法律の周辺

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放送番組の内容に対する期待権の保護の如何について

2007-12-20 21:09:42 | Weblog
MSN産経ニュース 「期待権」初の最高裁判断も NHK損賠訴訟

 東京高判H19.1.29は,番組内容に変更があった場合の放送事業者等による取材対象者への説明義務の如何に関し,次のとおり判示。

 ところで,制作中の番組について,どの程度のねらいの変更が生じた場合に説明を要するかは必ずしも判然としないことも多く,また,放送番組の編集作業は,放送直前まで行われることもあり,事前の説明を行う時間的余裕がない場合がある。そこで,これらの点を考慮すると,放送事業者に対し,方針の変更があった場合につき取材対象者に対する法的な説明義務をすべての場合に課すことは,放送事業者の番組の編集に過度の制約を課すことにつながるおそれがある。この意味で,本件ガイドライン(管理人註:「NHK放送ガイドライン」のこと)は,取材・制作現場で直面する問題に対処する上でのよりどころとなる考え方や注意点を示したものであって,ジャーナリストとしての倫理向上を目指すものであり,これに定める説明の必要性は,取材の際の倫理的な義務をいうものであると解すべきである。他方,上記説示のとおり,取材対象者の自己決定権も保護すべきであることから,放送番組の制作者や取材者は,番組の内容やその変更等について,これを説明する旨の約束がある等,特段の事情があるときに限り,これを説明する法的な義務を負うと解するのが相当である。

東京高裁,本件では,取材経過等に照らし,一審原告には番組内容について法的保護に値する期待と信頼が生じ,一審被告らはそのことを認識していたとし,NHKらには法的説明義務を負担すべき特段の事情があるとした。
この点のNHKの主張は以下のとおり。番組内容に対する期待権を一切否定しているというわけではないようだ。

 取材対象者の信頼が法的保護に値するためには,取材対象者が当該取材過程で取材結果の編集やこれを使用して制作される番組の内容について何らかの期待を抱いた場合,その期待が相当程度具体的なものであり,かつ取材者が取材対象者に対し,取材結果をどのように編集するか,あるいは取材結果をどのような趣旨の番組に使用するかなどについて約束するなど,取材者の言動によりそのような期待を抱くのもやむを得ない特段の事情がある場合に限定されるべきである。本件においては,次のとおりの事情から,いずれの要件も満たさず法的な保護に値しない。(以下,省略)

判例検索システム 平成19年01月29日 損害賠償請求控訴事件


日本国憲法の関連条文

第十三条  すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。

第二十一条  集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
2  検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。

放送法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,左に掲げる原則に従つて,放送を公共の福祉に適合するように規律し,その健全な発達を図ることを目的とする。
一  放送が国民に最大限に普及されて,その効用をもたらすことを保障すること。
二  放送の不偏不党,真実及び自律を保障することによつて,放送による表現の自由を確保すること。
三  放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて,放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

(定義)
第二条  この法律及びこの法律に基づく命令の規定の解釈に関しては,次の定義に従うものとする。
一  「放送」とは,公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信をいう。
一の二  「国内放送」とは,国内において受信されることを目的とする放送であつて,受託国内放送以外のものをいう。
一の三  「受託国内放送」とは,他人の委託により,その放送番組を国内において受信されることを目的としてそのまま送信する放送であつて,人工衛星の無線局により行われるものをいう。
二  「国際放送」とは,外国において受信されることを目的とする放送であつて,中継国際放送及び受託協会国際放送以外のものをいう。
二の二  「中継国際放送」とは,外国放送事業者(外国において放送事業を行う者をいう。以下同じ。)の委託により,その放送番組を外国において受信されることを目的としてそのまま送信する放送をいう。
二の二の二  「受託協会国際放送」とは,日本放送協会(以下「協会」という。)の委託により,その放送番組を外国において受信されることを目的としてそのまま送信する放送であつて,人工衛星の無線局により行われるものをいう。
二の二の三  「受託内外放送」とは,他人の委託により,その放送番組を国内及び外国において受信されることを目的としてそのまま送信する放送であつて,人工衛星の無線局により行われるものをいう。
二の三  「中波放送」とは,五百二十六・五キロヘルツから千六百六・五キロヘルツまでの周波数を使用して音声その他の音響を送る放送をいう。
二の四  「超短波放送」とは,三十メガヘルツを超える周波数を使用して音声その他の音響を送る放送(文字,図形その他の影像又は信号を併せ送るものを含む。)であつて,テレビジョン放送に該当せず,かつ,他の放送の電波に重畳して行う放送でないものをいう。
二の五  「テレビジョン放送」とは,静止し,又は移動する事物の瞬間的影像及びこれに伴う音声その他の音響を送る放送(文字,図形その他の影像又は信号を併せ送るものを含む。)をいう。
二の六  「多重放送」とは,超短波放送又はテレビジョン放送の電波に重畳して,音声その他の音響,文字,図形その他の影像又は信号を送る放送であつて,超短波放送又はテレビジョン放送に該当しないものをいう。
三  「放送局」とは,放送をする無線局をいう。
三の二  「放送事業者」とは,電波法 (昭和二十五年法律第百三十一号)の規定により放送局(受信障害対策中継放送(同法第五条第五項 に規定する受信障害対策中継放送をいう。以下同じ。)を行うものを除く。)の免許を受けた者,委託放送事業者及び第九条第一項第二号に規定する委託国内放送業務又は委託協会国際放送業務を行う場合における協会をいう。
三の三  「一般放送事業者」とは,協会及び放送大学学園法 (平成十四年法律第百五十六号)第三条 に規定する放送大学学園(以下「学園」という。)以外の放送事業者をいう。
三の四  「受託放送事業者」とは,電波法 の規定により受託国内放送,受託協会国際放送又は受託内外放送(以下「受託放送」と総称する。)をする無線局の免許を受けた者をいう。
三の五  「委託放送事業者」とは,委託放送業務(電波法 の規定により受託国内放送又は受託内外放送をする無線局の免許を受けた者に委託して放送番組を放送させる業務をいう。以下同じ。)に関し,第五十二条の十三第一項の認定を受けた者をいう。
三の六  「委託協会国際放送業務」とは,協会が電波法 の規定により受託協会国際放送をする無線局の免許を受けた者又は受託協会国際放送をする外国の無線局を運用する者に委託してその放送番組を放送させる業務をいう。
四  「放送番組」とは,放送をする事項(その放送が受託放送であるときは,委託して放送をさせる事項)の種類,内容,分量及び配列をいう。
五  「教育番組」とは,学校教育又は社会教育のための放送の放送番組をいう。
六  「教養番組」とは,教育番組以外の放送番組であつて,国民の一般的教養の向上を直接の目的とするものをいう。

