ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』とMGCパイソン

2018-11-25 11:25:30 | 刑事ドラマ HISTORY









 
コルト・パイソン357マグナムのプラスチック・モデルガンがMGC社から発売されたのは、1978年頃だったかと思います。

武骨なデザインでとても格好良く、実銃の世界でも特に有名なリボルバーですから、日本の刑事ドラマでも引っ張りだこになるかと思いきや、実際に広く使われたのはローマン&トルーパー(コルトMkーIIIシリーズ)の方でした。

実際にMGCのパイソンをいじった事がおありの方なら、その理由はよくご存知かと思います。要するに、故障し易いんですよね。私が初めて手にしたMGCパイソンも、買ったその日に動かなくなっちゃいましたw

とにかく複雑怪奇なメカニズムで、修理しようと思って分解したら最後、よっぽど手慣れた人でなければ容易には元に戻せません。壊れ易くて直しにくい、オマケに作動も発火も不確実というw、実に扱いづらいモデルガンだったワケです。

そんなパイソンを日本のメディアで初めて見たのは、私の場合『熱中時代/刑事編』サントラ盤レコードのジャケット写真でした。水谷豊さんが6インチのパイソンを構えておられました。(実際のドラマでは旧ローマン2インチを使用)

ドラマの刑事さんがパイソンを愛用したのは、たぶん『大追跡』の沖雅也さん(6インチ)が最初だろうと思います。あと『大捜査線』で杉良太郎さんが6インチ、『走れ!熱血刑事』で松平健さんが4インチを使っておられました。

最も印象深いパイソンは『噂の刑事トミーとマツ』で松崎しげるさんが愛用された4インチかも知れません。劇中で使う機会は少なかったけど、何しろ視聴者が毎週眼にするOPタイトルが、いきなりパイソンと旧ローマン(国広富之さんが使用)のクローズアップから始まりますから。

後は『西部警察PART II』で三浦友和さんが後期に4インチを、舘ひろしさんがPPCカスタム仕様の4インチを使われてた位でしょうか?

あ、それと『もっとあぶない刑事』における柴田恭兵さんの愛用拳銃が、パイソンの2.5インチでした。(発砲シーンにはトルーパーのフレームにパイソンの銃身を取り付けたプロップガンが使われたそうです)

こうして列挙してみると、あんなに扱いにくいパイソンなのに、けっこう色んな番組で使われてた事に驚きます。格好良さじゃピカイチのリボルバーですから、リスクがあっても使いたくなるんでしょうね。

『太陽にほえろ!』ではドック(神田正輝)登場後に、スニーカー(山下真司)がパイソン4インチを初使用しました。

だけどスニーカーは「走って跳んで」が基本の熱血キャラですから、拳銃はあまり使わないんですよね。トルーパーからパイソンに持ち替えて以降、ガンアクションが描かれたのは第430話『東京大追跡』と、前回レビューした第442話『引金に指はかけない』位しか無かったように思います。

スニーカーの後任刑事=ラガー(渡辺 徹)は当初、日本警察の制式拳銃であるニューナンブM60の3インチを使ってました。と言っても、ローマンのフレームにニューナンブっぽい銃身を取り付けた珍品カスタムで、あまり目立った活躍は無かったですね。

その後ラガーは、登場編でスニーカー先輩から新品のスニーカーを譲り受けたのと同じ様に、パイソン4インチも引き継いで愛用する事になります。

ラガーもこれまた熱血キャラですから、ガンアクションと呼べるエピソードはほとんど無くて、殉職直前の主演作『左ききのラガー』が唯一だったように思います。でも、その時は既にラガーの拳銃はパイソンからS&W・M586(4インチ)に代わってました。


パイソン時代のラガーで拳銃にまつわるエピソードと言えば、思いつくのは第534話『俺の拳銃が無い!』ぐらいでしょうか。

守(水上功治)という少年院上がりの青年が、バイト先のガソリンスタンドで売上金ネコババの疑いをかけられ、逆上して暴れた弾みで店長を死なせてしまう。

そのまま守は逃走しちゃったもんだから、大方ネコババも彼の仕業だろうと見られる中で、ラガーだけは「濡れ衣だったからこそ逆上したのでは?」と考えます。ラガーにも、少年時代に給食費ネコババの疑いをかけられた苦い経験があるんですね。

「無実なのに疑われる。それがどんなにツラいか… どんなに悔しいか… 疑われた人間にしか解りません」

私もかつて、とあるサイトの掲示板で「荒らし」の濡れ衣を(何の根拠も証拠も無く)着せられ、死にたくなるほどツラくて悔しい思いをした事があります。こんなに「書くこと」が大好きな私が、それ以来いっさい掲示板の類には書き込みしなくなりましたからね。とても恐ろしくて書けないワケです。

