無題・休題-ハバネロ風味-

私の視線で捉えた世の中の出来事を、無駄口、辛口、様々な切り口から書いてみました。

金山町の町並み

2009-09-08 12:12:37 | 建築・都市・港
山形県の北に位置する人口7000人の金山町は、30年ほど前から町の景観を模索し、方向を決めた。それが「金山町・百年の景。」である。町の面積の大半を森林が締め、良質の杉材を搬出する所で有名である。秋田県境と接し、古くは秋田杉として搬出した事もあったが、樹齢200-300年を超える美林を受け継ぎ、現在は「金山杉」のブランドの元、国内に流通させている。

10月に行われる建築士会の全国大会やまがた大会の資料として、この金山杉と金山町の写真が欲しくて、女性委員長のSさんと2人で日曜日に出かけてみた。金山町には、割に頻繁(はんざつではないよ)に出かけていた筈なのに、その町の変貌ぶりには改めて驚いた。


金山町に住む建築士のAさんとは、パソコン通信の時代からの友人である。その為、金山町で独自に作られた条例による町並み作りには、当初の頃から見る事が出来ていた。屋根の色や外壁を真壁(柱が見える構造)の白壁にすることと、金山町の職人が作った物に、町では若干の補助を出した。補助の額も少なかったし、当初はポツポツとしか金山住宅は見られなかったのだが、年月が経つと点が線になり面になって町並みが変わってきた。


元々は、広大な杉の美林を持つ裕福な町である。街中の蔵の数も夥しい。金山町の「百年の景。」とは、日本の住宅は気候のせいもあって耐用年数が短い。100年の内には、新築にならずとも必ず補修や改築しなければならない。その時に外観を金山町住宅にすれば、100年後には金山の町はすっかり変わってしまうだろうと、ゆっくりとした時の流れを含めた町づくりを始めたのだ。


金山町は豪雪地帯でもある。町の中には大堰と呼ばれる堰が縦横無尽に流れている。これは豊かな水を敷地内に取り込むことも出来るし、冬には除雪した雪を溶かす優れた設備でもある。


大堰の由来


堰の中には鯉が放され、大きな姿で人なつこく寄ってきた。


大堰の傍に作られた公園には、イザベラバードの碑も建てられていた。




大堰に沿って歩いていくと、「自由にお通り抜け下さい」と手描きの看板があった。門を潜ってみると、蔵に着けられた下屋が、通りの向こう側まで延びていた。蔵の壁には持ち主の岸さんの絵が掛けられていた。


金山町の町には、個人のお宅であっても、庭を開放したり、自由に通り抜け出来るようなミニ公園が各所にあり、歩いて楽しめるようになっている。


町並みが出来上がっていくと同時に、道路の舗装も小石を散りばめた物や、石畳などが作られ、個人的な協力もそうだが、行政が町づくりに重点を置いた施策が感じられ、とても良い雰囲気になっていた。川にも金山杉で造られた屋根のついた舗橋も掛けられていた。


その橋を渡りきった所に、石材屋さんがあった。石の製品と一緒に、明らかに杉の丸太のように見える石があった。


傍には、それを輪切りして作ったテーブルがあった。年輪もしっかりと見える。化石なのだろうと思うが、この色といい形といい、面白いなと思った。

この金山町の町並みには、国内外の都市計画や建築家が注目し、来年あたりに開催されるUIAの大会に、ここを舞台にした見学やディスカッションが行われるそうだ。景観ではヨーロッパに遅れを取っている日本でも、このような取り組みがされていることが嬉しい。強制的に美観地区として作り替える町並みではなく、住民と官が一体になって、住むことに誇りを覚える町を作っている。町を歩いてみて、店に入って金山住宅の事を尋ねても、きちんとした答えが返ってくる事にも、羨ましさを覚えた。
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8 コメント

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豊かって・・・ (お幸)
2009-09-08 20:07:26
素晴らしい!

