おぐち自給農園、2反百姓の日記

-都市の貧困と農村の貧しさをつなぐ、「生き方」としての有機農業を目指して-

「kototoi」第3号に文章を寄せました。

2012年08月13日 06時57分26秒 | 
 和綴じ雑誌「kototoi」第3号(2012年夏号)に「小さい農業の現場から」という8000字程度の短い文章を寄稿しました。
 
 こちらが目次になります。
 →http://www.ne.jp/asahi/kikuya/bunko/kototoi3.pdf

 この雑誌を出しているのは、菊谷文庫さんです。
 →http://www.ne.jp/asahi/kikuya/bunko/

 「kototoi」との出会いは、ネットで色々と調べごとをしているときに見つけ、勝俣先生も書いているのかと衝動的に購入したのがきっかけです。そしたら、その数週間後、昨年末のとある忘年会で菊谷さんが僕の目の前に座っていて、そこでお話させていただきました。

 僕の実践は微々たるものですが、そのことについて少し書いてくれないかと依頼をいただき、今回の文章を書きました。まとめていただきありがとうございました。感謝しています。

 脱成長とダウンシフトをテーマに、読みごたえのある内容がずらりと並んでいます。ご夫婦でつくられている温かみのある雑誌です。ご関心のある方はぜひ購入してください。

農力検定テキスト(コモンズ)

2012年07月13日 20時10分59秒 | 
 昨日帰省しました。塩尻も今日は30℃超えで蒸し暑い。ただ、夕方は涼しく過ごしやすいです。

 7月11日は、コモンズより出ました、金子美登・塩見直紀ほか著、都市生活者の農力向上委員会 監修「農力検定テキスト」(2012年7月、コモンズ)の出版記念交流会でした。

      

 僕も一応招待者ということで、ご招待いただきました。別に執筆したわけではありませんが、編集に少々協力しています。都市生活者向けに、もう少し農の世界に近づき、触れてもらうという目的で、このような斬新なタイトルになっています。

 交流会には、金子さんやなぜか勝俣先生も参加され、僕にとっての師匠2人をはじめ、多くの方々が参加され、本当に久々にお会いする人、いつも会っている方々と楽しい時間を共有することができました。ありがとうございました。

 http://www.blog-headline.jp/agriability/2012/07/ust_5.html
 
 本もぜひお手にとって読んでいただけるとありがたいです。関わったものが世にでるというのはうれしいことです。そしてこういう機会を与えてくれるコモンズの大江さんや金子さんに感謝です。

「がれき処理・除染はこれでよいのか」

2012年07月04日 06時26分54秒 | 
 熊本一規先生から最新著書「がれき処理・除染はこれでよいのか」(共著、緑風出版、2012)を謹呈いただきました。
     

 前作「脱原発の経済学」(緑風出版、2011)「海は誰のものか 埋立・ダム・原発と漁業権」(日本評論社、2010)に続き、こんな若造にお送りいただき、ありがたい限りです。

 何よりも、原発、埋立問題に長年、住民運動とかかわり、その現場の話を先生から何度もお聞きしていました。まず専門性を身につけ、それを追求し、現場で起こっていることを細かく切り取ってしまう研究者の世界にあって、まずは現場で住民が抱える課題を共有し、その解決に向け、必要な専門性を身に付け、それを現場に還元するという姿勢と学際性は見習うべきですし、大学業務が忙しい、研究する時間がないという研究者が多い中で、先生の社会的発信力には頭が下がります。

 最近、研究の実績をほとんど残さず、口ばかりで、なぜかその分野では先駆者的な扱いを受けている人によく会い、ちょっと疑問をもってしまっています。そうではなく、研究は蓄積であって、きちんと引き継いでいくものだと。というのは、原発のコスト問題について、すでに20年以上前から疑問を投げかけ、議論を展開していたのが熊本先生だからです。当時は相当バッシングを受けたそうですが、この時代状況にあって、再評価されたということです。この点については、「脱原発の経済学」をお読みください。

 時代時代で成果はきちんと残していきたいものです。評価されるものもあれば、そうでなく修正されるものもあります。ただし、修正されるということは、その時にきちんと発信をし、研究を蓄積したからこそなされるもので、そこには連続性が存在しているわけです。
 
 社会的発信をし、きちんと議論をしていく姿勢は先生をはじめ、国際学部の先生方から実践をもって教えていただきました(今も教えていただいています。)

 先生とは、デモやNGOの集会など、社会運動の現場でお会いすることが多く、むしろそういう現場でお会いできるのがうれしく、よく今後の研究者生活のことについてアドバイスをいただいています。

 そして、熊本先生は僕の考え方のよりどころにしている玉野井芳郎先生の最後の弟子でもあります。そういう意味でも、こうして明学から離れてもお会いできることに感謝しています。

 以下、内容になります。一般読者にも平易に解説してくれています。法律などはなかなかとっつきにくい面もありますが、一廃とは?産廃とは?という基本的な言葉の意味も説明しながら、書かれていますので、おススメです。