疑いをかける側は面白半分でも、疑われた側は一生消えない心の傷を負うんだって事を、私もその時、身をもって知りました。

だけど、ラガーは刑事です。人を疑うのが仕事なんです。守のネコババ疑惑はやはり濡れ衣だった事が証明されたものの、店長を死なせてしまった罪は償わせなくちゃいけない。どんな手を使ってでも……

守の不良仲間だったサブ(長谷川 諭)をマークするラガーは、根は優しいサブとやがて意気投合します。サブは、守が隠れてそうな場所に行って自首するよう説得するから、信じて待っていて欲しいとラガーに懇願します。

ラガーは迷いながらも、信じて待つ事をサブに約束します。約束するんだけど、刑事としてはサブが守を逃がしちゃう可能性も疑わなくちゃならない。あるいは、サブが守に殺される危険性だってある。

隠れ家で再会した守とサブの前に、ラガーが現れます。

「テメエ、尾行してやがったのか!? 最初から騙すつもりだったんだな!?」

逆上したサブはラガーに襲いかかり、守と2人でボコボコにリンチした挙げ句、ラガーのパイソンを奪い去って行くのでした。

「俺が……俺が馬鹿だったんです! 人に疑われるのがどんなにツラいか、一番よく知ってたのに、サブを疑ってしまいました……」

結果的に守とサブを、より重い犯罪へと導いてしまった事で、ラガーは自分の取った行動を激しく後悔します。

だけど、約束通りにサブを信じて待ったとして、本当に守は自首しただろうか? 刑事として正しい判断をした筈なのに後悔してるのは、サブに好かれたいっていう気持ちがあるからじゃないのか? 兄貴分のドックが、ラガーを諭します。

「刑事っていうのはな、嫌われ者なんだ。そうでなきゃいけないんだ」

刑事が拳銃を奪われちゃう話ってのは定番中の定番で、他の番組じゃ大抵「自分の銃が新たな犯罪(最悪は殺人)を生む」事への恐怖と焦りがメインに描かれるもんだけど、『太陽にほえろ!』は違いますよねw

それよりも、刑事としての在り方、人間としての在り方について悩み、乗り越え成長していく若者の姿こそを描く『太陽』は、やっぱ青春ドラマなんです。

ラガーも着任してから2年目に入り、ひと皮剥けて大きく成長しようとする時期でした。既に身体の方は立派に大きくなってましたけどw

で、ヤケになった守とサブは強盗を企てるも失敗し、人質を取って商店に立てこもります。ラガーは自分が身代わりになるから人質を解放するように交渉し、丸腰で店に入る。そして2人が油断したスキを突いて、足首に隠したコルト・ローマン旧2インチを抜いて、サブが持つパイソンを撃ち飛ばすのでした。

「汚ねえぞ、また騙したな!? いつかぶっ殺してやる! 一生忘れねえぞテメエーっ!!」

サブが浴びせる罵詈雑言に、じっと耐えるラガー。刑事っていうのは、嫌われ者なんだ。そうでなきゃいけないんだ…… そんなラガーの肩を、いぶし銀の山さん(露口 茂)がポンと叩きます。

「いつか解るさ、あの連中にも。騙されて、助かったんだって事をな」

山さんが言うと説得力があります。超シビアな展開の中で、救いになる、ホント素晴らしい台詞でした。

ただ、このエピソードで残念だったのは、その直後の取り調べシーンで、サブが早速ラガーに理解を示しちゃったこと。笑顔で「ホントは、捕まってホッとしたんだ」って、感謝までしちゃってるw

「いつか解るさ」で終わる方が絶対良かったですよね。ここで甘さが出ちゃったら、それまでのシビアな描写が台無しやんって、私は思いました。無理やりハッピーエンドにしなくて良かったのに!

それともう1つ、細かい事だけど、足首に隠し持つ銃としては(いくらラガーは縦にも横にもデカいとは言えw)ローマンはデカ過ぎます。『フレンチコネクション』のポパイ刑事(ジーン・ハックマン)に習って、そこはチーフスペシャルにして欲しかった!

