うれしい これは言語主体が用い得る語である。楽しいというときと何が違うか。大辞林に、うれしいの項目で、>類義の語に「楽しい」があるが、「楽しい」は心が満ち足りて愉快な気分である意を表す。それに対して「嬉しい」は外的状況が自分にとって好ましい状態になって喜ばしい気分になる意を表す とすると、外的状況が条件のようである。また、日本国語大辞典は、>事柄の認知によって生じる感情であるので、受動的性質をもつ とするから、受動的性質という、それは外的状況からもたらされたものになるのだろう。語源には、うら すなわち、心を持つとする。いわば、心しい である。おとなしい、やさしい、うらやましい、それぞれ、しい は形容である。
嬉しい(読み)ウレシイ
デジタル大辞泉の解説
うれし・い【×嬉しい】
[形][文]うれ・し[シク]
1 物事が自分の望みどおりになって満足であり、喜ばしい。自分にとってよいことが起き、愉快で、楽しい。「努力が報われてとても―・い」「―・いことに明日は晴れるらしい」⇔悲しい。
2 相手から受けた行為に感謝しているさま。ありがたい。かたじけない。「あなたの心遣いが―・い」
3 (俗な言い方で)かわいい。にくめない。「何と―・い男じゃないか」
[派生]うれしがる[動ラ五]うれしげ[形動]うれしさ[名]
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
大辞林 第三版の解説
うれしい【嬉しい】
( 形 ) [文] シク うれ・し
① (望ましい事態が実現して)心がうきうきとして楽しい。心が晴れ晴れとして喜ばしい。 ⇔ 悲しい 「久しぶりに会えて-・い」 「優勝できて-・い」
② 満足して、相手に感謝する気持ちになるさま。ありがたい。かたじけない。 「お心づかい-・く存じます」 「(神が)なほ-・しと思ひたぶべきものたいまつりたべ/土左」 〔類義の語に「楽しい」があるが、「楽しい」は心が満ち足りて愉快な気分である意を表す。それに対して「嬉しい」は外的状況が自分にとって好ましい状態になって喜ばしい気分になる意を表す〕
[派生] -が・る ( 動ラ五[四] ) -げ ( 形動 ) -さ ( 名 )
日本国語大辞典
うれし・い 【嬉・快・歓】
解説・用例
〔形口〕うれし〔形シク〕
物事が、その人個人にとって、望ましい状況にある、満足される状態にあると感じたときに生じる感情で、思わず笑顔になるような、明るく晴れやかな快い気持をいう。喜ばしい。また、やや転じて、ある行為またはその行為をした人物に対する感謝、満足の気持を表わす。ありがたい。かたじけない。好ましい。悲しい。
*万葉集〔8C後〕一九・四二七三「天地(あめつち)と相栄えむと大宮を仕へまつれば貴く宇礼之伎(ウレシキ)〈巨勢奈弖麻呂〉」
*地蔵十輪経元慶七年点〔883〕一「今は快(ウレシク)善利を得つ」
*大和物語〔947〜957頃〕九八「『院の御消息のいとうれしく侍りて、かくいろゆるされて侍ること』などきこえ給ふ」
*枕草子〔10C終〕二七六・うれしきもの「物合(ものあはせ)、なにくれと挑(いど)むことに勝ちたる、いかでかうれしからざらん」
*高野本平家物語〔13C前〕一・祇王「かやうに穢土をいとひ浄土をねがはんと、ふかくおもひいれ給ふこそ、まことの大道心とはおぼえたれ。うれしかりける善知識かな」
*謡曲・春栄〔1435頃〕「ワキ おお嬉(うれ)しし嬉(うれ)ししまづ読まん」
*浮世草子・新色五巻書〔1698〕三・三「御心指(こころざし)のせつなる事身にあまりてうれしし」
*人情本・春色梅児誉美〔1832〜33〕四・二三齣下「おや御信切(ごしんせつ)に嬉(ウレ)しいねゑ」
*露団々〔1889〕〈幸田露伴〉二〇「しんぷる夫婦じゃくそん夫婦、彭知県等も嬉(ウレ)しき人々なり」
*京に着ける夕〔1907〕〈夏目漱石〉「寝心地は頗(すこぶ)る嬉しかったが〈略〉肩のあたりへ糺(ただす)の森の風がひやりひやりと吹いて来る」
語誌
(1)「うれたし」「うらむ」とともに語根「うら(心)」が考えられる。
(2)「うれしい」は、事柄の認知によって生じる感情であるので、受動的性質をもつものであるのに対して、類義の「たのしい」は、自己の行動を通じて生じる快の感情で、能動的性質をもつものであるといわれる。
(3)「うれしい」の感情は、その人自身にとってどう認知されたかという個人的なものであるのに対して、「たのしい」は行動を伴うこともあってある程度他人とも共通の理解を得られる面があり、一般性を持つといえる。