goo blog サービス終了のお知らせ 

魂のこもったモーツァルト・コンサート

2013-02-17 19:27:33 | 音楽の魅力

今日は、サントリーホールで行われた

仲道郁代さんのモーツァルトコンサートに

行ってきました。

演奏曲は全てモーツァルト作で、

何度も聴いてきた曲ばかりだったので、

気楽に楽しめ、

そしてとても感動しました。

演目は

ピアノソナタ11番

ピアノ協奏曲21番

ピアノ協奏曲20番 などです。

11番は、ご存知、第3楽章が

あの「トルコ行進曲」です。

そして、今回のきわめつけは、

仲道さん自身が、

2つの協奏曲(上記)で

ピアノ演奏をしながら

指揮までやってしまうという挑戦を

されたことです。

「今日は、オ-ケストラの方々の顔を

ひとりひとり見ながら指揮をしたいので、

ピアノのふたを外してあります。

今日のピアノは、みもふたも

ないんです(笑)」と

冗談を言っておられました。

幸い、今回は、オケの団員の背中側

の2階席だたっため、

ピアノのふたが外れた状態と

仲道さんの指揮者ぶりを上から

しっかり観ることができましたし、

それに音響のいい音が

よく通る席でした。

まぁ、それはいいとして、

今回の演奏は、仲道さんの

エネルギッシュな指揮ぶりに

感動してしまいました。

指揮をしながらですと、

ピアノ演奏に移る際の

間がとても難しいと思う

のですが、彼女は、

それをてきぱきとこなし、

なんら違和感を覚えません

でした。

そんな懸命な指揮・演奏の姿と、

その熱い思いが乗り移った

ように、オケの演奏も

気が入っていて、

とても心地よかったです。

「指揮なんかは、もっと

おばあちゃんになってから

でもいいかな」と本人は

おっしゃっていましたが、

何の何の、見事な

指揮ぶりでした。

新しいことにチャレンジして、

それを見事にやり抜く

姿勢に私を含めて聴衆は、

間違いなく、心を

打たれていました。

その証拠にアンコール曲が

終わっても、拍手は

鳴り止まなかったですから。

それと、演奏後、団員ひとり

ひとりに敬意を払い、立って

もらって聴衆に拍手を促す

気配りにも感激です。

今回は、震災のあった神戸の

神戸市室内合奏団でしたが、

苦しくも2年前の震災の後、

チャリティコンサートで

「被災者のことを考えたら、

1音たりともムダにできませんね」

と仲道さんがおっしゃっていましたが、

今日の演奏を聴き、その言葉が

真意なんだなということを

実感できました。

彼女の人間としても器の大きさを

随所に垣間見ることのできた

演奏会でした。

生演奏の素晴らしさを体験

できた日でした。


AKB48の”リバー”で考えた事

2013-02-13 20:20:16 | 音楽の魅力

昨日の訃報以来、心が動転し、

ややハイテンションになっているのですが、

心を鎮めたり、また、元気になるために

いろいろな音楽を聴きまくっています。

その中で、今、社会現象となっている

AKB48の”リバー”という曲が、

心に刺さりました。

この曲を聴いてから中年おじさんが

AKBのファンになったという声も

ちらほら聞かれますが、実際に

聴きますと、メッセージ性の強い

曲なんですね。

川を渡れ!流されてもいいから

しがみつくんだ!何にしがみつくの?

と一瞬考えてしまいましたが、

そんなことはどうでもいいみたいで、

とにかくチャレンジしろということ

らしいです。

必ず、向こう岸はあり、どんなに

くじけそうになってもたどりつける

から。

こういうメッセージは、昔の

根性物語を彷彿させるものがあり、

MV(ミュージックビデオ)を観たときは、

自衛隊の制服をまとったメンバーたちが、

川を渡ったり、岩を登ったりする

場面があり、どこでどういう風に

撮影したんだろうか、と思いを

めぐらせてしまいました。

普通ならすごく時間がかかったん

だろうなぁ、と想像できるのですが、

あのグループは斬新な撮影も

時間を決めて、てきぱきと

やってたんでしょうね!?

