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極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

盛岡首都空港構想

2019年06月15日 | 政策論

   

                                                    ;                                                
5.公冶長  こうやちょう 

ことば -----------------------------------------------------------------------------
全28章のほとんどすべてが人物批評である。
人に禦る(あたる)に口給をもってすれば、しばしば人に憎まる」(5)
「道行なわれず、俘(いかだ)に乗りて海に浮かばん」(7)
「回や一を聞きてもって十を知る。賜や一を聞きてもって二を知る」(9)
「われいまだその過ちを見て、内にみずから訟むる者を見ず」(27)
--------------------------------------------------------------------------------------
10 宰予が昼間から寝室にはいってしまった。そんな宰予をみて、孔子は言った。
「腐った木は彫刻の材料にならない。荒塗りがわるければ上塗りができない”といが、人間もこ
れでは、いくら叱ってみてもムダだ」  その後、こうも言った。
「わたしはこれまで、言うことが立派なら人間も信用できると思っていた。しかし今では、言う
ことだけ立派でも行動を確かめないと安心できなくなった。わたしをそうさせたのは、予なのだ」

〈宰予〉 宰我。宰我に対するときの孔子は絶望的な叱り方をする。しかしその弁舌の才は認め
ていた。

宰予晝寝、子曰、朽木不可雕也、糞土之牆、不可朽也、於予與何誅、子曰、始吾於人也、聽其言
而信其行、今吾於人也、聽其言而觀其行、於予與改是。

Zai Yu took a nap without learning during the daytime. Confucius said,
"We cannot carve on a rotten wood. We cannot make a mud wall with rotten mud.
How can I discipline Zai Yu? I believed in their acts by hearing their word at first. Now I watch
their acts by hearing their word. Zai Yu's acts taught me this thing."

Wikipedia

  Window Solar Charger

 

【ポストエネルギー革命序論 Ⅶ】


 グリーン燃料事業篇:効果的な2段階糖化法

6賀ty14日、東京農工大学の銭衛華教授の研究グループは、高分子多糖を最小単位の糖に効率的に分解する2段階
糖化法───既存の方法に比べ糖化効率が30%ほど改善された。得られる最小単位の糖はバイオエタノール等のグリー
ン燃料の原料であり、将来的には工業化を視野───を開発しあことを公表している。この方法特徴は、この分解過
程は糖化と呼ばれ、糖化された最小単位の糖は単糖と呼ばれる。単糖は、燃料となるバイオエタノールやバイオブタ
ノール等のアルコールへと発酵過程を経て作られる原料。これらのアルコールはグリーン燃料で、液体無機酸や酵素
を使った糖化に研究の焦点があてられてきたが、酵素分解による糖化は、高い生産性とエネルギーの低コスト化が見
込め、さらに環境にも優しいので期待が高い方法。高分子多糖の酵素分解による糖化は、特に稲わらを使う場合は阻
害要因も存在する。米の収穫の副産物でもある稲わらには、デンプン、ヘミセルロース、セルロースと呼ばれる3種
類の複雑な高分子多糖が含まれている。ヘミセルロースは食物繊維の一部で、植物細胞壁に含まれ不溶性である。酵
素だけでは、様々な理由によりヘミセルロースやセルロースを分解することが困難である。ヘミセルロースやセルロ
ースを酵素で効率的に分解するには、コストのかかる前処理が必要。しかし、固体体酸触媒を用いた糖化技術は、コ
ストに対する解決策の1つ───固体酸触媒は、糖化の後でも回収でき繰り返し何度でも使える。原料となる高分子
多糖は不均一な物質、思ったほど簡単ではなく。例えば、摂氏180度以下でヘミセルロースは分解するが、さらに加
熱すると生成した単糖が副生成物へ転換されてしまう。一方、セルロースの分解は摂氏200度以上でのみ起こる。そこ
で銭教授らの研究グループは、稲わらからの糖化の生産性を高めるために、1段階目はヘミセルロース用で2段階目
はセルロース用という2段階法を考案。1段階目は穏和な固体酸で低温(150度以下)処理し、2段階目はより過酷
な条件(強い固体酸で210度以上の高温)で処理。この2段階法は効率がよく、既存の伝統的な1段階法と比較して、
単糖の収量が30%ほど増加した。ところで、最終目標は、この2段階糖化法によるこれらの草木質系バイオマスの糖
化プロセスの工業化であるとし、稲わらや他の原料(麦わら、コーンストーク等を使った場合の、新規開発の2段階
糖化法の実現可能性を評価するパートナーを探している。

 
 オールソーラー事業篇:ブロックチェーンを活用した太陽光電力のP2P取引実証へ

5月23日、東電傘下のTRENDE、トヨタ、東京大学が、ブロックチェーンを活用し、電力網につながる住宅や事業所、
電動車間での電力取引を可能とするP2P電力取引システムの実証実験を実施する。具体的には、同実証実験に参加する
各家庭や事業所、PHVからの入札情報が集約し、アクセスできる電力取引所を新設し、家庭や事業所ごとにAIを活用し
たエネルギー管理システム(電力売買エージェント)を設置。ブロックチェーンを活用した電力取引にいたっては、
中国電力が日本IBMと、先日はホンダがアメリカのゼネラルモーターズと提携のニュースが発表されており各企業でま
すますブロックチェーンの活用が広がりつつある。、

 

 電解水素製造事業篇:欠陥が発生しにくく、分離効率が改善されたグラフェンベー
ス脱塩膜の製造

6月14日、中国の研究グループは、カーボンナノチューブによる支援ネットワークを埋め込むことにより、研究者
らは海水脱塩用グラフェンベース薄膜の性能を向上させる方法を開発したことを公表。それによると、ナノポーラル
二次元材料は、イオンおよび分子ナノ濾過にとって魅力的であるが、広い領域にわたる不十分な機械的強度によって
制限される。
原子的に薄い膜の利点を完全に捉えながら優れた機械的強度を持つ大面積グラフェン- ナノメッシュ
/単層カーボンナノチューブ(GNM / SWNT)ハイブリッド膜を報告する。
単層GNMは、サイズ選択的分離を可能に
するために溶質イオンまたは分子をブロックしながら、水分子の効率的な輸送のための高密度のサブナノメートル細
孔を特徴とする。
SWNTネットワークは、GNMを物理的にマイクロサイズの島に分離し、GNMをサポートするための微
視的枠組みとして機能するため、原子的に薄いGNMの構造上の完全性を保証。
得られたGNM / SWNT膜は、塩
水または有機分子に対して高い水透過性および高い阻止率を示し、そしてそれらは管状モジュールにおいて安定した
分離性能を保持することを突き止めた。

 ソーラータイル事業篇:色素増感太陽電池で新材料、効率15%も視野に  

6月13日、 京都大学の研究グループは、現在世界最高のエネルギー変換効率を実現しているポルフィリン色素を上
回る性能を示す、新規ポルフィリン色素を開発したと発表。金属を用いない低コストの有機色素としては、血液(ヘ
モ}グロビン)や葉緑素(クロロフィル)など自然界にさまざまな形で存在するポルフィリン色素が研究をリードし
ている。ドナー・アクセプター構造を導入したSM315やGY50といったポルフィリン色素は太陽光を効率よく利用でき、2
014年にはエネルギー変換効率13%を達成している。今回の研究では、縮環ポルフィリン色素に注目した。縮環ポルフ
ィリン色素は、ポルフィリンとパイ共役分子の全体にパイ電子が広がることで高い光捕集能を持つが、外部回路への
電子の取り出し・電子の回収をうまく行えないことから、太陽電池の分子設計指針には不向きと考えられていた。

今回、ポルフィリンに直接パイ共役分子を縮環させるのではなく、炭素原子を挟み込んで縮環させたポルフィリン色
素DfZnP-iPrを設計・合成した。この色素を用いた太陽電池はエネルギー変換効率10.1%を実現。さらに、LEG4という
有機色素を組み合わせることで10.7%まで向上し、GY50を用いた太陽電池(10.0%)を上回る性能を示す。これらの
成果により、炭素原子を挟み込んでパイ共役分子を縮環させるという手法が新たな分子設計の指針なることを示した。
今後、更なる色素の改良で15%の実現も視野に入れる。実験室レベルでの変換効率15%が実用化のひとつの目安とさ
れており、色素増感型太陽電池の実用化に向けた一歩になる。



 水文環境図応用事業篇:地下水資源を活かした新たな都市づくり

6月14日、産総研の研究グループは、大阪府と同で地中熱利用システム(クローズドループオープンループ
に対応した2種類の地中熱ポテンシャルマップを整備し、水文環境図とともにウェブサイトに公開している。地下水
は生活用水のみならず、工業用水や農業用水として都市圏の経済を支えてきた。しかし、1930年頃から過剰揚水に
よる地盤沈下や塩水化が顕在化し、東京や大阪などの一部の地域では地下水利用が制限されてきた。近年では、地
下水位の回復による地下鉄などの地下構造物への漏水も問題化し、地下水位の上昇への対策に迫られている地域も
ある。こうした状況から、持続可能な地下水の利用と保全、ならびに新たな技術を活かした地下水活用が求められ
ている。

地中熱利用システムは地下水の熱や地下の温度差を有効利用して、少ない電力で冷暖房を行うことができる省エネ
技術であり、東日本大震災をきっかけに、昨今ではヒートアイランド現象や地球温暖化の抑制技術としても、注目
を集めている。これまでの研究例では地中熱利用システムの導入により、年間で40 %~50 %の節電・省エネが実
証されている。しかし、地域に適した地中熱利用システム設計や設置コスト試算を行うための情報が不十分である
ことなどが普及のネックとなっている。冷房需要の高い大阪府周辺で初めて地中熱ポテンシャルの評価手法を適用
できたことで、他の西日本地域でも冷房需要を想定した地中熱ポテンシャルマップの整備に展開できる可能性があ
る。また、大阪平野の水文環境図と2種類の地中熱ポテンシャルマップから分かるように、地域ごとの地下環境に
適した地中熱利用システムが定量的に「見える化」したことで、地中熱利用システムの導入コストや設置を具体的
に検討しやすくなる。

 

このシステムは世界を席巻するものであるとは、先回、記載したとおりである。

  June 105,  2019 

 抗加齢酵素事業:注射で若返り マウス成功、ヒトにも期待

6月14日、加齢で減少する血液中のたんぱく質の一種(酵素)を若いマウスからとり、老化したマウスに注射する
と、身体活動が活発になり、寿命を延ばすことを日米研究チームが突き止めたことを公表。ヒトでも、加齢でこの酵
素が減ることを確認しており、健康寿命を延ばす抗老化法の開発につながる。加齢で様々な臓器の働きが衰え、病気
の原因になる。その一因に、加齢で減る「NAD」という物質がある。NADは、eNAMPTと呼ばれる酵素によ
って体内で合成される。そこで、米ワシントン大や国立長寿医療研究センターなどのチームは、血液中のこの酵素を
分析。6カ月と18カ月のマウスで調べると、オスで3割、メスで7割減ること、老齢マウスでは、この酵素の量が
多いほど、その時点から長く生存する傾向があるも突き止めた。酵素の量が保たれるようにマウスを遺伝子操作する
と、高齢でも身体活動のレベルが1年若くなった。ヒトでいえば、50代が20代に若返るようなものだという。睡
眠の質、学習・記憶力、網膜の細胞の働きなども高く保たれていた。さらに、4~6カ月の若いマウスから、この酵
素を含む成分を取り出し、26カ月のメスのマウスに3カ月間与えると寿命が16%延びた。毛並みもよくなり、活
発に動いた。健康寿命にあたるような「中間寿命」を延ばすことを確認した。
   
https://www.cell.com/cell-metabolism/…/S1550-4131(19)30255-4

 



 温室ガス排出量削減事業篇:KLM 環境配慮型V字型飛行機

6月11日、世界的に、気候変動への航空セクタ負荷は全二酸化炭素(CO2)排出量のおよそ4%。就航中の航空機
の数は、特にアジア太平洋地域および中東地域で毎年増加し、2015年と比較して2035年までに2倍増と予測。国際航
空運送協会(IATA)はソウルでの年次総会を閉会。その間、KLMとTU Delft「Flying-V」の初期の設計を公表。改良
された空力形状と軽量化により、今日の最先端の航空機であるAirbus A350よりも20%少ない燃料消費を逓減。そ
の特徴は、ゲート、滑走路、格納庫など、既存のインフラストラクチャに対応できる。それは同数の乗客(314)と
同量の貨物(160m 3)を運搬。推進力は、例えば電動ブーストターボファンを使用することによって、将来の革新を
取り入れることができる世界で高燃料効率ターボファンエンジンで実現できるという。

※“ Flying-V”は、A350と同じ65 m(212 ft 5 in)の翼幅を持ちますが、55 m(180 ft 5 in)と短く、 A350より
は小さいが、V字型航空機は依然として標準構成で314人の定員乗客数で(A350-900は通常の3クラス構成で300-
350)。Vの翼幅はまた、航空機を取り扱うために空港改造が不要となる。今後の課題としては、❶横風の制御、❷
避難方法、❸電動化のための軽量化などが残件する。

 



【盛岡首長市移転構想Ⅱ:新盛岡首長市空港



 Apr.19, 2019

盛岡首長市空港構想の特徴は、 ❶全天候型(自動融雪・凍結・横風強風対応)、❷全自動滑走制御システム、❸環境
配慮型(全エネルギー独立分散型==生産・貯蔵・消費)、❹アクセス航空機乗務員数(250名)及び運搬重量上
限制限制、❺リスク極小化システム採用の5つの特徴をそなえている。このうち❶、❷、❸については、’the endles
s runway’(
無限の滑走路)───オランダの科学者ヘンク・ヘッセリンクの新しい空港コンセプトで、ターミナルビル
を取り囲む直径3.5 KMの円形滑走路で構成。最大3つの飛行機が同時に離着陸することを可能にする円滑走路は、従来
の空港のスペースのちょうど3分の1を占める。強風(横風)対策に、hesselinkは円形のトラックの上に横風のない、
風速と方向をフリー滑走路設計を採用───を参考に、滑走路サークルの直径を極小化させる設計構想(コンパクト
空港)している。

 ● 今夜の一曲

Spitz 優しいあの子



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米国版ソーラーシェアリング

2019年04月07日 | 政策論

 

              

                                                                   
 八  佾  はちいつ
ことば---------------------------------------------------------------------------
この篇は、礼をテーマとする章を中心として編集されている。
「夷狄の君あるは、諸夏の亡きがごとくならざるなり」(5)
「なんじはその羊を愛しむ。われはその礼を愛しむ」 (17)
「成事は説かず。遂事は諌めず。既往は咎めず」(21)
「天下の道なきや久し。天まさに夫子をもって木鐸となさんとす」(24)
---------------------------------------------------------------------------------
23 孔子が魯の楽官長に、音楽についての感想を語った。
「わたしは、音楽をこのように考えています。───まず金管楽器に、盛りあがるような演
奏効果があらわれます。やがて、つぎつぎと他の楽器がこれに参加して、渾然たる調和をか
もし出します。しかも、それぞれのパートは、他によって消されることなく、存分に生かさ
れ、のびのびと展開している。 これが完璧な音楽ではありませんか」


24 孔子の一行は、衛に入ると儀の町に宿をとった。すると、国境警備の役人が、ぜひ孔
子に会いたいと申し出た。
「わたしは、この町に来られた名のある方には、のこらずお目にかかっております」
供の者はかれを孔子のところへ案内した。  男はやがて退出して来て、弟子たちに語った。
「みなさんは放浪の旅を悲しんでいるのですか。ごらんなさい、天下に道が失われて久しい
ではあり ませんか。だからこそ、天はこうして先生に木鐸の使命を課したのです」  

木鐸〉 鈴を大きくしたような賦。役人がこれを嗚らしながら政令を伝達した。軍事関係
     なら金鋼製の舌をもつ金鐸、その他一般の政令には木製の舌をもつ木鐸を用いた。

  ● 今夜の一品

 

● 視覚に障害がある方も安心して使える腕時計 

   


【エネルギー通貨制時代 82】
 Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era”
❂ラストワンマイル最終章:米国のソーラーシェアリング事情

米国の再生可能エネルギー研究所(NREL:National Renewable Energy Laboratory)は「ソーラ
ーパネルの下に、機会の芽の種」と題して日本で誕生したソーラーシュアリングの米国版を
特集している。それによると、
ソーラー設備の影響が少ない、食料、水、そして再生可能エ
ネルギーにとって一石二鳥であり、影響の少ない太陽光開発の利点とそのリスク評価のため
に、革新的なサイト準備と環境への影響の削減(InSPIRE)事業で、米国エネルギー省(DO
E
)の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の研究者、アルゴンヌ国立研究所、大学、地
方自治体、環境およびクリーンエネルギーグループ、そして業界パートナーが集結されDOE
Solar Energy Technologies Officeから資金提供される。



----------------------------------------------------------------------------------
「2030年までに、実用的規模の太陽光発電設備は、米国で約200万エーカー(約8千平方キロ
メートル)の面積を覆うことになる。従来の
太陽光開発は、❶ただ1つの、すなわち発電用
として、一方で、
太陽光発電の影響が少ない、❷土壌改良、❸保水、❹在来種の育成、❺食
料生産、❻地域社会に低コストエネルギーの提供」
----------------------------------------------------------------------------------


蜂の利点 それはほんの始まりにすぎない。

従来の大規模太陽光発電設備は平らな土地に配置され、表土や植生の多くを取り除く。マウ
ントラックとソーラーパネルを取り付けた後、地面は砂利または芝草で覆う。表土は保持さ
れ、パネルが設置され、しばしば他の蜂や他の花粉媒介者にやさしい。原生植物の深い根は
嵐や干ばつの時期には芝草や砂利よりも多く保水。汚染土壌の「褐色野原」地域でも、表土
を保持し、長期にわたり土壌改質を助ける。おそらく最も重要なことは、在来種および開花
植生が在来種、特に蜂などの花粉媒介者および近くの農場収量の改善やその他の有益な昆虫
の生息地を提供する。



この事業のエネルギー、表土、水の調査責任者は、ソーラーパネルの下の蜂を追跡し、昆虫
の個体数への関連性を観測し太陽電池の設置が周囲の農場の作物収量にどのように影響する
かを分析。また、太陽光発電業者は、表土の除去を省略することで、サイトの準備費用が削
減され、太陽電池パネルやその他のハードウェア価格が逓減し続けており、非ハードウェア
コスト(設置場所の準備を含む)は、公益事業規模の太陽光発電コスト全体の20%を占め、
適切に選択された場合、在来の植生もまた、草刈りまや除草剤散布の必要性が少なくなり、
砂利または芝草の敷設法よりも維持費が少ない。パネルによる遮光による繁栄植生は、表層
からの蒸発量の増加により、気温上昇による発電量を低下を防ぐ。。

 

自然な受粉者にやさしい植生戦略を含む、リスクレスな太陽光発電開発は、生態系役益、運
用効率、積極的な利害関係の調整として、重層的利益をもたらす( Enel Green Power North
America
Marcus Krembs(ミネソタ州に3つのInSPIREテストサイトを担当者)

それでは、なぜリスクレスな太陽光発電がより広く採用されないのはなぜか。リスク回避産
業は、ソーラー事業に利益があると言えるデータはないをもたない。 だからこそ、何がうま
くいくかを調べ、コストと利益を定量化するためだ。低インパクト太陽光発電の体系的で頑
健な研究に意義がある。

低インパクトソーラーは土壌以上のものを節約

ミネソタのテストサイトでは、Macknickらは9つの異なる種子ミックスを植え、数年間かけ
て温度、
土壌水分レベル、エネルギー生産、そしてメンテナンスへの影響を研究している。
国の多様な気候を代表
する他の6州のサイトでも、同様の研究が進行中。現在の業界慣行に
遅れないために、ASTRO(農業と太陽光共同:研究の機会)と呼ばれるInSPIRE関係者グル
ープが、研究者、太陽光発電業者、および政府機関が最新データとベ最適戦略を共有。究極
的には、InSPIRE の研究は、特定の気候環境下でさまざまな植種の維持費を最小化し、収穫
法するかソーラー業界に実用的提案する。InSPIREのマサチューセッツ州、アリゾナ州、オレ
ゴン州の各拠点で、チームは食料を混ぜ合わせるための特定の低インパクトのアプローチ、
すなわち太陽光発電をテスト。太陽電池パネルの木陰で成長する農作物は、日中の猛暑から
植物を保護しながら、はるかに効率的に水を使用する。

農業機械は、おそらく重機を頼りにしている大規模な単作農場には適していない。しかし予
備的な結果はすでにそれが平均より暑い年に特定の植物の収量を著しく高めることができる
ことを示唆している。アリゾナの敷地では、チェリートマトの収穫量は2倍になり、ソーラ
ーパネルの木陰で育ったときに必要な水が少なくなる。太陽エネルギー発電はまた、安定し
た追加の収入源、つまり潜在的に不安定な農業産業における貴重な保証を農家に提供する。




マサチューセッツ農業省のエネルギープログラムコーディネーターであるGerry Palanoは州
の再生可能エネルギー目標を達成することと維持することのバランスを保つために、都市や
農家と協力する。農業的に生産的な土地について、発電事業者と農民がこの事業計画を手伝
い、農民がアレイの下で、今後20~30年間その土地を働き続けとと話す。また、チュー
セッツ農業省エネルギープログラムコーディネーターは、アグリソーラーは、水の使用量を
減らし、食料収量を増やし、太陽光パネルへの熱の悪影響を抑え、極端な天候の影響を相殺
し、リスクレスな太陽光発電には追加の事前計画と支出が必要、これまでのところInSPIRE
の研究者にり集められたデータは、時間とともに驚くほど大きな利益をもたらし、最も重要
なことは、影響の少ない太陽光開発によって、太陽光事業が地域社会の優先事項や懸念に対
し、より敏感に対応できる。コミュニティが自分たちの土地の一部を太陽光発電に快適に取
り組んでいる場合は、広範囲の太陽光発電配置率を達成することができる。低インパクトで
受粉者にやさしい戦略の有効性を実証するとこのように話す。



