2003年制定の国立大学法人法により、名古屋大学、岐阜大学が統合をする。2004年に99の国立大学が89の法人に再編、設立されたが、さらに進めるのは、これはアンブレラ方式と呼ばれる。大学名は変わらないが、経営、運営など、その名称は、東海国立大学機構、仮称というそうだが、その主管を名大がもち、そこに岐阜大が参加する。東京大学、大阪大学に続いて、学生数23142人、3番目の規模になる。運営交付金で見ると、433億円で、東北、大坂に次ぐ6番目である。
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180323&ng=DGKKZO28474190T20C18A3MM8000
名大・岐阜大が法人統合協議 大学の本格再編促す 40年度、定員10万人過剰
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国立大学が再編へ一歩を踏み出した。名古屋大と岐阜大は近く、設置主体である国立大学法人(総合2面きょうのことば)の統合に向けた協議に入る。政府が検討中の新しい仕組みを使い、両大学が1つの法人の傘下に入る形を想定。実現すれば初のケースとなる。国内の大学全体では2040年度に学生約10万人分の入学定員が過剰になるとの試算もあり、政府は法整備などを進めて本格的な大学再編を促す。
名大、岐阜大は4月下旬をめどに法人統合に向けて協議会を設ける。利用する仕組みは「アンブレラ方式」と呼ばれ、同一法人の下に複数の国立大がぶら下がる。名大の構想では新法人「東海国立大学機構(仮称)」を設立し、傘下に両大学が入る。大学名や学部、学科に変更はなく、管理部門を統合する。
新法人の学生数は単純計算で計約2万3千人。現在の名大の約1万5千人から大幅に増え、京都大を抜き東京大、大阪大に次ぐ規模となり存在感は高まる。
名大は統合により経営を効率化。競争が激しい分野の研究などに手厚く投資できるとみている。渡辺芳人副学長は「国際競争を勝ち抜きたい。今後統合のメリット・デメリットを検証し色々なことを試したい」と語る。
規模のメリットを生かすための大学統合は国も後押ししている。17年4月の経済財政諮問会議で民間議員が「経営統合や再編が可能な枠組みを作るため、国立大の1大学1法人制の見直しを考えるべきだ」と提言したのをきっかけに議論がスタート。文部科学省の中央教育審議会がアンブレラ方式の具体化を検討している。18年秋に予定される答申を受け、同省は国立大学法人法の改正作業に着手する見通しだ。
名大・岐阜大の法人統合が実現し国立大の再編が進めば、大学定員の8割を占める私立大が大きな焦点になる。少子化にもかかわらず統合や募集停止などによる大学の減少は、この10年間で十数校どまり。一方で新設は続き、大学数は24校増え780校となった。「進学率が予想以上に上昇し、延命されてきたのが実態」と私学団体幹部。
だが経営は厳しい。私大の4割弱は定員割れで、16年度の最終的な収支が赤字の大学が4割を占める。「18歳人口が急減期に入る『2018年問題』が顕在化すれば今度こそ淘汰が進む」(同幹部)との見方は多い。
文科省は2月、将来の大学進学状況を初めて詳細に試算。今後進学率が上がっても、40年度の大学進学者は17年度に比べ2割減の51万人。入学定員が現状のままだと充足率は84%まで落ち、約10万人分、全大学の平均定員で換算すると120校超が過剰となる。
このため同省には再編へ国立大の背中を押すことで、私大の追随を促す思惑もある。「まず国立大が(再編例を)示さないと私大がついてこない」(ある文科官僚)。中教審では、国公私立という設置者の違いを超えた再編・統合を可能にする手立ても検討中だ。
国立大は00年代前半に地方の医科系の単科大学と総合大学の統合などが進んだが、総合大学同士の統合は近年例がない。名大、岐阜大の統合実現は04年の法人化以来の大きな変革となる。
統合に向けては教授会や地域社会の理解を得られるかといった課題も大きく、協議の行方には不透明さも残る。過去には群馬大と埼玉大の教育学部の統合など、頓挫したケースも複数ある。しかし、少子化による高等教育教育市場の縮小は不可避だ。多くの大学経営者が今後、生き残りに向けた決断を迫られることは間違いない。
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180323&ng=DGKKZO28472440T20C18A3EA2000
きょうのことば国立大学法人 人事など裁量権広く
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▽…国立大学の設置を目的とした法人。大学の自主性向上や行財政改革の一環として、2003年制定の国立大学法人法に基づき、2004年に99の国立大学が89の法人に再編、設立された。
▽…かつて国立大学は文部科学省の一地方支部局とされ、裁量権が乏しかった。法人化により国からの運営費交付金の使途、学科設置、教員人事まで幅広い裁量権が認められるようになった。文科省は法人化に伴い、各大学の学生数や教職員数などに応じて運営費交付金を配分している。各大学は6年ごとに作成される中期目標に沿って中期計画を定め、第三者がその達成状況を評価する。
▽…法人化しても国立大学の収入の約4割を占めるのが国からの交付金。文科省などによると法人化初年度の04年度に1兆2415億円あった交付金は財政改革のため減る傾向で、16年度は1兆945億円と04年度に比べて1470億円、11.8%減少した。国立大学側からは「若手研究者の安定雇用や施設の老朽化対策にも支障をきたしている」と交付金増額を求める声が上がっている。