら、脅迫でも何でも致します!」

最大の難敵である竹内教頭(高城淳一)も脅しに屈し、高岩校長(宍戸 錠)に至っては里枝に惚れてる節もありw、ハンソク先生は難なく復帰出来る運びとなりました。いいのかそれで!?w

オレンジのラガーシャツ(『われら青春!』のと同じ?)に鉢巻き姿のハンソク先生は、水野たちに何度も「先生」と呼ばせて悦に入ると、勝手に彼らをランニングに連れ出します。

それに気づいた涼子先生はカンカンになり、ガードマン(名古屋 章)の自転車を借りてその後を追います。涼子先生、いつの間に立ち直ったんでしょうか?w

で、ブレーキが壊れた自転車で坂道を下った涼子先生は、ハンソク先生に突っ込んで抱き合う形になっちゃうというラブコメ展開。そういうの好きですw

ちなみに片平さんは自転車が実は初体験で、この場面の撮影で数針縫う大怪我を負い、番組スタッフは所属事務所から大目玉を食らったそうです。

エンディングは主題歌『新しい空』のスローバージョンに乗せて、オープニングの未使用カットも交えた青春風景。

生徒たちを連れて浜辺をランニングしながら、ハンソク先生とタックル先生が無邪気に小競り合いする姿を見て、私は何だかじ~んと来ちゃいましたw こういう演出が観られるのも『あさひが丘の大統領』が最後だったんですよねぇ……

♪追いかけようぜ~若さの蜃気楼~AHA~生きてる~生きてるんだ~俺たち~

一気に3話分ぐらい消化したような盛り沢山ぶりで、正味45分に詰め込み過ぎた感もありますが、昨今の連ドラみたいに初回から2時間もダラダラやられるより遥かに良いです。

色んな問題が提起されて、何一つ解決しないままなんだけどw、ここから全てが始まるワケだし、前回も書いた通り安易に結論を出さないのが『あさひが丘』の特徴なんですよね。

この番組の方向性を語りきった見事な第1話で、何回観ても飽きない作品です。ただ1つ問題なのは、すっかり下がったハンソク先生の好感度ですよねw

本来の優しさと熱さを発揮した後半で、やや盛り返したものの、展開があまりに駆け足だったお陰で、前半のマザコンぶりや身勝手ぶりの印象ばかり残っちゃった感じです。

しかも第2話の予告編ではパンツ1丁の姿を女子生徒たちに晒したり、ドリフのコントよろしく白粉まみれになったりと、ちょっと子供じみたドタバタ喜劇の側面ばかり強調されてて、観る気が失せた視聴者も多かったかも知れません。

宮内 淳さんの魅力って、もっと他の部分にあった気がするもんで、この『あさひが丘』の次に出演された『探偵同盟』にせよ、もうちょっと何とかならんかったかなあって、当時から思わずにいられなかったです。

とは言え、非常に数少ない宮内さんの出演作にして、青春シリーズ最後の作品としても貴重な番組です。

ヌード場面も含めて、何とか既成の殻を破って新しいものを創り出そうっていう、スタッフ&キャストの野心、そして情熱が溢れたこの第1話は、特に忘れがたい作品です。
 
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『あさひが丘の大統領』#01―1

2018-11-01 00:00:24 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
ファーストカットは、いきなり樹木希林さん扮する「リターン」こと小関先生のどアップでしたw

「えっ!?」

続いて由利 徹さん扮する「ハゲツル」こと太田先生の顔面が、ツルっと横から入って来ます。

「あの大西がウチの先生に!?」

大西 元(ハジメではなく、ゲン)……学校の規則という規則を全部破った伝説的な卒業生で、自宅謹慎13回、停学3回、落第1回という空前絶後な記録を打ち立て、教師たちから「ハンソク」と呼ばれた男。