米国は日本の先進性はしっかり学習しキャップアップしている。その具体例が日米半導体協
で、政府と民間とのパートナーシップによる技術開発であり、このソーラーシェアリングで
ある。

  Mar. 27, 2019

❂ラストワンマイル最終章:大規模蓄電池が南加州にやってくる

3月27日、ソーラーマガジンは、「大きなバッテリーが南カリフォルニアにやってくる」
と報じた。それによると、Macquarie社は、南カリフォルニアでの340 MWh事業の第3期分の
資金調達を完了、そして、LADWP1.8 GWの蓄電池設置計画立案していという。 南加州
は、ドイツはどこよりも太陽光を受け入れており、結果は劇的な変化をもたらした。同州は
2018年に太陽光発電から約14%の電力を得たが、ユーティリティの再生可能エネルギー分
散型の標準申請によると、その割合は南加州でさらに高くなっており、この太陽光発電のす
べてがアヒルカーブを悪化、日中の電力価格の下落と夕方の急激な上昇につながり、現在で
は、大量のソーラーによりその必要性高まっている。南加州エジソンの63 MW / 340 メガワッ
ト時(MWh)蓄電池事業の第3段階として、97 MWhの事業対する債務融資を締結を公表。
特に、加州北部で実用的なPG&Eが展開している大きな電池ではないが、ロスの西端に広が
る都市部のサービスエリアの「グリッド制約付きポケット」のシステムアンヘレス盆地で、
加州として単に地域外の高速道路と唯一の蓄電池システムではない。それは信頼できる情報
筋によると、ロサンゼルス水道電力局(LADWP)は、3つの大規模ガス発電所が閉鎖され
ると失われる地域容量を代替計画の一環としての、1.8 GWの電池配備計画であり、ロサンゼ
ルス市を急速に脱炭素化するエリック・ガルセッティ市長の計画である。

電池価格は逓減し続けている

これらすべてが、ブルームバーグ新エネルギーファイナンス(BNEF)による新たな研究の
後継となっており、リチウムイオン電池のコストは下落を続けており、価格は過去1年間で
35%低下して1メガワット時あたり185ドルとなっています。これは、大幅な減少の一環であ
り、2012年以降のリチウムイオンストレージのコストは76%減少。その一部は、サプライ
チェーンの進歩による。主要材料、特にコバルトの価格について懸念があるが、2017年の
終わりから2018年の初めにかけコバルトの価格が急上昇し、2019年の初めごろには1ポンド
(453グラム)当たり20ドルを下回る価格となる。南米のリチウム生産者は今週のニュ
ーヨークで開催されたBNEFサミットで需要の拡大に対応に時間を費やしていたが、Instinet
Aleksey Yefremovは中国とオーストラリアのリチウム生産者がすぐにギャップ解消したが、
化学物質の原材料供給はいくつかの要因の1つにすぎず、BNEFのエネルギー経済学の責任者
Elena Giannakopoulouは、「技術革新、規模の経済」を引用し「驚異的な改善」だと表現し
ている。激しい価格競争と製造経験の多くは、主要なプロセス材料の供給管理だけでなく世
界の電池製造能力を占める中国の増産計画による。




❂ラストワンマイル最終章:蓄電池設備に連邦太陽電池税額控除を拡大 

この法案は、ソーラーペア電池システムに対してのみITCを有効にするという現在の規定を
超えたものになる。 4月4日、米国のMike Doyle議員(D-Pennsylvania)は、連邦からの
投資税額控除(ITC)を家庭からグリッドレベルまでのあらゆる場所のエネルギー貯蔵施設
にまで拡大する法案発表。
HR 2096は非常に簡単な請求書。4ページすべてに既存のITC
蓄電池を追加する以外に大きな変更はない、つまり、現在のITCのドロップダウンスケジュ
ールに従い、2019年末には30%の利率が期限切れをむかえ、企業では2022年には10%ま
で段階的に減額される。太陽光発電システムはすでにITCに適格で、これは、システムが太
陽光発電システムによって充電されている場合にのみ適用───系統網から電力を引き出す
システムはいずれも、年末には信用保証対象外の可能性がある。 HR 2096はそのような規定
を削除し、これらのシステムが電力網、再生可能エネルギー、またはその両方によって充電
されているかどうかにかかわらず、ITCによる蓄電を可能とする。アビゲイルホッパー大統
領と最高経営責任者(CEO)がそれを「批判的」と呼んで、この法案はSEIAにより歓迎され、
清潔で信頼性の高い太陽エネルギーを効果的な貯蔵と組み合わせることが、回復力があり信
頼性のある配電網を確保するための次のフロンティアであることは明確であり、ストレージ
ITCは太陽光だけでなく、さまざまなエネルギー源からのエネルギーにも恩恵をもたらし、
米国の現在および新しい電力需要を満たすのに役立つと述べている。
 

上院と大統領が共和党により管理され、進歩的な気候とエネルギーの法律はほとんど耳にす
るこはない。Green New Dealのような野心的なプログラム見あたらないが、最近の連邦エネ
ルギー規制委員会(FERC)が蓄電池の参入を市場開放は、当事者が合意する技術の1つで
ある。これまでのところ法案支持は民主党で、現在、2人の議員が擁している。

 

 ● 今夜の一曲

Rita Coolidge All Time High
Music Writers: Johon Barry, Tim Rice

『007 オクトパシー』(ダブルオーセブン オクトパシー、Octopussy)は、1983年公開、ジ
ョン・グレン監督のスパイアクション映画。007シリーズ第13作目。また、イアン・フレミン
グの第2短編集であり、本映画の原作としては、表題作の他『所有者はある女性』が使用され
ている。 リタ・クーリッジ(Rita Coolidge、1945年5月1日 - )は、アメリカ合衆国テネシー
州出身の女性歌手。アメリカ・インディアンのチェロキー族の血を引く。 幼い頃からゴス
ペルに親しみ、1960年代末期から本格的にプロの歌手として活動。1969年の暮れには、デラ
ニー&ボニーのツアーに帯同。このツアーには、エリック・クラプトンも参加していた。198
3年、映画『007 オクトパシー』の主題歌「All Time High」を歌う。

We're an all time high,  We'll change all that's gone before.  
Doing so much more than falling in love.
 On an all time high,  We'll take on the world and wait.  
So hold on tight, let the flight begin.
I don't want to waste a waking moment; I don't want to sleep.
I'm in so strong and so deep, and so are you.  
In my time I've said these words before, but now I realize  
My heart was telling me lies, for you they're true
......

   

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未来の労働価値

2018年10月09日 | 政策論

  



                                              

第40章 「道」とは何か
つねに対立する状態を含み、対立する状態へと転じようとする。それが「道」の運動法則である。
つねに消極を守ることによって、限りない積極に通ずる。それが「道」の作用の形式である
万物をその根元に遡って行けば、「有」すなわち物一般に到達する。その「有」のさらに根元と
なるのは、「無」というより表現しようのないある物である。それが本体としての「道」である。

反・弱・無 本章には、老子哲学の根本である「道」に対する認識が、すべて集約された形で

られている。すべての対立を止揚する単一存在としての「道」から、弁証法的な運動か生まれ、

さらにその運動法則に基づいて、無限の想像力が生まれるのである。


第41章 「大器は晩成す」

正真正銘の士(立派な人物)は、「道」を問けば、熱心に実行する。どうにか士といえる程度の
人は、「道」
を聞いても、半信半疑である。士とは名ばかりの連中は、「道」を間くと、腹を抱
えて笑いだす。
だが、こんな連中の物笑いにならないようでは、「道」とはいえない。

古人もいったではないか。 
「真に明るい道は、賠く見え、真に前進している道は、後退しているように見え、真に平坦な道
は、けわし
く見える。高い徳は、低く見え、真の白さは、汚れて見え、広大な徳は、欠けている
ように見え、堅固な徳
は、その場限りに見え、変わらぬ徳は、うつろいやすく見える。またとな
く大きい四角は、角が見えず、ま
たとなく大きい器は、完全な器とは見えず、またとなく大きい
音は、耳に聞こえず、またとなく大きい形は
判別できない」
「道」は、われわれの感覚を超えた存在である。ただ、万物を生々発展させる根元として、その
存在を疑う
ことはできないのである。

<またとなく大きい器は完全な器とは見えない〉 いわゆる「大器晩成」なる語の出典はこれで
るが、現在では意味を取り違えて用いられている。成語には、えてしてこのような例が多い。

 ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.16  

   

第3章
三人が到着したとき、長屋には誰一人見当たらなかった。だが、アイバーが厨房に入っていって
しばらくすると、年配の女が二人、パン、蜂蜜、クッキーと、ミルクと水の入った水差しを持っ
て出てきた。アイバー本人も、小さく切り分けた鶏肉の皿を運んできた。アクセルとベアトリス
は感謝してその朝食を食べはしめた。

二人とも、食べてみて初めて自分がいかに空腹だったかに気づき、しばらくは黙々と食べていた。
アイバーはそんな二人の向かい側にすわり、遠い目をして、じっと何か考え込んでいた。やがて
ベアトリスが言った。

「サクソン人の村は重荷ではありませんこと、アイバー?少年が無事に戻り、鬼も退治されたわ
けですけど、同族のもとに戻りたいとは思いませんか」

「あれはただの鬼ではないぞ、ベアトリスさん。このあたりでこれまで見たこともない生き物だ。
あれが門の外をうろつかなくなったと思うだけで、心底ほっとする。だが、少年はまた別問題だ。
戻りはしたが、とても安全とは言えない」長屋の中はまた三人だけになっていたが、アイバーは
テーブルに身を乗り出し、声を低くした。一あなたの言うとおり、こんな野蛮人となぜ暮らしつ
づけるのかとよく思うよ。鼠穴に暮らすほうがましだ、ともな。あの勇敢な旅人は-昨夜、あれ
だけのことをしてくれた男は-わしらのことをどう思うだろうか」

「何かあったのですか、長老」とアクセルが尋ねた。「わたしたちも、昨晩、笥火のところにい
ましたが、争いが起こりそうと見て引きあげました。なので、何かあったか知りません」

「引きあげてくれてよかったよ、お二人さん。ここの異教徒どもは、互いの目を扶り出しかねな
いほど興奮していたからな。見知らぬブリトン人二人を間近に見つけたりしたら、どんな扱いを
したことか……思っただけで身の毛がよだつ。少年はエドウィンと言う。無事に戻って、最初は
村全体が喜んでいたんだがな、女たちが少年の体に小さな傷を見つけた。わしも他の長 老と一
緒にそれを確かめた。胸のすぐ下にちょっとな。子供が転んだときにできるかすり傷くらいのも
のだ。だが、女どもは――少年の親族までもだ――それが噛み傷だと言い張って、今朝にはもう
村全体がそれを噛み傷だと呼んでおる。わしは本人の身の安全を考えて、エドウィンを小屋に閉
じ込めておかねばならんかった。それでもだ、仲間も家族も、誰も彼もがドアに 石を投げつけ、
引きずり出して殺そうとする」

「なぜですの、アイバー」とベアトリスが尋ねた。
「霧のせいなの?あの少年がどんな恐怖にさらされたばかりなのか、みんな忘れてしまったのか
しら」
「そうだったらどんなにいいか、ベアトリスさん。今回はみんなが全部覚えているようなんだ。
異教徒どもは自分たちの迷信しか目に入らん。要するに、悪鬼に噛まれた者はいずれ悪鬼に変わ
ると信じ込んでおる。この村の内部に悪鬼が生まれ、悪さの限りを尽くす、とな。だから、あの
少年を怖がる。この村にいるかぎり、あの少年の運命は悲惨だ。ウィスタン殿が教ってくれない
ほうがよかったということにさえなりかねん」

「ですが、長老、良識のある村人だってきっといるのではありませんか」とアクセルが言った。
「いても、ごく少なかろう。それにだ、一日や二日は制止できても、無知な者どもがのさばり出
すのにさほどかかるまいよ」
「では、どうすれば、長老?」
「あの戦士もお二人に劣らんほど心配してくれてな、今朝はずっと相談に乗ってくれていた。で、
わしは一つの提案をした。ひどい押しつけだとは思ったがな、この村を出るとき、少年を連れて
いってくれまいかと頼んだ。そして、ここから十分に遠いどこかの村に世話を託して、新しい人
生を始める機会を与えてやってくれまいか、とな。村のために命を賭してくれた人に――しかも
その直後に――こんなことを頼むのは心底恥ずかしいが、ほかにできることを思いつかん。ウィ
スタン殿は、王から頼まれた用事の途中で、馬の怪我や昨夜の問題ですでにだいぶ後れているら
しいが、この提案を考えてくれている。わしは、まずあの少年がまだ無事かどうかを確認して、
ウィスタン殿の決定を聞きにいかれぼならん」アイバーは立ち上がって、杖を取った。「発つま
えに、さよならでも言いにきてくだされ、お二人さん。まあ、いまの話を問いてしまったら、一
目散に逃げ出したくなっても無理はないとは思うがの……」

 
アイバーの姿が戸口を抜け、日当たりの良い中庭を去っていくのを、アクセルはじっと見送った。
「ひどい話だ、お姫様」と言った。

「ええ、アクセル。でも、わたしたちには関係ない。ここでぐずぐずするのはやめましょう。今
日の道は険しいもの」
食べ物とミルクはとても新鮮で、二人はしばらく黙って食べつづけた。や
がてベアト
リスが言った。

「昨夜、アイバーが霧について言っていたことはぽんとうなのかしら、アクセル。わたしたちの
物忘れは、神様ご自身のせいだってこと……」 
「どう考えたらいいのかな、お姫様」
「ね、アクセル、今朝、目が覚めるとき、あることを思いついたの」
「何をたい、お姫様」
「ただの思いつきだけど、神様はわたしたちがしたことの何かに怒っているんじゃないかしら。
それとも恥じているとか……」
「ほう、おもしろい考えだ、お姫様。だが、それならわたしたちを罰すればいいのに、なぜ忘れ
させるんだろう。ほんの一時間前に起きたことを、ばかみたいに」
「わたしたちを-わたしたちのしたことを-深く恥じて、ご自身でも忘れたがっていたら?その
人がアイバーに言ったように、神様が覚えていないなら、わたしたちが忘れても不思議じゃあり
ませんよ」
「神をそれほど恥じ入らせるとは、わたしたちはいったい何をしたんだろう」
「わからないけど、でも、あなたやわたしがしたことじゃないのは確かですよ、アクセル。神様
はわたしたちをいつも愛してくださったもの。神様に祈れば――祈って、せめて大切ないくつか
のことくらいは思い出させてくださいって願えば――聞き届けてもらえるかもしれない」

外で笑い声がした。アクセルが少し首を仲ばすと、中庭で子供たちが遊んでいるのが見えた。小
川に置かれた二つの平らな岩でバランス遊びをしている。見ている間にも一人が水中に落ち、け
たたましい笑い声が起こった。

「さあな、お姫様。修道院の賢人なら、ひょっとして何か説明できることがあるのかもしれない
が・・・・・・。ところで、今朝、目が覚めたときのことと言えば、わたしも思い出したことがあるよ。
おまえがそういうことを考えていたのと同じころかもしれない。ちょっとした記憶、単純な記憶
なんだが、重い出してとても嬉しかった」
「あら、どんなことかしら、アクセル?」
「市場か祭りだ。二人でそこを歩いていた。村なんだが、わたしたちの村ではなかったな。おま
えはあのフード付きの明るい緑色のマントを菅ていた」
「それはきっと夢ですよ、あなた。それか、ずいぶん昔の話。だって、緑のマントなんて持って
いませんもの」
「確かにずいぶん昔のことだ、お姫様。夏だったが、二人がいた場所には冷たい風が吹いていて、
おまえは風よけに緑のマントをまとった。フードはかぶっていなかったな。市が立っていたのか、
何かの祭りだったのか。丘の斜面にある村で、村に入ったとき、囲いの中に山羊がいた」
「で、わたしたちはそこで何をしていたの、アクセル」
「腕を組んで、ただ歩いていた。すると、突然、行く手に見知らぬ人が現れた。村の男だと思う。
おまえを一目見ると、まるで女神でも見ているみたいに目が隨せなくなった。覚えているかい、
お姫様?若い男だ。もちろん、そのころはわたしたちも若かったんだが……こんな美しい女は見
たことがない――男はそう大声で言って、手を仲ばし、おまえの腕に触れた。覚えていないかい、
お姫様?」

「なんとなく思い出すような気もしますけど、はっきりとは………あの酔っ払いのことを言って
いるのかしら」
「少しは酔っていたかもしれないが・・・…さてな。言ったように、何かの戻いの日だったからな。
とにかく、その男はおまえを見て、目を丸くした。こんなに美しい人を見たことがないと河った」
「じゃ、やはりずいぶん昔のことですよ。あなたが焼きもちを焼いて、その人と喧嘩した日のこ
とでしょう。村から追い出されそうになった日……」
 一そういう記憶はないな、お姫様。いま思い出せているのは、おまえが縁のマントを看ていた
ことと、何かの祭りの日だったこと、そしてその男が言ったことだ。おまえの保護者だと見て、
わたしに向かってこんなことをI河った-なんたる美女、絶世の美女だ。君、大切に守ってやら
んといかんよ、と」
「何となく思い出しましたよ。でも、やはり焼きもちを焼いて、喧嘩したんじゃなかったかしら」

「そんなことをするはずがないさ。だって、その男の言葉に鼻高々だったし、いまでも思い出と
嬉しさがこみ土げてくる。絶世の美女と言ったんだよ。そして、大切に守ってやらんといかんよ、
とも言った」
「鼻高々でもあり、焼きもちも焼いたんですよ。相手は酔っ払いなのに、向かっていったんじゃ
なかったかしら」
「わたしが覚えているのとは違うな、お姫様。まあ、冗談のつもりで、焼きもちを焼いたふりを
したのかもしれない。だが、あの男に悪意がなかったことくらいはわかったと思うよ。とにかく、
今朝はそんなことを思い出しながら目が覚めた。ずいぶん昔のことなのに」

「あなたの記憶がそうなら、それでいいのではないかしら、アクセル。この霧があるかぎり、ど
んな記憶も貴重ですもの。逃さないよう、しっかりとどめておかないと」
「あのマントはどうなったんだろう、おまえが大切にしていたマントは」
 

                         カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

                                     この項つづく                            

【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である 13】  

 Yutaka Hrada, Wikipedea 

第2章 ベーシック・インカムの思想と対立軸
第11節 アジアの共産化をもたらした日本のアジア侵略
結果的に見れば、日本のアジア侵略こそが、アジアの共産化をもたらした。近衛は1937年6
月に首相となると、「北支事変」というそれまでの公式呼称を9月には「支那事変」と変更
し、
日中戦争の拡大を認めた。翌38年1月には、「爾後国民政府を相手とせず」の声明を発表
した。
戦争をしてその相手を相手としないのなら、和平交渉はできなくなる。1938年11月には、
日本が中国の
主要部分を抑えた以上、和議を請うて日本と協力せよという東亜新秩序声明を発表
39年1月に辞職する。
その後は、平沼騏一郎、阿部信行、米内光政が首相になるが、40年7
月に再び首相となる(近衛が首相を辞任していた間、1940年3月には汪
兆銘政権が樹立され
蒋介石を中心とする中国との和平の途が絶たれた)。

近衛は、内政にお
いては、38年には、国家総動員法や電力国家管理法を成立させ、経済の戦時
体制を導入し、
日本の国家社会主義化を開始した。再び首相になると、アジアを欧米の植民地支
配から解放
し、日本を盟主とする共存共栄の新秩序を建設しよう(日本の勢力下に置こう)とい
う「大東
亜共栄圈」構想を発表した。しかし、少なくともフィリピンが、日本よりアメリカの植
民地で
あったほうがましだったと思ったことは間違いない。山本七平は、フィリピンの人々は、
アメ
リカ軍捕虜が移送されるときには花を投げたが、日本車捕虜が移送されるときには石を投げ
と書いている(山本七平「石の雨と花の雨と」、『一下級将校の見た帝国陸軍』文巻文庫、1
987
年)。

 NDC分類 396.21

近衛はさらに、1940年8月、全政党を解散させ、議会制民主主義を破壊し、9月、日独伊三
国同盟を締結した。41年7月には、フランスのヴィシー政権からインドシナの権益を奪い、南
部仏印進駐を実行した。

その後、1941年10月に近衛は来降英機に首相の座を譲る。考えてみると、ここまで来て対
米戦争を止めるのも難しく、銀縁は12月には真珠湾攻撃に踏み切る。そのとき、頼りのナチス・
ドイツのソ連への快進撃は止まり、戦線は膠着状態になりつつあったのだが。 第二次世界大戦
で日本が占領した、中国、ベトナム、ラオス、カンボジアは共産化し、インドネシアは、あと一
歩で共産化、マレーシアは、あと二歩で共産化という状況に陥り、フィリピンではかなり共産ゲ
リラがはびこり、ビルマ(現ミャンマー)では事実上の共産政権が成立した。日本の統治下の朝
鮮では、北は共産化し、朝鮮戦争によって、南もあと一歩という状況になった(現在も危ういの
かもしれない)。満洲はもちろん共産化した。近衛こそは、結果としてもっとも成功した世界革
命的共産主義者だった。その淵源が、近衛の「英米本位の平和主義を排す」にあったことは明ら
かだ。

※ 近衛文麿が共産主義者だったとはこれまた飛躍し曖昧で、齟齬があるように思える。参考と
して『近衛文麿は共産主義者だったのか』 永井俊哉ドットコム 2006.9.1 を掲載する。歴史的な
考察は別の機会にゆだねる。


