読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

泉鏡花のいろいろ

2011-12-20 09:37:25 | 読書
泉鏡花は食べることに恐怖感が有ったそうだ。豆腐の腐の字を嫌って豆府と書いていたそうだ。刺身は食べられず、シャコ、タコ、マグロ、イワシはゲテ魚として嫌ったと言う。大根下ろしさえ煮て食べたし、ばい菌恐怖症で旅にも行けなかった。
鏡花は若い頃から胃腸障害があったことも関係していることだろう。蝿も憎み「蝿を憎む記」なる文も書いている。

尾崎紅葉の門下に入った彼は紅葉の口述筆記を担当するが文字が分からず立ち往生した。鏡花の漢字にルビを振った独特の文章は、川端康成の「文章読本」に華麗な美文と褒められたが、それは文字を知らなかったことの反動として生まれたのである。

鏡花は幽霊の存在を信じていた。観音力を信じ、机の横には観音像が置かれていた。文字に文字霊が有ることも信じており原稿の中で訂正した文字には、墨で丁寧に塗りつぶした。原稿用紙の前には小さなお神酒徳利が供えられていた。

鏡花の代表作「女系図」は、すずとの同棲を師の紅葉に激しく叱責されたことへの反発で、鏡花の結婚はまだ早いと考えた紅葉が「俺を捨てるか、女を捨てるか」と激しく怒りを示した場面の再現であったと言う。「切れるの別れるのって、そんなことは芸者のときに・・・・」と言う有名な台詞は、そのときの鏡花の心境で、師の死後も、そのときの恨みを鏡花は忘れずに作品とした。


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