それはともかく、七曲署でパイソン4インチを使ったのはスニーカーとラガーだけで、2人とも熱血キャラだから、パイソン自体の印象は薄かったと言わざるを得ません。

その点、短銃身のパイソン2.5インチは、ジプシー(三田村邦彦)→デューク(金田賢一)→喜多さん(寺尾 聰)と、発砲頻度の高いクール系の刑事達が使ってたんで、4インチよりも印象深いですね。


第494話『ジプシー刑事登場!』では、そのパイソンにまつわる珍場面が見られました。七曲署に初出勤したジプシーは、着任の挨拶もせず地下射撃場に直行、新しい拳銃を試し撃ちします。その時、彼の手に握られてたのは、お馴染みのローマン旧2インチでした。

ところが次の場面。車ごと喫茶店に突っ込んだジプシーが籠城犯を仕留めるんだけど、その時に持ってた銃はパイソンなんですよねw

射撃場で試射した時は的を外してたんで、ローマンを却下して代わりにパイソンを調達したのかも知れないけど、そんな時間の余裕があったようには見えません。このローマン→パイソンの早変わりには、3通りの理由が考えられます。

☆その1=単純に小道具さんの調達ミス。

☆その2=射撃場のシーンでは何発も撃たないといけないから、その時だけ(作動と発火が確実な)ローマンを使った。(銃の種類が違う事には、余程のマニアでなきゃ気づかないだろうという判断)

☆その3=銃を持ち替えるシーンが本来あったんだけど、カットされた。

2つ目が一番「ありそう」だと私は思うんだけど、願望としては3つ目であって欲しい。なので、射撃場のシーンでジプシーは、実は最初からパイソンとローマンの2種類を用意してたんだとw、勝手に脳内補完する事にしました。

つまり、先にパイソンを試射する場面があるんだけど、尺の都合でカットされたワケです。それなら時間を置かずに銃を持ち替える事が出来るんで、辻褄はバッチリ合います。……でもまぁ、やっぱ2つ目の理由なんでしょうねw


第515話『生いたち』は、とにかくジプシーがとことんカッコ良く、逆に犯人(剛たつひと)がとことんカッコ悪く描かれたエピソードですw

深夜、帰宅時に通りかかったスーパーの異変に気づいたジプシーは、強盗3人組を発見。取り逃がしたものの犯行は未然に防ぎます。

犯人の1人である内村(剛さん)は、ジプシーの姿を見て愕然とします。実はこの内村、ジプシーとは小学校から高校まで同じ学校だった同級生で、ずっと彼をライバル視して来た男なんです。

と言っても、ジプシーにはそんな記憶がまったく無くて、内村が勝手にコンプレックスを抱いてただけ、というカッコ悪さw

勉強は頑張ってトップクラスの成績を得たものの、身体を張ってクラスメートをいじめっ子たちから守ったりするジプシー少年の、持って生まれた勇気や正義感だけは真似しようが無い。

その後もエリートコースを歩んで来たものの、事業の失敗で地位を失った内村はヤケッパチ状態。そんな時にジプシーが現れた事で、彼は憎しみの矛先をジプシーに向ける事で現実逃避します。

まず幼児を誘拐し、身代金の運搬にジプシーを指名。その現場に向かう前にジプシーは、なぜかパイソンの弾倉をいったん空にしてから、まるでゴリさん(竜 雷太)みたいに1発だけ弾丸を込めて出発するんですよね。その時点では意図不明なんだけど……

内村は金の運搬先とタイムリミットの指示を次々に変え、ジプシーをいたぶるようにしてアチコチ走らせます。そんな事で嬉しそうに勝ち誇ってる姿がもう、最高にカッコ悪いですw

で、人質と身代金を交換する段になって、内村はジプシーに「拳銃をよこせ」と命令します。「おっと、その前に1発撃って見せろ。空の拳銃を渡されたんじゃかなわねぇ」

なるほど、ジプシーはそこまで先を読んでたワケですね。カッコ良すぎです。そして、1発だけ撃ってからパイソンを渡すジプシーを見て、完全に勝ち誇りながら人質を手放しちゃう内村は、カッコ悪すぎですw

ジプシーが人質の安全を確保した時点で、形勢はあっさりと逆転します。ビルの屋上まで追い詰められた内村は「来たら飛び降りるぞ!」というw、最高にカッコ悪い脅し文句で悪あがきします。

そのあまりにカッコ悪い姿を見て、心底情けなくなったジプシーは、取り戻した愛銃パイソンの弾倉を開き、黙って1発、また1発と弾丸を込めて行きます。

「な、何やってんだテメエ?」

「本当に死にたいんだな、内村」

そう言うとジプシーは、内村に向けて黙々とパイソンを撃ち始めます。頬、肩、脚と、百発百中の腕前で、内村の身体に軽傷を負わせて行く非情なジプシー。

「どうした、死んでも良かったんじゃないのか? 望み通りにしてやる。騒ぐな」

ジプシーは更に弾丸を詰め替え、内村を撃ち続けます。「クールファイター」の呼び名に相応しい非情さとハードさ。私は、こんなジプシーがもっと見たかった!