「どうしてそういう生徒をウチの先生に?」

「いや、ウチの卒業生で先生になりたがってるって言うから……」

うるさ型の竹内教頭(高城淳一)から突っ込まれ、チョー優柔不断な高岩校長(宍戸 錠)は煮え切らない態度。非常に好感度の低いコンビですw

「記録をお調べにならなかったんですか?」

「いや、そういう仕事はむしろ教頭先生の仕事ではなかろうかと」

伝説的な問題児を校長が引き受ける羽目になったのには、とある裏事情が隠されてるのですが、それはまた後ほど。

さて、噂の「ハンソク」こと大西 元(宮内 淳)は、湘南あたりをイメージしたと思われる架空の町=朝日丘へと向かう電車の車内にいました。

「ねぇねぇ、ちょっと俺に、先生って言ってみてくれる? 頼むよ、ちょっとでいいんだから」

他校の女子生徒らにいきなり声をかけ、無理やり「先生」と呼ばせて悦に入る、怪しいモミアゲのオッサンw

「あー、気分いい。どうもありがとう。よぅし、今日から俺も先生だ。やるぞ! バンザーイ!!」

「バンザーイ」なんてフレーズが入っちゃうのが、如何にも日テレ「青春」シリーズですよねw テレビ番組がまだモノクロだった時代から続く、昭和を象徴するドラマの1つだった青春シリーズ。

『あさひが丘の大統領』は、図らずもその最後を飾るタイトルとなりました。視聴率はそんなに低くなかった(裏番組『噂の刑事トミーとマツ』より高かった)筈なんですが……

かつての英雄的な教師像が現実とかけ離れつつあった時代の中、前身の『ゆうひが丘の総理大臣』更にその前身『青春ど真ん中!』は、主人公の先生(中村雅俊)を生徒達よりもいい加減でスケベで破天荒なキャラとして設定する事で、親近感のある教師像を創り上げました。

その続編となれば、主人公のいい加減さもスケベさも破天荒さも、更にエスカレートさせなきゃいけません。その結果、恐らく日本の学園ドラマ史上、最も好感度の低い主役教師が生まれちゃったw

私は好きでしたよ?w でも、それはハンソク先生を演じるのが宮内さん=『太陽にほえろ!』のボン刑事だったからであって、そうでなければこの第1話でリタイアした可能性は否めません。

要するに、やり過ぎちゃったんですよね。過ぎたるは及ばざるが如し。時代の変化や学園ドラマそのもののマンネリ等、シリーズ終了の理由は他にも色々あったとは思いますが……

冒頭だけは青春シリーズらしい爽やかさを見せたハンソク先生が、その後いかにして好感度を下げて行ったか?w このレビューで再現し、検証してみましょう。


☆第1話『ハンソク先生とタックル女教師!!』

(1979.10.17.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=土屋統吾郎)

♪地図にない道を~走って行くんだ~心の擦り傷は~承知の上だよ~ ……爽やかなオープニング主題歌は、吉田拓郎さん作曲による『新しい空』(唄は小出正則さん)。

タイトルバックは、テロップが焼き付けられる事によって画質が落ちる事を考慮して、劇場映画やCMで使われる35ミリのフィルムで撮影されたそうです。(本編は16ミリフィルム)

宮内さんが丘の上で林檎をかじったり、川の水をすくって飲んだり、浜辺で海に向かって石を投げたり、爽やかなイメージが満載のオープニングですが、今これをやったらギャグにしかならないでしょうねw 当時(’79年)でもギリギリだったかも知れません。

最後に宮内さんが校舎の屋上に颯爽と立って、下から見上げてる生徒たちに格好良く手を振るんだけど、ちょうど同時期に『3年B組金八先生』を撮ってた武田鉄矢さんが、その場面を観て「俺が同じ事やったら飛び降り自殺の失業者にしか見えないよ」って、ひがんでおられましたw

↑ これは当時の週刊誌に掲載された、宮内さんと武田さんの対談記事における一幕。この時点じゃ『あさひが丘』が王道で『金八』はイロモノ扱いだったのに、やがてまさかの大逆転現象が巻き起こります。ちょうど’80年代への入口で、TVドラマ全体が過渡期に来てたんですよね。

さて、駅のホームでハンソク先生を出迎えたのは、和服姿の母=大西里枝(藤間 紫)です。

「元!」

「母ちゃん!」

お互い駆け寄って抱擁し、腕を組んで歩く異常な仲の良さw ハンソク先生は東京から引っ越して来たワケだけど、この母子は1ヶ月前にも会ったばかり。

つまり彼は超がつくマザコンで、早速ここで若い女性視聴者の好感度を下げましたよねw これは俳優・宮内 淳にとってもマイナスポイントになったかも知れません。

続いてハンソク先生を迎えに来たのは、彼のお目付役にして教務主任の「シー」こと野口先生(秋野太作)。ただし歓迎しに来たワケじゃなく、ハンソクが学園入りする前に釘を刺しに来たのでした。