第12節 存在しえなかったABCD包囲網
なお、ついでながら1941年、アメリカ、イギリス、中華民国、オランダが、日本に対して経
済制裁、ABCD包囲網をしいたことが、日本を戦争に向かわせる要因になったと言われている
が、それはありえない。オランダは1940年5月15日にすでにドイツに降伏しているからだ
(フランスは1940年6月22日に降伏〔ヴィシー政権の成立〕)。ドイツを通じてオランダ
の植民地であるインドネシアから石油を買うことができたはずで、ABCD包囲網など存在しえ
ない。もちろん、オランダには亡命政府があり、亡命政府とその支配下のインドネシアは連合国
側にいたが、亡命政府が、実効的にインドネシアを支配することなどできない。ドイツに降伏し
たオランダの傀儡政権を通じて、インドネシアから石油を買えばよかっただけだ。おそらく、日
本の参戦を求めるために、ドイツがそうするのを拒否したのかもしれない。あるいは、ドイツが
ヨーロッパ大陸の大部分を征服したのを見て、それにあやかろうと戦争をしたがった日本の軍部
が、あえて筒単にできることをできないとしたのかもしれない。

第13節 明治の元勲の富の認識
近衛は、富は略奪から生まれると考えていたが、明治の元勲たちは、富は創造できるものと正しく
認識していた。1871年、維新後の国内秩序も安定しないなか、明治政府は、岩倉具視(18
25~83)を全権大使として、維新の立役者、木戸孝允(1833~77)、大久保利通18
30~78)、伊藤博文(1841~1909)ら総勢48人と言われる大使節団を欧米に送っ
た。彼らは、アメリカの経済的成功を次のように見た(原文のカタカナをひらがなに改め、濁点
を補った)。

 欧洲自主の精神、特に此地(アメリカ――筆者)に鍾り、其事業も自ら卓落豁達にて、気力
 甚だ旺なり、英国人之を察せず、印度卑弱の民と同視し、其膏沢を吸はんとせしは、宜なり
 無敗をとりしこと、……自主の力を用ふる自在にて、益欧洲人民の営業を起す地となりし…
 自主の諭と、共和の議とは、欧洲にも充ちたれども、……只米国は純粋の自主民集りて、真
 の共和国をなす、……此驚くべき国利を増進したるは、……其首領となる士君子が、自主の
 精神、他に優れ実用の学術を教へたる功なり。(久米邦武編『特命全権大使米欧回覧実記』
 1、243、245頁、岩波文庫、1977年、原著1878年)

 NDC分類 295.3

すなわち、明治維新の指導者は、経済発展の要諦は、人民における自主の精神と実用の学問の普
及だと認識している。草莽の志士として、下級武士からのし上がり天下の権を取った人々は、富
を創造する力も、強国としての力も、人々の自由を拡大することから生まれると正しく認識して
いた。自主の民の強さを理解してもいるのだ。イギリスがアメリカを搾取しようとして敗退した
のは、インドとは異なる自主の民の強さを理解していなかったからだと言っている。これが、昭
和期の日本と異なる、明治日本の正統イデオロギーである。明治の藩閥政府は、権力を握り続け
ようとはしていたが、人民の自由が国を富まし、さらには国を強くするとさえ認識していた。

 NDC分類 332.53

第14節 ウォオール街を占拠する人はいても……
富の正当性は、2008年の金融危機後のアメリカでも疑われている。下火にはなったが、ウォ
ール街を占拠せよ、1%の人々が富を独占している、99%の普通の人々がないがしろにされて
いる、とアメリカの若者は怒っている(実際、アメリカでは上位10%の人が70%以上の資産
を持っているようだ。FRB,Survey of ConsurnerFinance2010,Table 4より計算)。自由市場を信
奉するシカゴ大学ファイナンス学部のスター教授、ルイジ・ジンガレス教授も、歪んだ報酬シス
テムが、自由市場への信頼を蝕むと書いている(『人びとのための資本主義-市場と自由を取り
戻す』序章、若田部昌澄監訳、栗原百代訳、NTT出版、2013年)。

これに対して、保守派は、不毛な階級闘争を引き起こそうとしている、成功者を妬む落ちこぼれ
の集まりと批難している。しかし、占拠派の若者たちも、アップルのあるクパティーノ、グーグ
ルのあるサンノゼ、マイクロソフトのあるレドモンドを占拠せよとは言わない。

ここには、アップルやグーグルやマイクロソフトは富を創造したが、ウォール街は富を創造して
いないではないかという批判がある。もちろん、これら企業の創造した富が、その冨を創造した
人々の貢献度に応じて公正に分配されたかどうはわからない。しかし、これらの企業は世界を変
え、世界はこれらの企業に恩恵を受けている。私が、本書をパソコンで書くことができるのも、
これら企業のおかげである。

もちろん、ハイテク企業ばかりでなく、通常は、銀行や証券などの金融業も富を創造している。
素晴らしいアイデアや技術があっても、そこに資金が流れなければ富は創造できない。資金を融
通している金融業が、自分自身で富を創造していないとしても、富の創造を手助けしているのは
確かである。

ただし、ハイテク企業への抗議活動もある。例えば、所得の高い人たちが増えて不動産価格が上
がると、長年暮らしてきた住民が家賃を支払えなくなって出ていかざるをえなくなる。このよう
なとき、昔ながらの住民が新しく来た高所得の住民たちに反感を持つ場合もある。サンフランシ
スコの家賃はグーグル、フェイスブック、アップル、ヤフーといったハイテク大手企業のために
高騰している。これらの企業は、エアコンの効いた無縁LAN完備の快適なバスを運行し、自社
の従業員を勤務先に送り届けている。住民はこのバス停に集まり、これら企業ヘの抗議集会など
を行っている(土方細秩子「米国でエスカレートするグーグルなどIT企業ヘの反感」、『エコ
ノミスト』2014年6月17日号)。

住民活動家は、ハイテク企業が来ないよう新規のオフィスビルを建設できないようにすることな
どを求める燭台が多いようだが、これは市の発展を阻害するものだ。むしろ、新しい住宅を増や
すべきだ。シアトルでは、住宅の供給を増やしたことで、サンフランシスコほど不動産価格が上
がらなかったという(エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる-雇用とイノベー
ションの都市経済学』227頁、第5章より「町のグレードが上がると困る人たち」、池村千秋
訳、プレジデント社、2014年、参照)。

 NDC分類 366.025

第15節 富の正当性が疑われている
ウォールストリートの投資銀行が、本当に富の創造を手助けしたかには疑問が投げかけられてい
る。サブプライムローン関連証券という怪しげな証券を売って、世界を混乱に陥らせたにもかか
わらず、売った人は巨額のボーナスをもらっておさらばしている。危機に陥った投資銀行は、納
税者の負担によって助けられている。このボーナスは、富の創造の手助けをしたご褒美とは言え
ないというわけだ。

あまり注目されていないようだが、ウォール街占拠派のプラカードに「法人格を廃止せよ」とい
うスローガンがあった。法人という存在によって、経営者の責任は制限されている。金融機関に
リスキーな行動をさせないために自己資本を増大させるという規制が、たびたび強化されてきた
。自己資本を提供させれば慎重になる、自己資本は失敗したときのバッファー(緩衝)にもなる
という考えに基づいてのことだ。しかし、自己資本は株主の金であって、経営者の金ではない。

経営者は、利益を得たら自分のおかげ、損が出たら株主の負担という条件で勝負ができる。儲か
ったときには何百匝円のボーナス、損をしても辞めるだけですむ。投資銀行の経営者がサブプラ
イムローン関連証券に投資したのも、勝ったときには掛け金を得られ、負けても自分は掛け金を
払わなくてもよいという制度があるからだ。しかも、金融機関を破綻させるのは難しい。すると
経営者は勝てば自分の手腕、負ければ株主と納税者の負担という条件で賭けができる。

階級闘争は不毛である。金持ちを貧しくすれば社会全体の富が減少するだけだ。しかし、そもそ
も富を創造していない金持ちを貧しくしても社会全体の富は減少しない富は詐欺と略奪で生ま
れたものであって創造されたものではないと思われれば社会は危うくなる。それは、先に見た近
衛の考えがアジアと日本を災厄に巻き込んだことで明らかだ。豊かな人々が、自ら、富は明ら
かに創造されたものであると認識されるためのルールを作ることが必要になるのではないか。

※なるほど、ここで近衛文麿の思想とウォール街占拠が漸近すなわちクロスオーバーするという
わけで、これから論考の目的の"未来の労働価値"へとつづくのだがどうなるのか?

Apr. 27, 2018

第16節 報酬返還の議論
なぜか日本で注目されていないが、金融危機の原因の一つは、経営者の報酬制度にあるという議
論がヨーロッパで盛んになっている。もちろん、過大な金融緩和、不十分な規制、自己資本の不
足などが、世界金融危機の原因の一部であることを否定しているわけではない。このような議論
の主導者の一人であるミラノエ科大学のマルコ≒ジョルジーノ教授は、「どうして企業が破綻し
経営者が金持ちになるのか、信じられない」という。

(もちろん金融危機にはさまざまな原因があるが)私は私的利益と公的利益の非対称性を指摘し
たい。金融機関の経営者による決定で、誰が利益を得たのかということだ。金融の混乱は、金融
機関の経営を委任された者が金融機関本来の利益のために行動しなかった、「代理人問題」によ
って生じたと考えている。つまり、危機の原因は企業統治が適切でなかったことにある。……企
業の目的と経営者の報酬にはミスマッチがある。報酬政策こそが企業統治の要であり、企業統治
の不備が金融危機をもたらすのだ。(「金融危機は企業統治のミスによって生じた」、『週刊東
洋経済』2014年7月19日号)

確かに、例えば、破綻したリーマン≒フラザーズのリチャード・ファルドCEO(最高経営責任
者)は、2000年から解雇されるまでに3億5000万ドルの報酬を得ていたが、会社が破産
しても別に返さなくてよい。2008年から始まる世界金融危機が、リーマンショックから始ま
るとされていたとしてもだ。


              原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』

 Oct. 19, 2017
Amazon, Apple, Google and Facebook will all go away within 50 years, says author

                                     この項つづく 
 

 ● 今夜の一曲

Taylor Swift "Delicate"  
Writer:Taylor Swift / Max Martin / Karl Johan Schuster

This ain't for the best
My reputation's never been worse, so
You must like me for me
We can't make
Any promises now, can we, babe?
But you can make me a drink

Dive bar on the East Side, where you at?
Phone lights up my nightstand in the black
Come here, you can meet me in the back
Dark jeans and your Nikes, look at you
Oh damn, never seen that color blue
Just think of the fun things we could do
'Cause I like you

This ain't for the best
My reputation's never been worse, so
You must like me for me
Yeah, I want you
We can't make
Any promises now, can we, babe?
But you can make me a drink

Is it cool that I said all that?
Is it chill that you're in my head?
'Cause I know that it's delicate (delicate)
Is it cool that I said all that
Is it too soon to do this yet?
'Cause I know that it's delicate
Isn't it? Isn't it? Isn't it? Isn't it?
Isn't it? Isn't it? Isn't it? Isn't it?
Delicate

 

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改めて環境リスク本位制宣言

2018年09月05日 | 政策論

  Aug. 28, 2018

                                             
第13章  わが身を貴べ
人々は、栄誉を得ては胸を騒がせ、恥辱を負うては胸を騒がせる。栄辱を人生最大の関心事とか得
ること、あたかも自分自身と取り違えているかの観がある。
なぜ栄誉を得ては胸を騒がせ、恥辱を負うては胸を騒がせるのか。栄誉をよしとし、恥辱を悪しと
する一面的な考えにとらわれているからである。だからこれを得ても胸を騒がせ、失っても胸を騒
がせ、不安のおさまるときがない。

なぜ栄辱を自分自身と取り違えるのか。栄辱に関心を抱くのも、自身が存在すればこそである。自
身が存在しなければ、そもそも栄辱がどんな意味を持つであろう。自身あっての栄辱なら、自身を
大切にすることこそ本筋ではないか。
自身を大切にする人は、物事の本末をわきまえた人である。政治に熱心なあまりに、自身を忘れて
しまう人、このような人物にはまだまだ天下の政治はまかせられない



天下より身を貴ぶ 自身を大切にする、それは利己的にふるまえということではなく、わが身に備
わった「道」を貴ぶことである。天下は、これに比べるなら、二義的なものにすぎない。賢人とし
て知られた許由は、帝亮から天下を診るといわれたのを耳の汚れだとして、頴川(えいせん)に耳
を洗ったという。

【下の句×樹木トレッキング:ておもへば紳も仏なりけり×サカキ】 

榊葉に心をかけて木綿四手(ゆうしで)ておもへば紳も仏なりけり  西行『山家集』

榊葉に木綿四手を掛けて、心をこめて祈願しょう。伊勢の神は 国家の神であるが、見方によって
はその本地は大日如来とも いわれていて、私の信仰する仏と同じなのだから。

※木綿四手は木綿で作った四手。
※伊勢神宮はもともと古代日本の天照大神、実は天照大神は大日如来が権現し、神と仏が一体にな
ったものなのという。神宮の神域は曼荼羅がそのまま展開したものであり、外宮は金剛界を、内宮
は胎蔵界をあらわす神仏習合思想を顕す。西行はたびたび伊勢神宮に参拝し、最初のものは出家後
間もない頃だったされ、山家集でその折の気持を歌ったものという。

 

このように、日本では古くから神事に用いられる植物であり、「榊」という国字もそこから生まれ
る。
古来から植物には神が宿り、特に先端がとがった枝先は神が降りるヨリシロとして若松やオガ
タマノキなど様々な常緑植物が用いられたが、近年はもっとも身近な植物で枝先が尖っり、神のヨ
リシロにふさわしいサカキヒサカキが定着している。
家庭の神棚にも捧げられ、月に2度1日と
15日(江戸時代までは旧暦の1日と15日)に取り替える習わしになっている。神棚では榊立を
用いる。
田舎などでは庭先に植えている家庭が多い。また、常緑樹でもあることから庭木としても
使われていることがある。

 Cleyera japonica

サカキ(榊、Cleyera japonica)は、モッコク科サカキ属の常緑小高木。神棚や祭壇に供えるなど、
神道の神事にも用いられる植物。学名は、植物学者で出島オランダ商館長を務め、サカキをヨーロ
ッパに紹介したアンドレアス・クレイエルにちなむ。常緑性の小高木。低木を見ることが多いが、
高さ12メートル、胸高直径は30センチメートルになる。若枝は緑だが、幹の樹皮は灰淡褐色に
なる。枝先の芽は裸で、若葉が巻いて鎌状になる。
葉は二列生の互生で、厚みのある革質、のっぺ
りとした表面で、鋸歯は全くなく、きれいな楕円形である。裏面はやや色薄く、両面ともに無毛。
月ごろ側枝の基部の側の葉腋から白い小さな花を咲かせる。花は1~4個が束状に出て、いずれ
も葉の下に出て、下向きに咲く。11月ごろには黒くて小さな液果を付ける。 



【スマートカーペンター事業:小型木材用CNCマシン】

4月21~26日、Human Computer Interactionの世界的な国際会議「CHI2018」で優秀作品賞を受
賞した、この小型木材用数値制御マシン『MatchSticks』はカリフォルニア大学バークレー校のラ
ンドン・ティアンらの研究グループが開発したもので、その特徴は、木材をつなぎ合わせるジョイ
ント部分の複雑な形状でも寸分たがわず加工できるため、木工初心者でも高い精度で作品を完成で
き、木工技術をデジタルネットワークで共有きることにある。



Title :MatchSticks: Woodworking through Improvisational Digital Fabrication



わたし(たち)は、主に天然/加工/改変木質加工材料やの動態的物性を組み込み精密制御した加
工物を様々な大きさに組み立て積層
物――日用品、玩具、家具、建材、架台、電化製品、工業製品
の代用/機能硬化品への応用展開業を考えるが、今夜のところでは具体的なものが思いつかないの
で残件扱いに。

● 再エネの主力電源化は世界的な流れ

 Sep. 5, 2018
※ 出典:「再エネの主力電源化は世界的な流れ」、経産省・新エネルギー課の山崎課長に聞く(前半)
   日経 xTECH(クロステック)

● 米国 系統接続蓄電容量前年度68%増

 Sep. 4, 2018

米国のいくつかの州では、ソーラ/蓄電の設置などで急速にエネルギー貯蔵容量が増加。 数時間放
電可能で、より長時間エネルギー貯蔵でき広範囲のバランスが可能となった。
スマート・エレクト
リック・パワー・ア
ライアンス(SEPA)の調査によると、米国の電力会社は2017年末までに貯蔵
エネルギー容量が68ギガワット時まで増加。小規模蓄電の増加はわずか31%だが、昨年度は蓄
電池の長寿命化で、大幅増加。
数時間の放置が可能な、より長時間、蓄電池の使用で、カリフォル
ニアとハワイのような広域エネルギー貯蔵と、ハワイやフロリダのソーラー/エネルギー貯蔵共同
設備でとのバランス制御が可能になった。

カリフォルニア州の電力会社は、再エネ支援エネルギー貯蔵政策に対応、エネルギー容量が大幅に
増加。同州では、2017年の貯蔵エネルギー容量を75%追加、累積エネルギー容量のほぼ60%を
占めた。
SEPAの調査は、カウアイ島ユーティリティ協同組合の最初の太陽光/貯蔵施設の日別プロ
フィール(太陽光発電の微妙な変動に適応する「ディスパッチ可能な」太陽光+ KIUC)をハワイに
送電(下図21)。このシステムは、13MWの太陽光と13MW / 52MWhの蓄電設備を備え、日中は電力を
貯蔵し、午前、夕方、曇りの時間帯に電力送電している。

July 22, 2018

SEPAは、KIUCが年末時点で顧客1人当たり2,036ワット時間貯蔵していたことを計算。サンディエ
ゴガス&エレクトリック(San Diego Gas and Electric KIUCは、太陽光+貯蔵を増やし続けており、
電力会社は再生可能エネルギー依存を高めている。
Florida Power&Light、Arizona Public Service、Pho-
enix
地区のソルトリバープロジェクト、テキサス州のVistra Energyの4つのユーティリティ(既存太
陽光発電所での貯蔵)計画・稼働。
SEPAは、KIUCが年末の時点で顧客1人当たり2,036ワットアワー
の蓄電していると推計。


【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅴ】

 Yutaka Hrada, Wikipedea

第1章 所得配分と貧困の現実――生活の安心は企業でなく国家がまもるべし
国家が国民の生活を守る以前の時代

保険原理の欠陥
企業にとって、あらゆる規制は雇用を削減するように働く。むしろ、企業を生活保障の責務から解
放したほうがよい企業を使って、人々の安心を確保しようとしたのはドイツの鉄血宰
相ビスマル
クだ。ビスマルクが、皇帝ヴィルヘルムー世(1797~1888)の下でドイツ
統一を果たした
のは1871年のことだ。当時は、社会主義運動が盛んで、労働者はビスマル
クの政府と敵対して
いた。ビスマルクは一方で社会主義者を弾圧したが、同時に、労働者を籠絡
するために、災害保険・
健康保険・老齢年金などの社会保障制度を整備
した。それはピスマ
ルクなき後も続いた。それが戦
前、内務省、厚生省によって取り込まれていったのが日本の社
会保険制度だ。

ビスマルクの目的は、労働者を箭絡することで、すべての労働者がドイツ帝国の体制に満足するこ
とを望んでなどいなかった。もちろん、すべての労働者が満足することは望ましい。し
かし、それ
にはコストがかかる。多くの支持者がいれば少数の反対派は弾圧すればよい。多く
の反対派を弾圧
するのはコストもかかる。したがって、多くの労働者が満足すればよいわけ
で、すべての労働者を
保護しようなどとは考えていなかった。だから、社会保険から漏れる人
がいても何の問題もなかっ
たのだ。企業にいる人々は組織され、団結し、政治的な力も強い。

 飴と鞭

企業から漏れた人々は孤立し、無力で、帝国政府に敵対する力などないとビスマルクは見切ってい
た。何しろ、ビスマルクは、平均寿命が六十歳のときに、六十歳からの年金制度を作っ
て、これで
ドイツ国民は安心だと説いた政治的天才だ。

しかし、今日の福祉国家に、ビスマルクのようなことはできない。国家は、年金保険料を払わなか
った、あるいは、払うことができなかった高齢者が飢えて死ぬのを放置することはでき
ない。親が
医療保険を支払わなかったからといって、子どもに治療を受けさせないなどということもできない。
国家は、本当の意昧での国民皆保険を保障しなければならない。それは、保険制度ではなくて、税
で賄う保障になるしかない

当時、党勢を拡大しつつあったドイツ社会民主党(SPD)は、社会主義の力を弱めようというビ
スマルクの意図を認識していたが、それに反対することはできなかった。社会民主党は、結局、社
会保険を中道左派に欠かせない原理として採用するようになったという。 イギリスの社会保障制
度も保険主義によって支えられている。イギリスでは、社会保険は、一部には、すでにある制度を
継続するという理由から、また、国庫の枯渇を回避するとの理由から導入されたという。そもそも、
福祉国家建設の設計図である『社会保険および関連サービス』(通称『ベヴァリッジ報告』194
2年)や『自由社会における完全雇用』(1944年)が発表されたときには、すでに保険原理が
定着していた。それは、「人々は年金や給付への権利をただ与えられたとは思っていない。彼ら彼
女らは保険料を支払うことによって獲得したいと思っている」からだろう(この二つの段落は、ト
ニー・フィッツパトリック『自由と保障-ベーシック・インカム論争』126頁~127頁、武川
正吾・菊地英明訳、勁草書房、2005年、による)。



しかし、その保険は、実際には勘定があっていない。より少ない年金保険料を集めて、より多くの
年金を支払う制度になっている。保険料は現在の高齢者に支払ってしまい、将来の高齢者はさらに
将来の若者に保険料を払ってもらう仕組みだ。したがって、日本のように将来の若者が減少してい
く社会では、将来の若者一人当たりの保険料がとめどもなく上昇していき、その負担が不可能にな
れば、破綻するしかない仕組みだ。これは、ビスマルクも気が付かなかった保険主義の欠陥だ。