「わ、分かった! 分かったよ! もう勘弁してくれ! やめでぇーっ! 許してぇーっ!!」

刑事ドラマ史上、これほど徹底してカッコ悪い犯人が存在したでしょうか?w 少年時代も今も、ジプシーを勝手にライバル視しながら、全く相手にされてない。あまりに一方的なジプシーの圧勝で、演じる剛さんは100%、三田村さんの引き立て役でしたw

このエピソードではジプシーが「片肺」っていう初期設定が無かった事にされてるんだけど、逆にそれを生かして、ジプシーのピンチも描いた方が良かったように私は思います。

内村は、ジプシーが片肺である事を知った上で、わざと走らせる。ジプシーは汗びっしょりで顔面蒼白、限界ギリギリまで走らされ、あわや死にそうになっちゃう。

そんな描写があれば、最後の逆転劇がもっと痛快になったんじゃないでしょうか? あれじゃ内村がちょっと可哀想ですw

とは言え、ジプシーが登場編を凌駕するほどの非情さ&銃さばきを見せてくれた点で、私はこのエピソードを(個人的に)ジプシー編のBESTに挙げたいと思います。


ジプシーの次にパイソン2.5インチを愛用したのは、金田賢一さん扮するデュークです。第660話『デューク刑事登場!』では、いきなり犯人に3発も撃ち込んで射殺しちゃうハードさを見せてくれました。

だけど以前にも書いた通り、金田さんの演じるアクションは、マイコン(石原良純)よりちょっとだけマシ、というレベルだったのですw つまり、殺陣も銃さばきも格好良く決まらない。

そのせいか、第667話『デュークという名の刑事』で銃撃戦(マイコンとコンビでw)を見せたのを最後に、パイソンを使う機会はほとんど無くなっちゃいました。

その点『太陽にほえろ!PART2』に登場する喜多刑事を演じたのは、何たって『大都会PART III』と『西部警察』で誰よりも格好良い銃さばきを見せてた寺尾聰さんですから、パイソンを構える姿もバッチリ決まってました。

『西部』ファンの友人は「44マグナムを使わない寺尾聰なんて寺尾聰じゃない!」みたいなこと言ってたけど、そんなワケがありませんw 決まる人は、何を使おうが決まるんです。

僅か1クール(3ヶ月)の出番ゆえ、銃撃戦が描かれたのは第2話『探偵物語』と第8話『ビッグ・ショット』の2本のみだったけど、それでもパイソンを構える寺尾さんの超クールなお姿は、今も私の脳裏に焼き付いてます。
 
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『太陽にほえろ!』1981~1982

2018-11-25 00:00:32 | 刑事ドラマ HISTORY









 
#476 ラガー刑事登場!

ラガー刑事こと竹本淳二=渡辺 徹さん(上画像の超スマートな姿を見よ!w )の登場も、『太陽にほえろ!』の新時代を象徴してたように思います。

とにかく「若い! 子供っぽい!」っていうのが第一印象でしたけど、当時20歳になったばかりって事で、番組スタート時のショーケンさんとそんなに変わんない年齢なんですよね。あの頃の高橋惠子さんより歳上なんです。

でも10年を経て、若者の外見も内面も子供っぽくなって来た。だから徹さんも、現在の20歳の連中と比べればずっと大人っぽいんですけどね。

あと、私自身がもう16か17歳になってましたから、20歳の徹さんは憧れのヒーローというより、もっと身近に感じる分だけ嫉妬みたいな感情も沸いて来ちゃう。

実際、我々と同じく徹さんも『太陽』ごっこをして少年期を過ごされたそうで、事前のテスト出演でゴリさんと共演した時は「うわっ、ゴリさんが目の前にいる!」って、随分と舞い上がったんだそうです。

だから、これまでの新人刑事と違って「こっち側から向こう側に行けた人」って感じで、そりゃもう死ぬほど羨ましかったです。

そんなに若い人をキャスティングした理由の第一は、番組も10年目に入ってレギュラーキャストの平均年齢が高くなっちゃったので(最年少が沖雅也さん! ボンやロッキー、スニーカーよりも若かったんですね)、まずは若返りを図ること。

第二の理由は、新人刑事の成長を描く『太陽』の原点に立ち戻ること。初期はマカロニ(萩原健一)やジーパン(松田優作)があくまで主役でしたから、ラガーも同様に主演エピソードが連作されてました。

そして第三の理由は、若い男性アイドル(今で言うジャニーズ系)のブームに対応したって事ですね。かつては先頭に立って時代を引っ張ってた『太陽』が、今度は追いかける側に回っちゃった。

でも、そうやって時代の変化に対応し、カラーを変えて行ける柔軟さこそが『太陽』最大の武器とも言えるんじゃないでしょうか?