でも、後で秋元さんのダメだしが

あったのかどうか・・・・・。

女の子にあそこまでやらせるのか

という凄さ、奇抜さ、チャレンジ精神が

感じられる映像でしたが、

まさにこれこそ”リバー”の歌詞に

みあった秋元イズム、創造

なんでしょう。

このダイナミズムに思わず、

元気をいただきました。

つきなみなメッセージだけなら

いざしらず、歌と踊りと

映像の3点セットは新鮮さが

バツグンです。

やるなぁ、AKB、やりますね、

秋元総督という感があります。

芸術、エンターテイメント、創造は

先にやったもん勝ちみたいな

ところがあり、他はどこも

やっていないから進化系と

いえるんじゃないでしょうか。

でも、AKBは今からも

進化していくんでしょうね。

だから、元気をもらえるんだ

と思います。


くるみ割り人形より花のワルツ .by チャイコフスキー

2013-02-11 08:35:06 | 音楽の魅力

ロシアの作曲家は、伝統文化として

バレエ音楽を

作ることが多いのですが、

中でも、花のワルツは優雅そのものです。

初めてこの曲を聴いた際、

”何てエレガントなんだろう”と

感動してしまいました。

昨夜、4大陸選手権で勝った浅田選手の

ように、氷上の澄み切った冷気の中、

シャープにエレガントに舞っている姿が

思い浮かぶ曲です。

ワルツですから、氷上のペアダンス・・・

円舞を優雅に踊る男女の映像が

ぴったりかもしれません。

身が引き締まるような冷気の中、

音の途切れないソフトで優雅な

メロディ・・・・・・この絶妙な

組み合わせを感じます。

まさに音の芸術ですね。

有名な曲なので、寒い2月に

部屋の中で聴いて豊かな気分に

浸るにはいいかもしれません。

余談ですが、最近、

ロシアクラシックバレエ界の

プリンスが硫酸を顔にかけられ、

大怪我をした事件があったそうです。

1部報道には、同僚などの嫉妬心

からではないかと記されて

いるようですが、優雅さの中の

悲劇です。女優ナタリー・ポートマンが

主演した映画『ブラックスワン』にも、

バレエ界の裏側があぶりだされて

いましたが、哀しいですね。

でも、表舞台の優雅さ・・・・・・・・

これからも、見せ続けて下さい。

そして、「ジス イズ エレガント」と

呼びたい花のワルツを作曲した

チャイコフスキーに感謝です。

 


モーツァルト ヴァイオリン、ヴィオラ、管弦楽のための協奏曲

2013-02-01 19:09:06 | 音楽の魅力

久しぶりにモーツァルトの哀愁たっぷり漂う

曲に浸りたくなりました。

その代表選手は、

『ヴァイオリン、ヴィオラと管弦楽のための協奏曲』

です。この第2楽章が好きです。

それは、俳優に例えれば、主役がヴァイオリン、

脇役がヴィオラというような配役で、

2つのハーモニーが見事だからです。

ヴァイオリンの音色は確かに高音で

美しいのですが、それをより一層

引き立ててくれるのは、ヴィオラが

バックで支えているためでしょう。

モーツァルトは、ヴィオラという少し

低音の弦楽器を大事にしていた

といいます。ヴィオラあっての

ヴァイオリン。まさに名わき役

ここにあり!という雰囲気ですね。

ヴァイオリンのか細い音を下から

重低音でぐっと支えてくれるのが、

ヴィオラです。

時には、ヴィオラがヴァイオリンの

音が途切れた小節で、主役に

一瞬成り代わる場面もありますが、

・・・・・・そして、時には同じ旋律を

時間差で遅れて奏でるヴィオラ。

ここには、2つの美しい艶っぽい

音色の融合にうっとり

してしまいます。

主役を食ってると思えるヴィオラ

の場面も時折でますが、自重

するのがヴィオラの良さです。

そして、この2つの弦楽器に

華を添えるのが、オーボエ、ファゴット

などの管楽器群です。

素晴らしい構成で

ハーモニーを楽しめます。


学友のバッハコンサート

2013-01-28 19:26:59 | 音楽の魅力

昨日、学生時代の部活仲間のコンサートに

行ってきました。

遠路はるばる静岡の磐田(Jリーグチーム

のある所)から東京でコンサートをやると

いうので、興味津々で聴きに行きました。

合唱曲なのですが、あのバッハの

『マタイ受難曲』が演目でした。

なんというか、アマチュアの合唱団が

取り上げるには、とっても難度の高い

音楽ですし、東京まで来て行う

というには、並々ならぬ団員の方々の

思いがあったと予想できました。

合唱団は、磐田バッハ合唱団といい、

静岡でバッハの曲を主に行う

混声合唱団です。

とまぁ、難攻不落のマタイ受難曲です。

おそらくキリスト教の信仰のある方は、

別にして、一般の日本人には、

この曲を本当に心と頭で理解するのは

難しいと思います。キリスト教が

先祖来、ベースにある家庭の欧米人なら

割とすっと入っていけるでしょうが、

 

日本人には理解が大変、ましてや、

これを合唱やソロの歌で表現すると

なると、かなりの難行ではなかった

のではないでしょうか?