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
「東北がんばれ!それってただ言葉だけだったのか?東北のがれきが処理されないのは他府県が搬入を拒否しているからだ」「放射能が怖いという無知から来る身勝手な言い分。自分だけ良ければいいのか」-震災がれきの広域処理で、反対する市民に投げつけられる政府・マスコミの非難のことば…。はたして本当にそうなのか?IAEA(国際原子力機関)の安全基準に照らしても80倍も甘く基準緩和し、放射性廃棄物として厳格に保管・隔離されなければならない物を日本全国にばらまく広域処理は、国民の健康に脅威をもたらすだけだ。そして、避難区域への住民の帰還推進で進められる除染事業。しかし放射性物質は除染によって減少することはない。がれき利権と除染利権に群がるゼネコンや原発関連業者。いま必要なのは放射性物質の隔離と住民の避難なのだ。本書は、問題点をていねいに解き明かす。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 がれき広域処理とその仕組みづくり/第2章 がれき焼却は放射能汚染をもたらすか/第3章 放射性物質を汚染循環に入れる愚策/第4章 誰のための広域処理か/第5章 地元主体・被災者救済の復興を/付録 漁業権は誰のためにあるか(初出『季刊地域』Winter二〇一二)


『脱成長の道-分かち合いの社会を創る』(コモンズ)

2011年05月16日 21時07分06秒 | 
 我が師匠、勝俣誠先生の編著『脱成長の道-分かち合いの社会を創る』コモンズから出ました。とても楽しみにしていました。セルジュ・ラトゥーシュさんが来日された際、日仏会館でやったシンポジウムの内容を加筆・修正したものです。『脱成長』というキーワードは、ポスト311の指南書になるのではないでしょうか。

 内容をコモンズのHPより転載させていただきます。また読みましたら、感想など掲載したいと思います。関心のある方はぜひご購入ください。

       


『脱成長の道―― 分かち合いの社会を創る』

勝俣誠、マルク・アンベール編著
本体価格1900円+税
四六判/280ページ
2011年5月

格差が広がり,原発が破綻し、
地球環境の限界が明らかになるなかで、
つましくも、豊かで、幸せな暮らしをどう創るか。
簡素な生き方から見えてくる共に楽しく生きられる
<コンヴィヴィアル>な世界を11人が多様に描き出す。

<目次>

◇ 3・11 フクシマへのメッセージ ◇   
  フクシマからコンヴィヴィアリズムへ アラン・カイエ
  フクシマ原発災害で日本が変わる⁉ セルジュ・ラトーシュ
  楽しい世界へダウンサイジングしよう マルク・アンベール
  一つの文明の終わり 西川 潤 11
  ヒロシマからフクシマまで「だいちとうみとにんげんをかえせ」 勝俣 誠

まえがき 脱成長への道は可能だ マルク・アンベール、勝俣 誠

第Ⅰ部 簡素に生きる

 【1】〈脱成長〉の道──つましくも豊かな社会へ セルジュ・ラトゥーシュ
1 数量化された最大幸福の破綻
2 共愉にあふれるつましさのなかで再発見される幸福
3 〈脱成長〉の〈道〉

 【2】 〈脱成長〉の正義論 中野 佳裕
1 祝島に根付く贈与の文化──社会の持続的な再生産の論理として
2 原発建設計画と危機にさらされる生態系
3 生存をかけた住民運動が示す日本の経済発展の構造的問題
4 社会正義を再構築する
5 〈脱成長〉社会へ

 【3】 南北格差と「南」の豊かさ 勝俣 誠
1 「南」は本当に貧しいのか
2 「南」の内包する二つの豊かさ――認識論からの考察
3 「開発国家」ニッポンの追いつき論の限界――経済学からの考察
4 東南アジアの追いつき論――一九六〇年代初頭の映像『メコン』を手掛かりに
5 「南」の追いつき論の限界――「開発」概念再考の切り口 
6 南は南へ、北は北へ――追いつかなくていい世界に向けて

 【4】 良き生活へどう変えていくか パトリック・ヴィヴレ
1 維持不可能な、過剰な/節度のない生活
2 満たされない心──過剰な生活の原因と産物
3 よりよい分かち合いへ移行するための戦略
4 伝統と近代との対話
5 トランジション・タウンの三脚の論理

第Ⅱ部 コンヴィヴィアリズムが拓く〈世界〉

 【1】 ラディカルな社会主義としてのコンヴィヴィアリズム アラン・カイエ
1 分かち合いの技法としてのコンヴィヴィアリズム
2 コンヴィヴィアリズムの最大の魅力
3 われわれのあらゆる諸悪のいくつかの原因
4 普遍化し、急進化した社会主義へ向けて
5 世界を守る 151

 【2】 生命系と地域主義に立脚した経済の実現に向けて 丸山 真人
1 四半世紀前の問題提起
2 狭義の経済学から広義の経済学へ
3 生産力のポジとネガ
4 生命系の経済と地域主義
5 現実に応用できる広義の経済モデルへ

 【3】 社会主義も資本主義も超えて マルク・アンベール
1 「優れた」社会を再構築するための道
2 社会にとって必要な新しい理想像
3 妥当かつ公平な社会
4 富を創造し、分かち合う社会
  