「キミはもう生徒じゃない、先生なんだからね。これを読みたまえ」

「何ですか、これ?」

「キミの辞表だよ」

「辞表っ!? 来たばっかりですよ?」

「キミがもし何か問題を起こしたら、即これに署名をして提出してもらう」

秋野さんは青春シリーズの顔とも言うべき常連俳優さんで、飄々とした佇まいが実に魅力的ですが、今回は体制側につくキャラクターで、好感度は低いですw

そして、いよいよ朝日丘学園に向かうハンソク一行ですが、今度は「タックル」こと今井涼子先生(片平なぎさ)率いるラグビー部と出くわします。

井上純一、長谷川 論、田中浩二、大村波彦といった面子のラグビー部ですが、実は正式な課外活動ではなく、涼子先生が落ちこぼれ生徒達を集めて始めた同好会みたいなもの。

ただでさえ朝日丘学園は全国から落ちこぼれ生徒を寄せ集めた高校なのに、その中で更に落ちこぼれてる彼らはまさに、落ちこぼれの見本市にして落ちこぼれのエキスパート集団。

「ランニングは校内でするようにと、あれほど言ったのに!」

ラグビー部をまるで眼の上のタンコブみたいに言う野口先生に、『あさひが丘』で唯一マトモな人物w=涼子先生が毅然と抗議します。

「なぜでしょうか? バレー部もテニス部もランニングする時はみんな校外です。それなのになぜ私たちラグビー部だけ禁止されなきゃならないんですか?」

「みっともないから」

「なんですって!?」

更に好感度を下げた野口先生はw、その場を取り繕うべくハンソク先生を涼子に紹介します。

「今の学校教育には大きな落とし穴があります。我々はそれと闘って行かなければなりません。一緒に闘って行きましょ、先生!」

昔ながらの理想教育に燃える涼子先生は、言わば過去の青春シリーズを象徴する存在で、主人公の行き過ぎた破天荒さにブレーキをかける役目を担ってます。

この第1話のサブタイトルは『ハンソク先生とタックル女教師!!』ですから、涼子先生もハンソク先生と同格の主人公なんですよね。涼子先生がいるからこそ、ハンソク先生は思いっきり反則が出来ちゃうワケです。

「女にラグビー部の部長が務まんのか?」

この台詞で、ハンソク先生はまたもや好感度を下げましたw 国会議員が言ったら吊し上げですよw 破天荒なのは良いんだけど、こういう旧態依然とした発言は、女性のみならず全国の視聴者にバッドなイメージを植え付けたかも知れません。

さて、ハンソク一行が学園に到着すると、「カクニン!」を連呼するチョー生真面目なガードマン=滑川(横谷雄二)が通行チェック、すぐさま上司の横井(名古屋 章)に報告します。

横谷雄二さんは『俺たちは天使だ!』のゴリラ刑事や『太陽にほえろ!』の吉野巡査として、日テレのアクションドラマじゃお馴染みの俳優さんでした。

名古屋 章さんも懐かしいですねぇ~。青春シリーズにもよく出られてましたが、どちらかと言えば大映ドラマの常連さんだった印象が強いです。名優でしたね。

続いて、小寺先生(谷 隼人)率いるテニス部が登場します。メンバーはお馴染みの藤谷美和子に加え、北村優子、久我直子、上田美恵といったフレッシュな面々。

爽やかイケメンで女子生徒たちにモテモテの小寺先生を見て、ハンソク先生は「女ばっかり連れてあの野郎」だの「野郎、1人でモテやがって」だのと、ひがみ発言を連発して順調に好感度を落として行きますw

校医であり保健体育の教師である今井しのぶ先生(金沢 碧)は、涼子先生のお姉さんでもあります。一見マトモな美人教師ですが、極太の注射器を構え、初対面のハンソク先生に無理やり採血を迫る等、サディスティックな一面もあるようです。

