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最高おススメ演技 その18   3冠王となった ソチ五輪シーズンの「ロミオとジュリエット」

2016-06-08 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

羽生選手の最高おススメ演技、 その18は、

ソチ五輪シーズン(大学1年シーズン)の、フリー演技だった「ロミオとジュリエット」です。

(音楽は、ニーノ・ロータ版)

 

羽生選手は、ショート「パリの散歩道」と、フリーはこの「ロミオとジュリエット」で、ソチ五輪での金メダルを獲得しました。

また、グランプリ・ファイナルで優勝し、世界選手権でも優勝し、3冠王となった時の演技でもあります。

 

2012年の世界選手権で、歴史に残る名演技とまで言われた、「ロミオとジュリエット」(高校2年時)とは、違う映画の音楽を使って、またもや「ロミオとジュリエット」をテーマに選んだのは、震災を含めたこの4年間を総括したものにしたいと強く願った、羽生選手の強い思いからくる、こだわりでした。

羽生選手は、最初は「オペラ座の怪人」をフリーで希望したことが翌年に判明しますが、話し合いの結果、こちらに落ち着きます。

この時の羽生選手はまだ10代でしたので、より大人っぽさの要求される「怪人」ではなくて、「ロミオ」の方がより合っていたと思いますし、

その選択は、結果的には大正解だっただろうと、私は思っています。

 

五輪シーズンの初めに、フリーが再び、音源の違う「ロミオとジュリエット」だと聞いた時は、「良い選択をしたな」と思って、ワクワクさせられました。

 

 

 

このシーズンの演技のベストを選ぶのはちょっと悩むところなのですが、最も印象に残っているのは、

やはり、オリンピック直前の12月のグランプリ・ファイナルで、初優勝した時の演技です。

 

 

 

グランプリシリーズの王者を決めるこの「ファイナル」の直前の「フランス大会(エリック・ボンパール杯)」では、最初の4回転サルコウで、氷の溝にエッジが引っかかり、ジャンプが抜けて1回転になってしまうという最悪のスタートとなり、次の、最も得意で絶対的な得点源だった4回転トウループでも転倒し、冒頭の2種類の4回転を両方とも失敗してしまうという、まさかのアクシデントに見舞われ、得点でも非常に痛い失点となってしまいます。 

そのショックや焦りが影響したのか、やや精彩を欠き、チャン選手と得点でかなりの大差をつけられてしまい、順位は2位ではあっても、演技内容としては完全に失意に終わってしまった羽生選手。

長年の夢だった五輪金メダルへ向けて、危機感を感じた羽生選手は、「ライバルを意識しすぎた演技になってしまった」と反省し、そこから立て直すために、その後は自己分析も含めて、相当必死で努力したようで、この時のファイナルの演技ではその努力が実り、それまでの2大会とは全く違った、快心の演技となりました。

 

冒頭のサルコウは転倒したものの、前回の反省から、ミスを引きずらずに自分自身の演技に集中し続け、最初から最後まで目を離せないような、心に響く、素晴らしい演技となりました。

特に、一つ一つの動作が丁寧で、思いが伝わってくるようになり、後半での「表現面」が格段に良くなっていました。

この演技の後半で、特に際立っていて印象に残るのは、羽生選手がロミオとして表現してくれた、まっすぐな思いというか、透明感、ピュアさ、みたいなものです。

これはどう見ても、羽生選手本人が持っているもの、その良さが、ストレートに出たように思うのです。 

 

男女の枠を超えた幅広い技術力を持つ羽生選手の長所と、表現や音楽とがとても合っていて美しく、このシーズンのロミオでは初めて、惚れ込むような気持ちにまでさせられたのが、この時の演技でした。 

高校2年時のロミオとは、強調点のまた異なった、「より繊細で情緒的なロミオ」になっています。

 

ショートの「パリの散歩道」と、このロミオとのイメージの対極性から、羽生選手のもつ多様な側面が表現できたと思いますし、

選手としての驚くべき守備範囲の広さ、底知れない可能性の大きさが、より良く示せたのではないかと思います。

 

羽生選手本人の個性とロミオのイメージとが、一番良い形で、理想的に融合したように見えたのがこのグランプリ・ファイナルでした。

思わず、途中でため息が出るような、なんともいえない美しさがありました。

羽生選手も、終わった時に自分でも納得できたようで、自分で拍手しています。

 

羽生選手が自分で自分に小さく拍手するときは、自分でも納得できた演技の時ですので、見ていてとても嬉しく思いましたし、

ショートとフリーの両方を揃えて、なおかつ優勝してくれた、文句なしに素晴らしい大会となりました。

 

得点が発表されたとき、羽生選手はちょっと高すぎると思ったようで、首を振っていますが、私は、上に書いてきたように、

この回で特に、演技構成点が過去最高評価になったことは、当然の結果だと思って納得していました。 

(シーズン中のベストスコアは、この時の演技です。)

