恥ずかしい歴史教科書を作らせない会

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将来「恥ずかしい歴史」にならぬように…

北朝鮮のミサイルと日米の温度差

2006年07月05日 | 外交・国際
■ 北朝鮮のミサイル発射

 7月5日早朝から、北朝鮮が複数回(これを書いている時点では6回)にわたり、ミサイルの発射を行ない、いずれもロシア沿岸の日本海上に落ちたことが報じられています。
 複数回、しかも異なる場所から発射されたということですから、当然「人工衛星」などではなく、ミサイルと見なければなりません。
 また、3回目に発射されたのが、長距離ミサイル「テポドン2号」の可能性があり、後は射程の短い「スカッド」タイプのミサイルだと報じられています。
 私は、この北朝鮮の愚かな行為に強く抗議したいと思います。

■ 「憂慮すべき事態」

 これに対し、日本政府は、朝7時半過ぎから安全保障会議を開き、その後の記者会見で「憂慮すべき事態」という認識を示し、米国と協議しながら、特定船舶の入港禁止などの制裁措置、国連安保理事会での協議を求めることなどを検討すると発表しました。
 この安全保障会議の前に、米国のシーファー大使とも外相・官房長官・防衛庁長官ら関係閣僚が会談していることから見ても、(米国の大使に「お伺い」を立ててから安全保障会議を開くというのも実に嘆かわしい話ですが)やはり「日米同盟」を軸に対処する構えを示しています。
 では、こうした日本政府の危機感に対し、米国はどのように受け止めているのでしょうか。

■ 「脅威ではない」と、花火見物を楽しむブッシュ大統領

 国家安全保障問題を担当するハドリー大統領補佐官は、この発射について「挑発行為」としながらも「差し迫った脅威ではない」と語りました。
 また米国のボルトン国連大使が、関係6カ国などの国連大使ら関係者を招集したところ、ホワイトハウスからは「時期尚早」と非難する声が上がっています。
 さらには、先週の小泉首相訪米の際、連携強化を確認したはずのブッシュ大統領は、ワシントンで行なわれる独立記念日の「花火大会」を予定通り見物に行くと伝えられています。
 この冷淡な反応に、日米の「温度差」を痛切に感じます。

■ 北朝鮮の相手とは

 さて、このミサイル発射について北朝鮮は、4日前に「米国が朝鮮半島で核戦争を起こす準備をしている」「北朝鮮は対応策として抑止力を強化する」とほのめかしていました。
 これはその2日前の日米首脳会談で、ブッシュ大統領が小泉首相とともに「ミサイル発射は受け入れられない。北朝鮮の指導者は意図を説明する義務がある」と発言したことに答えたものと考えられます。
 もちろん北朝鮮の愚かな言動には全く納得できませんが、彼らが警戒する相手が米国であるということだけは読み取れると思います。
 米国の独立記念日に発射が行なわれたことや、一発目の発射が米国のスペースシャトル打ち上げの時刻に合わせて行なわれていることからも、明らかに米国を意識したものと言えるでしょう。
 「悪の枢軸」と位置づけたイラク・イラン・北朝鮮の3ヵ国に対し、「先制攻撃論」を掲げた米国がイラクに対して何をしたか、イランに対して何をしようとしているかは誰もが知るところです。
 日本が、その米国と一層の連携や一体化を強化することは、むしろ逆効果ではないでしょうか。

■ 周辺諸国の動きと、日本の愚かな二人

 ところで、先月から騒がれているこの問題に関して、日本では他の近隣諸国の動きがあまり伝えられていません。
 韓国は6月20日、米国と北朝鮮の両国が直接対話によってミサイル問題の解決を促しましたが、米国がこれを拒否しました。
 ロシアも事態を憂慮し、22日には北朝鮮の大使を呼び出し「地域の安定を脅かし、朝鮮半島における核問題解決へのプロセスをこじらせる可能性のある行動は望ましくない」と北朝鮮に思いとどまらせるよう直接説得しています。
 27日には、中国と韓国が外相会談を開き、北朝鮮がミサイルを発射せずに6者協議に復帰できるような外交努力の必要性を説き、韓国が中国に北朝鮮を説得するよう要請し、中国側は協力を強化しミサイル発射回避のために努力することを約束しています。

 周辺諸国がこうした努力を続けている間、小泉首相は連携どころか、米国への「卒業旅行」に夢中でした。安倍官房長官は、民主党の訪中団について「米国とは同盟関係だが、中国とは違う。」と時宜をわきまえない揶揄で中国の反感を煽っています。
 日本の中枢である「官邸」の責任者2名がこのような有様なのですから、頭を抱えてしまいます。

■ 米国偏重ではなく周辺諸国との連携を

 いずれにせよ今回の発射により北朝鮮は一層孤立を深めました。これは自業自得としか言いようがありません。
 しかし日本も、「頼みの綱」であった米国の冷ややかな反応を見ても分かる通り、明らかに孤立を深めていることを認識する必要があります。
 あれほどまでに「いざというときは米国が守ってくれる」と「米国追従」を貫いてきた小泉外交が、いかに「的外れ」であったかは明白です。

 しかし今のところ、北朝鮮を除く日・米・韓・中・ロの政府は、それぞれが「北朝鮮を6者協議に引き戻す」という対応策で一致しています。
 この方針を堅持し、今後このような事態が起こらないよう、北朝鮮をしっかりと「対話」の枠組みに組み込んでいくことが最も重要であり、そのためにも、米国偏重ではなく、周辺諸国との連携が欠かせないということを強調したいと思います。