「もっと太い注射器にしましょうか? 大西先生」

何となくエッチな台詞に聞こえちゃうのは、私が変態だからですねそうですね。

以後、この美人教師を巡って小寺先生と野口先生が、恋の鞘当て合戦を展開する事になります。谷 隼人vs秋野太作……勝敗は火を見るよりも明らかですw

それにしても校長以下、ヘンな先生ばっかりで、こうして喜劇色をあまりに強め過ぎたのも、不評の一因になったかも知れません。これも時代の空気ではあったのですが……

さて、ガリベン生徒の西脇(岡村清太郎)と成瀬(豊原 健)が、ちんたら遊んでるようにしか見えないラグビー部の練習を眺めて、吐き捨てるように言います。

「アイツらがいるからさ、俺たちはいつまで経っても県立東(ライバル校)より下に見られるんだよ」

「本当はラグビー部に入りたいんじゃないのか、西脇?」

「バカなこと言うなよ」

「俺はちょっとその気あるね。アイツらだって要するに、ああやって涼子先生のカラダに触れるからラグビーやってるんだろうが」

なるほど、涼子先生の設定年齢は21歳、演じる片平なぎささんは当時20歳で、ピッチピチの美人教師のカラダに(ラグビーと称して)堂々とタッチ出来るなら、私だって即入部したい位ですw

だけど涼子先生は、可愛い部員たちがそんな邪な気持ちでラグビーをやってるとは、夢にも思ってないご様子。このギャップが、後にスキャンダラスな事件を引き起こす事になります。

「こらぁ! それでもラグビーか!? お前ら、フォークダンスやってるんじゃねえぞ!」

ちんたらした練習を見かねたハンソク先生が、自らの好感度も省みずw、いきなりグラウンドへと乱入します。

「俺はこの学校の元・応援団長だ。モタモタした運動部はな、張り倒して喝を入れて来たんだ!」

自分たちには何も出来ないからこそ、ただひたすら声を出し、全力で応援する……最近の連ドラ『あすなろ三三七拍子』で描かれた、謙虚な応援団スピリットとは真逆に思えるハンソク先生の言い草ですが、果たしてどっちが現実の応援団に近いんでしょうか?

リーダー格の水野(井上純一)が、ハンソク先生に詰め寄ります。

「おいおい、出しゃばんのもいい加減にしろよ先公!」

若きベテラン俳優・井上純一さんは1958年生まれで当時21歳、先生役の片平さんより歳上ですw

「よーし、俺が今からラグビーがどういうもんか見せてやるよ」

「そんなものアナタに見せて頂かなくても結構です!」

必死に生徒たちを庇おうとする涼子先生を無視して、ハンソク先生は挑発を続けます。

「俺が此処からボールを持って走る。1人でもいいからタックルしてみろ。どうせ出来んだろうがな、お前らには」

「やったろうじゃねえか!」

つくづく男ってのはバカですから、まんまと挑発に乗った生徒たちは、走るハンソク先生に次々とタックルを挑みますが、軽々とかわされてしまいます。

「見ろ! これがラグビーだっ!」

勝ち誇りながらタッチダウンしようとするハンソク先生に、涼子先生がオッパイを揺らしながら駆け寄り、見事タックルを決めて見せます。格好つけた挙げ句に赤っ恥をかいたハンソク先生は、結局また好感度を下げただけでしたw

その夜、体中に出来た擦り傷とアザに薬を塗ってる涼子先生を見て、姉のしのぶ先生が忠告します。

「涼子、あなたオンナよ?」

「分かってるわよ、そんなこと」

「いくら生徒でも、男の子はオトコよ」

「なによ、お姉さん」

「問題が起きない内にね、お止めなさいって言ってるの。あんなラグビー部」

「なに言ってるのよ、問題が起きるワケないじゃないの。あの子たちはみんな可愛いわ……私の言う通り、一生懸命やってくれる」

「あなたがそう思ってるだけじゃないの?」

「あの子たちはね、今までほったらかしにされてたのよ。寄付金の為だけにこの学校に集められて……私ね、あの子たちに何かを与えてやりたいのよ。一生懸命になれる何かを……」

「涼子。現実っていうのは、アナタが考えてるほど甘くないのよ」

そう言われても、まだまだ若く、理想に燃える涼子先生の胸には響きません。だけどこの翌日、姉の忠告をイヤでも思い知らされる事件が、涼子の身に降りかかる事になります。

一方、我らがハンソク先生は、初日からロクな事が無いってんで「俺、もう辞めるよ」なんて腑抜けた愚痴を言ってお母さんに甘えるわ、翌日の初授業(担当は英語)では生徒たちへの単なる嫌がらせで抜き打ちテストを実施するわで、着実に好感度を下げまくってますw

そして、極めつけ。女子更衣室を覗こうとしてる水野たちを見つけたハンソク先生は、シャワールームから100メートル以内は男子立入禁止という校則があると聞いて、生徒たちを止めるどころか俄然やる気を出しますw