なぜなら、旧ロミオ(大震災後・高2時のロミオ)は「歴史に残る不動の評価」を獲得したほどに長所を発揮できましたけど、

この新ロミオでは、グランプリ・ファイナル前までは、羽生選手はその良さを全然発揮しきれていなかったのですが、

この回でやっと発揮できただけでなく、新ロミオで初めて、惚れ込むような、素晴らしい演技を見せてくれたと思ったからです!(笑)

 

羽生選手のトレードマークになりつつあった、普通は男子選手はできない「ビールマン・スピン」「レイバック・イナバウアー」もかなり美しくなって時間も長くなり、プログラムのイメージとも合って、とても印象に残った回でした。

 

(この時も、既に実力は十分過ぎるほど凄かったのですが、まだソチ五輪で金メダルを取る前なので、今と比べれば世間からの注目度や知名度も全然異なり、騒がれ方も全く違っていた時ですので、なんだか懐かしく思い出します。)

 

 

完全にロミオだけのイメージで作られていた、高校2年時(震災直後シーズン)のロミオの、男っぽい衣装と比べると、

この時の衣装には、デザインにジュリエット要素も含まれているようで、甘く繊細でロマンティックなイメージがありますが、

ここはファンによっては多少の好みが分かれたようです。

演技そのものを見ると、特にジュリエットを演じていると思われる箇所はないように感じられ、やはりロミオの視点で振付されているし、羽生選手もそのつもりで演じているように思うのですが、

あえていうなら、「ロミオとジュリエットの双方の思いが一つになった様を、この衣装が表現している」ようにさえ私には感じられ、

だから、演技後半で特に素敵に見えてくるのかもしれない、と思いました。

 

 

そして、こちらが、ソチ五輪・個人戦での演技「ロミオとジュリエット」です。

 

羽生選手でも、さすがにやはり五輪は緊張するのでしょう。(笑)

ショートの「パリの散歩道」では、団体戦・個人戦ともに素晴らしい演技で、特に個人戦では史上初の100点越えという大活躍を見せましたが、金メダルの期待のかかったこのフリーでは、演技開始直前に、今まで見たことないほど深く深呼吸する羽生選手が見られ、相当なプレッシャーがかかっていたことがうかがえます。

直前の公式練習では、冒頭の4回転サルコウは成功していたものの、五輪本番では、失敗してしまいます。

その後の4回転トウループは成功しますが、なんと、その直後の3回転フリップで、ご本人さえも想像できなかった、まさかのステップアウトとなります。

(この冒頭のジャンプの連続のところの音楽は、映画では「不安や焦り」「パニック」を表現した音楽なので、この曲を聞きながらジャンプを成功させるのは、そもそも難しいだろうと私は思うのです。 

これと全く同じ曲を使用した、トリノ五輪の時の女子・サーシャ・コーエン選手(アメリカ)のフリーも、同じように本番で冒頭のジャンプを2度失敗してしまいましたので…。)

 

ここから、羽生選手本人の頭も真っ白になってしまったそうで、その後はほとんど覚えていないそうです。

多くの羽生ファンも、この時ばかりはきっと、頭が真っ白になりかかったのではないかと想像します。

私も必死で祈りながら、羽生選手のロミオより先に、自分の息のほうが止まっちゃうのでは、というほどの気分で観ていました。

 

しかし、この演技の特筆すべき凄いところは、これによって羽生選手が我を見失い、頭が真っ白にまでなって、「本来の羽生選手らしさを完全に失った」ことで、逆に、シーズンの中では最も「ロミオっぽい」演技になった、という運命的な点です。

とてもハラハラと観ながらも、途中から、(あ、これは本当のロミオだ…! 羽生選手が本当にロミオになっちゃった!)と思ったのを覚えています。特に、ラストの方の天を仰いでみせる動作の前後が圧巻です。

ジャッジスコアでも、演技構成点の「解釈」だけは、シーズン中で最も高得点になったのは、まさにこの点だろうと思います。

そもそもロミオというのは、普段の羽生選手が見せるような、分析力の高い、冷静沈着で理性的な面の目立つ青年ではありません。(笑)

暴走して罪を犯し、恋に落ちて我を忘れて舞い上がり、一気に結婚して燃え上がり、突き落とされて嘆き、失意のどん底でジュリエットは死んだと思い込み、両家の反対を乗り越えて愛を貫くために、いらないはずの悲劇を迎える… 

この激しい展開を、たった4日間で駆け抜けるストーリーです。

 

このソチ五輪の演技は、本当に「ロミオとジュリエット」のような、驚きと緊迫の展開を演技中に見せ、

羽生選手本人をも、コントロール不能に思えるような運命的な流れの中に引き込んでいっただけでなく、

男子フリーでの試合の展開そのものが、

まるでロミオとジュリエットのあらすじのような、予想外の激しい展開になっていきました。

 

