おと 音 を宛てる。
声 響 に、音の訓がある。
音の説明に、物理的な音響とその音の発生また発信源が捉えられて声と区別されるようである。
語誌などの解釈には注意がいる。
もと、声は、その字義においては鼓の音を表わしいたようで、音の字義にあるのは対比して、説文に、聲なり、心に生じ、外に節有る、之れを音と謂ふ、と見える。
音が声であるという。
さらには、字形について、言に從ひ、一を含む、という、一を節ある意とするものであろう、言は神に誓って祈ることばをいう、と言うように、字通は説明をしている。
日本語の、おと こえ ともに、漢字をあてると、音声に共通して意味があった。つまり、おと にも、声を指し、こえ にも音を指している。
日本国語大辞典
音
おと 【音・声・響】 〔名〕
(1)広義には、聴覚で感ずる感覚全般。狭義には、生物(有情物)の「こえ」以外の物理的音声。
(イ)水・風・波などの自然現象や、楫(かじ)などの無生(無情)物の発する音響。衝撃・摩擦によるひびき。楽器でも、古くは特に、鈴、鐘、鼓など打楽器類の音声に偏って使われる傾向がある。後には、生物の声以外の物理的音声全てをさす。
(ロ)鳥や鹿などの動物の声をさす。特に、遠方から聞こえてくるような場合に使われる。
(ハ)人間の声。特に、実際には発せられていない状況について、禁止や打消の表現を伴って使われることが多い。
(2)人の気配。
(3)評判。うわさ。風聞。「音に聞く」「音に聞こゆ」「音に立つ」
(5)返事。答。下に否定表現をとることが多い
【語誌】
(1)現代語の「おと」は無生物の発するもの、「こえ」は動物など生物が主に発声器官を使って発生させている(と聞き手がとらえた)ものを表わし、無情物対有情物の対義関係にあるが、古くは「こえ(こゑ)」は生物の声のほか、琴、琵琶、笛など弦・管楽器、また、鼓、鐘、鈴などの打楽器などの音響にも使われた。特に弦・管楽器については原則的に「こゑ」が使われ、「おと」が使われるのは特別な場合に限られた。このことから、「こゑ」は発生源そのものの性質と深く結び付いた独特の音声を指し、聞けばそのものと認識されるような音声に対して使われていたものと考えられる。それに対して「おと」は、古くは原則的に「物と物とがぶつかった時、あるいはこすれあった時に出る物理的な衝突音、摩擦音」を表わし、そのほか、耳ざわりだと感じられる大きな音声、かすかではっきりとは識別しがたい音声など、「こゑ」としては認識されないものの場合に使われている。
(2)類義語「こゑ」(聞き手を意識して出す)と「ね」(おさえきれず自然に出てしまう)とが、意図的か自然発生的かによって区別して使用されるのに対し、「おと」はその区別に中立であって、聞く人の感情移入がない。中古の和歌・和文では、「虫のね」「虫のこゑ」、「琴のね」「琴のこゑ」をはじめ感情移入表現が幅をきかしたが、「平家物語」の頃までに「ね」と「こゑ」の区別は稀薄になり、「ね」が「こゑ」に吸収される傾向が顕著となる。「こゑ」の用法も狭まり、表現も類型化し、替って音声(おんじょう)・高声(こうしょう)などの漢語が多用されるようになる。
【音】色葉・名義・和玉・文明・黒本・書言・ヘボン・言海
【声】色葉・名義
おっと 【音】〔名〕
「おと(音)」に同じ。
*史記抄〔1477〕一二・李斯「二世の験す時はさきの様に云たれば榜さうずと思てをっともせいでいたぞ」
*四河入海〔17C前〕九・三「我はをけなとりそとも云はずしてものぐさい程にをっともせいでいてとるを看るまでぞ」
*狂言記・柿山伏〔1660〕「やいそこな者、かきをくて恥かしくば、御めんなれといふて、おっとせでいね」
次は、字通による
〔名義抄〕音 オト・オトヅル・コヱ・カゲ・ワタル
〔名義抄〕聲 コヱ・キク・ナ・ラ(ヨ)シ・イラフ・アラハス・オト・ナラス・ノノシル
〔字鏡集〕聲 ノノシル・イラフ・アラハス・ナラス・ナル・ヨシ・オト・ツキタリ・ナ・コヱ・キク