国民年金の保険料を払わなくても、払わない人には年金を払わなくてよいのだから、国民年金が崩
壊することはないという議論がある。形式的には正しいが、福祉国家の実体としてはまったくの誤
りである。生活できない老人には生活保護費を支給することになるのだから、国民年金会計が崩壊
しなくとも生活保護会計は破綻する。

かつては、政府が個人と直接対応することが実務的に難しいという問題があったかもしれない。し
かし、今日、政府が個人の名前と住所と年齢を把握することに何の問題もない。2007年に明ら
かになった「消えた年金」問題は、コンピュータの能力が十分になってもそうしていなかったとい
社会保険庁(当時)の組織的な失態で、政府の能力の限界とは関係がない。

雇用重視の財政金融政策の重要性
なお、ウィリアム・ベヴァリッジ(1879~1963)の報告書名の「完全雇用」にもあるとお
り、彼は、ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)やその周辺の経済学者と協力し、
雇用の維持拡大が重要と認識していた。これは現在の日本の福祉専門家にはない優れた視点である。
仕事がなければ、年金保険料が集まらず、失業手当も増大して年金会計が厳しくなるからだ。

この視点を現在の日本の状況に適用すれば、まず財政金融政策によって雇用状況を改善しておくこ
とが重要だということである。2012年12月以降、アベノミクスの第一の矢、大胆な金融緩和
(リフレ政策)で雇用情勢が好転している。好転しているのは非正規雇用だけだという批判はある
が、ともかく雇用は伸びている。ついには人手不足で大変だという議論も現れてきた。このままで
は人手が足りないので成長が止まってしまう、深夜営業ができなくて大都市間の国際競争に勝てな
い、福島原発事故収束、震災復興、東京オリンピックのための工事もできないなどという議論があ
る。

もっとも、人手不足は急に言われ出したことで、賃金高騰の程度もまだまだわずかである。しかし、
人手不足になって賃金がわずかでも高くなったのは、今まで不本意ながら、他に働くところがなく、
安い賃金で働いていた人が、より高い賃金を提示してくれる企業が現れたので、そこに移ったから
だ。より高い賃金を提示できる企業は生産性の高い企業、低い賃金しか出せない企業は生産性の低
い企業である。労働者が、生産性の低い企業から生産性の高い企業に移れば、経済全体の平均の生
産性は上昇する。

また、賃金が上がるので、今まで働いていなかった人々も働き出す。すなわち、より多くの人が働
くことでGDPが増大する。さらに、一般に、人手不足は労働条件の悪いところで起きている。そ
この賃金が上がるのは、今まで賃金の低かった人たちの賃金が上がるということである。これは所
得分配を平等にする。

すなわち、生産性が上がるか、働く人が増えて生産物が増えるか、所得分配がより平等になるか、
いずれか、あるいはすべてが同時に起きている。いずれにしろ、よいことである。
人手不足のおかげて、これまで安い人件費で猛烈に人を使っていた、いわゆる「ブラック企業」も
考え直さざるをえない状況になっている。ブラック企業とは、賃金が安く、とてつもなく働かされ、
ご褒美があるかもしれないと思わせるが、実はないという会社である。

すると、なぜそこで働いてしまうのかという疑問が生じる。理由は、長い不況で、最低賃金に近い
仕事が増え、そこに滞留することを人々が恐れるようになったからだ。若いうちに正社員にならな
ければ、いつ仕事を失うかわからず、一生生活が不安だと、多くの人々が思っている。ブラック企
業は、正社員で採用するということで、不安な若者を取り込むことができる。

正社員で雇っても、自発的退職に追い込むノウハウを持っているので、解雇の容易な非正規を雇う
必要もない。社会保険料は、労働時間にかかわらず一律だから、長時間労働させれば時間単価を切
り詰めることができる。時間当たりにすれば最低賃金なのだが、若者は、それでもここで働いたほ
うがマシと思わされてしまう。

リフレ政策で景気をよくすることが雇用環境を改善するために効果的だというのが、2012年1
2月以降の経験からわかったことである。1990年の初めまで、日本の失業率は2%台たった。
それが上昇することによってブラック企業が現れてきた。安倍音三総理が大胆な金融緩和を唱え、
それを実現に移してから、失業率は低下した。失業率がさらに低下していく過程で、ブラック企業
は人を取ることができなくなっていく。

一方、アベノミクスの第二の矢と位置づけられる財政政策はあまりうまくいっていない。財政策で
雇用を改善するとは、政府が公共事業を発注して建設会社に人を雇ってもらうことである。財政政
策には、減税によって税引き後の所得を高め、消費支出を増やして結果として雇用を増やすという
方法もあるのだが、日本では公共事業が一般に用いられてきた。ところが、それがうまくいってい
ない。日本全体で建設工事をする能力には限りがあり、東日本大震災からの復興、福島原発事故の
処理、東京オリンピックの準備という、必ずしなければならない建設工事があるなかで公共事業を
増やせば、民間の建設工事ができなくなってしまう。建設単価が上がって、実質の工事量が減って
しまうのである。実際、2014年になってからの実質公共投資は伸びていない

政府支出で雇用をつくるなら、できる限り特定の支出に偏らないほうが望ましい。特定の支出に傾
けば、供給のボトルネックが生まれて価格が上昇し、雇用拡大効果を阻害する。消費税増税で景気
が悪化しているが、増税で景気が悪化するなら、減税で景気が好転するのも道理である。雇用拡大
には、減税も考えるべきである。減税しても、人々が何に使うかわからないのだから、減税は、特
定の支出に偏らない財政面からの雇用拡大政策である。

財政赤字が問題だというなら、金融緩和だけして、財政政策を使わなければよかっただけだ。金融
緩和で雇用が増えれば、必ず税収が増加し、その分だけは財政赤字が縮小するからだ(雇用重視の
金融政策について詳しくは、原田奉『日本を枚ったリフレ派経済学』日経プレミアシリーズ、20
14年、を参照されたい)。



企業を生活保障から解放しよう
個人を老後や疾病や失業から保護するのは、企業ではなくて政府の直接の仕事とすべきである。2
016年から国民一人一人に番号を割り当てるマイナンバー制度が導入されるが、2002年に運
用が開始された住民票ナンバー、1997年に導入された基礎年金番号についてプライバシー侵害
との批判があったように、マイナンバーにも同様の批判がある。だが、政府が個人の名前と住所と
年齢を知ることがプライバシーの侵害だというなら、そもそも福祉国家は成り立たない。個人を保
護するためであるから、政府がその個人の名前と住所を把握することに異議はないだろう。

年金、医療保険、失業保険の維持には費用がかかる。その費用は、個々人から保険料として取り立
てるのではなくて、税を充てる。ただし、悦による年金は基礎年金分だけで、老後も豊かな暮らし
を楽しみたい人は、自ら貯蓄するか、基礎年金以外の年金に加入する。これは、現在二階建て部分
と言われている厚生年金や三階建て部分と言われている企業年金のことである。二階建て以上の部
分については、これまでと同じで、新たに費用が発生するわけではない。ただし、これらの年金は、
完全に年金数理的に公正な年金、加入年によって損得の生じない積み立て型の年金にするべきであ
る。基礎年金、医療保険、失業保険には、これまで入っていない人が入るという意味では、新たな
費用が発生する。しかし、現実問題として、政府は、年金や保険に入っていない人が路頭に迷うの
を放置できないのだから、実質的に新たな負担を作るわけではない。

負担について見れば、所得の多い人ほど負担することになる。年金保険料は月62万円の給与、年
額で150万円のボーナスという上限があるので、年収で894万円(=62×12か月+150
万円)以上の所得では増えずに定額となる(厚生労働省社会保険審議会年金部会では、この上限額
を引き上げようという議論がたびたびなされている)。一方、税は基本的には所得の高い人ほど負
担する額が大きくなるわけだから、税による負担は、これまでよりも累進的になる。税による安心
の制度の利点は、そこから漏れる人がいなくなることだ。悦によってこそ本当の国民皆保険制度が
実現できる。

これに対する反論は、これまで保険料を納めてきた人と納めていなかった人との不公平があるとい
うものだ。反論は正しいが、医療保険、雇用保険は、基本的には掛け捨ての保険であるから、1~
2年の移行期間を設ければ問題はない。問題は年金だ。ただし、基礎年金の部分だけを税で賄う
けだから、それほど大きな問題ではない。移行期間は20年を要するが、国民すべてを保障するた
めに必要なことなのだから早くしたほうがよい。

日本の特徴はワーキングツアーが多いこと
何よりも問題なのは、現在の日本の政策が、現実に貧困を減らしていないことである。
貧困の理由は、仕窄のないこと、失業または疾病などにより働けないこと、働いても給与の低いこ
とである。日本の貧困率は、すでに広く指摘されているように先進国のなかでアメリカ
についで高
い。この指摘は、OECDのレボート(Economic Survery of jgan 2006)による
ものである。これに
よれば、日本は相対的貧困率で見ると先進14
か国中2番目に不平等だというのである。相対的貧
困率とは、所得が高い人から低い人を並べてちょうど真ん中にある人
の所得(中位所得)の半分以
下の所得しかない人の比率である。相対的貧困率は、貧しい人が
多いか少ないかの指標である。こ
れまでの日本での議論では、平等社会だった日本が不平等に
なっているという時系列での変化を問
題にしていたのだが、このレポートは、日本が国際的に
見ても不平等であるというのだ。

OECDのレポートによると、図1‐3の上図に見るように、日本はこの貧困率が税引き・社会保
障給付後の可処分所得で、2000年で、図中の14か国中アメリカに次いで二番目に
高い。下図
には1990年代央のデータもあるが、これで見ても、日本はアメリカ、イタリア
に次いで三番目
に相対的貧困率が高い。日本の格差の本質は、とてつもなく豊かな人が多いの
ではなくて、貧しい
人が多いということになる。

相対的貧困率とは、真ん中の所得の人に比べて所得の低い人がたくさんいるということである。こ
れにも、日本は平等社会であると考えている人からは反論がある。反論は、年功賃金の
傾向のある
国では不平等になるというものだ。確かに、若いときに所得が低いが年齢を重ねる
とともに所得が
上がる国では、一生涯を通じての不平等は少なくても、ある一時点の所得分布
を見れば不平等度は
高くなる。しかし、この反論は1990年ごろまでは説得力があったかも
しれないが、現在では説
得力がない。一九九〇年代になって正社員になれない若者が増大し、
その上うな若者が将来、年功
に従って高い賃金を得られるとは考えられないからだ。相対的貧
困率が高い理由について説得力が
あるのは、OECDレポートが指摘している、個人への所得
再分配が少ないことだろう。

図1‐3に見る上うに、市場所得(悦・社会保険料控除前かつ社会保障給付前の所得)での相対的
貧困率では、日本は2000年(上図)で、一四か国中六番目で、北欧、オランダ、カ
ナダに次い
で平等な国である。1990年代史(下図)では、一四か国中一番目で、もっとも
平等な国である。
しかし、最終的な可処分所得で不平等になるのは、児童手当、失業給付、生
活保護などの支給額
が少ないからである。例えば、前項で述べた上うに、日本の生活保護制度
は、支給額は高いが限ら
れた人にしか配らないという奇妙な制度となっている。また、失業給
付制度も、職を失うことの少
ない正社員には厚いが、職を失うことの多い非正規社員はその制
度に入っていないという、これも
奇妙な制度になっている。この上うな制度の下では、可処分
所得で見た相対的貧困率が高くなるの
は当然である。


これまでの日本の社会安定機能は、組織を通じて生活の安定を図るという方法だった。公共
事業を
増大するのは、建設会社にお金を渡して人々を雇ってもらうという方法だった。雇われた人々が、
社会にとって必要なインフラストラクチャー(インフラ)を建設しているのなら一石二鳥でよいこ
とに違いない。しかし、それが無駄な公共事業だったら、高いコストに見合わない。日本の制度も、
西欧諸国のように、個人に直接分配する社会安定制度に置き換える必要があるのではないか

一方、日本の失業率は、2008年9月のリーマンショック後の不況、世界金融危機の不況で上昇
していたときでも、他の先進国が10%以上になったことに比べれば、五%あまりと低かった(2
012年6月以降、アベノミクスの効果によりほぼ三%台となっている)。ということは、日本人
は働いているが貧しい人、つまりワーキングブアーが多いことになる。ワーキングブアーは先進資
本主義国にとって、あってはならないことだった。なぜなら、働きたい人には仕事が与えられ、そ
れによってきちんと暮らせることが、資本生殺が社会主義よりも優れている証拠とされてきたから
だ。貧ハしいのは、本人が怠けているか、疾病などによるものであり、前者は自己責任であり、後
者は別途手当すればよく、資本主義は機能しているというのが基本的なアイデアだったからだ。

           原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』

今夜は社会保障政策史のお復習い。
                                      この項つづく

  Sep. 4, 2018
 Shohei Ohtani takes a left handed pitcher deep for first time in his career
大谷翔平、左投手から初ホームラン

● 今夜の寸評:彦根で風速毎秒46.2メートルを観測

台風21号が多くの被害を残し足早に過ぎ去った。彦根城は連日のように多発する豪雨や強風で石
垣や白壁が剥離し修復が追いつかない。関西国際空港は高潮で復旧の目途が立たないでいる。無電
柱化・空港の浮体(メガフロート)化を急ぐべきであったことを思い返す。あらためて『環境リス
ク本位制』を宣言する。

   Aug. 28, 2018

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奇妙で無用な制度

2018年09月02日 | 政策論

  Aug. 28, 2018

                                             
第11章  無 の 用
たくさんの輻(や)をひとつの轂(こしき)にはめこんで、車輪をつくる。轂のなかがうつろ
だから、そこに心棒を通して、車輪が廻せるのだ。粘土をこねて、瓶をつくる。なかがうつろ
だから、物が入れられるのだ。出入口をうがって、部屋をつくる。出入口がうつろだから、部
屋が使えるのだ。このように、「無」のはたらきがあるからこそ、「有」が役に立つのである。

第12章 「腹をなして目をなさず」
美しい色彩は、人を盲にする。快い音楽は、入を曼にする。うまいご馳走は、入の味覚を狂わ
せる。 狩りを好んで獲物を追うことに熱中すれば、人は心の平衡を失う。宝物を手に入れよ
うと夢中にな
れば、入は行ないをあやまる
聖人は、もっぱら内面を充実させて、外界の刺激を追い求めない。つまり、欲望を捨てて「道」
にのっとるのである。

五色目を乱る 万物は「道」の現われである。したがって、「道」はおのれに内在する。感覚
の快を追い求め、欲望に従って行動すること、それは、外なるものに支配されることにほかな
ない。


【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅳ】

 Yutaka Hrada, Wikipedea

第1章 所得配分と貧困の現実――生活の安心は企業でなく国家がまもるべし
国家が国民の生活を守る以前の時代

最低賃金の引き上げは失業率を上昇させる

雇用の賃を高めるために、最低賃金を引き上げ、非正規雇用を制限し、社会保険への加入を
企業に義務づけようという意見もある。実際に、2018年10月から、労働時間週20時間
上、年収106万円以上、雇用期間1年以上のパート労働者(学生を除く)を、年金、健康
険に加入させることとなっている(従業員501人以上の企業のみ)。

しかし、企業が最低払わなければならない賃金を引き上げることができても社会保険の雇

主負担や解雇のコストを引き上げることは、企業にとっては賃金を上げるのと同じであ
)、
企業に強制的に人を雇わせることはできない。高い賃金で人を雇っても引き合わないとな
れば、
企業は人を雇わなくなるだろう。雇わないばかりでなく、海外に工場を侈してしまうか
もしれ
ない。そんな安い賃金しか払えない会社は海外に行ってしまえばよいという元気のよい
意見か
おるかもしれないが、安い賃金しか払えない会社がなくなっても、高い賃金を払える会
社が生
まれる保証はまったくない。最低賃金の引き上げは、雇用を減らしてしまうかもしれな
い。か
もしれないだけではなく、実際に減ってしまうだろうと思われるデータがある。

上図1‐2は、OECD(経済協力開発機構)の研究とデータから、2005年における最低
賃金の平均賃金に対する比率と失業率の関係をOECD加盟国について見たものである。20
05年を取ったのは、最低賃金のデータが国際的に得られた最近年だからである。また、20
08年の世界金融危機の影響を受けず、アメリカの住宅バブルの影響をそれほどは受けていな
い時期である。図を見ると、最低賃金が高くても失業率が高くない国のグループがある。しか
し、それを除くと、最低賃金が高いほど失業率が高い傾向がある。これは高い最低賃金が雇用
を縮小させてしまった結果だろう。

もちろん、最低賃金が高くても失業率が高くない国はあるのだから、最低賃金を上げても失
率が高くならないようにすることは可能かもしれない。しかし、最低賃金が高くても失業率

高くない国は、ルクセンブルク、オランダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルラ

ドである。人口五〇万に満たない金融国家であるルクセンブルクを真似るのは無理があるだ

う。アイルランドも金融国家であるが、金融バブルの崩壊で失業率が急上昇した。オースト

リア、ニュージーランドは資源や農産物価格上昇の恩恵を受けていたが、日本には真似でき

い。真似できそうなのはオランダである。賃金削減と時間短縮、社会保障負担の軽減(ワッ

ナー白意)、フルタイム労働者とパートタイム労働者の差別禁止などの政策が成功しているの

かもしれない。ただし、平均賃金を下げてしまえば、最低賃金と平均賃金との比率が高くても、
最低賃金は高くなくなるということを意味しているのかもしれない。



最低賃金の問題ではなく生活保護の問題
最低賃金を引き土げれば雇用が減少するという分析が正しいとしても、最低賃金で月に160
時間働いても生活保護水準に満たないのはおかしいという反論があるかもしれない。しかし、
これは最低賃金の問題ではなくて、生活保護水準が高すぎるという問題である。日本の生
活保
護制度には、国際的に見て奇妙な特徴がある。制度を国際的に比較するのは難しいが、同志社
大学の埋橋孝文教授の素晴らしい研究に基づいて比較をしてみたい(「公的扶助制度の国際
較―― OECD24カ国のなかの日本の位置」『海外社会保障研究』第212号、1999年6
月),日本の公的扶助支出額のGDP(国内総生産)に占める比率を見ると、わずか0・3%
であ
り、OECD諸国の平均(2・5%)の約8分の1と極めて小さい(埋橋教授の研究は基
本的
にOECD加盟国のうち24か国を対象としているが、ここでは平均を計算する際、通常
先進
国と思われている国に限定するために、トルコを除いた)。



当然のことながら、公的扶助を受けている人々(子どもを含む)の総人口に占める比率も0・
%と低く、OECD諸国の平均(2・4%)の約10分の1にすぎない。ただし、これらの
比率は埋橋教授の研究がなされた1990年代後半の数字である。2011
年では、公的扶助
支出額のGDPに占める比率は0・7%(国立社会保障・人口問題研究所
ウェブサイト「社会
保障統計年報データベース」第9節「生活保護」の第276表「保護費
〔扶助別〕」)、公的
扶助を受けている人々の総人口に占める比率は1・6%となっている(同第271
表「被保護
実世帯・枚保護実人員・保護率」)。どちらの比率もほぼ倍に上昇したわけで
ある。それでも、
以下に述べる他の先進国との比較から得られる結論は、現在においても正し
いと考えられる。

 Oct. 12, 2015

   

他の先進国との比較で考えた燭台、日本の公的扶助支出額のGDPに占める比率は小さいが、
公的扶助を受けている人口の総人口に占める比率と比べると、相対的には大きい。したがって
日本の公的扶助の支出総額は小さいが、公的扶助を受けている人、一人当たりへの支出額は、
先進国のなかでも大きいのではないかと予想できる。
表I‐Iは、一人当たりの公的給付額を2つの方法で示したものである.,第1の方法は、
国の現役労働者の平均所得との比で見るものである。これで見ると、日本は54%で世界7位
となる。日本の上にあるのは北欧の福祉国家、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドなど
である。

第2の方法は、購買力平価に換算したうえで、OECD諸国の平均との差で比べるというもの
である。公的扶前額を購買力平価で換算すると、各国の物価水準の違いを調整した生活水準そ
のものになるわけだから、優れた評価方法である。また、為替レート換算のように毎年の振れ
が大きいということもない。購買力平価換算で比べると、アイスランド、カナダ、アメリカ(
ニューョーク)などが上位にきて、日本は11位となる。ただし、アメリカは地域ごとの給付
格差が大きいためニューヨーク、フロリダ、ペンシルベニア、テキサスが比べられており、そ
のなかでニューヨークの下にあるだけだから、フロリダ、ペンシルベニア、テキサスよりは上
というわけであり、国単位で考えれば、日本は10位ということになる。
また、日本より上位にある国は人口の少ない国が多い。人ロ1000万人以上の国で日本より
上位にあるのは、カナダ、オーストラリア、オランダの3か国だけである(第一の方法による
比較ではオーストラリアのみ)。したがって、人ロ1000万以上の国のなかでは、日本の公
的扶助給付額は、世界2位または4位ということになる。

 Yoshiaki Tachibanaki

日本の生活保護水準は高い
購買力平価に換算した一人当たりGDPで見て日本とほぼ同じ所得のイギリス、フランス、ド
イツの公的扶助額は、日本より2~3割低い。また、日本より所得の高いアメリカの公的扶前
額の4地域単純平均は、日本より約2
割低い。
イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの公的扶助総額の対GDP比は、それぞれ4・1%、
2・0%、2・0%、3・7%であり、日本は前述のように0・3%である。また、イギリス、
フランス、ドイツ、アメリカの公的扶助を与えられている人の総人口に占める比率は、それぞ
れ15・9%、2・3%、5・2%、10・0%であり、日本は前述のように0・7%である
(以上の数値は埋橋前掲論文による)。

  

要するに、日本の一人当たり公的扶助給付額は主要先進国のなかで際立って高いが、公的扶助
を実際に与えられている人は少ないということになる。これは極めて奇妙な制度である。日本
に貧しい人が少ないわけではない。同志社大学の橘木俊詔教授、生活保護水準以下の所得で
暮らしている人は人口の13%と推計している(『格差社会』18頁、岩波新書、2006年)。
ところが、実際に生活保護を受けている人は2006年でわずか1・2%である(国立社会保
障・人口問題研究所ウェブサイト「社会保障統計年報データベース」第9節「生活保護」の第
271表「披保護実世帯・披保護実人員・保護率」。埋橋前掲論文との値の違いは調査年の違
いによる)。
私は、日本も、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカのように給付水準を引き下げて、生活
保護を受ける人の比率を高くすべきであると考える。これまで日本で奇妙な制度が続いてきた
のは、おそらく、高い給付水準のままで実際の支給要件を厳しくし、保護を受ける人の比率を
下げていたほうが、給付総額が減るという財政的要請があるからだ。しかし、今後、65歳以
上の無年金者が続出するなかで、現在の制度は維持できないだろう。65歳以上の人は、支給
要件の一つである「働けないこと」を容易に証明できるからだ。日本独自の制度をやめて、グ
ローバルスタンダードに合わせるしかないだろう

         原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』


日本の一人当たり公的扶助給付額は主要先進国のなかで際立って高いが、公的扶助を実際に与
えられている人は少ないということになる。これは極めて奇妙な制度。だから、日本独自の制
度をやめ世界基準に合わせなければならない。と、ここでは重要なことが述べられている。こ
の問題提起に出口政策が展開されていく。ところで、経済学の数学モデルに心理学的に観察さ
れた事実を取り入れていく行動経済学が、1990年代以降の米国では主流派経済学となりつつあ
るというやが、そんなことを頭の片隅において、問題解決を考えていこう。
 

※ 実はワーキングプア大国日本?!



