法律の周辺

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自主ガイドラインに基づく発信者情報の開示について

2008-02-14 21:23:57 | Weblog
asahi.com ネット自殺予告,121人中72人保護 警察と業者連携

 日本国憲法第21条第2項後段には「通信の秘密は,これを侵してはならない。」とある。
これを受ける形で,電気通信事業法第4条1項には「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は,侵してはならない。」,第2項には「電気通信事業に従事する者は,在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても,同様とする。」とある。
電気通信事業者がこれに違反して秘密を漏示した場合は,三年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処せられる(電気通信事業法第179条第2項)。

記事には,概略,業界団体は警察からの照会に自主ガイドライン(「インターネット上の自殺予告事案への対応に関するガイドライン」のこと)に基づき発信者情報を開示している,とある。
開示は上記の通信の秘密との関係で軋轢が生じる。これに関し,自主ガイドラインは,プロバイダ等が自殺予告に係る警察からの照会に対して発信者情報を開示する行為は,緊急避難(刑法第37条)の要件を満たす限り違法性は阻却されるとし,判断基準の整理等々をおこなっている。
因みに,参考書式として掲げられている警察からの「発信者情報の開示に関する協力依頼(照会)」には,「本照会により開示を受けた情報は,あくまで人命保護の目的で利用するものであり,これ以外の目的で利用することはありません。」とある。

社団法人日本インターネットプロバイダー協会 電気通信関連4団体「インターネット上の自殺予告事案への対応に関するガイドライン(平成17年10月)」


日本国憲法の関連条文

第二十一条  集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
2  検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。

民法の関連条文

(緊急事務管理)
第六百九十八条  管理者は,本人の身体,名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは,悪意又は重大な過失があるのでなければ,これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。

刑法の関連条文

(緊急避難)
第三十七条  自己又は他人の生命,身体,自由又は財産に対する現在の危難を避けるため,やむを得ずにした行為は,これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り,罰しない。ただし,その程度を超えた行為は,情状により,その刑を減軽し,又は免除することができる。
2  前項の規定は,業務上特別の義務がある者には,適用しない。

電気通信事業法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,電気通信事業の公共性にかんがみ,その運営を適正かつ合理的なものとするとともに,その公正な競争を促進することにより,電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者の利益を保護し,もつて電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り,公共の福祉を増進することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
一  電気通信 有線,無線その他の電磁的方式により,符号,音響又は影像を送り,伝え,又は受けることをいう。
二  電気通信設備 電気通信を行うための機械,器具,線路その他の電気的設備をいう。
三  電気通信役務 電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し,その他電気通信設備を他人の通信の用に供することをいう。
四  電気通信事業 電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業(放送法 (昭和二十五年法律第百三十二号)第五十二条の十第一項 に規定する受託放送役務,有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律 (昭和二十六年法律第百三十五号)第二条 に規定する有線ラジオ放送,有線放送電話に関する法律 (昭和三十二年法律第百五十二号)第二条第一項 に規定する有線放送電話役務,有線テレビジョン放送法 (昭和四十七年法律第百十四号)第二条第一項 に規定する有線テレビジョン放送及び同法第九条 の規定による有線テレビジョン放送施設の使用の承諾に係る事業を除く。)をいう。
五  電気通信事業者 電気通信事業を営むことについて,第九条の登録を受けた者及び第十六条第一項の規定による届出をした者をいう。
六  電気通信業務 電気通信事業者の行う電気通信役務の提供の業務をいう。

(検閲の禁止)
第三条  電気通信事業者の取扱中に係る通信は,検閲してはならない。

(秘密の保護)
第四条  電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は,侵してはならない。
2  電気通信事業に従事する者は,在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても,同様とする。

第百七十九条  電気通信事業者の取扱中に係る通信(第百六十四条第二項に規定する通信を含む。)の秘密を侵した者は,二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2  電気通信事業に従事する者が前項の行為をしたときは,三年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
3  前二項の未遂罪は,罰する。

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