それまでは新人刑事を他の番組に出さない事をポリシーにしてたけど、ラガーだけは意図的にCMでアイドル(小泉今日子さん)と共演させ、早々に歌手デビューもさせて猛烈にプッシュ、思惑通りにアイドルとしてブレイクさせちゃった手腕は本当に凄いと思います。

もちろん、それも渡辺徹という逸材あればこそで、新しいスターを次々に見いだす岡田Pの選択眼と、発掘に至るまでの絶え間ない努力と情熱に脱帽あるのみです。

このラガー人気が決定打となり、『太陽』は第二の黄金期を迎える事になります。テーマ音楽も大量に新録され、ドラマの雰囲気そのものも若返りました。

なお、渡辺徹さんは皆さんご存知かと思いますが、底抜けに明るい性格でありつつ気配り上手な方でもあるので、現場のムードメーカーとして貴重な存在になると同時に、体型が劇的に変化して行く事になりますw


#479 怒りのラガー

ラガーの父親は殉職した刑事で、かつて長さん(下川辰平)の同僚だったという設定。だから幼い頃から長さんに可愛がられて、今でも「淳坊」なんて呼ばれてたりします。

長さんから見れば息子……を通り越して孫みたいな存在で、山さん(露口 茂)もゴリさん(竜 雷太)も今回ばかりは対応が甘かったw 新人刑事の通過儀礼だったゴリパンチも、ラガーは浴びずに済んでますからね。

その代わりに(?)この回、長さんがラガーに刑事魂を叩き込みます。父親代わりの長さんが自分をかばって撃たれた事にうろたえ、狂ったように暴走するラガーを「チームワークを無視するような奴は、刑事なんか辞めてしまえ!」と一喝します。

ゴリさん式の熱血指導も、この頃になると時代錯誤みたいに言われかねない風潮があったかも知れません。受験戦争や教師の体罰が社会問題となり、ゆとり教育の時代に入ろうという時期だったように思います。


#482 ラッサ熱

感染患者の死亡率が80%という恐怖の伝染病「ラッサ熱」が成田に上陸し、隔離すべき帰国者の中に犯罪者がいたからさぁ大変! 逃走した犯人は自分が感染患者である事を利用し、全国民を人質にして警察を脅迫します。

感染の恐怖と闘いながら決死の捜査を行うラガーが、犯人と一緒に乗った車を鉄骨に激突させる捨て身の逮捕劇。非常に見応えがありました。


#486 赤い財布

8万5千円の現金が入った財布という、遺失物を巡るトラブルを扱った異色作。持ち主を名乗る2人の市民=平凡な主婦とエリート大学生には、それぞれ意外な裏の顔があり、ラガーが振り回される事になります。

『太陽』ファンの一般女性=亜槍文代さんの投稿脚本が採用された作品で、地味だけど主婦ならではの視点が新鮮で面白かったです。

同じラガー編でも『怒りのラガー』や『ラッサ熱』とはトーンもスケールもまるで違ってて、なのに決して違和感は無い。この振り幅の大きさ、懐の深さこそが『太陽』の真骨頂と言えるんじゃないでしょうか?

亜槍さんはこの後も、日常的な出来事を扱ったユニークな作品をいくつも『太陽』に提供される事になります。


#489 帰って来たボス―クリスマスプレゼント―

そしてクリスマスに放映されたこの回、いよいよ我らがボス=石原裕次郎さんが、自社製作の『西部警察』を差し置いて、先に『太陽にほえろ!』で奇跡の(実に7ヵ月ぶりの)復活を遂げられます。

「お前ら、それでも刑事か!」の決め台詞で登場するボス。それを見た一係メンバー達のリアクションがまた凄いんですよね。あまりに感無量すぎてみんな絶句しちゃうというw 長期出張してた上司が戻って来ただけなのにw

劇中のボスは大病と闘ってた設定じゃないけど、現実とドラマが完全に一体化しちゃってるんですよね。当時はそれを観て、正直ちょっと笑けたんだけどw、今観ると色んな想いが去来して泣いちゃいます。

この回、裕次郎さんの日活仲間・宍戸 錠さんと長門裕之さん、そしてスニーカーの山下真司さんが、飛び入り参加みたいな感じでゲスト出演されてます。普段なら脇役専門の俳優さんがやるような小さい役を、大スターの宍戸さんや長門さんが演じておられるのが不思議な作品でもありました。


