ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『俺たちは天使だ!』1979

2018-11-02 12:00:11 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
刑事ドラマ大好き人間の私ですが、探偵ドラマはそれ程でもないんです。『傷だらけの天使』も『探偵物語』も、観れば面白いと思うし感動もするんだけど、「ハマった」と言えるほど好きにはならなかったんですね。事件物で括れば刑事も探偵も同じだろうと思われるでしょうが、私の中ではかなり違います。それは恐らく私が、登場人物に自己投影しながらドラマを観るタイプの視聴者だから、だろうと思います。

刑事は警察というガチガチの堅い組織の中で働く人達であり、厳しいモラルやルールに縛られながら捜査をし、時には自分の主義主張を曲げてお偉いさんの指示に従わなければならない、とても窮屈な職業です。それに対して私立探偵は基本的に自営業であり、組織の後ろ盾が無い替わりに、しがらみやルールに縛られない自由さがある。そこが刑事物には無い探偵物の魅力なんだけど、私がハマらない理由もそこにあるんです。

主人公の境遇に厳しい制約や障壁があればあるほど、それをはねのけて逆転勝利した時のカタルシスが大きくなると思うんですね。最初から主人公が自由な立場だと、その快感が得られない。

それと、私自身がアウトローな男に憧れながらも、現実には組織の中で生きる事しか出来ない小市民ゆえに、アウトローな私立探偵よりも窮屈な刑事の方が、かえって自己投影しやすいワケです。

探偵は拳銃を使わない(ゆえにアクションが地味になりがち)とか、他にも理由は色々あるかと思いますが、とにかく私の中では刑事物が特別好きなジャンルであり、探偵物は「その他のジャンル」の1つに過ぎません。

だけども『俺たちは天使だ!』だけは別格で、これにはハマったんですよね。毎週の放映が待ち遠しくて、地味なエピソードが多かった’79年当時の『太陽にほえろ!』よりも、正直こっちの方が楽しみだったかも?

私がハマるのも当然と言えば当然かも知れません。何しろ日本テレビ&東宝の製作(全20回)による本作は、メインスタッフ&キャストがほとんど『太陽にほえろ!』と同じだったんですね。

放送は毎週日曜日の夜8時で、NHK大河ドラマの裏だし途中からテレ朝で『西部警察』が始まったりもしたけど、私は『俺天』を観続けたし、視聴率も好調でした。

(いまだに根強いファンも多く、最近になってテレビ東京で続編らしきドラマも創られましたが、今時の若手イケメンが演じるビデオ撮りのドラマですから、それには全く興味無いです)

確かに『太陽』と同じ人達が創ってる事は観るきっかけになったけど、ショーケンさん(=マカロニ刑事) の『傷だらけの天使』にも優作さん(=ジーパン刑事) の『探偵物語』にもハマらなかった私が、なぜ『俺たちは天使だ!』にはハマったのか?

多分、チーム物であった事が大きいかも知れません。宮内淳さん(=ボンボン刑事) の『探偵同盟』もチーム物ではあったけど、残念ながら掛け合いの面白さじゃ『俺天』の足元にも及びませんでした。そこはやっぱり、主役を囲むメンバー達の「役者が違う」って事になるのでしょう。『俺天』のキャスト陣は一流揃いでした。

麻生探偵事務所のメンツは、スコッチ刑事ばりにキザだけどどこか抜けてる「キャプテン」に沖 雅也、小悪魔な紅一点の「ユーコ」に多岐川裕美、ユーコLOVEな熱血単純男「ナビ」に渡辺篤史、身も心も軽いダンス野郎「ダーツ」に柴田恭兵、合理主義の業界人「ジュン」に神田正輝というメンツ。

そして同じマンションに事務所を構える藤波法律事務所の、カップラーメン大好き弁護士に小野寺 昭、その助手の久美ちゃんに長谷直美。マンション管理人に下川辰平。さらに新妻警察署の刑事に勝野 洋、江守 徹、三景啓司、横谷雄二らが扮するほか、秋野太作、結城美栄子、田坂 都etcと、『太陽』レギュラーを中心に岡田晋吉プロデュース作品のオールスターキャストが揃い踏み。

特に『太陽』におけるクールなイメージを覆す、沖さんのコミカルでお人好しな佇まいは新鮮で魅力倍増だし、恭兵さんを中心に繰り広げられるアドリブ合戦の楽しさや、ハイテンポな掛け合いのリズムと絶妙な間は、ずっとその世界に浸っていたくなる心地良さがありました。