学友にはコンサート後、

会えなかったせいもあり、どれくらいの

練習を積んだのか聞けませんでしたが、

おそらくこのコンサートのために1年くらい

練習を入念に積んできたと感じました。

それくらい体力と表現力、そして歌唱力の

必要な音楽です。

オペラと変わらないと思いました。

神の福音、イエス・キリストの声、弟子の

声など、1番から68番まで

たて続けに、ソロのパートがひしめいて

います。イエス・キリストが十字架に

かけられる場面の前後、福音や

キリストの思いを聖書のストーリーに

そって表現する。

大変な作業です。それを全て

ドイツ語で歌うのです。

こういっては何ですが、アマチュア合唱団で

この音楽を表現しきるのは、

かなり荷の重いチャレンジだったと思います。

でも、オケと一体になった合唱は

素晴らしかったです。温もりを

感じました。少人数とは思えない

声の響き。洗練されていました。

テナー、ベース、ソプラノ、アルトの

各パートのソリストの方々も

アマチュアとは思えないほど、

力量のある方ばかりでした。

でも、大変な舞台だったと思います。

あの有名なヴァイオリンソロの

切ない旋律が奏でられたときは、

ほっと安心できましたが、

他は、全員の必死さが伝わって

きて、チャレンジ精神に

共感できました。

また、同じ曲を数年後、トライ

してもらいたいと思いました。

もっともっと進化させた演奏を

聴いてみたいです。

それくらい奥が深遠な音楽だと

感じました!


マイリトルラバーとAKB48

2013-01-23 19:48:02 | 音楽の魅力

ここでタイトルにある2つの

音楽グループを比較するつもりは

毛頭ありません。

それよりも、2つのグループの

次に綴る1曲づつが、生き方のヒントに

なるし、2つは融合できると

感じたので、ここに記します。

その曲とは、マイリトルラバー(以下MLL)

の方が『Hello again ~昔いた場所』。

そしてAKBは『ビギナー』です。

MLLは、90年代にブレークしたグループ

ですが、ボーカルのあっこさんは、

大人の女性が醸し出す落ち着きを

ふんだんに曲に香らせて

しっとりと聞かせてくれました。

この『Hello again』は、何かに

挑戦しても、また昔いた居心地のいい

場所に戻ってこれるという

過去の遺産を大事にした曲です。

人間誰しも、過去の遺産、財産を持って

いるのではないでしょうか。

その遺産を大事に秘めて抱えて

おくことは、素晴らしいことだと思います。

片や、AKBの『ビギナー』は、歌詞が

すごく過激です。

過去の経験や知識は、邪魔になるだけ

だから、捨ててしまえ! というような

新しい自分を創造する内容です。

大人びたAKBの曲を聴いた印象が

強烈に残りましたが、これも一理ある

と信じています。

AKBの組織そのものが、破壊と創造を

常に繰り返しているようで、メンバー間の

競争もかなり激しいと思います。

プロデューサー、秋元さんの手腕で

ここまでビッグになったのも、

組織やメンバー個人が

進化しているからなのでしょう。

思えば、組織自体は、スポーツの世界と

同じように数字が実績として

出てきます。総選挙での順位づけ。

たかが人気投票だとは思いません。

ファンも、ひとりひとりのダンスパフォーマンス、

歌唱力、セクシー度(可憐さも含む)、表情、

言葉使い、態度、体力など、真剣に見て

チェックしているのでは?年毎に投票で、

鞍替えしている人もいるはず。

そんな激しい競争の渦中では、

自分を常に磨き進化していかないと、

生き残れない

厳しさがあると思うのです。

秋元さんは、この『ビギナー』の歌詞を

創った時、そんな彼女たちの進化を

期待したのではないでしょうか。

”行く川の流れは絶えずして・・・・”なんて

いうくだりが、古典の徒然草にありますが、

川の水も滞ると、よどみます。血液も

ドロドロになれば、体の機能不全を

起こします。いつもサラサラと流れ続けて

いなければ、そこで後退です。

変化、進化を続けること・・・・・大変な努力と

苦労がかかりますが、これは人生も同じ

ではないでしょうか?

安定は、安泰なのでしょうか?実は、

後退だと思います。

何十年も愚直に同じことをやっている

職人さんだって、手先ややり方に工夫を

加え、進化させているはずです。

ここで、また話をMLLに戻し、『Hello again』

へ。この曲は、チャレンジして失敗しても、

また必ず戻れるところがある・・・・という

風にも解釈できます。これは、基本を

身につけていれば、失敗しても、

また基本に立ち返り、再起できる・・・

そんな風にもとらえられると感じました。

ここで2つの曲の解釈を融合すれば、

過去に自分が培ってきたもの、

遺産は大事にし、その上で、過去(前例など

含む)にとらわれることなく、いや、過去を

白紙にして新たなことにチャレンジ

することを進めている。そうすることが、

生きている証、人生の醍醐味だ!という

メッセージととらえました。

無理やりの融合ですが、過去、現在、

未来をつなぐプランのヒントに

なりました。

有名な『うさぎとカメ』の話がありますが、

カメはのろまでも、歩みを止めません

でした。だから、ゆっくりした動作でも

うさぎを途中で抜くことができたのです。

でも、うさぎだって、途中で油断して

休まなければ、のろまなカメに

追い越されることはなかったはずです。

こうやって考えたら、止まったら(滞ったら)

