法律の周辺

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ピック病罹患を理由とする公平委員会に対する不服申立について

2008-07-12 20:21:52 | Weblog
asahi.com 若年性認知症で万引き 懲戒免職の男性に障害年金支給へ

 地方公務員の懲戒事由のひとつに「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」(地方公務員法第29条第1項第3号)がある。
通常,万引きで現行犯逮捕となれば,上記懲戒事由にあたると思われるが,それが規範意識の摩滅・欠落などではなく,病気からきたものとなれば,話しは少々違ってくる。

記事の末尾に,懲戒免職となった方は茅ケ崎市の公平委員会に処分の撤回を申し立てて審理中,とある。
この点,地方公務員法第49条の3には,公平委員会等への不服申立期間として,「前条第一項に規定する不服申立ては,処分があつたことを知つた日の翌日から起算して六十日以内にしなければならず,処分があつた日の翌日から起算して一年を経過したときは,することができない。」とある。
現行犯逮捕されたのが06年2月で,懲戒免職はその16日後。医師から認知症の疑いがあるとの診断を受け,処分取消しを求めて公平委員会に審査請求したのは同年4月。「審理中」とあるから,幸い,申立は不服申立期間内におこなわれたようだ。
この方の場合,迅速に動かれたため事なきを得た(とはいっても,未だ審理中)が,仮に不服申立期間経過後の申立だったらどうなっていただろう。やはり,門前払いということになるのだろうか。この種の事案では,正義公平の観念などに照らせば,少なくともある一定期間は,期間経過後の申立であっても受理されて然るべき場合,あるような気がする。どうだろうか。


民法の関連条文

(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)
第百五十八条  時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは,その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は,その未成年者又は成年被後見人に対して,時効は,完成しない。
2  未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父,母又は後見人に対して権利を有するときは,その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は,その権利について,時効は,完成しない。

地方自治法の関連条文

第一条  この法律は,地方自治の本旨に基いて,地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め,併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより,地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに,地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。

第二百二条の二  人事委員会は,別に法律の定めるところにより,人事行政に関する調査,研究,企画,立案,勧告等を行い,職員の競争試験及び選考を実施し,並びに職員の勤務条件に関する措置の要求及び職員に対する不利益処分を審査し,並びにこれについて必要な措置を講ずる。
2  公平委員会は,別に法律の定めるところにより,職員の勤務条件に関する措置の要求及び職員に対する不利益処分を審査し,並びにこれについて必要な措置を講ずる。
3  労働委員会は,別に法律の定めるところにより,労働組合の資格の立証を受け及び証明を行い,並びに不当労働行為に関し調査し,審問し,命令を発し及び和解を勧め,労働争議のあつせん,調停及び仲裁を行い,その他労働関係に関する事務を執行する。
4  農業委員会は,別に法律の定めるところにより,自作農の創設及び維持,農地等の利用関係の調整,農地の交換分合その他農地に関する事務を執行する。
5  収用委員会は別に法律の定めるところにより土地の収用に関する裁決その他の事務を行い,海区漁業調整委員会又は内水面漁場管理委員会は別に法律の定めるところにより漁業調整のため必要な指示その他の事務を行い,固定資産評価審査委員会は別に法律の定めるところにより固定資産課税台帳に登録された価格に関する不服の審査決定その他の事務を行う。

地方公務員法の関連条文

(この法律の目的)
第一条  この法律は,地方公共団体の人事機関並びに地方公務員の任用,職階制,給与,勤務時間その他の勤務条件,分限及び懲戒,服務,研修及び勤務成績の評定,福祉及び利益の保護並びに団体等人事行政に関する根本基準を確立することにより,地方公共団体の行政の民主的かつ能率的な運営並びに特定地方独立行政法人の事務及び事業の確実な実施を保障し,もつて地方自治の本旨の実現に資することを目的とする。

