おぐち自給農園、2反百姓の日記

-都市の貧困と農村の貧しさをつなぐ、「生き方」としての有機農業を目指して-

その地域に生きるということ。

2010年03月30日 20時21分13秒 | 雑感
 先週末、久々に僕の学問の師匠の家がある埼玉の中山間地、いや山間地にある集落に行ってきました。おそらく、半年ぶりかもしれません。以前、学生時代は、一ヶ月に一回は訪問して、竹林の整備、落ち葉はき、畑作業、主に麦のお世話をしていました。農家の出ながらほとんど農作業はしたことがない僕にとって、とても新鮮な経験で、農業に価値を見出している人に初めて出会ったので、僕のそれ以降の人生に大きな影響を与えた、埼玉の山です。かわいい山です。

 ゼミの同期や後輩たちと、大人数での合宿で、久々に会う人たちも多かったでの楽しかったです。それにしても、寒かったです。

 ここは、池袋から1時間ちょっと、1回乗り継いで最寄り駅に着きます。最寄り駅から、バスを乗り継ぎ、さらに1時間ほどで、最寄のバス停に着き、歩いて20分ほどで着きます。はっきりいって、交通の便は非常に悪いです。

 僕がよく通っていたときは、最寄り駅に着いてから、2回もバスを乗り継いでようやく着きました。だけど、今は、1日に5~6本ほど、直通のバスが出ているとバスの運転手さんが仰ってました。

 山村の高齢化が進み、運転手の意思ではなく、乗客の意向でバスのダイヤがよく変わるそうです。例えば、お医者さんに行くために、山を下りたはいいものの、帰りにちょうどよいバスがなければ、駄目なので、それに合わせるように、ダイヤは変わっていくのです。そして、乗り継ぎも少なくしたほうが、利用客にとっては都合がよい。

 農山村にとって公共交通の大切さを感じました。そして今後、高齢化がさらに進めば、公共交通の需要はさらに増すように思います。

 そして、僕のように農山村をフィールドにする人たちにとっても公共交通の存在は重要です。地方をまわり、乗り継ぎごとに時間があったりするのも、色々考えたりするために貴重な時間です。「待つ」時間を有意義に使い、ぼーっとしたり、考えたり。

 山では、動物の害を防ぐための柵を直したり、竹林を整備したり、あじさいの苗を植えたりし、その後、お昼ごろ山を下り、長野に帰ってきました。

 青春18切符が残っているので、鈍行を乗り継ぎ、5~6時間かけて塩尻に着きました。久々に乗ったJR八高線。高麗川から八王子に出て、高尾から松本行きに乗りました。

 ここでも、待ち時間がそれぞれたっぷりありました。青春18は乗り降り自由なので、その都度、改札を出て、駅周辺を歩きました。本を読み、考え、メモをとり、そして畑に出る人たちの風景を見て。僕にとっては貴重な時間です。別の人から見れば、無駄だと言われてしまうかも。

 久々に山に行っても、そして電車からの風景を見てもそう思いましたが、農山村の暮らしは交通の面からも、仕事の面からも非常に効率の悪い地域ですが、なぜ、この集落が集落として存在し続けているのか。彼ら・彼女らからの営みからは、この集落に生れたという決意と意地のようなものを感じますが、もっと深い深い大切なものが、農山村の営みにはあるように思います。そこには、誇りがあります。

 ムラがムラとして何百年も存在し続けている意義を考えたいです。
 

【PARC自由学校】コンクリートから土と人へ

2010年03月24日 11時09分02秒 | イベント
 引越しが終わり、いまだインターネットがつながっていないため、なかなかブログが更新できません。家にいても手持ち無沙汰で、ネット環境にどっぷりつかっていたな~と改めて感じている次第であります。

 さて、僕が関わっていますアジア太平洋資料センター(PARC)が毎年開催している自由学校の受講生募集の時期となりました。以前にもお伝えしましたが、僕がお勧めするクラスを貼り付けます。他にも多様なクラスが準備されていますので、ご覧ください。

http://www.parc-jp.org/freeschool/index.html

 1990年代以降、地方産業が海外へと移転する傾向が顕著になり、地方産業の空洞化が起こり、否応なしに公共事業へと依存せざるをえない状況になりましたが、大規模開発事業は人々、それを支える環境面から無駄なものが多いです。民主党政権になってから、それはメディアでも多く取り上げられました。

 沖縄に行っても感じましたが、現在の公共事業は人・モノ・カネが地域内で循環するのではなく、外に流出する構造になっているので、地域の本当の意味での豊かさにはつながりません。公共事業の公共の意味を問い直したくなります。

 今まさに、本当の意味での公共を地元住民や自治体が協働して創っていく踏ん張りどころなのだと思います。そのようなことを考えるキッカケを与えてくれるクラスが「コンクリートから土と人へ」です。以下、詳細になりますのでご覧ください。転送歓迎です。

