法律の周辺

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企業倫理規範として反社会的勢力等に対する毅然とした対応を掲げるホテルについて

2008-02-18 21:57:55 | Weblog
MSN産経ニュース 日教組の宿泊拒否,法違反の疑い濃厚 厚労相

 このホテルのHPには,属する企業グループの企業倫理規範が掲載されている。そこには,「ルールの遵守」として,概略,法令等を遵守し,社会的良識をもって行動し,市民社会の秩序・安全に脅威を与える反社会的勢力等には毅然とした対応をする,とある。

さて,日本中が「裁判による法秩序維持」という司法制度の存在意義を蔑ろにするかのような今回の事件について切歯扼腕している,かどうかはわからないが,舛添厚労相が,本日,衆議院の予算委員会で面白い発言をしている。曰く,「(ホテル側の宿泊拒否は)旅館業法に違反する疑いが濃厚」。
なるほど,旅館業法第5条は,3つの例外事由を除き,原則,宿泊拒否を禁じている。教研集会への会場提供拒否の理由としてホテル側があげた理由は,上記例外のいずれにもあたらないように思われる。独自の考えをもってしても,この宿泊拒否まで正当化するのは難しいのではなかろか。

記事には,港区がホテル側を事情聴取する予定,とある。問題の筋から言えば,旅館業法違反,矮小の感は否めないが,この事情聴取には注目したい。
因みに,宿泊拒否を禁ずる旅館業法第5条に違反した者は5千円以下の罰金に処せられる(旅館業法第11条,13条)。

最後になったが,仮処分を無視した行為の効力の如何については,発行差止仮処分違反の新株発行に係る最判H5.12.16がある。この最判,仮処分命令違反の新株発行は,差止請求権の実効性を担保しようとした法の趣旨を没却するとして,新株発行無効の訴えの無効原因になると断じた。


旅館業法の関連条文

第一条  この法律は,旅館業の業務の適正な運営を確保すること等により,旅館業の健全な発達を図るとともに,旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し,もつて公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

第二条  この法律で「旅館業」とは,ホテル営業,旅館営業,簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
2  この法律で「ホテル営業」とは,洋式の構造及び設備を主とする施設を設け,宿泊料を受けて,人を宿泊させる営業で,簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
3  この法律で「旅館営業」とは,和式の構造及び設備を主とする施設を設け,宿泊料を受けて,人を宿泊させる営業で,簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
4  この法律で「簡易宿所営業」とは,宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け,宿泊料を受けて,人を宿泊させる営業で,下宿営業以外のものをいう。
5  この法律で「下宿営業」とは,施設を設け,一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて,人を宿泊させる営業をいう。
6  この法律で「宿泊」とは,寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。

第五条  営業者は,左の各号の一に該当する場合を除いては,宿泊を拒んではならない。
一  宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるとき。
二  宿泊しようとする者がとばく,その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
三  宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。

第七条  都道府県知事は,必要があると認めるときは,営業者その他の関係者から必要な報告を求め,又は当該職員に,営業の施設に立ち入り,その構造設備若しくはこれに関する書類を検査させることができる。
2  当該職員が,前項の規定により立入検査をする場合においては,その身分を示す証票を携帯し,且つ,関係人の請求があるときは,これを呈示しなければならない。

第八条  都道府県知事は,営業者が,この法律若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき,又は第三条第二項第三号に該当するに至つたときは,同条第一項の許可を取り消し,又は期間を定めて営業の停止を命ずることができる。営業者(営業者が法人である場合におけるその代表者を含む。)又はその代理人,使用人その他の従業者が,当該営業に関し次に掲げる罪を犯したときも,同様とする。
一  刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百七十四条 ,第百七十五条又は第百八十二条の罪
二  風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 (昭和二十三年法律第百二十二号)に規定する罪(同法第二条第四項 の接待飲食等営業に関するものに限る。)
三  売春防止法 (昭和三十一年法律第百十八号)第二章 に規定する罪
四  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律 (平成十一年法律第五十二号)に規定する罪

第十一条  左の各号の一に該当する者は,これを五千円以下の罰金に処する。
一  第五条又は第六条第一項の規定に違反した者
二  第七条第一項の規定による報告をせず,若しくは虚偽の報告をし,又は当該職員の検査を拒み,妨げ,若しくは忌避した者

第十三条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関して,第十条又は第十一条の違反行為をしたときは,行為者を罰する外,その法人又は人に対しても,各本条の罰金刑を科する。

東京都旅館業法施行条例の関連条文

(宿泊を拒むことができる事由)
第五条 法第五条第三号の規定による条例で定める事由は,次のとおりとする。
一 宿泊しようとする者が,泥酔者等で,他の宿泊者に著しく迷惑を及ぼすおそれがあると認められるとき。
二 宿泊者が他の宿泊者に著しく迷惑を及ぼす言動をしたとき。

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