☆1982年

#490 われらがボス

銀行強盗一味の1人(深水三章)が交通違反で七曲署に連行され、巡査の拳銃を奪って捜査第一係室に立てこもり、警察の眼を自分に集中させる事で仲間の強盗計画を手助けするという、ちょっと強引な展開の新年第1弾。

大病から生還されたばかりの裕次郎さんに負担を掛けないよう、ボスが人質にされる事で、ずっと一係室にいながら犯人と対決出来るストーリーが組まれたワケですね。


#491 ドックのうわごと

犯人との銃撃戦で、危うく通りがかりの子供を巻き込みそうになったドック(神田正輝)が、刑事という職業に疑問を抱きます。

そんなドックに自分の背中を見せる事で自信を取り戻させるのが、これまでずっと若手を引っ張って来たリーダー=ゴリさんなんですよね。

やがてはドックがその役割を引き継ぐ事になりますから、今思えばこのエピソード辺りから、意識的に新旧バトンタッチが描かれてたのかも知れません。

尚、この回からドックの医学部時代の同級生である外科医・白石良子(岡まゆみ)がセミレギュラーとして登場します。

明るくサバサバしたキャラクターで、ドックとお似合いのカップルになりそうだったのに、お互い多忙な上、人の生命を預かるシビアなプロどうしって事で、最後まで色っぽいムードにはなりませんでした。


#493 スコッチよ静かに眠れ

実は裕次郎さんだけではなく、沖 雅也さんも番組を休まれていたのです。ノイローゼ説も流れてましたが、詳しい事情は私もよく知りません。

ただ、欠場前のスコッチを今あらためて観ると、明らかに疲れた表情をされてるんですよね。心身共に調子が悪かったのでしょう。で、そのままフェードアウトするワケにも行かず、ちゃんとケジメをつけるべく殉職する事に……

かつて撃たれた古傷が悪化して入院中だったスコッチが、捜査のため無理を押して病院を抜け出し、犯人逮捕の直後に吐血して倒れちゃう。

スコッチが口の周りを血で真っ赤にして倒れる場面と、病院のベッドで息絶える場面の芝居があまりに迫真すぎて、観ればトラウマになっちゃうかも? それだけ、沖雅也っていう俳優の演技力はずば抜けてたんです。

その翌年、沖さんは投身自殺しちゃいます。それをTVニュースで知った時の衝撃は、一生忘れられないですね。裕次郎さんや優作さんの訃報以上に、私にとって沖さんの自殺はショックでした。


#494 ジプシー刑事登場!

スコッチの後釜として、かつての沖さんと同じくテレ朝の時代劇『必殺』シリーズで頭角を表した三田村邦彦さんが急遽、原昌之=ジプシー刑事として加入される事になりました。

当時の三田村さん人気もかなりのもんで、それまで『太陽』に見向きもしなかったクラスの女子たちが、ジプシー目当てで『太陽』を観始めるという現象が、私の身の周りでも起こってました。

で、三田村・渡辺・神田の頭1文字を取って「ミワカントリオ」なんて呼ばれて、アイドル雑誌を賑わせたんですよね。この現象が、男性視聴者の一部をゲンナリさせちゃった。

私も正直、ちょっとイヤでしたね。それで番組人気が盛り上がるのは大歓迎だけど、『太陽』がどんどん女の子向けの内容になりはしないか?って、不安でした。

私がそう思ったのは、ジプシーがスコッチをも凌ぐクールさとハードさを兼ね備えた、孤高の一匹狼として登場したにも関わらず、1カ月も経たない内からチームに馴染み、みるみるソフトなキャラクターに変貌しちゃったからです。

私はスコッチの初期みたいな、一係の混乱と対立、非情な捜査やハードなアクションがまた観られると期待してただけに、あっという間に軟化しちゃったジプシーにはガッカリしました。

キャラクター変更の理由については諸説あるんだけど、やっぱり「女性視聴者の嗜好に寄り添った」ってのが真相なんだろうと私は思ってます。

そこへ持ってきての「ミワカントリオ」ですからねw 『太陽』は新規の女性ファンだけを相手にして、私みたいな男子や古くからのファンは切り捨てようとしてるんじゃないか?って、当時は疑心暗鬼に陥ったワケです。

もう少し後になると、それが誤解だった事が分かるんだけど、この時期はいよいよ「潮時かな?」って、つまり『太陽』ファンを辞める時が来たのかなって、私は本気で思ってました。