(人事委員会又は公平委員会の権限)
第八条  人事委員会は,次に掲げる事務を処理する。
一  人事行政に関する事項について調査し,人事記録に関することを管理し,及びその他人事に関する統計報告を作成すること。
二  給与,勤務時間その他の勤務条件,研修及び勤務成績の評定,厚生福利制度その他職員に関する制度について絶えず研究を行い,その成果を地方公共団体の議会若しくは長又は任命権者に提出すること。
三  人事機関及び職員に関する条例の制定又は改廃に関し,地方公共団体の議会及び長に意見を申し出ること。
四  人事行政の運営に関し,任命権者に勧告すること。
五  給与,勤務時間その他の勤務条件に関し講ずべき措置について地方公共団体の議会及び長に勧告すること。
六  職員の競争試験及び選考並びにこれらに関する事務を行うこと。
七  職階制に関する計画を立案し,及び実施すること。
八  職員の給与がこの法律及びこれに基く条例に適合して行われることを確保するため必要な範囲において,職員に対する給与の支払を監理すること。
九  職員の給与,勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し,判定し,及び必要な措置を執ること。
十  職員に対する不利益な処分についての不服申立てに対する裁決又は決定をすること。
十一  前二号に掲げるものを除くほか,職員の苦情を処理すること。
十二  前各号に掲げるものを除く外,法律又は条例に基きその権限に属せしめられた事務
2  公平委員会は,次に掲げる事務を処理する。
一  職員の給与,勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し,判定し,及び必要な措置を執ること。
二  職員に対する不利益な処分についての不服申立てに対する裁決又は決定をすること。
三  前二号に掲げるものを除くほか,職員の苦情を処理すること。
四  前三号に掲げるものを除くほか,法律に基づきその権限に属せしめられた事務
3  人事委員会は,第一項第一号,第二号,第六号,第八号及び第十二号に掲げる事務で人事委員会規則で定めるものを当該地方公共団体の他の機関又は人事委員会の事務局長に委任することができる。
4  人事委員会又は公平委員会は,第一項第十一号又は第二項第三号に掲げる事務を委員又は事務局長に委任することができる。
5  人事委員会又は公平委員会は,法律又は条例に基づきその権限に属せしめられた事務に関し,人事委員会規則又は公平委員会規則を制定することができる。
6  人事委員会又は公平委員会は,法律又は条例に基くその権限の行使に関し必要があるときは,証人を喚問し,又は書類若しくはその写の提出を求めることができる。
7  人事委員会又は公平委員会は,人事行政に関する技術的及び専門的な知識,資料その他の便宜の授受のため,国若しくは他の地方公共団体の機関又は特定地方独立行政法人との間に協定を結ぶことができる。
8  第一項第九号及び第十号又は第二項第一号及び第二号の規定により人事委員会又は公平委員会に属せしめられた権限に基く人事委員会又は公平委員会の決定(判定を含む。)及び処分は,人事委員会規則又は公平委員会規則で定める手続により,人事委員会又は公平委員会によつてのみ審査される。
9  前項の規定は,法律問題につき裁判所に出訴する権利に影響を及ぼすものではない。