コンクリートから土と人へ―公共事業の行方
(転送・転載歓迎)
゜・*:.。.:*・゜・*:.。.:*・゜・*:.。.:*・゜・*:.。.:*・゜
PARC自由学校は1982年にスタートしたオルタナティブな市民の学校です。
20年以上に渡り毎年約30講座を開講し、これまでの受講生は6000名を超えます。
毎年、時代を先取りしたテーマで、普通の教育機関では味わえない講座を開いています。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
|コンクリートから土と人へ―公共事業の行方 |
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
政権交代をきっかけに、公共事業のあり方が改めて見直されています。政権与党は「コンクリートから人へ」という方針を掲げ、「ポスト自民党的公共事業」を模索してますが、本当の意味で地域のためになる公共事業とはどのようなものでしょうか? この講座では、公共事情の実態や現場の住民の声を深く知り、新たな公共事業の姿を考えます。例えば、ダム建設から森や水田を重視した緑のダム方式の公共事業や、マイカー優先の道路建設から公共交通優先の街づくり、そして地域医療の充実へ――。地域の人と風土に優しく、雇用を生み出し、地域経済を活性化させるためのビジョンをみんなで議論しましょう。

□2010年5月~10月 □基本的に隔週水曜日19:00~21:00 □全9回/定員30名 □受講料24,000円

★5/19
オリエンテーション
土建ケインズ主義と市場原理主義のアウフヘーベン
関 良基(拓殖大学教員)

★6/2
保屋野初子(ジャーナリスト)
21世紀の治山治水、「緑のダム」を地域政策に

★6/16
生命から見たダム問題―元「ダム屋」からの提言
宮本博司(株式会社樽徳商店会長)

★6/30
公共事業に頼らず、農山村を再生する
小田切徳美(明治大学教授)

★7/14
豊かな地域をつくるための持続的な交通
上岡直見(環境自治体会議環境政策研究所主任研究員)

★7/31(土)~8/1(日)1泊2日(クラス以外の方も参加できます)
八ッ場ダム予定地ツアー
渡辺洋子(八ッ場あしたの会)

★9/1
信州の農村医学の現場から
―すきな人とすきなところでくらしつづけたい  
        メディアリテラシーとメディカルリテラシー 
色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院地域ケア科医師/京都大学医学研究科非常勤講師)

★9/16
【対論】住民の意思で公共事業をチェックし、変革する
まさのあつこ(ジャーナリスト)
京野きみこ(民主党衆議院議員)

★10/13
地方自治体の挑戦―“前例”主義と中央の指示を超える
福嶋浩彦(前・我孫子市長/東京財団研究員)

・…━◆クラスの詳細、他の講座は以下からご覧いただけます!◆━…・
    http://www.parc-jp.org/freeschool/index.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アジア太平洋資料センター自由学校
Pacific Asia Resource Center(PARC) Freedom School

〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-7-11 東洋ビル3F
TEL:03-5209-3450 FAX:03-5209-3453
Website:http://www.parc-jp.org E-mail:office@parc-jp.org
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

3月13日(土)、「農と自然の研究所」解散総会、東京座

2010年03月11日 08時17分12秒 | イベント
 イベント告知ばかりで恐縮ですが、福岡県の百姓・宇根豊さんが主催するNPO法人「農と自然の研究所」が、10年間の期限付き活動を今年の4月で終えます。その解散集会が東京でもありますので、お知らせします。
http://hb7.seikyou.ne.jp/home/N-une/2-f-kenkyuusyuokaranooshirase.htm

 宇根豊さんと言えば、福岡県の農業改良普及員でありながら、1970年代後半以降、減農薬運動を指導してきた中心的人物です。現在は、念願かなって百姓をなさっています。まだお話を聞いたことがありませんが、本は読んでいます。

 減農薬運動は、「農薬の過剰散布をおさえる」「農家が田んぼに出て農薬をまくかまかないかを主体的に判断する」「農薬の使用をおさえる技術の開発」という3つを提示しているのだと思います。そのための手段として生まれたのが、虫身版による田んぼの生き物調査です。生き物調査は、全国に広がり、農と生き物の賑わいの関係性を確かめ、自然環境をより身近に感じることのできる調査です。農家ではなく、子供から大人まで、誰でも調査に参加できるところに、特徴があります。

 そんな、宇根さんや「農と自然の研究所」の活動についてお話が聞けるのだと思います。残念ながら、僕は参加できませんが、どなたか感想を教えてください。


「農と自然の研究所」解散総会・東京座
日時:3月13日(土)午後1時から5時
会場:東京ガーデンパレス(JR御茶の水駅から徒歩5分)

HPに詳細は載っていないのですが、情報によると、記念講演は「百姓の思想」と題して山下惣一さんです。「減反神社」で直木賞候補にもなった農民作家で、おそらく日本を代表する百姓です。
山下さんの本、大好きです。

 そして最後のお話は「農と自然の未来」と題して宇根豊さんだそうです。

 参考までに、宇根さんの最新刊が築地書館から出ました。

       
その名も「風景は百姓仕事がつくる」です。旅行者(外部者)は風景をつくる百姓仕事を見ようとしない、定住者(百姓)は百姓仕事の成果である風景を見ようとしない、この両者をつなぎ合わせるにはどうしたらよいのか。百姓仕事、農の価値をはかるモノサシとして宇根さんが「風景」について論じています。