みんなとにかく貧乏で「金にならない仕事は絶対に引き受けない!」っていつも言ってるのに、結局は義理人情にほだされたり、狡猾なクライアントに騙されて危ない橋を渡っちゃう。悪党の裏金を横取りする得意の作戦も、必ず警察に見つかって最後には没収されちゃう。人助けしてるのに決して現金じゃ報われない、それでもまた金にならない仕事を引き受けちゃう「天使」たちの姿がまた、微笑ましくて愛おしくて癒されるんですね。

この作品もかなり突き抜けた演出で、例えば驚いた時にバネ仕掛けで髪の毛が逆立ったりする漫画チックな場面も多いんだけど、そういう枝葉のお遊びなら私も楽しめるんです。だけど内容そのものが「何でも有り」になっちゃうと、リアリティや緊張感が欠落して『探偵同盟』みたいになっちゃう。セントラルアーツ作品はその一線をよく越えちゃうんです。

その点『俺たちは天使だ!』は、ギリギリ一歩手前でリアリティと緊張感を保ってくれてました。そのボーダーラインを具体的に説明しろと言われても難しいのですが、要するに「そんなヤツはおらんやろ!」と「そんなヤツ、もしかしたらいるかも?」の違いと申しましょうか……

沖さんが使う武器のブーメランや、恭兵さんのダーツ、篤史さんの頭突きもw、現実にはいないとしても有り得なくはない。9割が嘘でも1割の真実さえあれば楽しめる。そこんとこの微妙なサジ加減、解って頂けますでしょうか?

それはともかく、ヒットする番組の必須条件ではありますが、『俺天』は音楽もオシャレで軽快で素晴らしかったですね。担当したバンド「SHOGUN」はこの後『探偵物語』も続けて手掛ける事になります。主題歌『男達のメロディー』の歌詞「運が悪けりゃ死ぬだけさ」は『俺天』のスピリットを見事に体現したフレーズで、毎回のサブタイトルにも応用されました。

その主題歌が流れるOPタイトルの映像も凝ってて、ギャングに追われるキャプテン達の車がどんどん崩壊していく様が丁寧にコミカルに描かれてて、何回観ても飽きずに笑える実に素晴らしいタイトルバックでした。

ちなみにこの番組、当初のタイトルは『沖田総司』だったそうですw つまり新撰組を描いた時代劇の企画として準備を進めてたのに、撮影直前になって局の上層部から「大河ドラマの裏なのに時代劇はあかんやろ」とストップをかけられ、苦肉の策で現代劇の企画を急遽ひねり出したという、嘘みたいなホントの裏話。

だから当初は沖雅也=沖田総司、柴田恭兵=斉藤一、神田正輝=永倉新八、勝野洋=桂小五郎、江守徹=近藤勇、というような配役だったそうです。前年か前々年にやはり『太陽』チームで『姿三四郎』を連ドラ化(勝野洋 主演)してましたから、その流れを受けた企画だったんですね。

それはそれで興味深いけど、私としては『俺たちは天使だ!』が観られて幸せでしたから、撮影直前に企画変更を命じた無茶な偉いさんに感謝したいと思いますw
 
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『探偵同盟』1981

2018-11-02 00:00:05 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
『あさひが丘の大統領』に続いて宮内淳さんが出演されたのが、1981年初頭にスタートしたこのドラマ。

松田優作主演『探偵物語』(’79~’80年、日本テレビ系) をヒットさせたばかりのセントラルアーツ社が製作し、フジテレビ系列の木曜夜8時枠で全12話が放映された『探偵同盟』です。

早稲田大学に実在したという「探偵クラブ」をモデルに、主に若い世代が巻き込まれたトラブルや犯罪を学生探偵達が解決していくという、最初からコケるのが目に見えてるような企画でしたw

大学生の探偵と聞けば、ただでさえ面白半分に事件を扱ってるようなマイナスイメージを受けるのに、観たら実際に悪フザケ満載の番組内容で、大方の視聴者がソッポを向いちゃったのは当たり前かと思います。

悪フザケの度が過ぎて「何でも有り」になっちゃうと、サスペンスやアクションから緊張感が欠落しちゃいます。緊張感の無い捜査物やアクション物ほどつまんない物はありません。

その「何でも有り」の一線をよく超えちゃうのがセントラルアーツという会社の(私から見れば)悪い癖で、最初は大好きだった『あぶない刑事』もテレビの第2シリーズあたりからオフザケが過ぎてバランスを崩し、私にとっては「寒い」作品になっちゃいました。