                                                      この項つづく

【人工知能でタンパク質を自動設計】

● 様々な機能性タンパク質開発

8月12日、東北大学大学らの研究グループは、人工知能と実験を組み合わせることで、タン
パク質の機能改変を従来よりも大幅に効率化する手法の開発。
緑色蛍光タンパク質(GFP)を黄
色蛍光タンパク質(YFP)への改変をこの成果手法で、既知YFPよりも蛍光性能の高い新規YFPを
多数発見でき、抗体や酵素などの医療・食品・環境で役立つ様々な機能性タンパク質開発を加
速できる
。上図1のごとく
、人工知能で、タンパク質の機能改変の効率化――まず従来のラン
ダムな変異導入で少数の変異体を調製して実験を行い、人工知能の学習データ取得、➲次に、
人工知能技術の1
つのベイズ最適化で、変異導入目的機能をもつタンパク質が得られるかを予
測➲目的の機能を有すパク質を豊富に含み、安価に実験を行える小規模な変異体群(スマート
ホットライブラリー)の提案が可能となる。


この研究で、緑色蛍光タンパク質(GFP)を黄色蛍光タンパク質(YFP)の改変に適用して、既
知YFPより長波長で蛍光強度も高い新規YFPを多数発見することに成功(上図2)。従来のラン
ダムな変異導入で調製したライブラリーに約3%しか黄色蛍光タンパク質が含まれなかったが
このライブラリーをの習データを人工知能で翻訳させるとライブラリーでは約70%という高
割合で黄色蛍光タンパク質が含まれる(下図2)。この結果は人工知能がタンパク質の機能改
変に有効であることが判明する。

 【読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.11  

  

第3章
現代人が遠くの高みからサクソン人の村を見下ろしたとすれば、兎の巣穴のようだったアク
ルとベアトリスの村よりよほど「村」らしいと思ったことだろう。サクソン人はたぶん閉所

嫌う感性の持ち主で、だから丘の中腹に横穴を掘るような村造りをしなかった。いま谷の急

面を下るアクセルとベアトリスと同じ道を現代人がたどったとすれば、眼下の谷底に四十戸

それ以上の家を見ているはずだ。その家々の並びは、一つの中心を二重に取り巻く同心円状

ったろう。まだ遠すぎて、家ごとの大きさの違いや出来栄えの違いはわからなくても、どの

も屋根が草葺きであること、家全体が丸い造りであることは見てとれたはずだ。一見して、

分の――あるいは自分の両親の――育った家がちょうどあんなふうだった、と思う人もいる

もしれない。

 Oct. 21 , 2006

さて、サクソン人は住まいに開放感を優先したとして、そのぶん安全性を犠牲
にしたのだろう
か。いや、もちろん、それを補う手立てを用意していた。長い本の桂の先端を
巨大な鉛筆のよ
うに尖らせ、その柱を何本も結び合わせて柵を作り、それで村全体を囲ってい
た。柵のどの部
分も人の身長の少なくとも二倍はある。そんな柵でさえかまわずよじ登ってや
るという元気な
侵入者のためには、働の外側に深い濠が巡らしてあった。


丘を下る途中で一息人れたとき、アクセルとベアトリスにはそういう村が見えたはずだ。太

はいま谷の向こうに沈みかけている。二人のうちでは目のいいベアトリスが、一、ニ歩、ア

セルの前に出て、雑草やタンポポに腰まで埋まりながら、前のめりになって村をながめていた,

「四人、いえ五人ね。男たちが門を守っているのが見えますよ」と言った。「みんな手に槍を
持っているみたい。まえに女だちと来たときは、門番が一人と、あとは犬二匹だけだったのに」
「わたしたちは歓迎してもらえそうかな、お姫様?」
「心配いりませんよ、アクセル。向こうはわたしを見知っているはずですから。それにね、村
の長老の一人がブリトン入なの。村人とは血が違うのに、賢い指導者として認められている入。
今晩一晩くらい、安全な場所を用意してくれるでしょう。それはそれとして……アクセル、何
か起こっているみたいで、そっちが不安。また一人、槍を持った男が来ましたよ。獰猛そうな
犬を河西も連れて……」
「サクソン人のやることはよくわからないな。今晩はほかにねぐらを探したほうがよくはない
か」
「でも、すぐに培くなるし、それに、あの槍はわたしたちに向けられたものではないでしょう。
じつはね、この村にぜひ会いたい女の人がいるの。わたしたちの村の誰よりも薬のことをよく
知っている人」

アクセルはつぎの言葉を待ったが、ベアトリスが村をながめつづけているのを見て、自分から
言った。

「なぜ薬のことを知りたいのかな、お姫様」
「ちょっと不快な感じがね、ときどき:・:・あの人ならそれに効く何かを知っているかと思
って」
「不快な感じってどんな、お姫様?どのあたりが不快なのかな」
「何でもないんですよ。ここに泊まる予定だったから、それなら、と思っただけで」
「だが、どのあたりなんだい、お姫様、その痛みは」
「この辺……」ベアトリスは振り向きもせず、脇腹を――肋骨のすぐ下あたりを-手で押さえ
て、笑った。「話すほどのことてもないですよ。だって、ほら、今日たってちゃんと歩けたで
しょう?」
「ちゃんと歩けていたとも、お姫様,止まって休みたがったのは、むしろわたしのほうだ」
「だからそういうことですよ、アクセル。心配することじゃありません」
「後れもせず、ちゃんと歩けていたよ、お姫様。歳が半分の若い女とも張り合えそうだった。
それでもだ、ここに痛みの相談に乗ってくれる誰かがいるのなら、会いに行っても損はないだ
ろうな」
「ですからそう言っているでしょう、アクセル?薬と交換できる錫も少しは持ってきているし」
「いくら小さくても痛みはいやなものだ。誰だって多少の痛みをかかえているが、できれば取
り除きたいな。薬に詳しい人がここにいて、門番が通してくれるのなら、ぜひ会いに行こう」

濠にかかる橋を二人が渡るころには、あたりがほとんど暗くなり、門の両脇に松明がともされ
ていた。番人はみな大柄で、がっしりしていたが、二人が近づくのをにて、なぜか慌てふため
いていた。
「ここで待っていて、アクセル」とベアトリスがそっと言った。「まず一人で行って話してみ
ます」
「槍には近づくなよ、お姫様。大は鎮まっているようだが、サクソン人はなんだかひどく怯え
ている」
あなたが怖いのよ、アクセル、歳なのにね。怖がるのは間違いだって教えてきます

ベアトリスは門番に向かって恐れ気もなく歩いていった。門番はベアトリスを取り囲み、話を
聞きながら、ちらちらと疑い深そうにアクセルを見ていた。やがて、一人がサクソン語でアク
セルに呼びかけた。松明の近くに来い………おそらく、若者が変装していると疑い、確かめた
かったのだろう。ベアトリスとさらにいくつか諮葉を交わしたのち、二人を通してくれた。
遠くから見たときは整然とした二重の輪だった村が、いざ中に入って狭い通路を歩いてみると、
まるで複雑怪奇な迷路に変わっていた。印象と実際の隔たりの大きさにアクセルは驚いた。確
かに暗くなってきてはいる。だが、ベアトリスの後ろを歩いていくアクセルには、ここの村造
りの理屈や狙いがまったくわからなかった。目の前に不意に建物が出現して行く手をはばむ。



二人は首をひねりながら、やむなくわきの路地にそれる。だが、その路地を行くには、野の道
以上に気を使って歩かねばならない。なにしろ穴ぼこだらけで、それがさっきの嵐でみんな水
溜りになっている。それに、サクソン人の無頓着ぶりはあきれるほどで、道の真ん中に瓦礦で
もなんでも散らし放題に散らしてある。よく平気なものだと思う。だが、それより何より悩ま
しかったのは悪臭だ。歩いていくにつれ強くなったり弱くなったりするが、決して消えること
がない。アクセルも当時の人間だから、排泄物のにおいには――人間のものであれ動物のもの
であれ――慣れていた。だが、この村の悪気はそんなものとは次元が違う。発生源はほどなく
わかった。ここの村人は神に供え物をする。あの神この神がいて、家の前であれ道端であれ、
ところかまわず山盛りの肉を捧げる。やがてそれが腐り、腐臭を放つ。ある場所でとくに強烈
なにおいがして、思わず振り向くと、小屋の軒先に何か吊るしてあるのが見えた。黒い物体だ
が、その形が目の前で刻々と変わっていく。驚いてよく見ると、無数の蝿がたかっていた。痛
が飛び回るにつれ形が変化した。そのすぐあと、子供たちが豚の耳をつかみ、引きずっている
のに出くわした。犬も、牛も、駿馬もいて、だが世話をする人がおらず、放し飼い状態になっ
ている。村人にも何人か出会ったが、みな黙って二人を見つめているか、ドアや鎧戸の後ろに
逃げ込むかだ。


                        カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

 ● 今夜の一曲

Paul Weller  "Shout To The Top"  (The Style Council)

 

  Aug. 28, 2018

 

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焦心を制す

2018年08月28日 | 政策論

 

                                             
第8章 水にまなべ
最高の善とは水のごときものをいう。水は万物を助け育てながらも自己を主張せず、だれしも
嫌う低きへ低きへとくだる。だから、「道」に似ているといってよい。水、それは、位する所
は、低い。心は、深く静かである。あたえるに、わけへだてがない。言動に、いつわりがない。
おさまるべきときには、必ずおさまる。はたらきは、無理がない。時に従って、変転流動して
窮まることがない。水と同様に、自己を主張せぬもののみが、自在な能力を得るのである。

上善は水のごとし 「水は方円の器に随う」といい、「行賞流水」という。いずれも水の流勤
してやまぬところをひいてのたとえだが、老子は水にダイナミックな「不争の徳」を象徴させ
た。流動するからこそ力をもつのである。なお、水を語った章としては、他に78章がある。



第9章 鋭利な刃物は折れやすい
酒を満たした杯は、手に取れば酒がこぼれる。鋭利な刃物は、折れやすい。財宝を蓄えれば、
かならず狙われる。富貴になって慢心するのは、災厄を招くもとだ。成功すれば身を退くのが、
天の道である。

功遂げて身辺く
 「天勾践を空しうするなかれ、時に茫詰なきにしもあらず」 。小学唱歌に歌われた児
島高徳の事蹟によって、わが国にも名を知られている落差を例にひこう。

呉正夫差に敗れ、会稽の屈辱的講和を余儀なくされた越正勾践は、賢臣范蠡(はんれい)の補
佐によって臥薪嘗胆二十一年の後、見事に雪辱を遂げた。勾践が天下に覇をとなえた直後、功
臣として今や、権勢並ぶ者もなき范蠡は、ひそかに越を脱出して、商人として身を終えた。范
蠡と共に勾践の左右の腕として活躍した文種が、邪魔者として勾践から死を命ぜられたのは、
范蠡出奔の後、日もまだ浅いころだったという。
 



【いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代 】

● 2035年全固体電池2.8兆円
8月24日、全固体リチウムイオン電池(以下、全固体電池)の世界市場は、35年に2.8
兆円規模に達すると市場予測を公表。電気自動車用途が同市場の成長をけん引する。トヨタ自
動車が20年代前半に投入計画など、次世代EVで主導権を握ろうとする自動車メーカー各社が
研究・開発に注力している。これは愉快な皮算用だ。これは失礼!?トラック、バスだけでな
く産業設備、電力供給事業(発電事業)にもやがて波及するだろう。



 

Wikipedia

● オランダ Fastned
電気自動車急速充電サービス収益 今年上半期150
8月27日、オランダのプラグイン電気自動車急速充電会社のFastned社の電子メールによると第
半期(2018年)の成長率は約140%(前年比)であったと公表している。
尚、これらの数値
は、第1四半
期の合計高速充電器使用量483,487キロワット時(kWh)第1四半期の収益は210,
962 
ユーロ(約2,658万円)。四半期中の顧客ベースは8,303人。また、急速充電ステーション
66箇所。さらに次のようなものがあります。4つのステーションで次世代ファストチャージ
ャーを取り付け、電気自動車が最大175kW、さらには350kWまで充電でき、家庭用より最大100
倍速の能力をもつ。同社は投資銀行(リンカーン・インターナショナル)との間で3千万ユー
ロ(約38億円)の資金調達で200 以上の急速充電ステーションのネットワーク形成が可能と
なる。


【セミの羽の構造に抗菌作用】

8月27日、伊藤健関西大学教授らの研究グループは、クマゼミなどセミの透明な羽の表面に、
薬剤を使わなくても細菌を殺す抗菌作用を持った特殊な構造があることを解明したことが公表
された。クマゼミやミンミンゼミなどのセミの透明な羽には抗菌作用があることが知られてい
たが、これまで詳しい仕組みは分かっていなかった。
グループではクマゼミの羽を詳しく観察
したところ、羽の表面に直径5000分の1ミリ以下の、極めて細かい突起が規則正しく並ん
でいることに注目しました。
そこで、セミの羽をまねて表面に同じようなごく小さな突起が
並んだシートを作り、表面に大腸菌が含まれた液体を加えたところ、菌は10分から20分ほ
どで細胞膜が壊れて死んでしまっている。

Feb. 16, 2017 

● ナノ微粒子焼成金属で電気抵抗実質ゼロに

6月25日、関西大学の研究グループは、ナノ微粒子を焼成した金属を使い、メガヘルツ帯

高い周波数の電圧をかけ、常温での電気抵抗を極めてゼロに近づけることに成功。鉄など
の強
い磁性を持つ金属であることが条件。高周波回路やエネルギーの伝送線路などでの電気抵抗に
よる損失の低減や、半導体デバイスの省電力化につながる。同
研究グループは、鉄と金属シリ
コンでそれぞれ微細な粒子をペースト状にして焼成。直径10数ナノメートルの結晶が密集し
た構造を持つ多結晶材料を作製した。金属シリコンのナノ多結晶材料は、通常のシリコン材料
と異なり、磁石に引き寄せられるなど強い磁性を持つ。
 
   Aug. 22, 2018

この2種類の材料に周波数を変えながら電流を流すと、通常の金属同様に周波数が高いほど電
気抵抗が大きくなっていった。だが、3メガヘルツと5メガヘルツの付近で抵抗が急激に減り、
実質ゼロとなった。
一般的な金属に流れる電圧の周波数が高くなると、電流が表面に偏り、電
気抵抗が大きくなる。今回作製した強い磁性を持つ金属ナノ多結晶材料では、一定の周波数に
到達すると、金属内部で電流の流れを阻止していた、磁場により生じる起電力の向きが反転す
る。
内部で電磁波を吸収する磁気共鳴が発生した影響で、起電力が電流を加速するようになり、
抵抗が一気に減少する仕組みだ。今後、送電実験や抵抗の温度特性の確認などを行い、実用化
を目指す。
Appearance of ferromagnetism property for Si nano-polycrystalline body and vanishing of electrical
resistances at local high frequencies, Submitted on 7 May 2018

 

● パワーバイオ エアコンのカビきれい

土壌菌の一種である枯草菌バチルス菌を使ってカビを抑制する商品が株式会社コジットが出回
っていることをテレビで知る。エアコンの吸気口に貼り付けておくだけでかび臭さは解消され
るというので、試してみようと思い立ち、メーカから買って販売しているのだから下図の特許
技術――この発明の結露防止材10は、微生物を担持したシート状基材12と、該シート状基
材を結露を防ぐ必要のあるものに添設するための貼付手段14とを備え、シート状基材は、微
生物を生存させるに適する孔を有し、1~6mmの厚さを備える帯状であり、且つ、微生物を
含侵又は塗布するときに水分を含み、結露を防ぐ必要のあるものに添設される前に乾燥して微
生物を休眠させ、結露を防ぐ必要のあるものに添設したときに結露水を吸収して微生物を活性
化させてカビ及び/又は臭いの元になる物質を分解してその発生を防ぐように形成されている
ことで、図1のごとく、露や湿気により発生するカビ抑制することができ、人や環境に優し
い結露防止材及びその製造方法(株式会社ビッグバイオ・株式会社アール)に目を通す。



なんだ、納豆菌ではないか、それじゃ『オールソイタウン構想』 の1つのプロジェクトではないか。




  ● 復活したシラキ

突然、シラキの葉がこの猛暑でまっ茶に枯れた色となり、枯れ始め落葉。それでもまだ生きて
いることを信じ水やりを続けと小さな新芽が一斉に芽を出し復活する様をみて、生命力の不思
議さに心打たれスマートフォーンで写メールしブログアップする(写真の茶色い葉と実はその
名残)。

 


【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅱ】

第1章 所得配分と貧困の現実――生活の安心は企業でなく国家がまもるべし
国家が国民の生活を守る以前の時代

はじめに
これまでの日本社会の安心は、会社が中心になって担っていた。しかし、日本の会社はそのよ
うな重みに耐えかね、正社員を極力採用しないようになってきた。企業に、無理やり正社員を
採用するよう求めることには無理がある。企業には、雇わないという選択もあるからだ。そも
そも、企業を安心の起点とすることは、19世紀、帝政ドイツの鉄血宰相ビスマルク(181
5~98)が始めたことだ。ところが、雇用の非正規化とともに、その上うな方法では安心の
ほころびが広がるばかりになっている。そろそろ、企業をそのような仕事から解放してもよい
ころだ。国家が直接、人々の安心を保障するべきだ。そうして初めて、すべての人々の安心が
守られる。
さらに、医療や失業や介護の安心を守るだけではなく、国家が、貧困そのものを消滅させろべ
きではないだろうか。国家に、そのような力はないと言う人もいる。しかし、現在、国家がな
しているさまざまな業務を整理すれば、国家はそのような財政力を持っているという結論に達
する。

国家が国民の生活を守る以前の時代
福祉国家と謳っていなくても、ほとんどの先進工業国は、国民の生活をさまざまな分野で守っ
ている。福祉の基盤が弱く、国民皆保険もなかったアメリカでも、オバマ大統領の下で、20
13年から国民皆保険制度が導入されている(それ以前にも、貧しい人々向け、高齢者向けに
は国家の保障する健康保険制度があった)。しかし、国家が、国民の生活を守らなければなら
ないと考えるようになるのは、十九世紀末以降のことである。それ以前の時代には、人々の生活を守
るのは家族、拡大家族、あるいは地縁であった。家族が同じ仕事(多くは農業)をして、それによって生
きていくことが生活の安全を支えていた。

しかし、近代社会は、人々が自営業者から雇用者になっていく過程でもある。日本では明治維
新以後
の変容は緩やかなものであったが、戦後にはそのペースが加速した。就業者のうち雇用
者(正確には、雇われている人=「披雇用者」と言うべきだろうが、慣行に従って「雇用
者」
とする)の比率は、1953年の42・4%から2013年には88・0%となった(家
族従
業者は自営業者に入れている。総務省「労働力調査」長期時系列表4〔1〕一従業上の地位

別就業者数一)。日本は、農民、商店主、中小事業者など自営業者の社会から、給与を得て働
サラリーマン、サラリーウーマンの社会になったのである。

これは何を意味するのだろうか。1960年代以降でもっとも重要な変化は、子が資本財で
なく消費財になったことである。自営業者の社会においては、子は労働者であり、共同経営

であり、老親の扶長者であった。子はまた、親にとっては一年金」であり「保険」でもあっ
た。
しかし、雇用者の社会においては、子どもは資本財ではない。親のために働くこともなければ、
親の老後を支えるわけでもない。雇用者の社会における子どもは、単に親が育てることを
楽し
むための消費財になる。では子が消費財になると何か起こるのだろうか。

子どもは、家族にとっては消費財だが、社会にとっては資本財である(そもそも、子どもが
まれなければ、日本という国も存続しえなくなる)。年金制度は、社会にとっての資本財であ

る子どもに高齢社会のコストを負担させようというものだ。しかし、子どもは、家族にとって
は消費財の価値しかないのだから、資本財の価値に見合って生まれてはこない。社会にとっての資本
財の価値に見合う数だけ、子どもが生まれるべきだということには無理がある。誰でも、わが子が見ず
知らずの人の年金を負担することを見るのは楽しくはない。子どもへの援助がなければ、子どもは十分
に生まれてはこないだろう。

 Wikipedia

A Child's Mirror of the Twenty-four Paragons of Filial Piety / Toei

自営経済における資本財としての子
伝統的社会では、子は資本財であり、貯蓄であり、社会安定の源であった。どのような国にあ
っても、
老いて自らを養う働きができなくなった男女を、単に捨ててしまうことなどできない。
文明社会には、老いた者を養う何らかの「制度」が必ず存在している。これまでは、ほと
んど
すべての社会において、子は長じて親の世話をするものと考えられてきた。