後退、変化し動き続ければ進化・・・・・

ということにならないでしょうか。

ただし、動き続ける時に何かに挑戦

するわけですが、ここに無謀という

言葉が入る余地があります。自分の

尺度で考え抜き慎重に判断し、

無謀でないチャレンジが

必要だと思いますが。

とにかく自分の頭で考え抜き、

行動することが大事だと思いました。

2つの曲から、こんなことを

考えさせられたのです。

 

大事

 

 


美しすぎるラフマニノフ『交響曲2番第3楽章』

2013-01-10 20:06:39 | 音楽の魅力

世に美しいメロディの音楽は多々

ありますが、これほど清新な

美しい音楽は、あまりない

と感じています。

それはロシアの偉大なる

作曲家ラフマニノフが作った

『交響曲2番』です。

この第3楽章は圧巻です。

美しい音楽というのは、

ムダがそぎ落とされ、

シンプルで静かなもの

に熟成していくのでしょう!?

目が覚めるような鮮烈な

冷気の中、穏やかな自然に

溶け込むように、ゆったりと

時間が流れていく情景が

目に浮かんでくるようです。

ラフマニノフ自身、自室に

こもり、病んだ精神が

生まれ変わるのを感じた

のかもしれません。

途中から出てくるクラリネットソロが

新たな出発を象徴している

気がしてなりません。

この情景は、繰り返しますが、

シンプルで静かなものです。

ちょっと大胆ですが、有名な

絵画に例えてみたくなりました。

それは、あの東山魁夷画伯の

『道』という絵です。

あまりにも有名な絵ですが、

この絵を初めて見た時も、

シンプルで静かな情景なる

空気感を感じました。

中央に1本の道、その両わきには、

草地。そして道の地平線の

奥には、空。この3つだけしか

描かれていません。空色、草の

緑、道のグレイ。この3色は、

いずれも淡いトーンです。

作者自身、こんなにそぎ落とした

風景画でいいのだろうか?と

書きながら不安を覚えたといいます。

確かに寂しい感じはしますが、

それだけシンプルなため、

美しさが際立ちます。

真の芸術は、このように

シンプルで静かなもの

になっていくのでは、と

思えてしまいます。

この音楽と絵画の共通点を

感じるにつけ、

洗練された粋に

思いをはせてしまいます。

 


鳥肌が立ちました! ラデッキー聴き比べ

2013-01-04 19:38:55 | 音楽の魅力

今年のウィーンフィルの

ニューイヤーコンサートも

盛況に終わりましたけれど、

毎年アンコールでお決まりの曲、

ヨハン・シュトラウス父が作った

『ラデッキー行進曲』の表現にも

指揮者によって色が出ます。

ここ10年間で私が独断と偏見で

選んだベスト3を紹介いたします。

先ず第3位は

2012年(昨年)のマリス・ヤンソンスが

指揮したラデッキーです。

彼は、サービス精神が豊富で、

アンコールということもあり、

音の強弱を相当つけながら

盛り上げていました。聴衆の方を向き、

表情豊かに何かを訴えかけるような

仕草が印象的でした。

音の強弱、メリハリが特徴だと

感じたのですが、テンポは不変な

感じ。これが彼のラデッキーでした。

第2位は、2007年に指揮した

ズーヴィン・メータ。小澤征二さんと

並んで、ウィーンフィルを指揮した

アジア人(インドの方)です。

当ブログでも紹介したことがありますが、

とてもヒューマンな方で、東日本大震災

の直後も来日し、エールを投げかけ、

見事な演奏を披露してくれたマエストロ。

彼の2007年のラデッキーはとにかく

彼のキャラが反映され、明るさ1色

でした。イントロの太鼓、ファンファーレの

金管楽器は、艶のある明るい音で

奏でられ、楽しい気分を堪能できました。

ヤンソンスと少し違うのは、1音1音に

しっかりとした芯があり、強い音だという

印象を持ちました。明るくて強い

演奏だったように感じました。

そしてそして、第1位は、1昨年の

2011年、フランツ・ウェルダーメストが

指揮したラデッキーです。彼を最初に

見た時は、とても冷静沈着な人だと

感じていたのですが、このラデッキーの

演奏は素晴らしかったです。

それまでの演奏の余韻も手伝い、

聴衆が盛り上がる中、太鼓の音。

そして金管楽器などで主旋律が

始まりましたが、音をデクレッシェンド

(徐々に小さくする)のところで、

音を消え入りそうになるまで

極限まで小さくし、

そしてフォルテの音をバーンと

出す。このフォルテはズービン・メータ

ほど大きくはないのですが、

そこに行き着くまでの音が

蚊が泣くくらい小さくなっていたもの

ですから、メリハリが利き、

フォルテの音が生き生きしたのです。

これには、拍手していた聴衆も

一段と乗ってしまいます。

右手を斜め上方に突き上げた

彼らしくない派手な動作を聴衆に

見せた瞬間、もう決まり!と

感じてしまいました。冷静なる

演出なのでしょうか?