優作さんの『探偵物語』の場合は、ハードボイルドタッチで書かれた脚本を現場でコミカルに味付けして行く手法でしたから、まだ楽しめました。私としてはギリギリのラインでしたが……

その辺りは感じ方に個人差がありますから一概には言えないけど、少なくとも『探偵同盟』が低視聴率により1クールで打ち切りになっちゃったのは、間違いなく「フザケ過ぎた」ことが原因だろうと私は思います。

そのせいで未だ商品化される見込みは無く、再放送されたという話も聞いた事がありません。事実上の封印状態です。だけど私は、もう一度観たくて観たくて仕方ありません。

何しろ数少ない宮内淳さんの出演作だし、最高に可愛かった頃の森下愛子さんがヒロインですから。

その時代にスベったドラマだからこそ、今観るとまた違った楽しみ方が出来るかも知れないし、まぁやっぱり笑えないだろうけどw、それでも私は観たくてたまらないのです。

探偵クラブのメンバーは、大学8年生のリーダー「マーロウ」に宮内さん。そして早熟で多感な紅一点「モンロー」に森下さん。このネーミングセンスだけで既に敬遠しちゃう方も多い事でしょうw

ほか、プレイボーイの「ボンド」に塩屋智章、キリストかぶれの「ブラウン」に柿崎佐斗志、ルポライターの「社会人」に本間優二と、正直パッとしない面々w

そして犯罪心理学の助教授にして探偵クラブ顧問「ホームズ」に扮したのが、我らが若大将・加山雄三さん。

当時なぜかテレビ界は加山雄三ブームで、このシーズンは毎週木曜日の夜に、8時からフジで『探偵同盟』、10時からテレ朝で『加山雄三のブラックジャック』と、なんと同じ曜日に2本の主演ドラマが放映されてたという異常事態。

私は漫画『ブラックジャック』の大ファンですから、加山さんのBJにも大いに注目したんだけど、こっちは全然フザケてない超シリアスな作風なのに、『探偵同盟』を軽く凌駕する程の珍品ドラマになってました。

何しろ昼間は爽やかなハンサム実業家の加山さんが、夜になると黒マントを羽織ってニヒルな天才医ブラックジャックに変身する(顔の傷跡や白髪も急に表れる!)という、実にアバンギャルドな設定。カルト作としてマニアックな人気は得たものの、数字的にはやっぱりコケましたw

『探偵同盟』が12回で打ち切られた後は、セントラルアーツとしては珍しい正統派の刑事ドラマ『愛のホットライン』がやっぱり加山さん主演で放映され、コケましたw あの頃、何故そんなに、加山雄三でなければいけなかったのか???

『探偵同盟』には更に樹木希林、佐藤蛾次郎、そして『探偵物語』から引き続いて成田三樹夫、山西道広、竹田かほり、ナンシー・チェニーらがレギュラー出演。

特に成田さんと山西さんは前作と同じ服部警部&松本刑事の役で、毎回パトカーのスピーカーで「ワルキューレの騎行」を大音響で鳴らしながら、指揮棒を振り回して登場するというナンセンスぶり。ここまでとことんバカバカしいと笑えますw

正直なところ『探偵同盟』で私の記憶に残ってるのは、この狂ったように指揮棒を振り回す成田三樹夫さんの姿だけだったりしますw もっと他の場面も思い出したいので、是非ともDVD化して頂きたいです。

なお、宮内淳さんは同じ年の夏に『ここまでは他人』というジェームス三木・脚本によるTBS系の連続ドラマ(水曜夜9時、全9話)にレギュラー出演された後、パッタリとドラマに出なくなっちゃいました。

『ここまでは他人』の主演は漫才コンビの星セント・ルイス、ヒロインは女子プロレスのマッハ文朱という、あまりに異色……と言うよりイロモノ過ぎるラブストーリーでした。

俳優として充分に華々しいフィルモグラフィーではあるんだけど、錚々たる『太陽にほえろ!』卒業生たちのその後に比べると、宮内さんはイマイチ作品に恵まれなかった感が否めません。

だけどテレビに出なくなられたのは恐らく、宮内さんご自身にそれほど芸能界への執着が無かったから……だろうと私は思います。そんなギラギラ感の無さこそが、私が宮内淳という俳優さんに惹かれた最大の理由なのかも知れません。

宮内さんは現在「影絵劇団/かしの樹」主宰者として、また「公益財団法人/地球友の会」代表理事として精力的に活動されており、相変わらずスマートでお元気な姿を『太陽にほえろ!』や『あさひが丘の大統領』のDVD映像特典で見せて下さってます。
 
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