(懲戒)
第二十九条  職員が次の各号の一に該当する場合においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができる。
一  この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例,地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二  職務上の義務に違反し,又は職務を怠つた場合
三  全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
2  職員が,任命権者の要請に応じ当該地方公共団体の特別職に属する地方公務員,他の地方公共団体若しくは特定地方独立行政法人の地方公務員,国家公務員又は地方公社(地方住宅供給公社,地方道路公社及び土地開発公社をいう。)その他その業務が地方公共団体若しくは国の事務若しくは事業と密接な関連を有する法人のうち条例で定めるものに使用される者(以下この項において「特別職地方公務員等」という。)となるため退職し,引き続き特別職地方公務員等として在職した後,引き続いて当該退職を前提として職員として採用された場合(一の特別職地方公務員等として在職した後,引き続き一以上の特別職地方公務員等として在職し,引き続いて当該退職を前提として職員として採用された場合を含む。)において,当該退職までの引き続く職員としての在職期間(当該退職前に同様の退職(以下この項において「先の退職」という。),特別職地方公務員等としての在職及び職員としての採用がある場合には,当該先の退職までの引き続く職員としての在職期間を含む。次項において「要請に応じた退職前の在職期間」という。)中に前項各号のいずれかに該当したときは,これに対し同項に規定する懲戒処分を行うことができる。
3  職員が,第二十八条の四第一項又は第二十八条の五第一項の規定により採用された場合において,定年退職者等となつた日までの引き続く職員としての在職期間(要請に応じた退職前の在職期間を含む。)又はこれらの規定によりかつて採用されて職員として在職していた期間中に第一項各号の一に該当したときは,これに対し同項に規定する懲戒処分を行うことができる。
4  職員の懲戒の手続及び効果は,法律に特別の定がある場合を除く外,条例で定めなければならない。

(服務の根本基準)
第三十条  すべて職員は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,且つ,職務の遂行に当つては,全力を挙げてこれに専念しなければならない。

(信用失墜行為の禁止)
第三十三条  職員は,その職の信用を傷つけ,又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

(不利益処分に関する説明書の交付)
第四十九条  任命権者は,職員に対し,懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分を行う場合においては,その際,その職員に対し処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。
2  職員は,その意に反して不利益な処分を受けたと思うときは,任命権者に対し処分の事由を記載した説明書の交付を請求することができる。
3  前項の規定による請求を受けた任命権者は,その日から十五日以内に,同項の説明書を交付しなければならない。
4  第一項又は第二項の説明書には,当該処分につき,人事委員会又は公平委員会に対して不服申立てをすることができる旨及び不服申立期間を記載しなければならない。

(不服申立て)
第四十九条の二  前条第一項に規定する処分を受けた職員は,人事委員会又は公平委員会に対してのみ行政不服審査法 による不服申立て(審査請求又は異議申立て)をすることができる。
2  前条第一項に規定する処分を除くほか,職員に対する処分については,行政不服審査法 による不服申立てをすることができない。職員がした申請に対する不作為についても,同様とする。
3  第一項に規定する不服申立てについては,行政不服審査法第二章第一節 から第三節 までの規定を適用しない。

(不服申立期間)
第四十九条の三  前条第一項に規定する不服申立ては,処分があつたことを知つた日の翌日から起算して六十日以内にしなければならず,処分があつた日の翌日から起算して一年を経過したときは,することができない。

(審査及び審査の結果執るべき措置)
第五十条  第四十九条の二第一項に規定する不服申立てを受理したときは,人事委員会又は公平委員会は,直ちにその事案を審査しなければならない。この場合において,処分を受けた職員から請求があつたときは,口頭審理を行わなければならない。口頭審理は,その職員から請求があつたときは,公開して行わなければならない。
2  人事委員会又は公平委員会は,必要があると認めるときは,当該不服申立てに対する裁決又は決定を除き,審査に関する事務の一部を委員又は事務局長に委任することができる。
3  人事委員会又は公平委員会は,第一項に規定する審査の結果に基いて,その処分を承認し,修正し,又は取り消し,及び必要がある場合においては,任命権者にその職員の受けるべきであつた給与その他の給付を回復するため必要で且つ適切な措置をさせる等その職員がその処分によつて受けた不当な取扱を是正するための指示をしなければならない。

(不服申立ての手続等)
第五十一条  不服申立ての手続及び審査の結果執るべき措置に関し必要な事項は,人事委員会規則又は公平委員会規則で定めなければならない。

(不服申立てと訴訟との関係)
第五十一条の二  第四十九条第一項に規定する処分であつて人事委員会又は公平委員会に対して審査請求又は異議申立てをすることができるものの取消しの訴えは,審査請求又は異議申立てに対する人事委員会又は公平委員会の裁決又は決定を経た後でなければ,提起することができない。

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