もちろん、これまでの「制度」が実際にうまく機能してきたかついては、疑わしい点もある。
アジアの伝統的社会においては、「孝」の規範あるいは儒数的道徳が常に強調されてきた
が、
繰り返し強調されてきたということは、まさにその規範がきちんと守られていなかったこ
とを
示しているとも考えられる。


中国では、儒教的道徳のお手本を示す有名な「二十四孝」という物語かおるが、その多く
は、
かなり奇妙かつ滑稽なものでもある。例えば、ある母親が冬の最中に魚を所望する、また、

る母親は笥を所望し、息子たちがそれぞれ探しに行くが徒労に終わる。ところが、天はそ
の孝
行を喜び、魚や笥が現れるという奇跡が起こる。日本の江戸時代の落語では、この24人
の息
子たちは、からかいのネタとなっている。ある落語には、「中国のお袋は食い意地が張ってる
な」という一節かおる。

儒教的道徳に基盤を置く制度がいつもうまく機能するとは限らないが、過去においては、老親
の生活を守る他の手段はなかった。高度に設計された金融制度も、年老いた親の世話を確実に
行うことのできる手段も存在しなかった。また、自営業者の社会では、子どもは親とともに働
き、親と同じ職業(多くは農業)とそれに要する道具を受け継いだ。こうした社会においては、
「孝」を軸とする社会の安定化制度は、それなりに機能していた。

しかし、近代の雇用者の社会では、状況は大きく異なっている。子は、親と同居せず、異なる
職業に就き、赤の他人に雇われるので、「孝」に基づく社会安定制度を維持することが難しく
なった。すると、子どもはもはや資本財ではない。つまり、親は、老後になって、「年金」や
「保険」を子どもが提供してくれることを期待できない。子どもが消費財となってしまったか
らである,
不利益を披っているのは老親だけではない。都市で働く子も、失業する、病気になる、そして
自身が老いるといった場面では、当てにできる資産がないので、困難に直面する。こうして、
新たな社会の安定制度が求められることとなった。

社会安定の新たな制度を剔出することが日本社会に求められ、政府は、1960年代になって
企業に新制度構築への支援を求めた。高い成長と潤沢な利益を享受していた企業はこれに応じ
た。企業を通じた社会保障制度、すなわち、雇用保険、医療保険、厚生年金保険などの社会保
険制度が本格的に導入されるようになった。また、当時は、政府にとっても企業にとっても社
会主義の脅威は現実的なものであった。こうして、日本の企業は、終身雇用を保証する努力払
い、社会保障費用の一部を肩代わりすることとなった。

雇用が生活の安心を守っていた
これまでの日本の安心は、雇用が起点となってきた。仕事は会社が教えてくれるもので、真面
目にやっていれば何とか技能が向上し、賃金も少しずつは上がっていった。老後になって生活
できるだけの年金は会社の厚生年金が、病気になった場合の心配は会社の医療保険が、失業の
不安は会社の雇用保険が解決してくれるものだった。最後の失業の不安は、雇用保険だけでは
不十分だが、大きな会社ではめったに解雇がないということが、安心を与えてくれた。しかし、
1990年代以降、雇用が不安定になってきた。正規社員の仕事は減少し、増えたのは非正規
の仕事ばかりだった。

                                    この項つづく

 ● 今日のランチ

いつも、ランチ時間はパンパン状態で準備するのも面倒なのだが、いつものように「セブンの
冷凍たこ焼」を彼女が指示しておいたのを電子レンチでチンしようとしたが、ハンバーグのよ
うに半熟目玉焼をトッピングすることを思いつく。生卵割いれた小皿を紙パックのたこ焼を乗
せ、チンすると、どうだ、通常なら40秒あれば固まるのだが、マイクロ波が周辺に吸収され
2分でなんとか固まる経験をする。次回は面倒でも別個に処理することに。上の写真はインス
タ映えを考え袋から出たところを写メール(失敗作品)。味は、抜群!日本の加工食品は工夫
次第で「大和撫子七変化」。これはお勧めだ!、因みに、コップのドリンクは冷やし麦茶とこ
れまた、ドメスティクでティピカルである。

 ● 今夜の一曲

Joey Ramone  ” What a Wonderful World ”

ジョーイ・ラモーン(本名:ジェフリー・ロス・ハイマン(Jeffry Ross Hyman)、1951年5月19
日 - 2001年4月15日)は、アメリカ人のミュージシャン。パンク・ロックバンド、ラモーンズ
のボーカリスト。 ジョニー・ラモーンと共に、結成から1996年に解散するまでバンドに留まっ
たオリジナル・メンバーである。 ジョーイの身長は6フィート6インチ(198cm)もあり、極端
に痩せた体型で長い黒髪がほとんど顔を覆い尽くす。ジョーイはラモーンズの「ハート・アン
ド・ソウル」と言われラモーンズのレパートリーで彼が好んだ曲は、バラードとラブソング。
ジョーイ・ラモーンのラモーンズ活動休止直後から死の3ヶ月前まで約3年にわたってレコーデ
ィングしたアルバム 「Don't Worry About Me」。死後の2002年にリリース。
ジョーイ・ラモー
ンのソロはこのアルバムが最初で最後となる。
その1曲目「What A Wonderful World 」。原曲
はルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」である。




● 今夜の寸評:焦心を制す
関西人は、いらちだといわれるがそのままわたしに当てはまる。記載忠の『ゲームトライアス
ロン日記』でも掲載したが奥義が広いのは囲碁、そして、チェスは1つでも駒を失うことは致
命的。そこで、フェイク(罠)――うん?ミスター・フェイクのトランプだって?ちがう、ち
がう!――駒を絶対失わない。そして、逆算し罠を仕掛けることが肝・・・・・・これが最近会得し
た術。そして、ゲームのすべてに渡り、はやる心を抑え、焦心を制す、である。


 

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歴史は三度繰り返すか。

2018年04月10日 | 政策論

      
                                     

 九 変

表があれば浦がある。陽があれば陰がある。その変化と発展の法則を見きわめることが勝利
への第一歩であろ。

「敵の来たらざるを恃(たの)むことなく、われのもって待つあるを恃む」

智者が方策を練る場合は、必ずアメとムチを使い分ける。アメで誘えばらくらくと目的を達
することができ、ムチを与えておけば、災いを未然に防ぐことができる。敵国を屈伏させよ
うとする場合にはムチを加え、疲れさせようとする場合は次々と事をおこして奔
走させ、味
方につけようとする場合にはアメで誘う。つまり戦争に際しては、常にこちらの意のままに
敵を勁かすことが感荷である。戦争においては、敵が来ないであろうことを特みにするので
はなく、敵が来られないような、わが備えを恃みとすることである。敵が攻めないであろう
ことを恃みとするのではなく、敵に攻める隙を与えないような、わが備えを特みとすること
である。

※ここでは、「願望」と「備え」の「notA or B」の「不戦」「非戦」を能動的に行う第
三(オルタナ)の選択(日本国平和憲法)を備忘しておく。

【下の句×樹木トレッキング 27:マメザクララ】


蚕豆のはたけの花の久しきに散りかかりたりさくらの花は  若山牧水


※「蚕豆」の読みは「そらまめ(=空豆)」

マメザクラ(豆桜:Cerasus incisa (Thunb.) Loisel.)はバラ科、サクラ属の植物。桜の野生種
の一つ富士山近辺やその山麓、箱根近辺等に自生しており、フジザクラやハコネザクラとも
言う。マメ(豆)の名が表すように、この種は樹高が大きくならず、花も小さい。富士や箱根
を中心に本州の中部、中央地溝帯近くに分布している。伊豆半島の温帯から亜高山帯まで様
々なところに分布している。この地形になじむように自らを変化させていったと考えられて
いる。
花の時期は3月下旬から5月上旬で、花弁は五枚一重で色は白から薄紅色。花は1cm
から2cmと小ぶり。他種と違い花を下に向けて開せる。
樹木としてはさして大きくならず、
大きいものでも10m程度であり、樹高1m程でも花をつけるようになる。この特徴は栄養や気
候から生育の難しく大きく成長できない亜高山帯でも子孫を残せるように変化したものだと
考えられる。このため、亜高山気候の場所でも育ち、一般的な桜より寒さに耐える。木の肌
は薄い灰色。細い枝を長く伸ばす。
葉は広い楕円形で葉の端の鋸上の部分は切込みが深い(
欠刻状重鋸葉)。実は赤黒く熟する。
大きく育たなくとも花を咲かせる特徴があるため、庭
木や盆栽としても非常に有用といえる。寒さに非常に強く、-20℃にも耐える

 

   
高橋洋一 著 『戦後経済史は嘘ばかり』   

第4章 プラザ合意は、日本を貶める罠だったのか?

第6節 冷戦で西側が勝利したのは、経済パフォーマンスの差

1985年にゴルバチョフがソ連共産党書記長となり、ペレストロイカ(政治・経済の立て
直し改革)を推進しますが、1989九年にはポ-ランド、ハンガリー、チェコスロバキア
などで共産党体制が崩壊,1989年ドイツ国民らもハンガリーなどから一斉に国境を越え
て西ドイツに脱出するようになり、1989年11月には東西ドイツを分断していた「ベル
リンの壁」が崩されることになります。そして同年12月、マルタ島でゴルバチョフ書記長
とアメリカのブッシュ大統領が会談し、第二次世界大戦以降、国際社会に大きな影響を与え
てきた東西冷戦が終結しました。

冷戦が西側の勝利に終わったのは経済パフォーマンスの差であった、といってもいいと思い
ます。資本主義国のほうが社会主義国よりも経済パフォーマンスが良かったために勝利した
のです。もし、資本主義国の経済パフォーマンスが悪く、失業者を増やしていたら資本主義
国が勝ったかどうかはわかりません。資本主義が積極的に勝ったというより、共産主義の経
済運営よりは効率が良く、失業者の増加も少なく抑えることができたため、負けずにすんだ
というのが実態でしょう。

資本主義は問題の多い制度ですから、運営がまずいと恐慌になってしまう可能性があります
。しかし、社会主義より修正が利きやすいので、うまく運営すれば社会主義より経済パフォ
ーマンスが良くなります。資本主義は100点ではないけれども、落第点ではないレベル
す。社会主義と資本主義の違いは「ミクロ経済学の領域」への政府の介入の度合いの差です。。
官僚がミクロに介入して賢く運営しようとするのが社会主義です。一方、官僚はマクロのこ
とだけをやり、ミクロのことは分権化して市場に任せるのが資本主義です。

官僚が細かいことまで賢く運営するのは極めて困難です。どんなにスーパーマンのような官
僚でも、末端の取引のことまで全部わかるはずがありません。データを集めるだけでも大変
で、それだけで頭が痛くなってしまうような世界です。官僚がミクロのことまで全部取り仕
切ることはできないと考えて、分権して市場に任せるのが資本主義です。私はもともと理系
の人間なので、理科の法則で物事を考えます。社会主義がうまくいかないことは、物理の発
想で直感的にわかっていました。

物理学には、分子の1つひとつの動きをすべて運動方程式で記述できれば、世の中の物事が
完璧にわかるという「ラプラスの悪魔」という命題があります。頭の中で考えると実現可能
であるかのように思えます。しかし、現実には計算することが多すぎて、その命題を解くこ
とは実行不可能であることが証明されています,どんなに高速のスーパーコンピュータを使
っても時間がかかりすぎて計算できないのです。

----------------------------------------------------------------------------------
脚注:ラプラスの悪魔】

  


20世紀に入って量子力学が登場したことから、「世界に存在する全ての原子の位置と運
動量を知ることができない」という形でラプラスの悪魔の論争は落ち着く。「世界に存在す
る全ての原子の位置と運動量を知ることができない」ということが、原理であるということ
が信じられるようになるまで、物理学者たちはラプラスの悪魔に悩まされる。

ラプラスの確率については、本書のほかに「世界の名著」第65巻(中央公論社)、および
『ラプラス確率論』(共立出版)がある。やや詳しく知りたい確率論の入門書ならゴマン
とあるが、おもしろい本としてたとえば、安藤洋美『最小二乗法の歴史』(現代数学社)、
内井惣七『シャーロック・ホームズの推理学』(講談社現代新書)、ジョン・パウロス『確
率で言えば』(青土社)、石井博昭・森田浩・斎藤誠慈『不確実・不確定性の数理』(大阪
大学出版会)などはどうか。ちなみに「ラプラスの魔」という言葉は1928年のデュ・ボア・
レーモンの『自然認識の限界について』(岩波文庫)のなかでネーミングされた。 



----------------------------------------------------------------------------------

☈また、物理学には「二体問題」というものもあります。2つの問題はうまく解くことがで
きるのですが、3つ、4つと増えるにつれて計算がものすごく大変になり、三体問題、多体
問題は特別なケースを除いて解けないことがわかっています。

物理学では、すべてのことについての計算はできないので、全体のざっくりした法則を研究
対象とするようになりました。そのような物理学の法則を知っていましたので、経済学を最
初に習ったときに「社会主義はうまくいかないだろう」と感じました。左派経済学者の人た
ちは、物理学の法則はあまりご存知ないでしょうから、社会主義が可能であると思ったので
しょう。社会主義体制下で官僚がやるべきことは10個や20個のレベルではありません。価格
設定から、資源分配、技術開発など膨大な処理事項を、一部の官僚たちだけの力で、うまく
関連づけながら「最適」な形に持っていくことなど、到底不可能です,人知の計算能力をは
るかに超えています。

社会主義は、官僚に無限の計算能力があると仮定しなければ、成立しないシステムです。資
本主義には問題が多いとしても、ミクロのことは分権化して市場に任せたほうが効率的なの
です。日本が経済成長できたのは、社会主義より相対的にパフォーマンスの良い資本主義シ
ステムを選択したからです。また、通産官僚などが業界指導したように見せながら、実際に
は民間企業が自由にやってきたからです。

二体問題(Two-body problem)は、古典力学において互いに相互作用を及ぼす2つの点の
動きを扱う問題と定義できる。身近な例としては、惑星の周りを回る衛星、恒星の周りを回
る惑星、共通重心の周りを回る連星や、原子核の周りを回る古典的な電子などである。
全て
の二体問題は、独立した一体問題に帰着させて解くことができる。しかし、三体問題やそれ
以上の多体問題は、特別な場合を除いて解くことはできない。

                                   

第7節 「前川レポート」はただ状況の変化をなぞっただけのもの

ところで、東西冷戦が終焉に向かう時代の流れは、日本に思わぬ余波をもたらすことになり
ます。アメリカ国内で、「ソ連が崩壊したあとの最大の脅威は経済大国・日本
だ」という声
が廊府として湧き上がってきたのです。それだけ、日米の経済摩擦は厳し
いものとなってい
ました。


そうなってしまった原因の1つとして、もちろん、本章で見たようなレーガノミクス
の問題
もあります。しかし何より、日本が「ダーティ・フロート」で為替レートのゲタ
を履き続け
て、アメリカに対して圧倒的に有利な条件で競争を続けてきたことが、不必
要なまでの反発
を招いてしまったとも考えられるでしょう。やはり、どこか恣意的で無
理のある歪んだ経済
運営は、様々な問題を引き起こしてしまうのです。
日本からすれば「ダーティ・フロート」
は、「1ドル=360円」という幸福な時代
からの移行期のものだったとはいえます。しか
し、結果的にはそれが、アメリカをはじ
めとする諸外国のフラストレーションを高めてしま
うことになったのです,

プラザ合意翌年の1986年には、中曽根康弘政権の私的諮問機関である「国際協調のため
の経済構造調整委員会」(座長・前川春雄日銀総裁)が、報告書を発表します。
世にいう「
前川レポート」です。その内容は以下のようなものでした。

1.内需拡大
2.国際的に調和のとれた産業構造への転換
3.市場アクセスの一層の改善と製品輸入の促進等
4.国際通貨価値の安定化と金融の自由化・国際化
5.国際協力の推進と国際的地位にふさわしい世界経済への貢献
6.財政・金融政策の進め方

細かい内容を省いて簡単にいえば、内需拡大のための政策提言がされたと見ればいいでしょ
う。前年の1985年にプラザ合意かおり、為替が完全に自由化され、政府の介入はほぼな
くなりま
した。言い方を変えると、輸出企業が履いていた高いゲタがなくなったということ
です。もともと日本
は内需の大きい国であり、それほど外需の比率は高くありませんでした
が、有利な為替相場を使っ
て外需によって猛烈に儲けることができていました。しかし、プ
ラザ合意でゲタを脱ぐことになったの
で、もう外需で大儲けをすることはできなくなりまし
た。それに合わせて内需で儲ける経済構造に変
えざるをえなくなります。それで、前川レポ
ートで「外需で儲けられなくなったから、内需を頑張りまし
ょう。為替を自由化したから、
他の分野もそれに合わせた対応をしていきましょう」という提言が出され
たのです。

意味合いとしてはそれだけのことですから、実際には前川レポートは大した役割を果たして
いません
それでも、時の中曽根首相はこの内容をレーガンに伝え、レーガンもこの報告を評
価したといわれ
ます。しかし、考えてみれば、この提言もある意味では、「どこか恣意的で
無理のある歪ん
だ経済運営」だといえます。レポートをまとめて「内需拡大をする」と国際
的に訴える
のはいいとして、では日本政府として、どうやってそれを実現するというのでし
ょうか。
結局、日本は「口ばかりでやる気がない」などと、さらに批判されることになりま
す。
                                  この項つづく

 No.187

【量子ドット工学講座 No.53:最新量子ドット技術

 

● 新ペロブスカイト太陽電池有機・無機ハイブリッド正孔輸送材料技術

4月9日、東京大学らの研究グループは、高活性有機低分子と安定性に優れる無機塩部分を
併せ持つ正孔輸送材料「BDPSO」を開発たことを公表。次世代太陽電池の旗頭であるペ
ロブスカイト太陽電池の難点である安定性を大幅に向上させたという。これにより、高活性
有機低分子と安定性に優れる無機塩部分を併せ持つ正孔輸送材料「BDPSO」を開発し、
次世代太陽電池の旗頭であるペロブスカイト太陽電池の難点である安定性を大幅に向上させ
従来の酸性の「PEDOT:PSS」とは異なり、「BDPSO」は中性で非吸湿性なので、
隣り合う光吸収層や電極の腐蝕を抑制し、製造条件下および発電条件下での素子の寿命を大
幅に伸ばし、新型正孔輸送材料は塗布型太陽電池の生産効率を上げると同時に製品の安定性
も向上させるので、フレキシブル塗布型太陽電池の実用化が大幅に早まるものと期待する。

【概説】

光活性な鉛ペロブスカイト結晶(光活性層)に光を当てて励起状態を作り、そこから生じる
「電子」と
「正孔」をそれぞれアノードとカソードに「取り出し」、外部の回路につなげて
電流を取り出す。「取り出
し」は自然には起きないので、光活性層の上下に電子と正孔に親
和性の高い材料を接合させて無理
矢理取り出す必要がある。フラーレン(C60)を始めとして電子
輸送材料には良いものが多く知られているが、正孔輸送材料の選択肢は少ない。「PEDOT:PSS」
が高性能で広く使われてきたが、強酸性・吸湿性のために、活性層や電極など素子のいろいろな部
分を損なうので、素子の寿命が著しく短くなる。これがペロブスカイト太陽電池の問題とされてきた。
また、下左図1は、forwardは昇圧時、reverseは降圧時に得られた電流-電圧曲線を示す。今回
作製したペロブスカイト太陽電池は、電圧掃引(昇圧/降圧)方向によって電流-電圧曲線にずれ
が生じず、良好な動作特性を持つことが分かった(下左図)。

上左図3(1)「BDPSO」、(2)「PEDOT:PSS」を正孔輸送層に用いた太陽
電池(封止無)を空気中(湿度40-50%)で保管した場合の安定性試験(3)「BDP
SO」を正孔輸送層に用いた太陽電池(封止後UVカット有)の35℃連続太陽光照射下で
の安定性試験。




上図(図4 2段階の「BDPSO」合成経路)は、「BDPSO」は、市販の安価な有機
物から最短2段階で合成
でき、かつ再結晶で容易に精製できることから、低コスト正孔輸送材
料として期待できる。写真は空気中での「
BDPSO」。これで、ペロブスカイト系太陽電
池は実用化の最終段階に入る。


 図1 スピン偏極ヘリウム(He)原子ビームによるスピン検出の原理

●磁性絶縁体を用いてグラフェンのスピンの向きを制御:スピントランジスタの実現前進


4月4日、量子科学技術研究開発機構らの研究グループは、回路を用いたスピントランジス
の実現にかかせない電子スピンの向きを制御する新技術に成功しまことを公表。今日のエ
レクトロニクスが抱える性能向上の限界や電力消費の問題解決に繋がるスピントロニクス)
の発展に向けて道を拓く。これによると、スピントロニクスが次世代情報技術の発展には、
演算デバイスの中で中心的な役割を担うスピントランジスタの実現が鍵になる。グラフェン
は、スピンの向きを長距離に保持できる導線の材料としてスピントランジスタへの応用が注
目されている。グラフェンをスピントランジスタに用いることで、演算デバイスへの応用に
適した高速でエネルギー消費の少ないスピントランジスタの実現が期待されています。しか
し、グラフェン回路でスピントランジスタを構成するためには、グラフェンの中を流れる電
子のスピンの向きを偏らせる技術の開発が鍵となっていました。今回、同チームでは、電流
が流れない磁性絶縁体でグラフェンの中のスピンの向きを制御する新技術の開発に成功。本
成果により、情報機器による電力消費の著しい削減や充電の必要がない携帯端末など生活を
豊かにする情報通信機器の実現が期待されている。