オケの団員も幸せそうに

演奏していました。

これが、ウィーンフィルらしい

演奏なのでしょうか?

音のつながりで、優美に

奏でていく。

圧巻でした。

演奏が終わった瞬間、

私は、めったにないのですが、

鳥肌が立ちました。

それくらいマエストロと団員、

聴衆を1つにしてしまったのです。

こういう演奏でこそ『ブラボー!』と

叫ぶべきなのでしょうね。

今年も彼は指揮しましたが、ラデッキー

に関しては、2年前のがベストだと

感じています。

会場全体が音の波の中で

躍動した!という余韻が

残りました。

こんな演奏をまた聴いて

みたいものです。

 


2013年 ウィーンフィル ニューイヤーコンサート 

2013-01-02 08:41:25 | 音楽の魅力

新年明けましておめでとうございました。

2013年のスタートですが、

元旦に必ず観るのが、

サッカー天皇杯決勝と、

ウィーンフィルのニューイヤーコンサートです。

どちらも生放送なので、わくわく感がたっぷり。

今年のウィーンフィルのコンサートを

指揮したのは、オーストリア人の

ウェルダーメストさん。

彼は2年前にも指揮をし、当ブログで

感想を書きましたが、今年の演目は

ちょっと工夫が凝らしてあり面白かったです。

それは、スッペ作の喜歌劇『軽騎兵』の序曲を

入れたこと、それと、今年生誕200年を

迎えるヴェルディとワーグナーの

オペラ曲を組み入れたことです。

『軽騎兵』は、騎兵隊が出動する様が

金管楽器のファンファーレに乗って

実に臨場感たっぷりに表現されている

のが印象的でした。

また、ふたりの巨匠のオペラも聞き応えが

ありました。

それから2年前にも感じたことでしたが、

ウェルダーメストとウィーンフィルの関係が

すごくいいのが分かりました。

お互いを尊重し合い、意図が分かり合って

いるのを、ひしひしと感じます。

極端な言い方をすると、曲の始めと

終わりだけ彼がタクトを振れば、

あとは、何もしなくても演奏が完結

してしまう・・・・・・そんな雰囲気なのです。

ですから、彼の指揮は非常にシンプル。

過剰な動きを意図的に抑えているかどうかは

分かりませんが、クールな笑顔を終始

保ちながら、イーブンペースな余裕の

ある指揮ぶりでした。

おそらくオケの団員の方も、気持ちよく

演奏できるのでしょう。

コミュニケーションがとれていて、

何も言わなくてももう分かり合っている

という風でした。日本風に表現すれば、

以心伝心というところでしょうか。

過去に地元のオーストリア人で

このコンサートで指揮した名マエストロと

いえば、カラヤンくらいでしょうか。

それくらい地元出身の指揮者がいなかった

ことも影響しているのかもしれません。

ウィーンフィルと言えば、彼ら独自の

演奏方法があるといいます。

専門的な技巧は分かりませんが、

ベルリンフィルが勇猛で強く表現する

オケだとしたら、ウィーンフィルは

優雅で音の連続性を大切にする?

こんなドイツとオーストリア的な

差が微妙な場面でにじみ出てくる

のでしょうか?

哀しいかな、このウィーンフィル的

演奏は、異国人にとっては

なかなか分かりづらいし、体の中に

しみ込んでいないのかもしれません。

そんな事情で、ウェルダーメストと

ウィーンフィルの関係は絶妙なのかも

しれませんね。

彼が、途中のエンターテイメントを

披露する場面で、団員の10人くらいに

言葉なし、身振りだけ加えながら

ぬいぐるみなどを手渡ししていくところが

あったのですが、見ていて確かに

面白いのですが、コントラバス奏者に

像のぬいぐるみを渡す、・・・・・など、

それぞれに中身には意味があったと

思います。その洒落をひとつひとつ

理解して笑うには、まだまだ修行が

足りないのを感じました。

ウィーン的?オーストリア的?文化も

垣間見えたと感じます。

ぬいぐるみを渡すシーンなど、欧州の

パントマイム文化そのものでは?と

感じられたくらいですから。

 


