NHKのドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』は予約録画して観るほどはハマってなかったけど、主演の桜井ユキさんは好きだし、ちょうど風呂上がりにテレビをつけるとやってるもんで、なんとなく観てました。
だからストーリーをちゃんと把握してるワケじゃない。にも関わらず、こないだ放映された最終回の、たった一言のセリフに私は号泣させられちゃいました。それがこれ。
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「いいんだよ、イチロウ。おまえは悪くない」
桜井ユキさん扮する病弱なヒロイン=さとこと“薬膳”を通じて知り合った青年=司が、ある日突然ひとり旅に出る。どうやら彼は、何か他人には言えないトラウマを抱えてるらしい。
そんな司が、パジャマ姿の年老いた男性と、山の中で出逢う。その老人はどうやら認知症で、介護施設から抜け出して家に帰るつもりが道に迷い、遭難寸前の状態だった。
司は、スマホの電波が届く場所までその老人をおんぶし、スリッパに記された施設の名前から連絡先を割り出して、迎えに来てもらうよう依頼します。
で、待ってる間、老人はずーっと無言で、ひたすらぼーっと町の風景を眺めてる。そこで司が、これまで誰にも言えなかったツラい想い出、つまりトラウマを初めて語り始める。
かつて司にも、認知症の祖父がいた。放浪癖があり、何度となく家を抜け出す祖父を、そのたび司が探し回って連れ戻すというルーティンの日々。
そしてある夜、祖父がまた行方不明になる。そのとき司は、つい思ってしまったのでした。「このままいなくなればいいのに」と……
司はたぶん、そんな自分がずっと許せないでいたんでしょう。ずっとずっと悔やんでいたんでしょう。そしたら、ぜんぜん話を聞いてない感じだった老人が、相変わらずぼーっと風景を眺めながら、ポロッとさっきのセリフをこぼすワケです。
イチロウっていうのは、その老人の息子か孫の名前でしょう。けど、それで司は立ち直る。ずっと背負ってきた罪悪感から解放される。
きっと肉親の介護を経験した人なら誰しもが、同じ罪悪感を背負ってることでしょう。言うまでもなく私もそうです。まさか、なんとなく観てたドラマに救済されるとは! 完全に不意を突かれたからこその号泣です。
多部未華子さんの『対岸の家事』でも認知症をテーマにした回があって、やっぱり泣かされたけど、あれはまだ、長い長い闘いの序章に過ぎません。肉親介護のいちばんキツいところ、残酷なところをサラッと描き、たった一言で私を号泣させた“ドラマ10”はやっぱり凄い!