 この本は「百姓仕事」が自然をつくる―2400年めの赤とんぼ (同じく築地書館、2001年)」の続編になりますので、こちらを読んでからというのもおススメです。

       

 
 この2冊を読んだ後、コモンズから出ている「天地有情の農学(コモンズ、2007年)」を読むとさらに、宇根さんの実践、思想、哲学を深めることができます。

       

 この3冊は特におススメです。「農があって、自然がある」カッコいいです。

 

3月7日、種苗交換会

2010年03月10日 01時56分29秒 | 有機農業
 3月7日の有機農研全国大会の講演会が終了し、午後から種苗研修会&交換会が行われました。種苗研修会からの参加者も多く、会場には入りきらないほどの人で溢れました。それもそのはず、長崎県で有機農業を営む「種の自然農園」の岩崎政利さんと霜里農場一期生の林重孝さんの講演会があったからです。

 お二方とも種とりの第一人者として、その大切さと魅力を発信している方です。現在、売られている、いわゆるF1品種は、種とりが難しいですし、種自体、農薬や化学肥料の使用を前提として交配されたものです。それに、本来、野菜などは少し痩せた土地のほうが生命力溢れるものに育つのですが、現在の畑は土が肥えすぎていて、土が肥えたものに合うように品種改良された種が売られています。それらは、有機農業や自然農法に向かない品種が多いのです。そのため、種とり、その土地や風土に合った種をとっていくことが大事になってきます。

     

 講演会は、会場から溢れるほどの人が集まったので、スタッフの僕はあまり聞くことができませんでしたが、講演する岩崎さんの口調はなんともやわらかく、魅力的な方でした。種をとることのロマン、そしてつながりを語ってくださいました。

 岩崎さんのことは、本を読んで知っていました。種苗交換会が始まる前に、種を並べるのを手伝っていると、「この種がない。あれ、これを忘れてしまった、ハハハ」(長崎弁でした)と、なんとも気さくな方で一気にファンになってしまいました。

 種苗交換会は初めての参加。どのように行うのだろうかとワクワクしていました。まず、種を持ってきた人は、どのような品種なのか、その種についての詳細を紙に書き、その紙と種を並べます。

     

 このように各自、机に並べていきます。種は小袋に分けられ、蒔き時や名前などを書いた説明文が小袋に貼られています。参加者はどのような種があるのか真剣な眼差しです。次に、種についての説明をし、質問を受け付けます。種とりをして何年なのか、どのように育つのか、育て方などを参加者に説明します。

 それが終わると、自分が育てたいと目星をつけた種を交換します。僕のように種を持ってこなかった人はいったん外に出て、種を持ってきた人同士の時間がまず設けられ、少し時間が経ってから、僕らのような種を持ってこなかった人たちも参加することができます。その際、カンパ金を出します。

 僕も落花生や大根、茶豆、インゲン、花オクラ、ブドウ苗などの種を頂きました。本当に感謝です。育てたい人に種をお裾分けする種苗交換会。これは、有機農業の懐の深さです。おそらく、農家同士が種を分かち合い、交換し合うこうした営みは、今後ますます重要性が増してくるのではないでしょうか。

 世界に目を転じてみると、遺伝子組み換え作物の作付けが毎年、増加しています。遺伝子組み換え作物が飢餓を救うとまで大々的な宣伝もなされています。そして、世界というよりも、日本では生産者、消費者の反対が強く、その作付けは広がっていませんが、国はまだまだ遺伝子組み換え作物の作付けに対して積極的です。

 こうした種を独占しようとする多国籍企業の動きに対して、農家の草の根レベルでの種苗交換会、種の分かち合いは、その対極をなすものです。だから、大切なのです。僕も種とりを心がけ、来年はぜひ種苗交換会に種を持参して、参加したいと思います。
  

PARC自由学校、受講生募集開始!!

2010年03月09日 14時29分25秒 | イベント
 僕が関わっているアジア太平洋資料センター(PARC)が毎年、開催しているPARC自由学校が今年も始まります。

 全講座のプログラムがHPにUPされましたので、ご関心のある方は、ぜひご覧ください。
http://www.parc-jp.org/freeschool/index.html

 農業関係でいいますと、「エコを仕事にする」クラスがあります。
http://www.parc-jp.org/freeschool/2010/kouza/kouza_19.html

 また、「コミュニティ・カフェをつくろう」クラスも関連するかもです。
http://www.parc-jp.org/freeschool/2010/kouza/kouza_22.html

 どのクラスも基本的に、19:00~21:00で、会社帰りでも立ち寄ることができます。ぜひのぞいてみてください。

 また、PARCでは、ビデオも出しております。最新のものは、「海と森と里 つながりの中に生きる
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/ryuiki.html

 というもので、農業と森、海の関係性について映したものです。僕も、映像協力と戦後農政の展開について、シナリオづくりに協力しました。

 図書館や教育関係のお仕事についている方がいらっしゃれば、ぜひご覧いただき、授業などでご活用していただければと思います。