ゴルゴ13総合研究所『俺の背後に立つな!』

ゴルゴ13の全ストーリーを解説

ゴルゴ13第136巻-1涙するイエス

2009-05-10 21:27:54 | 第136巻~第140巻

■涙するイエス(第449話) 発表2000年5月

評価   ★★★★★

依頼人
①不明
②不明
③ピーター・ロゼッティ ロゼッティ石油会長
④エリザベート・アベッツ ドレスデン国立美術館主席クストス

ターゲット
①KGB No2の男
②不明
③伊東 承英 大東亜製紙会長
④絵画”涙するイエス”の目

報酬
①不明
②不明
③$300,000(古い紙幣)
④不明

今回弾丸発射数       5/ 通算弾丸発射数 2,403

今回殺害人数      2/ 通算殺害人数   4,693

今回まぐわい回数     0/  通算まぐわい回数   111

<ストーリー>
ホテルの画廊にゴルゴの狙撃シーンを描写した絵画が!絵画コレクター達の欲望と執念が交錯する・・・

<この一言>
あの絵が”裏の世界”の人間に渡ったなら、俺への強力な脅威となり得る・・・

<もう一言>
ただし・・・こちらに一つ頼みがある・・・・それは、俺の仕事が完了してからの事でいい・・・あんたは、その頼みを聞いてから拒絶しても、なんの不利益もない・・・とにかく心に留めて置いてくれ。

<解説>
1990年5月、ニューヨークの高級ホテル”ザ・プラザ”の画廊にて4人が交錯する。
○エリザベート・アベッツ ドレスデン国立美術館主席クストス
○伊東 承英 大東亜製紙会長
○ピーター・ロゼッティ ロゼッティ石油会長
○ゴルゴ13
画廊には、ポーランドの修道士で画家でもあるデューンの”瞑想するイエス”が掲げられていた。また、”80年9月13日、ロシアにて。獲物を狙う猟師”という画題の油絵が掲げられていたが、その内容はゴルゴがM16を構えた狙撃の瞬間を描写したものであった。
日本はバブルの絶頂期にあったが、たまたまこの画廊を通りかかった『伊東 承英 大東亜製紙会長』は、画廊の絵をろくに吟味もせず、全て買い取ることを決めた。伊東に遅れ、画廊に到着した『ピーター・ロゼッティ ロゼッティ石油会長』は、探し求めていたデューンの”瞑想するイエス”の買い取りを申し出るも、伊東はこれを拒否する。デューン作の”涙するイエス”を所蔵するドレスデン国立美術館の『エリザベート・アベッツ主席クストス』も、”瞑想するイエス”に気をとめるが、それほどの価値はないと判断、素通りする。一方のゴルゴは、依頼人が見かけたというゴルゴの狙撃シーンを描いた作品を確認すべく画廊に到着するも、既に伊東が絵画を買い取った後であった。自身の狙撃シーンを描写した絵画が流出すれば、脅威になると考えたゴルゴは、ゆくゆく手を下さなければならないという思いを抱く。

9年の時が流れた1999年、事態が一変する。ロゼッティは末期癌に冒され、余命半年との診断を受ける。第二次世界大戦中、ユダヤ人であるロゼッティは、デューン修道士に匿われて命を救われた過去があった。デューン修道士の描いた絵画を揃えることが、自身の生きた証であり、デューン修道士への供養であると考えたオゼッティは、ゴルゴに伊東の殺害を依頼する。バブル崩壊後、大東亜製紙は過剰債務に悩まされ経営難に陥っていた。伊東が死亡すれば、銀行に担保として押さえられてた伊東の絵画コレクションが売りに出されるため、担保物件に含まれる”瞑想するイエス”を入手することができると考えての依頼であった。ゴルゴはこれを応諾、仕事完遂の暁に、なんらかの依頼をするかもしれない、との言葉を残し、ロゼッティの元を去る。伊東の死語、目論見通り”瞑想するイエス”を手に入れたロゼッティは、デューン・コレクションの最後の一枚”涙するイエス”を所蔵するドレスデン国立美術館のエリザベートを訪れる。ロゼッティはエリザベートに”涙するイエス”と伊東コレクションに含まれていたルノワールの”ムーラン・ド・ラ・ギャレット”の交換を申し出る。欲深いエリザベートは、より好条件での交換を望み、この申し出を拒否する。エリザベートの手の内を読んだロゼッティは、世界ユダヤ協会を訪れ、”涙するイエス”の持ち主はユダヤ人女性であり、ドレスデン国立美術は女性に”涙するイエス”を返還すべきである、との要請を行う。ユダヤ人協会は調査の上、真正の所有者はこの女性であることを認め、ドレスデン国立美術館に返還命令を出す。

ロゼッティの陰謀に立腹したエリザベートは、オークションでこの”涙するイエス”を取り戻すことを決意し、ゴルゴに接触する。ゴルゴへの依頼は、オークションの最中にガスレーザーで”涙するイエス”を照射し、イエス像から涙を流すことであった。エリザベートの目論見通り、混乱したオークションは中止となり、後日、ロゼッティとエリザベートは手打ちを行う。ロゼッティはゴッホ作”医師ガシェの肖像”と”涙するイエス”の交換を提案、美術資産価値では500倍以上もの価格差がある取引となった。ゴルゴはロゼッティの元を訪れ、”獲物を狙う猟師”を回収する。その”13日後”、ロゼッティは癌の為死亡する。が、ロゼッティの深謀は終わっていなかった。ドレスデン国立美術館に渡した”医師ガシェの肖像”の元々の所有者はユダヤ人であり、ドレスデン国立美術館は、またもユダヤ人に返還しなくてはならなかったのである。

絵画を題材にした作品であるが、ゴルゴの狙撃シーンを描写した絵画や、日本の美術品買い占めとその顛末、さらには絵画コレクター達の執念、ユダヤ人問題など、複合的に練られたストーリーが秀逸である。レーザーで照射するというギミックについては物足りなさを感じざるを得ないが、一方その手法で得られる絵画の変質でイエスが涙するという発想は痛快である。ゴルゴがKGB高官を狙撃したのが9月”13日”であったり、ロゼッティの死亡がゴルゴと再会してから”13日”後だったりと、ネタを仕込んでいるのもイイ。『大東亜製紙 伊東承英会長』のモデルは、もちろん『大昭和製紙 斉藤了英会長』。作中に登場する『医師ガシェの肖像』と『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』を高額で落札し、「俺が死んだらゴッホとルノアールの絵も一緒に荼毘に伏してくれ」と発言して世界中から非難された。ついこの間のことのようだが、20年近くも経つのか・・・。バブル崩壊と世界同時不況、失われた10年が、失われた20年になろうとしてる・・・。

ゴルゴ13 (136) 巻掲載
ゴルゴ13 (152) 巻(最新刊)
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