「禁止、禁止ってうるさい学校だなぁ……よし、やろう!」

「ええっ?」

「禁止って言われると、俺はそいつを破りたくなるタチなんだよ」

そんなハンソク先生に、私は大いに好感を……というか親近感を抱くのですがw、全国PTAの皆さんはここで堪忍袋の緒が切れた事でしょうw

かくして我々視聴者は、藤谷美和子さんはじめ女子テニス部員たちのシャワーシーンを眼にするワケですが、ちゃんとヌード要員も交えた思いがけぬセクシーな映像に、全国のお茶の間はさぞ気まずい空気に包まれたんじゃないでしょうか?

次の第2話でも、落ちこぼれ生徒の長谷川 論くんが偶然、片想いしてる女子の着替え現場を目撃しちゃう場面で、しっかりオッパイが映ってました。

ドリフのコント番組でも女性のハダカが見られる時代だったとは言え、青春シリーズで堂々と見せちゃったのは初めてだったように記憶します。

これはオッパイで男性視聴者を釣ろうとしたと言うよりも、それまでのシリーズとは違うアグレッシブな姿勢を示した、創り手たちの心意気の表れだったんじゃないでしょうか?

私はもちろん大歓迎だったけどw、恐らく局内外で不評だったのでしょう、第3話以降こういう過激な描写はなりを潜め、ハンソク先生も徐々にフツーの青春物らしいキャラクターに戻って行く事になります。

さて、我々視聴者は大変ありがたいものを拝見させて頂いたワケですが、ハンソク先生は残念ながら涼子先生に見つかって、シャワー覗きは未遂に終わっちゃいました。ここでいよいよ、涼子先生の怒りが爆発します。

「なんてこと……あなたは先生ですよ!?」

「いやぁ、ちょっと昔の気分に戻ってさ」

「昔の気分になったら女子の更衣室を覗いてもいいって言うんですか!」

「……ちょっと、やりすぎたかな? アハハ!」

「アハハじゃありません! 私が一生懸命になって、この子たちを良い方に導こうとしてるのに、あなたそれをぶち壊しにする気ですか!?」

「良い方に導く? あんた、そんなつもりでラグビーやってんのか?」

「私はこの子たちに、何か1つでも正しい楽しみを与えたかったんです。活き活きとして学校に行きたくなるような楽しみ……それをあなたメチャクチャにする気ですか!?」

「正しい楽しみ? 楽しみに正しいも悪いもあるかい」

「こういう楽しみこそ悪い楽しみです!」

「学校に来る楽しみなんてのはな、先公に与えてもらうもんじゃないよ。先公が与えられるもんじゃないよ!」

ハンソク先生の意見にも一理あるし、涼子先生の言い分も決して間違ってない。「これが正しい」「これは間違ってる」みたいに一面的な結論を出さないのが『あさひが丘』の特徴なんですね。

「あんたね、どういうつもりでコイツらとラグビーやってるのか知らんが、コイツらは要するに、あんたのオンナの魅力に惹かれてやって来てるだけなんだよ」

「そんな事ありません!」

「そうだろ、お前ら」

「そんな事ないでしょ?」

「そうだろうが!」

「そんな事ないでしょ!?」

2人の気迫に圧されて、生徒たちは何も言えなくなっちゃいますw 果たして、そんな事あったのか無かったのか? この次の場面で、涼子先生は現実を思い知らされる事になります。

放課後の男子ロッカールームで、ラグビー部でも一番の爽やかイケメン=二宮くん(田中浩二)と2人きりになった涼子先生は、あらためて疑問をぶつけます。

「ねえ、二宮くん。本当のこと聞かせて欲しいの。あなた、私が若い女の先生だから、ラグビーやろうと思ったの?」

当時新人の田中浩二さんがガチガチに緊張してるのが画面から伝わって来て、観てる我々も妙に緊張しちゃいますw だけど恐れを知らない涼子先生は、二宮くんの間近まで近寄って、答えを求めます。

これはマズい。非常にマズい。涼子先生は、オトコという生きものを甘く見過ぎてました。

「聞かせて二宮くん。本当のこと……ねえ、二宮くん」

「しぇっ、しぇんしぇーっ!!」

「あっ、何をするの!?」

「しぇんしぇーっ!!」

「いやっ、やめて!! ………あっ」

………(つづくw)
 
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