【概説】


上図1は、スピン偏極He原子のビームをグラフェンに照射すると、He原子はグラフェンの表
面でHe原子が持つ電子のスピン(図では上向き)と反対向きのスピン(図では下向き)を持つグ
ラフェンの電子を検出して信号を発します。本研究では、YIGのスピンの向きに対してHe原
子のスピンの向きを変えながら、He原子から発せられる信号を観測することで、グラフェン
の電子の状態やYIGのスピンとの相対
的な方位を明らかにする。通常の金属や半導体などで
は、材料が持つ磁性や材料を流れる電子が感じる磁
場(スピン軌道相互作用)を利用して電
子のスピンの向きを制御することができます。しかし、グラフェンは磁
性を持たずスピン軌
道相互作用も極めて弱いため、グラフェンそのものの性質を使ってスピンを操作するこ
とは
困難。そこで、研究チームでは、電流が流れない絶縁体の性質を持つ磁性体をグラフェン
と貼り合わ
せることで、磁性絶縁体からの作用によってグラフェンを流れる電子のスピンの
向きを制御できないかと考え
る。そこで、絶縁体の性質を持つ磁性体として磁気デバイスやスピ
ントロニクスの分野で広く用いられるイットリウム鉄ガーネット(YIG)に着目。高品質なYIGの薄膜
をグラフェンと原子レベルで接触するよう貼り合わせた接
合を作製し、量子ビームの一種で
あるスピン偏極ヘリウムビームを用いて、グラフェンとYIGの接合に含まれ
るグラフェンの電
子のスピンを観測。


グラフェンは厚さが一原子しかないため、グラフェンを異なる材料と接合した試料の観測を
行う場合、X線や紫外線を用いる一般的なスピンの観測技術ではX線や紫外線がグラフェン
の下地(今回の場合には、YIGにまで透過してしまい、グラフェンのスピンを高感度に検出
することができない(下図2)。これに対して、スピン偏極ヘリウムは物質の最表面で散乱さ
れ下地には透過しないので、接合の表面にあるグラフェンのスピンだけを選択的に検出す
ることができる。



図2 スピン偏極ヘリウム(He)ビームとX線, 紫外線の検出領域

スピン偏極He原子はグラフェンの表面で散乱されるため、厚さが一原子しかないグラフェン
のスピンを選択的に検出することができる。一方、X線や紫外線グラフェンの下地まで透過
し、深さが数原子以上までの領域を同時に検出。

グラフェンの中の電子の状態を示す信号強度(上図)とスピンの向きを示すスピン非対称率
(下図3)の測定結果を示します。各図の横軸は、グラフェンの電子が持つエネルギーを示
しています。今回、YIGのスピンの向きを一方向に揃えた状態で測定を行うと、緑枠内のエ
ネルギーを持つ電子に正のスピン非対称率が観測されました。グラフェンには様々なエネル
ギーを持つ電子が存在しますが、上図の曲線の形状から、枠内の電子は、グラフェンの中を
高速に流れることができるディラックコーンと呼ばれる状態の電子であることが分かる。



図3 グラフェンとYIGの接合について観測されたグラフェンの電子の状態を示す信号強度と
スピンの向きの偏りを示すスピン非対称率




さらに、下図のスピン非対称率の符号から、それらグラフェンのディラックコーンのスピン
の向きがYIGのスピンの向きと同方向に揃っていることが分かりました。(下図4)。本研究か
ら、グラフェンのスピンはYIGのスピンと相互作用しており、YIGのスピンの向きに応じてグ
ラフェンのスピンの向きを自在に操作できることが明らかになる。さらに、実験結果を理論
的に解析した結果、グラフェンとYIGの接合では、界面の付近でYIGの性質が変化してグラフ
ェンの中を移動する電子のスピンに働く磁場(スピン軌道相互作用)が強められている可能
性も明らかになる。

図4  グラフェンとYIGの接合における電子スピン間の相互
作用を示す概念図

実験結果を解析した結果、グラフェンとYIGの接合では、両者が原子レベルで近接すること
で、界面(点線で囲んだ領域)にある酸素原子を介してグラフェンとYIGの電子のスピンの
間に互いの向きを揃えるような相互作用が働いていることが分かる。このようなグラフェン
と磁性絶縁体の接合における近接効果は、スピントランジスタの新しい動作技術として利用
できる。



● 商用化始まる“アナログ量子コンピューター”役に立つのはどれか

デジタル、つまり論理演算が可能な本物の量子コンピューターの実現ははるか先。一方で、
アナログ計算限定の“量子コンピューター”の商用化は既に始まっている。競合するのは本
物につながる技術を用いた量子ゲート型と、物理学の模型に基づくイジングマシン型の2つ
に大別でき、イジングマシン型が商用化で一歩リードしているが、既存のスーパーコンピュ
ーターを超える有用性を多くの問題で示すには量子ビットが数百万~1億個必要とも考えら
れており、実現は早くて20~30年先と予測されている。

                              この項つづく

● 今夜の寸評:歴史は三度繰り返すか

米国の保護主義化、ロシア・中国の武力覇権にともなうネオ冷戦構造進行、英米流金融資本
主義のもたらした貧富・格差の拡大と地球規模の環境破壊が同時進行する。

こんな夜は、ポール・アンカの「マイ・ウェイ」を聴き眠りにつこう。

 ● 今夜の一曲


 

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黒鳥解体新書

2017年01月05日 | 政策論

 

          トランプは口を開けば嘘をつくのです。/ トニー・シュウォルツ

                   "Lying is second nature to him"    Tony Schwartz


                                    
                                                         born 1952 -

  
        ※ 嘘つきは泥棒の始まりと言いますが。        

 


【常在戦場2017:超マクロ編】

● 米国に吸い寄せられるマネー:ブラックスワン警戒

国の招商銀行が、12月中旬に売り出したドル建て年利2・37%の理財商品は60秒で完売
――。米大統領選後のドル高・人民元安を受けて、中国で人民元からの資本逃避が加速してい
る。リアルな金融商品ばかりではない。仮想通貨のビットコインにまで殺到している。11月
の欧米のビットコイン取引高は過去最高を更新した。それに貢献したのが、中国マネーだった。
中国にはビットコインの大手取引所が3つあり、世界取引量の9割以上を占める。11月の取
引高は、1億7471万ビットコイン(約16兆円)に達し、これまでの過去最高だった3月
の1億4856万ビットコイン(約11兆円)を上回りた。人民元相場は12月に入って1ド
ル=6・9元台後半と、8年7ヵ月ぷりの安値をつけた。元安を加速させたのは、11月の米
大統領選でのトランプ氏の勝利だ。同氏が公約に掲げた大型減税や巨額インフラ投資に期待が
集まり、米国経済が活性化するとの思惑から、中国もきめた既界中のマネーが、米国株式市場
に流れ込む。

 

出典:週刊エコノミスト

三井住友アセットマネジメントの渡辺英茂調査部長は「トランブ氏の勝利後、世界の資金フロ
ーは大きく変化した」と話す。上図は、トランプ政権誕生が決定した直後の2016年11月
10日~12月11日の政界各国・地域の株式・債券ファンドの資金流出入額だ。米国の金融
商品調査会杜「EPFRグローバル」のデータを基に渡辺氏が分析した。米国の株式市場には、
1ヵ月余りで600億ドル(約7兆円)もの資金が流人
渡辺は「積極的な財政政策が取られ
るという期待が高まり、トランプの掲げる『強いアメリカ』に資金が吸い寄せられているよう
に見える」と指摘する。

金利上昇(債券価格下落)、インフレの高まり予測から、米国内で債券から株式への大資金移
動が起きる一方で、ドル金利上昇(ドル高・自国通貨安)を見越し欧界中からマネーが米国に
向かっているのである。投資家はこれまでの低成長・超低金利持続を前提とした運用スタンス
の見直を迫られた。日本でもファンド経由では流出となっているものの、東京市場では外国人
投資家が、米国大統領選の結果が出た11月週2週日以降、5週連続(累計3兆円超)の大幅
な買い越しに転じた。また、ファンド経由でもでは流入超になりている。

● ビジョンを失った欧州の政治家

一方で中国のほか、マレーシアやインドネシアなどマネーが吸い取られた新興国は通貨安にあ
えぐ、急激な資金流出は通過安、インフレを招き、実体経済をむしばむ。通貨安が止まらず、
それが連鎖するような事態になれば、1990年代後半のアジア通貨危機の危機の再来となり
かねず、「ブラックスワン(めったに起こらないが、発生すると大きな悪影響が出る事象)」
を警戒する声もある。英国の欧州連合(EU)離脱や、ドイツ・フランスで相次ぐテロとい
った政治・社会問題を抱える欧州からは債券資金が大映に流出した。欧州巾‐吸銀行(ECB}
による金融緩和は継続しているが、景気は上向かず手詰まり感が漂う。シリアなどからの移民
難民問題も影を落とす。これらの問題に既存政党が解決策を示せず、大衆の不満が尚まる中、
17年の「選挙イヤー」を迎える。

仏大統領選(4~5月)で極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首が有力候補と
なるなど、移民排斥や反グローバリズムを掲げる勢力が台頭する。菅野泰夫大和総研ロンドン
リサーチセンター長は、政治家はもはや理念や理想を語る余裕はない。移民問題や経済政諏へ
の不満を不満をぶちまけないと、支持を集められないからだと逼迫した現地の様子を伝える。
16年は外国のEU離脱や米大統領選で、エスタブリッシュメント{既成勢力}を、否定し、
大衆の不満と不安を取り込むボピュリズムが台頭。17年は各国で国民の分断と反逆の動きが
さらに加速し、反グローバリズムが先鋭化し分岐点にあると結んでいる(世界経済総予測20
17「米国に吸い寄せられるマネー "
警戒されるブラックスワン"」、週刊エコノミスト 2017.
01.03/10合併号)。

【トランプの経済政策予測】

● 楽観論:ポール・シェアードS&Pグローバルチーフエコノミスト

不確実性はあるものの、前例にとらわれない大胆な政策実行で閉塞感を突破しれない。その1
つが、金融政策に過度に依存しすぎた反省から、金融と財政の一体運営(リバランス:再均衡
)へのシフト――政府主導による大規模な財政出動やインフラ投資の促進が求められているが、
これはEUの緊縮財政からの転換を意味する。

● 悲観論:スティーブン・ローチエール大学シニアフェロー

トランプノミクスは一晩で米国経済を強靱にできる魔法ではない。今年の早い時期に税制改革
を着手するがこれが直ちに経済浮揚させることができるかは別問題で、財政出動より官民パー
トナルシップの税制控除で投資を活性化させるだろうが4%の経済成長目標を達成できるかと
いうと難しい。従って、企業は技術・人材双方への投資を必要とするが、消費マインドが先行
する中での法人税の引き下げは効果がないだろう。17年の世界経済リスクは①貿易通商の急
減速を伴う脱グローバル化、②保護主義の台頭、③米中関係の急激な悪化が懸念される。

● 資本主義の終焉:水野和夫法政大教授

水野和夫は、英米で起きている現象は近代資本主義国家が作り上げた秩序が崩壊しようとして
いる表れであるが、安く仕入れて、高く売る成立条件崩壊後の新しい秩序がどのようになるの
かが明らかになるには時間を要する。経済学者ケインズはゼロ金利は「利子生活者の安楽死」
をもたら、革命を経ずに大きな社会改革が可能と指摘しているが、現代の日本とドイツがまさ
にそうした状態にあるとし社会のすみずみに資本がいきわたりゼロ金利の状態で、分配による
社会改革が可聡な状態にあるものの、旧来の価値観から離れなければ新時代の秩序は見えてこ
ない。

● 被害者意識に彩られたナショナリズムへの回帰:小野塚知二東大教授

比較劣位業種を生む国際分業は、地域の衰退や失業という苦難を与え、輸出産業も過当競争に
陥る。国際分業の深化にともなって発生するさまざまな苦難への配慮と対処を怠るなら、苦難
か生み出す被害者意識と政治との相互作用の結果、戦争によって国際分業そのものが壊されて
しまう危険性があることを第一次大戦は示している。「民主政治の本質は大衆迎合」との言説
は、19世紀末から20世紀初めにかけて、欧州諸国で史上初めて民衆が政治の決定権を握る
時、ナショナリズムは大衆に迎合すると見せながら、実は、捏造した「敵」への敵意に大衆を
扇動する。問題が国内であるのなら直視して、まずは国内で内需拡大、雇用創出、所得の再分
配などの地道な方法で解かなければならない。経済政策に失敗して外向きに逃避する結果が、
第一次大戦のような未曽有の災厄だとするなら、そのツケはあまりに大きい。

【常在戦場2017:マネー編】

● トランプショックは陰陽双方のゲームチェンジャー:長谷川克之みずほ総合研究所  

トランブ大統領誕生は世界経済の大きな節日、ゲームチェンジャーになる可能性かある。世界
的に財政・金融政策のポリシーミックス(政策の伜組み)の軸足が金融政策から財
政政漿にシ
フトしつつある。トランプショックは、ポジティブでのゲームチェンジャーとなる可能性だけ
でなく、ネガティブなのゲームチェンジャーとなるリスクもある。17年は米国でサブブライ
ム問題が顕在化した07年から10年目、97年のアジア通貨危機から20年目、87年のブ
ラックマンデー(株価暴落)から30年目の節目の年にあたる。背景はさまぎまだが、国際協
調の瓦解、米ドル高リスク、規律の弛緩などがあった。トランブ・ショックが新たな危機の芽
となることがないか、注視する必要がある。

● 新興刻通貨安を促し、トルコ・リラ・人民元は要注意:山田雪乃大和証券

 

トルコは昨年7月のクーデター未遂事件後、エルドアン大統領が権限を強めており、与党・公
正発展党
は12月10日に憲法改雨案を国会に提出した。実現すれば、トルコは大統領が大き
な権限を持つ体制へ移行し、中央銀行の機能.不全がさらに進むとの懸念が高まるだろう。メ
キシコと中国は、トランプが掲げる「保護主義的な貿易政策」の繁影響が最も懸念される。同
氏は「為替操作が製造業の不振を招いている」ため、メキシコ製品には35%、中国製品には

45%の関税をかけることを選挙公約とした。しかし、高関税の実現は難しく、比較的低税率
の関視導入にとどまるだろう。メキシコの経常赤字や成長率見通しは良好であり、足元ではメ
キシコ・ペソは売られ過ぎと考えられる。産油国のメキシコにとって、原油価格の上昇は追い
風である。一方、中国人民元は、米国との金利差拡大観測か今後も中国からの資金流出の動
につながりやすい。


貿易政敵では、仮に中国から米国へ
の輸出関税が男灯の平均4・2%から10%程度への引き
上げにとどまっ
たとしても、中国の経済規模を考えれば輸出停滞や世界貨易量の減少などの悪
影響は懸念される。中国の米国向け輸出品では、機械や医療、靴、玩具、家電、廉価な電子機
器など幅広い製品が.悪影響を受けやすい。中国の貿易黒字の縮小に加え、高関税が同様に適
用される多国籍企業による直接投資の減少も懸念され、人民元安がさらに進むリスクもあろう。
その場合、人民元安か他のアジア国通貨売りへと広がるリスクを警戒すべきだろう。人民几安
は中国の輸出競争刀を強める方で、対人民元で通貨高となるアジア諸国の輸出競争力を低下さ
せる。人民元の下落が他のアジア通貨の下落につながるとの懸念か高まり、リスク回避的なセ
ンチメント(心理)も高まりやすい。ただ、輸出依存度か低いインドの通貨は、相対的に底堅
くなりそうだ。

【常在戦場2017:米国編】

● 新興国の債務不履行リスク増/米不動産価格割高:堀井政孝SBIボンドI・M社長


● 大幅減税・1兆ドルインフラ投資・共和党:秋山勇伊藤忠経済研究所

 トランプノミクスの大きな柱である 「大幅減優 ・ インフラ投資 ・ 規制改革」 を概観すると、国内経済
優先政策」は目に見える分かりやすさが特徴(下表)。税制改革の主な中身は、連邦法人税
の大幅減税(35%から15%へ)、企業の海外留保利益還流時の税率軽減(―回限りで10
%に)、個人所得税の簡素化(税区分を7から4へ)と減税、相続税や贈与税の軽減など。米
シンクタンクのタックス・ポリシー・センタは、トランブ氏の公約かすべて実現すると、17
年に国内総生産(GDP)の1・8%に相当する約3400億ドル(約10兆円)の減税効果
かあると試算。通常、大幅な税制改正は膨大で複雑な法案修正か必要で、準備から法案可決ま
で、
年単位に及ぶ時間がかかることもある上、上院での法案採決の前に立ちはだかる野党の壁
(議事妨害)を打ち破るには上院議員100人中60人の賛成が必要だが、共和党は52議席
と安定多数に届かない。

事態打開には「財政調整法」と呼ばれる議会における予算関連法案の審議スピードを速める手
続き,このプロセスを採用すると、時限立法になるものの、上院の過半数数の賛成で減税法案
が決議できる。共和党主流派を説得し、この切り札を使って減税法案を速やかに決めてしまう
手がある。
 

インフラ関連では、老朽化した鉄道、高速道路、橋梁、空港など交通インフラの補修・刷新や
水・電力など杜会インフラの拡張・整備を推進するために、10年で1兆ドルの投資が見込ま
れる。この政策は、国民の便益を高め、雇用も刺激する効果があるので、まさにトランブが目
指す「国内重視」と「目に見える分かりやすさ」に合致する。問題の財源は、共和党の教科書
に従えば、財源目当ての赤字国債発行は控えたいので、そこでトランブか主張するのは官民バ
ートナーシップ――公共的な施設の整備・運営や公共サービスの提供に当たって、民間事業者
の資金やノウハウを幅広く活用する手法:Public Private Partnership。PPPは、政府業務において市
場機能を活用して、行政サービスの供給を最適化すべきという考え方(New Public Management)に基
づき推進され、その特徴は、専門家による行政組織の実践的な経営を目指すこと、業績の評価基準を
明示すること、権限の委譲を図ること、競争を強化することなど
――に
よる民間資金の活用や、税額
控除メリット。既に「インフラ債}を発行して、インフラビジネスに興味がある内外の投資
家の資金を呼び込むアイデアも聞こえる。「お得感」を分かりやすく見せてディール(取引)
を迫る。

大胆な規制緩和も公約に掲げている。金融規制改革法(ドッド・フランク法)撤廃など、金融
規制の見直しも含まれる。ビジネス・フレンドリーな環境作りに向けた規制見直しをすること
は確かだろうが、トランプは自前の資金で選挙を戦い切っており、良くも悪くもウォール街と
貸し借りがない。どこまで金融界寄りの緩和となるのか現段階では判断がつかない。政権発足
初期はトランプと共和党が.一枚岩となってオバマ時代の失地回復に向けた協調体制を取ると
しても、根底で理念を共有しない両者の対峙は避けられない。財政規律に対する思想の違いも
明らかなため、2月の大統領予算教書より始まる17年度予算策定を巡る両者の駆け引きが最
初の試金石になるとなる。

● トランプ外交 「ディール(取引)」は安保に通用せず:手嶋龍一外交評論家

「日本もアメリカを防衛する義務を負うべきだ,我々がこう求めたなら、日本の人々はきっと
断ってくるに違いない。それじゃ交渉は決裂だと訪えばいい。日本は必ずや米国を防衛すると
我々の要求を受け入れるはずだ」(大統領選挙で隠れた激戦州となったウィスコンシン州ミル
ウォーキーでの選挙演説)。トランプが安全保障について、どのような考えを抱いているか、
この演説にくっきりと表れている。
         I
トランプ流のビジネスのディールは、大国がしのぎを削る安全保障の世界では通用しない。た
とえ日本に譲歩させても、日本国内の反米ナショナリズムをあおってしまえば、新興の軍事大
国、中国に付け入る隙を与えてしまう。米国はTPPから公約の通り時に離脱するのだろう。
そうなれば東アジア第2の大国日本、中国か主導する「東アジア地域包括的経済連携」に大き
く傾かざるを得ないだろう。南シナ海に、そして東シナ海にとせり出しつつある海洋強国・中
国は、軍事、貿易の両面で優位に茫つことになる。これでは太平洋
に巨大な戦略的空白を生じて
しまい、トランプ次期大統領が目指す「強い米国」など到底望めない。

オバマ大統領が自ら推敲を収ねて
練り上げた「ヒロシマ・スピーチ」は、日米両国の政治の底
流に蓄積きさ
れつつある「歪んだナショナリズム」に警告を発するもので同盟関係を単に軍事
的な盟
約にとどめることなく、自由や民主主義といった共通の理念を分かち合う揺るぎない礎
の上に築き上げて
いくべきだと説いている。「米国と日本は単なる安全保障同盟だけでなく、
私たち市民に戦争を通
じて得られるよりもはるかに多くのものをもたらす友情を築いてきた」
とのオバマスビーチは15年4月19日、安倍首相が米議公で行った演説への答えに他ならな
い。この
安倍演説では、ワシントンのフリーダム・ウォールの壁面に刻まれた第2次世界大戦
の犠牲者を追悼
る4000の星々に触れている。「その星ひとつひとつが先の戦陣に斃れた
士7百人の命を表すと聞いたと
き、私を戦慄が襲いました。金色の星は、自由を守った代償と
して、誇
りのシンボルに違いありません」安倍首相はこのスビーチを通じ、日米同盟もまた自
由と民主主義
を共に分かち合う「理念の同盟」としなければと訴え、議会人の共感を勝ち得る。
そして4年間に
及んだ安倍・オバマ時代の棹尾を飾る会談を真珠湾で行うことで「理念の同盟」
をさらに揺るぎないものに
したいと訴えている。

● 金融政策 FRBは無謀な政策に「警告」:鈴木敏之三菱東京UFJ銀行




● メディア戦略 オルタナ右翼に既存メディア機能不全:前嶋和弘上智大教授



16年の大統領選では、CSI テレビや新聞など既存の大手メディアの影響力低下が浮き彫りに
なった一方、ネッ卜上で支持者を拡大する過程で白人至上主義や移民排斥など極端に差別的な
傾向を持つ二ュースサイトが注目を集め、白人至上主義や移民排斥、反ユダヤなど人種差別的
な運動は「オルト・ライト(オルタナティブ・ライト、オータナ右翼)ごと呼ばれる。この運
動を牽引してきた代表的なメディアがオンラインニュース「ブライトバート・ニュース」。

