恥ずかしい歴史教科書を作らせない会

改憲で「戦争する国」、教基法改定で「戦争する人」づくりが進められる今の政治が
将来「恥ずかしい歴史」にならぬように…

権力者の「メディア戦略」と、私たちに求められる「監視の目」

2006年08月29日 | 国会・政党・選挙
■ 招集日の「サプライズ」

 先日、秋の臨時国会の招集日として、9月22日が有力だと報じられました。
 既に政務を放り出しながらも、税金を湯水のように使って国内外の「観光」に明け暮れる小泉首相が、安倍官房長官と連絡を取り合い、次期「安倍政権」の組閣の日程を考えて「助言」したということです。
 この日程の設定に私は驚きました。

■ 関係者の予測よりも10日早い召集

 自民党総裁選は9月20日に開票を行い、ここで正式に「安倍総裁」が誕生するわけです。
 通常であれば、その後、各政党・団体への挨拶まわりなどに数日間を費やします。その後、党内や連立相手と調整を行い、国会を召集します。
 小泉総裁の任期は9月30日までですが、総裁の任期が切れたからといって首相の任期が切れるわけではありませんので、国会関係者の多くは、10月2日頃の召集を予測していたようです。

■ 掻き消される野党のニュース

 これを早めたのには理由があります。実は9月下旬には、2つのことが予定されているのです。
 まず、9月25日にあるのは民主党大会です。小沢代表の再任、党役員やネクストキャビネットの人事があります。
 敢えてその前後に実際の首班指名・閣僚人事をぶつけることで、民主党のニュースなど掻き消してしまおうというわけです。

■ 掻き消される連立相手のニュース

 掻き消されるのは野党のニュースだけではありません。
 自民党と連立を組む公明党も、9月30日に党大会を予定しているのです。
 次の大会で公明党も「太田・北側」体制に替わる予定で、既に支持母体である創価学会の了承も取り付けています。
 しかし、この新体制のアピールも、「メディア独占戦略」によって掻き消されてしまうのです。
 長年の連立・信頼関係と言っても、所詮その程度しか顧みられることはないのです。
 もはや、安倍氏らの目には、連立のパートナーさえも映りません。だからこそ公明党にも相談せず、小泉氏と安倍氏の電話でのやり取りだけで国会の日程をも決めてしまうのです。

■ 他の存在感を失わせるメディア戦略

 このあまりに強引な日程は、小泉・安倍流のメディア戦略です。
 その狙いは、メディアと国民の目を、総裁選、国会、首班指名、安倍政権誕生、閣僚人事、所信表明というニュースを小出しに提供することによって、報道を「安倍」一色に染め上げて、他党の動きに関する報道を締め出し、その存在感を失わせようというものです。

■ 今年1月に行なわれた「逆戦略」

 そういえば安倍氏は、これとは全く逆に、自分の存在を隠すという戦略を選んだこともありました。
 今年1月の、「ライブドア事件」強制捜査がそれです。
 この日の翌日には、耐震強度偽装事件に関する「ヒューザー」社の小嶋社長の証人喚問が予定されていました。
 「ライブドア」報道一色になる中、その合間に僅かに報じられた小嶋氏の証言の中には、安倍氏の名前がありました。
 その間、次々に「ライブドア事件」に関して、警察情報が、数時間おきという異例の頻度で発表され、メディアはそれを忠実に「新たな容疑が浮上」と報じ続けました。
 強制捜査まで行いながら、次々に「新たな容疑が浮上」するということは、検察当局が、いかに証拠も固めずに「見切り発車」したかを示しています。
 その後、政治団体としての届出も収支報告も行っていない、安倍氏の「闇の政治資金団体」、「晋友会」の存在や、そこへの元ライブドア社幹部の青木氏(自殺)や小嶋氏の関与が取り沙汰されましたが、これもすぐに「ライブドア事件」に掻き消されていきました。
 これが功を奏し、安倍氏に対するまともな追及もなく、耐震強度偽装事件への安倍氏関与の疑惑は立ち消えになりました。

■ 「人気者の顔をした、本当に恐いもの」

 この日本では、権力者によるメディアのコントロールは、大して難しいことではありません。
 ただセンセーショナリズムを煽り、小出しにネタを流して報じさせ続ければ、世論も簡単に騙すことができます。
 これは、かつてのナチスの「プロパガンダ」や、旧日本軍の「大本営発表」と同じ手口です。

 5年前の「小泉ブーム」の真っ最中、「本当に怖いものは最初、人気者の顔をしてやって来る」というフレーズがありました。 そのCMが規制を受け、放映できなくなってしまったたことを、今さらながら思い出します。
 その後、日本人は「人気者の顔をした、本当に恐いもの」に一定の支持率を与え続けることによって、正規雇用を奪われ、低所得に貶められ、増税や負担増・給付削減に苦しんできました。
 また、国家総動員体制ともいうべき有事法制、米国の言いなりのテロ特措法、イラク特措法で、ついに「戦闘地域」にまで自衛隊が派遣されました。そのことによって、東京への「テロ予告」を2度も招き寄せましたし、ジャーナリスト・外交官などの日本人が命を落としました。

■ 権力者に「監視の目」を

 また「本当に怖いもの」が、強い権力を持った「人気者」になるために自らを演出して、君臨しようとしています。
 そして、彼は前任者よりさらに強い権力を持とうとしていることを、既に打ち出しています。

 私たちは再び同じ過ちを繰り返すわけにはいきません。
 メディアには、視聴者である国民の立場から、しっかりと権力を監視して頂きたいと思いますし、私たち国民も、権力やメディアに対し、しっかりと目を光らせなければならないと強く思います。

 彼らは、メディアが「報じる」という自由だけでなく、私たち一人一人が「生きる」という、最も当然の権利でさえ、「公益」という「政府の意向」の下に置こうとしているのですから。