おぐち自給農園、2反百姓の日記

-都市の貧困と農村の貧しさをつなぐ、「生き方」としての有機農業を目指して-

映画『レイチェル・カーソンの感性の森』

2011年06月08日 08時44分14秒 | 映画
 渋谷アップリンクで上映されていた映画『レイチェル・カーソンの感性の森』 http://www.uplink.co.jp/kansei/の映画評を『まなぶ』に書きましたので、掲載します。
 
 約1時間と短い映画ですが、原発事故が起こったこともあり、カーソンの現代社会に対する問題提起とメッセージの重みはこれまで以上に増しているように思います。

 アップリンクでは、『セヴァンの地球のなおし方』も上映されるそうです。有機農家・古野隆雄さんや福井県池田町も登場するようですね。アップリンクには食堂もありますが、そこで使用しているお米は古野さんのアイガモ農法米でした。この映画は、『未来の食卓』の続編でもあります。見に行かなければ。

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『レイチェル・カーソンの感性の森』

 レイチェル・カーソンは、『沈黙の春』の作者として世界的に知られている。第二次世界大戦の際、衛生状況の改善のため使用されたDDT(有機塩素系の殺虫剤)は、戦後、「平和利用」という名のもと、特に農業用として使用され、生活の隅々まで普及した。ただ、化学物質としての危険性が高いDDTは、自然環境を汚染し、人間も含めたあらゆる生命を脅かす元凶となったのである。その危険性について、真実を伝え、いち早く警鐘を鳴らしたのが『沈黙の春』であった。
 本作は、アメリカの女優であるカイウラニ・リーがカーソンのメッセージを伝えるために脚本を執筆し、過去18年間、世界中で演じ続けている一人芝居『センス・オブ・ワンダー』を映画化したもので、カーソンが別荘と自宅で、自身の生涯や家族のこと、作品に込めた思いなどをインタビューに答えながら振り返るドキュメンタリー形式で内容が展開していく。カーソンを演じるのはもちろん、カイウラニ・リーだ。臨場感あふれるその演技は、まるでカーソンがすぐ目の前で観ている私たちに語りかけているかのようだ。
 カーソンが「『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではないのです」と語っているとおり、メッセージは非常にシンプルなものだ。海岸に面した森の中にある別荘周辺で、カーソンが双眼鏡を持ちながら自然や動物を観察したり、甥っ子のロジャーと海辺を散策するシーンが出てくる。その中でカーソンは、子どもが持つ自然の美しさや感動に対する直観力の素晴らしさに触れ、この豊かな「感性」が失われないようにそれを一緒に分かち合う大人の手助けが必要だと述べる。そこには、そのような「感性」が大人になると鈍ってしまうことへの反省の意味も込められているように感じる。
 カーソンが言う「感性」とは、私なりに言い換えると、「人間が自然と素直に接すること」である。美しいものには、美しいと素直に感動すること、人間と自然との「共生」はそこから始まるのである。
 カーソンは惜しくも1964年に56歳という若さでこの世を去った。本作は、亡くなる8ヶ月前のカーソンからの最後のメッセージである。人工物をつくり、自然を支配し、管理できるという大人たちの過信と驕りが生命と生活を脅かす重大な事故と危機をつくり出してしまっている現代社会だからこそ、カーソンが残したメッセージを将来に向けて新たな一歩を踏み出す“希望”のメッセージとしてぜひとも受け止めたい。


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