ショートを終えた羽生ロミオは、長年恋い焦がれ続けたジュリエット(=「金メダル」)と念願の相思相愛を目の前にして、

まさかのミスにより、このジュリエットは一度、羽生ロミオの手からすり抜けて、残酷な「仮死状態」となってしまいます。

 

幼いころから恋い焦がれ続けたこのジュリエットを、目の前で完全に失ったと思い込んで失意に落とされた19歳の羽生選手。

しかし、銀メダルの覚悟を決めた途端、直後に滑ったライバル・チャン選手の、まさかの3度のミスにより、なんと仮死状態だったジュリエットがいきなり息を吹き返して、羽生ロミオの腕の中に舞い戻ってきます!

展開の激しさはそのままに、原作とは「最後だけが違う」という、考えられる限りの「最高の結末」で、ソチ五輪における、羽生選手の「ロミオとジュリエット」劇場は幕を閉じ、羽生選手はソチ五輪で、史上2番目に若い19歳で、念願の金メダリストとなりました。

 

しかし、この結果だけで終わらないのが、やはり羽生選手です。

 

決して快心の出来ではなかったことから、「理想の演技」「ノーミス」という目標を目指し、

五輪でさえも、「僕にとっては、一つの試合に過ぎない」などと言って、さっさと前を向き、

引退の「い」の字も感じさせない勢いで、直ちに次の世界選手権の練習に取り組みます。

 

この辺はもう、羽生ファンとしては事前の「予想通り」でもあり、「期待通り」でもあり、

「さすが羽生選手」「これが羽生選手」という感じで、本当にありがたかったですし、とても頼もしかったですね!

 

もし、ソチ五輪で満足し切って、そのまま引退されたりしたならば、少なくとも羽生選手の演技がまだまだ見たい羽生ファンとしては、金メダルの喜びも、あっさりと半減してしまっただろうと思うので、

五輪で金メダルをとってもなお、フリーで、先へとつながる課題を残したことは、羽生選手にはちょっとだけ申し訳ないながらも、ファン目線から見ると、「この上ない完璧なシナリオ」「神の采配」にさえ、私には思えました。

 

 

羽生選手はこうして、五輪直後からまた、本番で成功できていなかった、4回転サルコウの練習を重ねます。

 

その結果、シーズン最後の「世界選手権」で、サルコウを含めた2種類の4回転を跳んで優勝した時の、「ロミオとジュリエット」が、こちら。

 

 

 

この世界選手権では、冒頭の4回転サルコウをなんとか堪えて成功させ、

このシーズンで初めて、ジャンプを含む技術面で、ほぼノーミスを達成しました。

 

SPでは失敗があって3位と出遅れていただけでなく、この大会で絶好調だった町田選手の大活躍により、逆転優勝を狙うには、もはやノーミスしかないという状態にまで追い込まれた羽生選手は、持ち前の闘争心に激しく火が付いたようで、

この時は、表現面では「ロミオ」というよりも、「アスリートである羽生選手そのもの」が前面に出た印象の、ややアグレッシブな演技となりました。

特に後半は、苦悩する繊細なロミオというよりも、どう見ても、「いくぞ!」「跳ぶぞ!」「勝つぞ!」という声でも聞こえてきそうな感じの、凄い闘志に満ちた、やたらとたくましいロミオ… いや、ですから、これはもう完全に羽生選手です。(笑)

最後のポーズまでバシッと決めてきて、それ自体はカッコよく、それまでと比べても、強さやたくましさが目立った、見事な羽生選手そのものの演技ではありました。

 

ここでも、ソチ五輪とは違った形で、金メダル・ジュリエットとハッピーエンドになって、羽生選手は初めて、「世界選手権王者」のタイトルまでもを、手に入れます。

 

 

こうして羽生選手は、震災のシーズンに思い入れのあった「ロミオとジュリエット」というテーマを、

ソチ五輪シーズンでも違った形で表現し、長年の夢であり、念願の目標の一つだったことを達成していきました。

 

男子シングルの「五輪金メダリスト」、「グランプリ・ファイナル 金メダリスト」そして「世界選手権王者」という、「3冠王」に、19歳の若さでなり、

羽生ファンとしては、これ以上期待できるものはないというほどの最高の結果を出して下さったと思っています。

 

 

東日本大震災により、一度は、スケートをやめようかというほど悩んだという羽生選手が、

時には四苦八苦し、陰では何度も涙を流しつつも、前を向いて一つ一つ乗り越えていき、

ソチ五輪金メダリストを含め、19歳にして3冠王にまでなっていった姿は、多くの人に、強い励ましと大きな希望を与えてくれたと思います!

 

 ありがとう! そして、おめでとう!!

 

さらに先にある、もう一つの夢へ向けて、これからも一歩一歩、希望をもって頑張って下さいね!

 

 

 


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