(放送普及基本計画)
第二条の二  総務大臣は,放送(委託して放送をさせることを含む。次項第一号,第七条,第九条第一項第三号,第二項第五号及び第六号並びに第六項,第三十四条第一項,第五十二条の十三第一項第四号,第五十三条第一項並びに第五十三条の十二第一項において同じ。)の計画的な普及及び健全な発達を図るため,放送普及基本計画を定め,これに基づき必要な措置を講ずるものとする。
2  放送普及基本計画には,放送局の置局(受託国内放送及び受託内外放送にあつてはこれらの放送を行う放送局の置局及び委託放送業務とし,受託協会国際放送(電波法 の規定による免許を受ける無線局により行われるものに限る。以下この項において同じ。)にあつては受託協会国際放送を行う放送局の置局及び委託協会国際放送業務とする。)に関し,次の事項を定めるものとする。
一  放送を国民に最大限に普及させるための指針,放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保することにより,放送による表現の自由ができるだけ多くの者によつて享有されるようにするための指針その他放送の計画的な普及及び健全な発達を図るための基本的事項
二  協会の放送(協会の委託により行われる受託国内放送を含む。第三十二条第一項本文において同じ。),学園の放送又は一般放送事業者の放送(協会の委託により行う受託国内放送を除く。)の区分,国内放送,受託国内放送,国際放送,中継国際放送,受託協会国際放送又は受託内外放送の区分,中波放送,超短波放送,テレビジョン放送その他の放送の種類による区分その他の総務省令で定める放送の区分ごとの同一の放送番組の放送を同時に受信できることが相当と認められる一定の区域(以下「放送対象地域」という。)
三  放送対象地域ごとの放送系(同一の放送番組の放送を同時に行うことのできる放送局の総体をいう。以下この号において同じ。)の数(受託放送に係る放送対象地域にあつては,放送系により放送することのできる放送番組の数)の目標
3  放送普及基本計画は,第九条第一項,第二項第一号及び第五項に規定する事項,電波法第七条第三項 の放送用割当可能周波数,放送に関する技術の発達及び需要の動向,地域の自然的経済的社会的文化的諸事情その他の事情を勘案して定める。
4  総務大臣は,前項の事情の変動により必要があると認めるときは,放送普及基本計画を変更することができる。
5  総務大臣は,放送普及基本計画を定め,又は変更したときは,遅滞なく,これを公示しなければならない。
6  放送事業者(受託放送事業者,委託放送事業者及び第九条第一項第二号に規定する委託国内放送業務又は委託協会国際放送業務を行う場合における協会を除く。)は,その行う放送に係る放送対象地域において,当該放送があまねく受信できるように努めるものとする。

(放送番組編集の自由)
第三条  放送番組は,法律に定める権限に基く場合でなければ,何人からも干渉され,又は規律されることがない。

(国内放送の放送番組の編集等)
第三条の二  放送事業者は,国内放送の放送番組の編集に当たつては,次の各号の定めるところによらなければならない。
一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
二  政治的に公平であること。
三  報道は事実をまげないですること。
四  意見が対立している問題については,できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
2  放送事業者は,テレビジョン放送による国内放送の放送番組の編集に当たつては,特別な事業計画によるものを除くほか,教養番組又は教育番組並びに報道番組及び娯楽番組を設け,放送番組の相互の間の調和を保つようにしなければならない。
3  放送事業者は,国内放送の教育番組の編集及び放送に当たつては,その放送の対象とする者が明確で,内容がその者に有益適切であり,組織的かつ継続的であるようにするとともに,その放送の計画及び内容をあらかじめ公衆が知ることができるようにしなければならない。この場合において,当該番組が学校向けのものであるときは,その内容が学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠するようにしなければならない。
4  放送事業者は,テレビジョン放送による国内放送の放送番組の編集に当たつては,静止し,又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。

(番組基準)
第三条の三  放送事業者は,放送番組の種別及び放送の対象とする者に応じて放送番組の編集の基準(以下「番組基準」という。)を定め,これに従つて放送番組の編集をしなければならない。
2  放送事業者は,国内放送について前項の規定により番組基準を定めた場合には,総務省令で定めるところにより,これを公表しなければならない。これを変更した場合も,同様とする。

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