改めてモーツァルトの才能。ピアノソナタ13番より

2012-11-01 20:24:05 | 音楽の魅力

モーツァルトの生涯は、わずか30数年でしたが、

ケッヘルナンバーで数えると、実に

600曲以上もの曲を作っています。

ピアノソナタ、ピアノ協奏曲、

ヴァイオリン協奏曲、弦楽四重奏曲、

ヴァイオリンソナタ、オペラ、シンフォニーなどなど

楽曲の種類だけでも豊富です。

これだけの音楽を整理編集して

語るのは難しいことですが、

難しいがゆえに、彼が没後、約150年して

でてきた音楽界のスーパースター、

ビートルズになぞらえて、感じたことを

語ろうと思います。

ビートルズも200曲以上のビルボード

ヒット曲をとばしていますが、

彼らの時代を前期、中期、終盤期に

分けると、曲想がかなり変化してきたのが

わかります。

前期は、まさにロックポップスで、のりのりの

名曲が目白押しです。誰もが踊って

ノッて楽しめる感覚です。

でも、中期になると、オケを入れたり、

コーラスを入れたり、特殊な機械音を入れたり、

曲作りが凝ってきていました。

アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』なんかは、

その代表でしょう。

何を言いたいかと言いますと、モーツァルトも

前期から中期(ケッヘルでいうと、350番くらいまで)

には、天才的なひらめきを遺憾なく発揮して

曲作りをしているのが分かります。

音が閃いたら、その瞬間作為的な技巧もほぼ同時に

思いつき、その融合がそのまま曲になってしまって

いる。そんな感じがして、これが天才なんだと

感じました。

中期の名作、ピアノソナタ13番(ケッヘルでいうと

333番。あのトルコ行進曲も付いています)なんかは、

その閃きで作られた典型ではないでしょうか?

音が湯水のように浮かんできて、直しは

技巧を加えて瞬間的にアレンジしたくらいで、

そのまま五線紙に清書したように思えます。

『軽快な』ピアノの調べ。

これは、モーツァルト独特の感性で、

陽気さを感じます。おそらく彼の

人間性がにじみ出ているのだと思います。

トレモロ、シンコペーションのような技巧を

多用して音を転がして楽しむ。

まさに、モーツァルトの真骨頂では?

でも『軽快』だからといって、決して

軽薄な音楽ではありません。

軽薄どころか、深みがあります。

軽快で深みのある音楽・・・・・このあい矛盾した

音を曲として成立させる術こそ、

モーツァルトが天才たるゆえんでしょう。

彼の中期までは、そんな感じで曲が

すいすい出来上がったのでしょう。

しかし、終盤期になりますと、これが

老練というか、人生や自分への深い

思いが入ってきて、作曲にも

時間を要したのではないかと思える

曲が多々あります。

例えば、

クラリネット五重奏曲や交響曲40番

そしてレクイエムなどは、その典型例

だと思います。

もちろん、前期や中期に多用した

小気味いいリズムと音を伸ばしながら

作るメロディの融合も終盤期にも

見られます。交響曲40番がそうです。

ですが、1回音を作り、自省や人生への

洞察、自分の命などに深く思いを描く

ようになっているはずです。

それだけ自分のこの世での終末を

体の状態を感じながら、

予感していたのではないでしょうか?

自分の体の変化や人生経験の積み重ね

によって、曲想が変わるのは、

ビートルズ同様、モーツァルトも

同じだったことを考えてしまうのです。

それだけ終盤期の音楽は、自分の技巧の

集大成と思想が反映し、

多層的に深みが増しているように

感じます。

ビートルズの「レット・イット・ビー」

「イマジン」なども聴き合わせますと、

そんな感想が強まってくるのを感じます。

 