今になって観直すと、ソフトなキャラクターの方が三田村さんの個性に合ってるし、スコッチと同じ事をまた繰り返しても仕方なかったワケで、素直に受け入れられます。むしろ「最初からソフトなキャラで行っときゃ良かったのに」って思う位でw

ちなみに「ジプシー」ってあだ名は、あちこちの署で厄介払いされ、勤務先を転々とした末に七曲署へと流れ着いた経緯から。実在の民族を指した呼称で、現在は放送禁止用語になってると聞いた事があるんだけど、真偽は定かじゃありません。


#496 ジプシーとラガー

簡単に言えば、性善説に基づくラガーと性悪説に基づくジプシーが、正反対の推理をして激しく対立……するのかと思いきや、ジプシーは「推理の筋道が2つあるに過ぎない」とか「キミは自分の考え方を最後まで貫け」みたいなこと言って、あくまで優等生な対応なんですよね。

登場から3話目にして、早くも「クールでハードな」「孤高の一匹狼」のイメージが崩れ始めて、当時の私は「ん?」「あれ?」「何それ?」って、戸惑うばかりでした。

そもそも、新登場のキャラクターにしては最初から出番が少なくて、この回もダブル主演と言うよりはラガー編にジプシーが助演で参加してるような印象でした。

それは単純に三田村さんが、京都で撮ってる『必殺仕事人』と掛け持ち出演してるからなんだけど、1人でどこかで捜査して要所要所で結果を報告しに来るだけ……みたいな、異質の浮いた存在感がとてもユニークで、性格も見る度に変わってるしw、今となってはジプシーって面白かったよなあって思います。


#500 不屈の男たち

殺し屋に生命を狙われる国際的ピアニスト(北村総一朗)を、捨て身の覚悟で守り抜く七曲署捜査一係のチームワークを描いた500回記念作品。この回に至ってはジプシーも皆と一丸となって職務を遂行し、協調性の良さを発揮してくれてますw

しかも私にとって衝撃だったのが、事件解決後のラストシーンですよ。皆で音楽談議になって、好きな音楽家は誰なのか尋ねられたジプシーが、さてどんな受け答えをしたか?

なんと彼は、涼しい顔で「松田聖子ちゃん」って言った直後、ニコッと笑ったんですよ! それを見た当時の私が、どんだけ失望し絶望した事か!w

もちろんジプシー流の冗談なワケで、涼しい顔でそんなこと言うだけなら別に良かったんです。質問にマトモには答えないニヒリズムと解釈出来なくもない。ただ、その後の、女性ファンにアピールするような「ニコッ」が余計だった!w

これがもし、聖子ちゃんと神田さんが結婚した後のエピソードだったなら、なかなかデンジャラスな冗談として笑えるんだけど、それはもっと後の話になります。


#502 癖

ドックとロッキー(木之元 亮)の名を語る結婚詐欺師が出没し、我が身の潔白を証明すべく2人が捜査に乗り出し、犯人(阿藤 快)の日常的な癖をヒントに真相を暴いていきます。

生真面目で朴訥キャラのロッキーは、かつて軽快でツッコミ上手な先輩=ボン(宮内 淳)と絶妙なコンビネーションで、我々を大いに楽しませてくれました。

ドックとの組み合わせは、あの名コンビの再来を予感させる相性の良さで、軽妙な掛け合いが実に楽しいエピソードとなりました。このコンビを主役にしたエピソードを、私としてはもっと観たかったです。


#505 ジプシーの涙

ジプシーの不遇だった少年時代のエピソードが語られ、弱者に対して人一倍共感する、彼の奥深い優しさも描かれました。

登場時のニヒルな一匹狼ぶりは、そんなある意味弱い自分をカモフラージュする為の、彼一世一代の大芝居だった!……と、解釈するしかしょうがないですねw


#508 ドックと天使

後に『あぶない刑事』『あいつがトラブル』などアクション活劇調のドラマで欠かせない存在となる脚本家・大川俊道さんのプロデビュー作です。この方もまた、投稿脚本が採用された形の登板でした。

多彩なアクション描写もさる事ながら、天真爛漫な少女に刑事達が振り回されたり、実はその少女には小悪魔的な裏の顔があって……みたいな、大川作品ならではのエッセンスが凝縮されてるデビュー作かと思います。