第Ⅲ部 本当の幸福について考えてみよう

 【1】 社会的責任の分かち合いのための政策的枠組み──未来の展望の再生 ジルダ・ファレル
1 「生活の質の向上」への道
2 熟議に基づく政治メカニズム
3 合意形成と責任

 【2】 生活充足度の新たな指標を地域でつくる ミシェル・ルノー
1 地域別生活充足度指標の作成
2 アンケート結果と作業手続きに関する基礎的な考察
3 相違を明確にし、尊重する

 【3】 生活の質の向上のためのアプローチ サミュエル・ティリオン
1 危機から脱出する眼差し
2 「進歩」を測るアプローチ
3 充足した生活のための八段階
4 市民的かつ民主的知性への信頼

 【4】 日本人が本当に幸福になるために――生活の豊かさの測り方 西川 潤
1 幸福への関心
2 一人あたりGDPと生活の満足度のギャップ
3 幸福度を表す社会指標――国連の人間開発指標の意味
4 区民総幸福度、GNH、足るを知る経済
5 中道こそが幸福への道
6 倫理の再興

あとがき 勝俣 誠、マルク・アンベール



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<著者プロフィール>

セルジュ・ラトゥーシュ(Serge Latouche)
1940年生まれ。経済学者、哲学者。パリ第11大学名誉教授。邦訳書『経済成長なき社会発展は可能か?――〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学』(中野佳裕訳、作品社、2010年)。

中野佳裕(なかの・よしひろ)
1977年生まれ。国際基督教大学助手・研究員、立命館大学非常勤講師。開発学博士。専攻:国際開発論、平和学。主論文「ポスト開発思想の倫理――経済パラダイムの全体性批判による南北問題の再検討」『国際開発研究』第19巻第2号、2010年。訳書『経済成長なき社会発展は可能か?――〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学』。

勝俣誠(かつまた・まこと)
1946年生まれ。明治学院大学国際学部教授。開発経済学博士。専攻:国際政治経済論、アフリカ地域研究。主著『アフリカは本当に貧しいのか――西アフリカで考えたこと』(朝日新聞社、1993年)、『グローバル化と人間の安全保障――行動する市民社会』(編著、日本経済評論社、2001年)。

パトリック・ヴィブレ(Patrick Viveret)
1948年生まれ。哲学者。元フランス会計院司法官。国際プロジェクト「人間性の対話」共同提唱者。

アラン・カイエ(Alain Caillé)
1944年生まれ。パリ第10大学教授。経済学博士、社会学博士。邦訳書『功利的理性批判――民主主義・贈与・共同体』(藤岡俊博訳、以文社、2011年)。

丸山真人(まるやま・まこと)
1954年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻:経済人類学、人間の安全保障。主著『多元的経済社会の構想』(共編著、日本評論社、2001年)、『アジア太平洋環境の新視点』(共編、彩流社、2005年)。

マルク・アンベール(Marc Humbert)
1947年生まれ。レンヌ第1大学教授、日仏会館内フランス現代日本研究センター長。経済学博士、経営学博士。邦訳論文「人間と社会のための新しい経済学的知に向けて」『情況』2002年10月号。

ジルダ・ファレル(Gilda Farrell)
1950年生まれ。経済学博士。欧州評議会社会的紐帯研究開発局長。

ミシェル・ルノー(Michel Renault)
1963年生まれ。レンヌ第1大学准教授。研究分野は経済思想史、交換の社会関係など。

サミュエル・ティリオン(Samuel Thirion)
1952年生まれ。農学者、社会経済学者。欧州評議会社会的結合・研究促進部局行政官。

西川潤(にしかわ・じゅん)
1936年生まれ。早稲田大学名誉教授。学術博士。専攻:国際経済学、開発経済学。主著『人間のための経済学――開発と貧困を考える』(岩波書店、2000年)、『データブック貧困』(岩波書店、2008年)。

『地域に根ざす有機農業 日本と韓国の経験』(筑波書房)

2011年05月13日 07時55分29秒 | 
 東京大学の金氣興(キム・キフン)さんから先日、発売された初の単著を送っていただきました。ありがとうございました。

 タイトルは、『地域に根ざす有機農業 日本と韓国の経験(筑波書房)』です。

        

 有機農業の技術書の出版は増えていますが、社会科学系のタイトルは少ないのが現状です。なので、地域で有機農業がどのように取り組まれているのかという実態や有機農業の展開については、あまり知られていません。

 キムさんの本は、日本の有機農業の発展過程を知るには大変優れている良書です。学術書ではありますが、文体も読みやすく、有機農業の実態や歴史、現段階について関心のある方には平易に読むことができると思います。学術書であっても読みやすいというのは大事なポイントです。

 有機農業を実践している人にとっても、自分がやっている農業がどういう歴史をたどり、今、どういう状況にあるのかということを知ることができれば、その実践にさらに厚みが増し、説得力がつくのではないかと思います。

 また、韓国やタイの事例考察も、今後の日本における有機農業の発展を考える上で、非常に参考になり、視野が広がります。

 表紙の写真もとてもきれいです。ご関心のある方はぜひ。