モーツァルト ホルン協奏曲第1番

2012-09-17 11:41:01 | 音楽の魅力

夏の暑さが徐々に収まりつつ

あります。

残り蝉の死骸もちらほら見られますが、

涼感を呼ぶ曲を今聴いています。

それは、モーツァルトが作曲した

『ホルン協奏曲1番』です。

なかなか主役を張る出番のないホルン

ですが、この曲では、

モーツァルトのいきなはからい(?)で

堂々たる主役です。

ホルンの奏でる主旋律は、伸びやかで

穏やかで、聞いていると癒されます。

まるで、モーツァルトの故郷、ザルツブルク

の街を見渡す壮大なアルプス山脈の

ふもとで演奏されているような

臨場感も持てます。

この明るい長調のホルンの音色は、

牧草地に響き渡るような

解放感がありますし、この音を

聞いたら、牛たちも

良質なミルクを出してくれる

のでは? と錯覚してしまいそうです。

それくらいハッピーな曲です。

牧歌的というと紋切り型の表現ですが、

田舎の雄大な自然に包まれた

のんびりした情景が思い浮かびます。

もちろん、そんなハッピーな気分に

なれるのも、ホルン奏者の

技量が伴ってこその話です。

ホルンの雄大で明るい主旋律の

後に、ヴァイオリン群が同じ

主旋律を奏でる場面がありますが、

これが何とも可愛げがあり

好感が持てます。

まるで、親の牛の後を追いかける

ように、小牛たちが歌声を必死で

披露しているように感じるからです。

ほのぼのとしたクラシック音楽に

乾杯! です。


ショパン 幻想即興曲 by仲道郁代

2012-09-14 19:41:24 | 音楽の魅力

ショパンの有名な『幻想即興曲』は、

ロマンチックですが哀しくもあり、

めまぐるしく変わる人生の

有為転変を表現している

ようなピアノ曲です。

この曲の

名ピアニストの演奏の中でも、

私が感動したのは、

日本人の仲道郁代さんの

演奏です。

まるで彼女の指が

この曲に乗り移っているかの

ように堂に入っています。

このピアノ曲の出足の1音は

強くて伸ばして余韻を持たせる

のですが、その後は、

全音が、つながっていきます。

あたかも、全ての音は、次の

1音と連動して

また、全ての音は、前の1音

からバトンリレーして、

よどみなくつながっていきます。

別な言葉で表現すると、

強弱も緩急もアクセントを

つけるように急に訪れる

のではなく、「段々強く」

「段々弱く」「段々ゆっくりに」

「段々速く」という具合に、

前の音のテンポや強さを

全て受け継ぐ形で

リレーする音の連鎖と

とらえたら分かりやすいと

思います。

そのような即興の曲を

演じて体現しているのが、

まさに仲道郁代さんだと

感じています。

彼女の演奏は、この曲の

雰囲気や技巧的な速さや

強弱のつけ方の表現に

おいて秀逸です。

文句なし・・・・とはこのような

演奏をいうのではないでしょうか?

そういえば、昨年の東日本大震災の

チャリティコンサートで

「被災された方の気持ちを考えたら、

1音1音もムダにできない気持ちで

一杯です。私は、正直、どうあがいても

被災された人の苦しみは分かりません。

分かりませんが、何か音楽の演奏で

できることがあればと思い・・・・」

というような内容のコメントを

残された方です。

何と謙虚で、何と情の深い人

でしょうか。

こういう意識の高い人の演奏が、

聴衆の心を打つのだと思います。

ちなみに仲道さんは、ジュネーブ国際

コンクールのピアノ部門で3位に

なられた方です。ジュネコンといえば、

なかなか優勝者を出さないコンクール

としても有名で、ピアニストにとっては

超難関です。最近日本人で萩原さんが

優勝しましたが、それでも過去には、

ミケランジェリやポリーニなど錚々たる

方々しか優勝しておりません。

そんなコンクールで3位ですから、

実力のほども確認できますが、

それにしても音楽に対する真摯な

態度には感心致します。

ワーカホリックだと自称されているくらい、

演奏会をひっきりなしにいれている

方でもあり、最近では、

ピアノ協奏曲で自ら指揮にもトライ

されているようです。(日本女性では、

内田光子さんが指揮することで有名

ですが)

ショパンの曲のみならず、もっともっと

磨きがかかって輝いていただきたい

仲道さんです。

とても期待したいし、演奏会の

楽しみなピアニストです。


ダニエル・バレンボイムがつまびく「ベートーベン ソナタ8番第2楽章」

2012-09-07 19:49:19 | 音楽の魅力

モーツァルトのトルコ行進曲に並ぶくらい

有名なのが、ベートーベン作、

ピアノソナタ8番 第2楽章です。

別名『悲愴』と呼ばれていますが、

この旋律を聴いたなら、どなたでも

あぁ、あの曲か♪ と思い出される

こと間違いなしです。

それだけ旋律がシンプルで

美しいのです。

でも、この曲の弾き手によって、

こんなにも曲想が変わるんだ、と

実感したのが最近のことでした。

ダニエル・バレンボイムという人を

ご存知でしょうか?

ユダヤ系ロシア人でピアニストであり、

名指揮者でもあります。

昨年3月の東日本大震災の直後、

復興の願いを込めて、ウィーンから

いち早く追悼と支援コンサートを開いた

方です。モーツァルトのピアノ協奏曲

23番第1楽章を日本へ送ってください

ました。

この曲もそうですが、ベートーベンの

ソナタ8番第2楽章も、静かに

音が鳴り響く曲です。

しかし、バレンボイムのピアノ演奏は、

他の名ピアニストとは、一味

違うと感じました。

その違いは・・・・・・・。

普通ですと、この曲は、美しい

メロディラインにそって静かに

軽やかなソフトタッチで弾く人が

多いですよね。

でも、彼(バレンボイム)は、背すじ

をぴんと伸ばした姿勢で、

1音1音かみしめるように

弾いていきます。

その音を十分に伸ばすという

「テヌート」の指示記号がついているかの

ように、1音1音を粘っこく弾くのに

驚いたのと同時に感動しました。

言葉で表現すると、静けさの

中に重厚感があるのです。

余談ですが、バレンボイムの指は

太くて重さがありそう(笑)。

その指で丁寧に、鍵盤を1つづつ

深く押しながら演奏しています。

重力に逆らわず、重力に

任せるかのように、指を

落としていくから、音が

重いのでしょうか?