クライマックスではドック=神田さんが水上スキーの腕前を披露、「そのまま服を濡らさずに犯人に飛びつけ!」という監督さんのムチャ振りに泣く泣く応えておられますw


#515 生いたち

今回もジプシーの過去を盛り込んだエピソードで、彼に対して勝手にライバル心を抱いてた同級生(剛たつひと)が今、強盗犯として再び勝負を挑んで来ます。

数少ない(ゆえにどれも印象深い)ジプシー編の中でも屈指のアクション編で、犯人の指示に従って街中を全力で走り回る、実にアクティブなジプシー刑事が堪能出来ます。

だけどジプシーって、かつて左胸に被弾したものの右胸心(心臓が右にある特殊な身体)だった為に奇跡的に助かり、その手術で片方の肺を失ったもんだから、激しい運動は出来ない筈なんですよねw

だから彼は、残りの人生はもはやオマケだと思ってる。そのせいでニヒルな一匹狼となって無茶な事ばっかしちゃうっていう最初の設定が、これでほぼ無かった事にされちゃいましたw

他のキャラクター達も、番組の長い歴史の中で性格や容姿が変化してはいるんだけど、ジプシーほど短期間で、まるで別人みたいに変貌しちゃった例は空前絶後です。

当時はそれで戸惑ったし腹も立ったけど、逆に今となってはそんなジプシーの変貌ぶりこそが、この時期の『太陽』最大の見所じゃないかと私は思ってますw


#519 岩城刑事、ロッキーにて殉職

番組の10周年を記念するカナダロケ作品にて、てっきり最終回まで残られるものと思ってた2人のキャストが、同時に降板される事になりました。

ロッキーは令子(長谷直美)と結婚して双子の赤ちゃんまで生まれましたから、まさか死ぬとは思ってませんでした。でも丸5年活躍した人ですから、降板するとなるとやっぱり、殉職という花道を用意せざるを得なかったのでしょう。

木之元亮さんは死に方の希望を尋ねられて、半ば冗談で「ロッキー山脈で死ねたら本望です」って仰ったらしく、まさか実現するとは思ってなかったそうです。何でも言ってみるもんですねw

新米時代は物足りなさを感じたロッキーですが、中堅のポジションになってからは「若い長さん」みたいな感じでw、曲者たちの間を取り持つスタンダードな刑事として、無くてはならない存在になってました。

殉職は悲しいけど、ロッキー山脈の雄大な風景をバックに花道を飾れたロッキーは、きっと幸せだった事と思います。オーストラリアロケといい、『太陽』はなぜか大自然がよく似合います。


#520 野崎刑事、カナダにて最後の激走

そしてカナダにおける捜査でロッキーを死なせてしまった責任を取って、ベテランの長さんも七曲署を去る事になりました。警察学校の教職に就くとの事ですから、退職ではなく転勤になるんでしょうか。

長さんは何と言っても10年選手ですから、番組スタート時から共に闘って来た山さんと別れの挨拶を交わす場面に、それをずっと見守って来たファンは全員、滝の涙を流した事と思います。

いやーしかし、メンバーチェンジが無ければ無いで「マンネリ」を口にする私ですが、同じ年にスコッチ、ロッキー、長さんと3人もいなくなっちゃうのは寂しいし、ますます「古いファンは切り捨てるつもりか?」ってな疑念も沸いて来ちゃいます。

ところが… これで終わらないんですよね! まさに「駄目押し」とも言える、更なる人事の発表があったんです。それを聞いて私は本当に耳を疑ったし、いよいよ本気で『太陽』ファンを卒業する覚悟を決めましたから。

東海圏で放送されたのが、カナダ編の前だったか後だったか憶えてないんだけど、『太陽にほえろ!10周年記念・ファンの集い』っていう、けっこう大規模なイベントの模様がテレビ放映されたんです。

田舎もんの私はそんなイベントがあった事すら知らず、渋谷公会堂に集まったファン達が妬ましかったですよホントに。なにしろボスを筆頭に、マカロニとジーパンとシンコを除く七曲署歴代の全刑事が一堂に会した、メチャクチャ豪華なイベントだったんです。(しかも確か入場無料でした)

で、そこで発表され紹介されたのが、ロッキーと長さんの抜けた穴を埋めるべく登場する、ボギー刑事=世良公則さん。これはまぁ、既に新聞か雑誌で私も知ってた人事です。

世良さんと言えばロックバンド「ツイスト」で一世を風靡された方ですから、私は「またアイドル路線かよ」って、その時点では思ってました。それがまた誤解だったりするんですけど。

で、そのイベントの録画中継が終わった直後ですよ。追加映像で、とんでもない事が発表されたんです。ファンにとってはまさに、メガトン級の爆弾でしたね。私はそれを観て、「よかった! これでやっとファンを卒業出来る」ってw

さて、その発表とは!? (つづく)
 
コメント (3)
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