声 響 に、音の訓がある。
音の説明に、物理的な音響とその音の発生また発信源が捉えられて声と区別されるようである。
語誌などの解釈には注意がいる。
もと、声は、その字義においては鼓の音を表わしいたようで、音の字義にあるのは対比して、説文に、聲なり、心に生じ、外に節有る、之れを音と謂ふ、と見える。
音が声であるという。
さらには、字形について、言に從ひ、一を含む、という、一を節ある意とするものであろう、言は神に誓って祈ることばをいう、と言うように、字通は説明をしている。
日本語の、おと こえ ともに、漢字をあてると、音声に共通して意味があった。つまり、おと にも、声を指し、こえ にも音を指している。
日本国語大辞典
音
おと 【音・声・響】 〔名〕
(1)広義には、聴覚で感ずる感覚全般。狭義には、生物(有情物)の「こえ」以外の物理的音声。
(イ)水・風・波などの自然現象や、楫(かじ)などの無生(無情)物の発する音響。衝撃・摩擦によるひびき。楽器でも、古くは特に、鈴、鐘、鼓など打楽器類の音声に偏って使われる傾向がある。後には、生物の声以外の物理的音声全てをさす。
(ロ)鳥や鹿などの動物の声をさす。特に、遠方から聞こえてくるような場合に使われる。
(ハ)人間の声。特に、実際には発せられていない状況について、禁止や打消の表現を伴って使われることが多い。
(2)人の気配。
(3)評判。うわさ。風聞。「音に聞く」「音に聞こゆ」「音に立つ」
(5)返事。答。下に否定表現をとることが多い
【語誌】
(1)現代語の「おと」は無生物の発するもの、「こえ」は動物など生物が主に発声器官を使って発生させている(と聞き手がとらえた)ものを表わし、無情物対有情物の対義関係にあるが、古くは「こえ(こゑ)」は生物の声のほか、琴、琵琶、笛など弦・管楽器、また、鼓、鐘、鈴などの打楽器などの音響にも使われた。特に弦・管楽器については原則的に「こゑ」が使われ、「おと」が使われるのは特別な場合に限られた。このことから、「こゑ」は発生源そのものの性質と深く結び付いた独特の音声を指し、聞けばそのものと認識されるような音声に対して使われていたものと考えられる。それに対して「おと」は、古くは原則的に「物と物とがぶつかった時、あるいはこすれあった時に出る物理的な衝突音、摩擦音」を表わし、そのほか、耳ざわりだと感じられる大きな音声、かすかではっきりとは識別しがたい音声など、「こゑ」としては認識されないものの場合に使われている。
(2)類義語「こゑ」(聞き手を意識して出す)と「ね」(おさえきれず自然に出てしまう)とが、意図的か自然発生的かによって区別して使用されるのに対し、「おと」はその区別に中立であって、聞く人の感情移入がない。中古の和歌・和文では、「虫のね」「虫のこゑ」、「琴のね」「琴のこゑ」をはじめ感情移入表現が幅をきかしたが、「平家物語」の頃までに「ね」と「こゑ」の区別は稀薄になり、「ね」が「こゑ」に吸収される傾向が顕著となる。「こゑ」の用法も狭まり、表現も類型化し、替って音声(おんじょう)・高声(こうしょう)などの漢語が多用されるようになる。
【音】色葉・名義・和玉・文明・黒本・書言・ヘボン・言海
【声】色葉・名義
おっと 【音】〔名〕
「おと(音)」に同じ。
*史記抄〔1477〕一二・李斯「二世の験す時はさきの様に云たれば榜さうずと思てをっともせいでいたぞ」
*四河入海〔17C前〕九・三「我はをけなとりそとも云はずしてものぐさい程にをっともせいでいてとるを看るまでぞ」
*狂言記・柿山伏〔1660〕「やいそこな者、かきをくて恥かしくば、御めんなれといふて、おっとせでいね」
次は、字通による
〔名義抄〕音 オト・オトヅル・コヱ・カゲ・ワタル
〔名義抄〕聲 コヱ・キク・ナ・ラ(ヨ)シ・イラフ・アラハス・オト・ナラス・ノノシル
〔字鏡集〕聲 ノノシル・イラフ・アラハス・ナラス・ナル・ヨシ・オト・ツキタリ・ナ・コヱ・キク