(裏技で調律の妙もあるのかも

しれませんが)

静かで重い! しかも、1音1音

はっきりと聞こえてきます。

これぞ、ベートーベンが表現したかった

音だといわんばかりに彼は、

この曲をそう演じ切っています。

何がベートーベンの本音なのかは

分かりませんが、実に感動ものの

演奏だと全身に鳥肌が立つくらい

感動できました。

軽くはなく、重さを表現した

ところに、解釈の違いもあるのかも

しれませんね。

とても興味深い演奏でした。


心ほのぼの、シューマンの「トロイメライ」

2012-08-19 14:52:15 | 音楽の魅力

残暑厳しいですね。熱気からじりじり音が

聞こえてきそうです。

休日の昼下がり、昼寝をしたく

ほのぼのとした曲をかけています。

シューマン作曲の「トロイメライ」です。

この曲を聴くと、涼しい高原の

木陰の中にたたずんでいる子供に

そっと声をかけている風景が

浮かんでくるのです。

やさしい声で、そっとです。

その声に子供がこちらを向き、

微笑んでいる。

そんな心がほのぼのとする

情景を感じます。

それは、シンプルでゆっくりした

音階とメロディのなせる業

なのでしょう。

心が穏やかになってきたら、

不思議と熱波のじりじりとした

音が聞こえてこなくなりました。

しーんと静まって、

心に涼感が訪れます。

高校野球もたけなわですが、

これが終われば通常なら

秋の気配が忍び足で

やってきます。

赤とんぼ、稲の穂、涼やかな風、

寂しげに鳴く蝉・・・・・・・・秋の

訪れが近いのでしょうか?

暑さと涼しさのせめぎ合いの

時期でもありますが、・・・・・・・・

移ろいゆく四季は日本の貴重な

風物でもあります。

心に余裕を持って感じていたいものです。


モーツァルトのピアノ協奏曲25番 byアルゲリッチ

2012-08-14 09:04:38 | 音楽の魅力

表現力がとても豊か・・・・そんな代名詞が

ぴったりくるピアノ奏者が、

マルタ・アルゲリッチです。

音の強弱や緩急をつける瞬間に

”力み”をまったく感じません。

”力み”よりも柔らかさ、滑らかさを

伴った余裕を感じます。

アスリートがよく競技を楽しもうと

いうことがありますが、あれは、

あるレベルの技術の熟練度が

なと不可能なことだと痛感していますが、

それと、同じで、彼女のピアノ技術と

表現力は、たぐいまれなタレントと

普段の努力の積み重ねの賜物だと

想像します。

頭でイメージできた表現を体現しようと

試行錯誤を積みながら血のにじむような

練習を繰り返してきた結晶のような

気がします。

世界には(日本を含めて)、他にも

優れたピアノ奏者はたくさんいます。

でも、アルゲリッチの演奏を聴いて

思わずうなってしまうのは、冒頭で

書いた余裕のなせる業だと感じています。

実にタッチが柔らかい。それだけでなく、

絶妙の”間”を置けるところが

たまりません。

過去にも書きましたが、強弱にも

何段階も弾き分けられる繊細さがあり、

緩急のつけ方にも余力があります。

だから、安心して聴いていられます。

今日は、かなり古い録音ですが、

モーツァルトのピアノ協奏曲25番を

聴きました。

強弱や緩急をつけすぎると、音が

いやらしくなり聴きにくくなることが

ありますが、アルゲリッチの表現には、

そんな不快感は沸き起こりません。

さらっと、テクを披露して、余力を

残しているくらい洗練されているため

でしょうね。

このコンチェルトは、ハ長調ですごく

聴きやすい曲です。

第3楽章など、流れるようなメロディで

音が走馬灯のように変化し、めまぐるしく

変わっていきます。アルゲリッチの

腕の見せ所、聴かせどころがいかんなく

発揮されてる場面です。

モーツァルト晩年に近い作曲ですので、

長調とはいえ、軽くて脳天気に明るい

感じではありませんが、久々の

休日を満喫している感じが出ているようで

頼もしい協奏曲です。

ピアノ奏者の力量が

とても問われるコンチェルトだと思います。