新庄は身近でしたが
真室川方面の金山町には
見向きもしませんでした
惜しいことをしました

会津の大内宿は
非日常的な感じですが
金山町は
より生活感があって素晴らしい


イザベラバードさんは
上巻で金山にいらっしゃったのですよね
素晴らしいですね (おぅんごぉる)
2009-09-08 23:03:28
素晴らしい。
こういう取組をなさっている方々がいらっしゃることを教えて下さったcakeさん、有難うございます。箱物や余計な道路に予算使いまくるよりこのような街造りに国をあげて取り組めば地域に活力が蘇って人に優しい社会が取り戻せるのにとつくづく感じます。
お幸さん (cake)
2009-09-09 14:20:33
金山町は、年々素晴らしくなってきています。
最初はほんの数軒から始まったのでした。
外壁に今どきのサイディングを張れば、もっと安く建物が建ちます。補助金の割に、金山型住宅にすると、個人の負担が増します。それでも町民の多くは、町を綺麗にしていきたいと思ったようです。

会津の大内宿も綺麗ですね。日本のあちこちに、半ば強制的に造った町並みが見られます。それはそれで綺麗に見えますが、金山町のように町民と町が一体になって、100年かけて町を変えていこう運動は、ちょっと例を見ないのではと思います。
もし、里帰りされた時には、ちょっと脚を運んで、金山を歩いてみてください。町役場の駐車場に車を止めて、そぞろ歩きをすると、この街角もあの街角も、優しく迎えてくれます。

イザベラバードさんが、金山を褒めていたのは、もしかして人間の真の豊かさが判ったからかも知れませんね。
おぅんごぉるさん (cake)
2009-09-09 14:27:39
日本でも、こんな取り組みをしている地域があったのですね。
私は町並みの写真が欲しくて出かけたのでした。数年前にだいぶ町並みが変わったのを見ていましたから、要所を決めて撮そうと思っていましたが、行ってみて驚きました。綺麗な町並みがどんどん広がっていて、何処を載せたら良いのか迷うほどでした。
これから私も何年生きるか判りませんが、100年生きたら、どんなに変わった金山を見ることが出来るでしょう。楽しみになりました。

人口の少ない町だから出来るんだよね。と云う考え方もあります。すると、政府が奨励している市町村合併は、こんな町を潰すことになります。
また、先祖伝来の土地を持ち、町中が知り合いで、お金持ちが多いからとの意見もあります。私には、心の豊かさが先にあるからだと思いました。

素敵な町でした。
Unknown (yukacan)
2009-09-09 22:21:43
きれいな街並みですねえ。いつもcakeさんが写される街の写真を見て思うのですが、日本はきれい!ゴミ一つない。
「住むことに誇りを覚える」、まさにそれですね。
この石屋さんの木のような石は、つまり木が化石になった石なの?
Unknown (Andi)
2009-09-10 02:43:18
おぉー蔵じゃ、蔵じゃ♪ 私は古いお蔵が大好きです。金山町がこんなにステキな町並みだとは知りませんでした。東北の金沢や倉敷という感じでしょうか。屋根のつた橋も味があっていいですね。ぜひ行ってみたいです。

日本からやってきたカレンダーには「今日はXXの日」というのがあって、ほとんど毎日何かの日になってます。今日は9月9日なので救急の日となっていました。おまけに2009年で9がみっつです。くっくっく・・・ 含み笑いの日、なんちゃって♪ おそまつ。
yukacanさん (cake)
2009-09-10 09:41:37
ゴミがない。本当ですね。
日本では当たり前のように感じていましたので、特に注意もしませんでした。皆さん、自分の家の前は掃除をするのが日課になっているんですね。
確かに、海外旅行先では、道路を歩くのも注意しないといけない所もあります。せっかくの宮殿を撮って来たのに、現像してみたら、そこまでの道路がゴミだらけだったこともありました。

石屋さんの石は、木の化石のようでした。どうしても杉に見えるのですが、化石になるほど昔から、杉は生えていたのでしょうか。
Andiさん (cake)
2009-09-10 09:47:23
2枚目の蔵は、役場の隣にありました。その大きさと造りがあまりに良かったので、失礼ながら写真を撮らせていただきました。
金山町は、蔵が多かったです。森林が殆どと言っても、平野もありますし、豪農と呼ばれる方も多かったのでしょう。どの蔵も見事でした。金沢や倉敷は、その地域だけを特別に指定して街づくりを行っています。金山は町全体を考えているので、そこが大きく違うかなと思っています。どちらも綺麗なのですが。そうそう秋田県の角館も綺麗ですね。

こんど、撮してきた蔵の写真も載せてみたいと思います。999、私は9月9日に限らず、いつもきゅうきゅうしています。

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