現在でも新聞や地上波のニュースは「客観性」が行動原理。24時間ニュース専門局やインタ
ーネットの台頭で、情報源としての地位は相対的に下がりつつある。ネット上の情報を「差別
的」「虚偽の内容」と切り捨てるだけではかえって批判の矛先が自分たちに向くことになりか
ねず、既存メディアは有効な対抗策が見えない状態にある。トランブ当選の背景には、このよ
うな既存メディアを取り巻く機能不全があることを忘れてはならない.政権の情報概略の全容
はいまだ明らかではないが、新興ネットメディアに通じたスティーブン・バノンを政権中枢に
迎えたトランプ陣営か、世論の動きを分析しながらネットを積極的に活用していくのは間遠い
ない。例えば自分が支持する政策に対して議会が異を唱えた時、オルト・ライト支持者を一気
に動員して世論の圧力をかけてくる可能性もある。オルト・ライトが跋扈するネットの情報空
間は、大統領就任後もトランブを援護射撃していくだろう。

Steve Bannon Nov. 27, 1953 -

以上、「2017常在戦場」に関する情報をまとめてみた。わたし(たち)の視座(=いかに
して社会主義社会に移行するか)からどのように評価・是正すべきかという問題解決のイメ
ージはすでにブログで掲載しているので変わらないが、個別局面では今後の展開如何で緊張を
強いられるだろう。年頭で頭を整頓するために「週刊エコノミスト」を参考にさせてもらった。

 

コメント
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場当たりトランプ・リスク

2016年12月03日 | 政策論

 

  

                                
           定年の必要は実際のところ、年老いたということではない。
           おもな理由は、若者たちに道をあけなければならないということにある。


                                                                                       ピーター・ドラッガー
                                
                    

                             Peter Ferdinand Drucker
                                          Nov. 19, 1909 - Nov. 11, 2005
 

 

 【北陸新幹線延伸問題:米原ルート毎時1本乗り入れ可】

北陸新幹線敦賀以西ルートの小浜-京都案が有力視される中、今月5日に米原案を主張する
県が、東海道新幹線の米原駅「乗り入れ」の検討を与党に提案し、巻き返しを図ろうとして
いる。「乗り入れ可能」とする有識者も少なくないものの、年内のルート決定へ残り時間は
少なく、JRや国も困難との見方を変えていない。米原乗り入れは、JR西日本とJR東海
が東海道新幹線の過密なダイヤのほか、運行システムと会社間での脱線防止装置の違いを理
由に「困難」と表明。国土交通省は「米原乗り換え」を前提に試算を出していたとという(
米原ルート「毎時1本乗り入れ可」 北陸新幹線で有識者、中日新聞 2016.12.03)。

 波床正敏大産大教授

それによると、試算では米原案の建設費が最も安く投資効果は最高だったが、15分間の乗
り換
え時間が見込まれ、速達性や利便性では小浜-京都案より劣っているとされていた。こ
れに対し、
県は、()リニア中央新幹線の大阪開業の最大8年前倒しにより「のぞみ」の
運行本数が減り過密ダイヤ解消を見通せること、()システムなどの違いも「乗り越えら
れる」とするという見解を示している。三日月大造知事は2日の県議会11月定例会議の代
表質問で、5日の与党検討委員会で提案する考えを示している。()また、大阪産業大の
波床正敏教授(交通計画)はリニア開業を待たずとも乗り入れはできるとみており、東海道
新幹線には毎時片道20本の運行能力があるはずだが、営業運行はピーク時でも15本程度。
遅れのための余裕分を差し引いても毎時一本程度なら乗り入れ可能ではとの見方を掲載して
いるが、波床正敏教授によれば、脱線防止装置については技術開発が必要な場合もあるが、
ハードルは高くなく、システム統合も費用は建設費に比べれば安いと指摘し、別の専門家も
システム統合を数千億円でできるとみる。

だが、JR西の来島達夫社長は「リニアの工程をどうこう言う立場ではない」、JR東海の
柘植康英社長も
「(リニア開業は)かなり先の話で、その時の状況は全く分からない」と言
葉を濁す国交省も及び腰だという(同上)。これに対し、
波床教授は、JRは経営的判断で乗
り入れを不利と
みているのだろう。公費の節約になり、少なくとも国は検討すべきだ話していると
報じている。

 Dce. 3, 2016

仮に、上の記事に従い、脱線防止装置(ハード面)+システム統合(ソフト面)が仮に4千
億円嵩上げになっ
たとし、米原ルートは県試算の4千億にまるまる加算しても8千億円とな
り、京都ルートと比べ5千億円安く、工期は8年短縮し、その経済効果は最も大きく、早く
実現でき "アベノミクス" の強力な?プロモーターとなることは、東京-金沢間の北陸新幹
線の実績をみれば誰が考えてもわかることで、名目上浮かせた投資金額はそのまま、下関-
敦賀間の山陰・北陸新幹線延伸早期着工に資することになり、さらには、金沢-岐阜-名古
屋の太平洋=日本海の結びつきもより強固になるものとわたし(たち)は期待している。
 Oct. 14, 2013


【音楽環境改造計画:BOSEのワイヤレス音楽スピーカー&イヤホン

ソニーだけではないが、邦国メーカ一辺倒からチェンジしようと頭を切り換える(実は切り
替えたくはないのだが)。音楽機器はワイヤレスで統一しよう考え BOSE@製に随時買いそ
ろえていこう計画。その準備初日は、ネット検索作業にはいる。写真のようにうら若き女性
はなく爺がファッショナブルなスタイル?で、マイ・オフィス兼作業場とトレッキングなど
の野外シーンをそれで楽しむという算段である。

  

   

【我が家の焚書顛末記 28:中国思想 管子    

   小 称   ―― 「君主の心得」と桓公の最期 ――

  桓公は春秋五覇の一であり、かれを覇者に育てあげたのがほかならぬ管仲であるこの
 篇は、前2章が、管仲の説いた「君主の心得」であり、後2章は、かれの死後、その忠
 言をいれずに非業の最期を遂げた桓公の物諮である。

 ことば --------------------------------------------------------------------

 「
身の不善をこれ患えよ。人のおのれを知るなきを患うるなかれ」
 「われに過為あり、而して民に過命なし」
 「善く身を罪する者は、民罪するを得ざるなり」
 「為(ぎ)を務むるは久しからず、虚を蓋うは長からず」

 ------------------------------------------------------------------------------

  人民の目は公平である

  人に理解されないからといって案ずるよりも、自分の至らなさを似め。
  丹青は奥深い山にあり、美しい珠は水中深く沈んでいる。それでも人々はそのありか
 を探り当てる。
  それと同しように.君主が過ちを犯せぱ、人民はそれを見逃さない。人民の目はふし
 穴ではない。
  人目のつかぬところで遊ぷをはたらいても、隠しおおせるものではない。君主が善政
 をしけば人民はすぐさまそれ賞賛するし、過ちを犯せばただちにそれを避難する。人民
 の言行や非難は、君主が側近にたしかめてみるまでもなく、当を得ている。だからこそ、
 昔の明君は人民を恐れたのだ。
  人民から賞賛され慕われる者は必ず栄える。反対に、人民から非難され嫌われる者は
 必ず滅びる。
  天子や諸侯にしても同じことで、評判をおとして人民の支持を失えば、領土を失う破
 目におちいる。だからこそ、昔の君主は人民を恐れたのだ。

  独裁者の虚勢 チャップリンの映画『独裁者』にヒットラーの背伸びを淵刺するシー
 ンがある。ムッソリーニが握手をしようとすると、背の低いヒットラーは踏み台をもっ
 てこさせる。二人がバーのカウンターに坐ると、ヒットラーは回転椅子を回して大男の
 ムッソリと一を見下ろそうとする。ムッソリ一ニも負けまいとして椅子を高くする。か
 くして両人とも天井にまで届く。カウンターははるか下のほうにあり.グラスをとろう
 としてもとれない……。
 "君主"というものは、自己を実力以上に気せたがる性質をもつ。しかし、その本当の姿
 をじっと見るているものがいるのだ。

 The Great Dictator

 ------------------------------------------------------------------------------

 管子曰:身不善之患,毋患人莫己知。丹青在山,民知而取之;美珠在淵,民知而取之。
 是以我有過為,而民毋過命。民之觀也察矣,不可遁逃。以為不善。故我有善,則立譽我;
 我有過,則立毀我。當民之毀譽也,則莫歸問於家矣。故先王畏民。操名從人,無不強也。
 操名去人,無不弱也。有天子諸侯,民皆操名而去之,則捐其地而走矣。故先王畏民。


  ------------------------------------------------------------------------------

  過失は自己に、功績は臣下に

  自分で罪をかぶろうとする君主には、人民は罪をかふせない。人民に罪をかふせよう
 とする君主には、人民は罪をかぶせる。
  自分の行なった悪政を認める君主は人気のある君主である。善政につとめる君主は賢
 明な君主である。そして、罪を人になすりつけない君主は情深い君主である。君主は、
 悪政の責任は自分がとり、善政のてがらは人民のものにする。悪政の責任を自分がとれ
 ぱ、わが身の戒めとなる。善政のてがらを人民のものにすれば、人民は喜ふ。わが身を
 戒め、人民を喜ばす、これこそ君主が人民の支持を得るゆえんである。

  ところが、暴君の梁王や桀王はそうではなかった。かれらは善政のてがらはひとり占
 めにし、悪政の責任は人民に転嫁した。責任を人民に転嫁すれば、人民の怒りを買う。
 善政のてがらをひとり占めにすれば、自分は傲慢になるばかりだ。人民の怒りを買い、
 自分はますます傲慢になる。これこそ暴君が身を滅ぼすゆえんである。
  明君ともなれば、人民の声に耳を傾け、人民の表情に目を向けるものだ。これでこそ
 天下を保つことができるのである。為政者たる者は、この点に心すべきであろう。

  たとえば、大工は道具を手足のように使う。だから寸分の狂いもなくしごとを仕上げ
 る。弓の名人羿は、弓矢を手足のように使った。だからねらいをはずすことがなかった。
 名御者の造父はたづなを手足のように使った。だから獣よりも遠く駆り、どんなに遠く
 へでも行くことができた。
  為政者にとって、道具や弓矢やたづなにあたるのが、人民の戸と衷情である。天下は
 治まるときもあるし、乱れるときもある。明君が位につけぱ治まるが、暴君が位につけ
 ば乱れる。明君が天下を治めるのは、人民の声に耳を傾け、人民の表情に目を向けるか
 らである。

 ------------------------------------------------------------------------------

 管子曰:善罪身者,民不得罪也。不能罪身者,民罪之。故稱身之過者強也。治身之節者
 惠也。不以不善歸人者,仁也。故明王有過,則反之於身。有善,則歸之於民。有過而反
 之於身,則身懼。有善而歸之於民,則民喜。往喜民,來懼身。此明王之所以治民也。今
 夫桀紂則不然,有善則反之於身,有過則歸之於民;有過而歸之於民,則民怒;有善而反
 之於身,則身驕。往怒民,來驕身,此其所以失身也。故明王懼聲以感耳,懼氣以感目,
 以此二者,有天下矣,可毋慎乎?匠人有以感斤欘,故繩可得斷也。羿有以感弓矢,故殼
 可得中也。造父有以感轡筴,故遫獸可及,遠道可致。天下者無常亂,無常治,不善人在
 則亂,善人在則治,在於既善所以感之也。


  ------------------------------------------------------------------------------

以上をもって管子を終わる。古代封建制時代の「富国強兵」「覇権君主制」を実現する「統
治政策」が説かれている。そこには「重農主義」「大規模灌漑技術」を基礎とした「清貧精
神」(=農本主義)が脈々と流れ、毛沢東主義や現代中国の(=開発独裁制)へと合流して
いる。今後、現代中国が欧米化をどのように換骨堕胎し、どのように覇を競い、覇権統治し
ようとするのか(すでに「帝國のとロンマーチ」などで考察しているが)興味深いところで
ある。さて、次のシリーズは本来悪である人間を礼と義を中心とする訓練による徳化を説く
『荀子』
に移る。

 



Donald Trump’s Greatest Self-Contradictions - POLITICO Magazine

【場当たりトランプ・リスク】

● 爆上げ トランプ相場

 11月16日、米国の通信社のブルームバーグは、世界中の中央銀行が夢でしか実現できな
かったインフレ予想の高まりを、政治や経済の素人
であるドナルド・トランプ次期大統領が、
減税や大規模インフラ投資を公約するだけで、大統領就任前に達成したと報じている。トラ
ンプこの発言を受け、米ゴールドマン・サックスや英スタンダード・チャータード銀行のエ
コノミストが、FRBがより積極的になり、利上げの回数を増やすと予想しているが、当の
トランプは『民主党の選挙勝利のため利上げを遅らせている』とFRBのイエレン議長を攻
撃していていたのだから、ここにきて両者は同盟関係にあると伝えているという(「論壇・
論調 トランプ氏とFRBの衝突不可避」岩田太郎、週刊エコノミスト 2016.12.06号)。



しかし、FRBが利上げをしても、トランプはその結果を気に入らないだろう。金利が上昇
すればドルが強くなり、ドルに引かれてより多くの移民が米国を目指す。滞在資格をもらえ
なければ、不法滞在するし、ドル高は、米国製品の価格を上昇させて輸出を冷え込ませる一
方で、輸入を増やす。そうなれば、トランプに投票した労働者層が職を失い、仕事が海外に
流出する現実はそうはいかない。そこで、人事権を使ってFRBにハト派を送り込み、イン
フレに目をつぶる金融政策をとらせれば、物価上昇期待が高まり、労働者は賃上げを要求す
る。企業は製品価格を上げ、経済活動が停滞するなかでインフレが襲った1970年代のス
タグフレーションが再来すると、米外交問題評議会の金融専門家、セバスティアン・マラビ
ーは予測(ワシントンポスト、2016.11.15)すると、週刊エコノミストで在米ジャーナリス
トの岩田太郎は伝えている。つまり悲観的観測であるが、その逆に、ドルが堅調に推移すれ
ば、景気回復とともに、生産性が向上し(競争力も強化され)、所得も増える良循環の明る
い道筋も考えられるが、それが実現できるかどうかはトランプの手腕次第というわけだが、
それが未知数で、場当たり的行動を繰り返せば大混乱を招くことは想像に難くない。

 Nov. 29, 2016

● 自国利益優先主義の素人外交

ここ連日、トランプ次期米大統領が外国首脳らと連日行っている電話会談が、内外で波紋を
呼んでいる。オバマ大統領が深入りを避けてきたパキスタンやフィリピンの首脳らに往来を
打診したほか、2日には国交のない台湾の蔡英文総統と電話で会談。オバマ政権高官は「国
務省の専門家の助言に耳を傾けるべきだ」と懸念を示しているという(「トランプ流外交、
内外に波紋=オバマ政権の助言聞かず」時事通信、2016.12.03)。
それによると、政権移行
チームがトランプと蔡総統の電話会談を発表したの2日夕方(日本時間で3日朝)。発表文
に「世界の4首脳と話した」と記されてあり、米主要メディアは至急報で伝えた。ただ、ト
ランプによる米台関係の変更の意図の有無ついては、「不透明」との分析が多という。外交
専門家の
指摘によると、トランプが外国首脳と接触する際に現政権から過去の経緯や助言な
どを聞いていないという。米メディアによると、オバマ政権はトランプと蔡総統の電話会談
を発表まで知らなかった。また、11月17日に行われたトランプ次期大統領と安倍晋三首
相の会談の前も、トランプ側からの連絡は一切なかったという。加えて、事前調整なしに長
女イバンカ夫妻が会談に同席したことは日本側を戸惑わせている。

特に、トランプ氏は同日、自身のツイッターで、米国が台湾へ巨額の武器を売却しているの
に「(蔡氏から)私が祝福の電話を受けるべきでないというのは興味深い」と反発。台湾の
首脳と公に直接やりとりしないという35年以上続いた「ルールを破った」(米メディア)こ
とを意に介していないようだったと伝えているものの、、中国外務省は3日、トランプ側に
抗議したことを明らかにした。王毅外相も「(台湾は中国の一部であるという)『一つの中
国』原則は、中米関係の健全な発展の礎だ」と述べ、同原則の厳守を求めた。中国にとって、
政権発足前から関係悪化を招くことは得策でなく、習近平政権はトランプ氏の「戦略」を見
極める必要に迫られているという(「中国、トランプ氏側に抗議=台湾問題で「戦略」見極
め」時事通信、2013.12.03)。

 Nov.14. 2016

中国メディアによると、王外相はトランプ氏と蔡総統の電話について「米政府が長年堅持し
てきた『一つの中国』原則を変えることはできない。この(米中の)政治的基礎が干渉を受
けたり損なわれたりすることを望まない」とけん制。また、外務省の耿爽・副報道局長は「
慎重、適切に台湾問題を処理し、中米関係の大局が不必要な干渉を受けない」よう求めてい
る。この背景には、習国家主席は11月にトランプ氏と電話会談し、協力の強化で一致。「
衝突、対抗せず」「相互の尊重」を原則とし、共通の利益を前面に打ち出した「新型大国関
係」構築を目指す一方で、台湾問題は国家主権や領土といった中国の「核心的利益」に関わ
り、米中間の「最も重要で敏感な問題」(中国外務省)とおいている。台湾では近年、自ら
を「台湾人」と認識する若年層の拡大など「脱中国化」が進み、独立志向の民進党の蔡政権
発足に中国は危機感を強めているという(同上)。 

以上のよう、猫の目のように変わる発言は、「トランプの外交方針がまったくわからないか
らだ」(ニューズウィーク日本版「トランプの外交政策は孤立主義か拡張主義か」エマ・ア
シュフォード、2016.11.14)と指摘するするように、彼の語録背景から、①長期視点の有無、
②「公約」の真意の不明さ、③外交上の原理・原則の欠如、④勝負師堅気、⑤取引の原理・
原則の欠如を感じ取れるからである。このようなトランプ現象が世界中で起きているのは、
グローバリズム(コンピュータ仕掛けの英米流金融資本主義=エセ・グローバリズム)に
よる富収奪の経路依存、すなわち経済格差逓増による大衆の苛立ち、虚無感(ニヒリズム)
の蔓延にあるとわたし(たち)はそのように看ている。それにより、極端な排外主義、偏狭
な国家主義、虚無革命(=ナチズム・目的なき破壊運動)に拡大しないことを祈り、共生と
連帯を求める運動を模索しなければならないだろうと考えている。

                                   


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考え込む団塊

2016年11月30日 | 政策論

 

  

             
         チャンスは一念専心によって、かろうじて得ることが出来る。

                                                                     ピーター・ドラッガー

                                
                               Peter Ferdinand Drucker
                                             Nov. 19, 1909 - Nov. 11, 2005

 

    

【ZW倶楽部:柿タンニンパワーの解毒作用に注目!】

生理医学科学的には明らかにされていないのだが、柿タンニンの解毒作用の大きさがいま注目さ
れている。NHKのあさイチ(「スゴ技Q 徹底解明!柿の知られざるパワー|NHKあさイチ」,
2016.11.28放送)で、日本酒1合を『柿を食べずに飲む』『飲む30分前に柿を食べる』『飲んだ
に食べる』『飲みながら食べる』というケースで、飲酒1時間後に吐く息に含まれるアルコー
の濃度を測り前後比較でアルコール濃度比較試験――日本酒を飲む前に柿を食べると、食べな
いで飲んだ時に比べてアルコール濃度は約36%減、飲んだ後で食べると約33%減、日本酒を
飲みながら食べると約47%減と驚くべき数値を得た。繰り返し試験回数や被験者数では劣るも
のの、宴会などで酔い止めとして出される柿は、やはり効果があったんだと納得する。番組の中
で、奈良県農業開発センタの濱崎貞弘・総括研究員は、タンニンが作用していると思いう。柿か
ら抽出した柿タンニンの結晶をとって飲むようにしてからは、二日酔いや悪酔いがまったくなく
なくなったと解説しており、放送中、柿タンニン抽出物質(結晶状の深い紫色)が映し出されて
いた。下図は同研究員を発明者とした奈良県の国際特許であり、この物質の売り込みにかける情
熱をうかがい知ることができる。

  June 14, 2010

特許4500078  柿タンニンの抽出方法、及びこの方法で抽出された柿タンニン

【符号の説明】

1  柿果実  2  タンニン細胞 3  果実細胞 4  軟化した柿果実 5  柿果実粉砕ジュース 
6  タンニン細胞画分 
7  酵素処理液 8  タンニン 9  タンニン入り水 10  タンニン
溶液

【概要】

柿渋の製造は、数百年前から続く伝統産業である。これは、タンニン成分に富んだ柿渋専用品種
の未成熟な果実
を破砕し、適量の水をくわえた後発酵させることを特徴とする技術であり、破砕
時にタンニンと強固に吸着する糖、
ペクチンなどの果実成分を発酵酵母により分解することで、
タンニンを精製しているが、 柿渋には、①その製造に非常に時間がかかる点である。柿渋の製
造工程は、破砕した柿果実から発酵と沈殿によって共雑成分を取り除き、タンニンを高濃度に含
有した溶液を作る。この工程で充分な品質のものを得るまで、一年~三年以上かかるため、効率
が悪い。②柿渋は原材料としてタンニン成分に富んだ専用品種の、8月中旬の未熟な果実しか使
用することができない。収穫後の果実は直ちに劣化するため、製造できる期間が著しく限定され
る。③柿渋は柿果実を発酵させて製造するものなので、独特の不快感を催す強い発酵臭が生じる
ため、使用する場面が限定されやすい――という3つの欠点をもつ。

また、柿のタンニン抽出方法は、①アルコール、リン酸二カリウム、アルカロイドによって分別・
沈殿させて高濃度のタンニン成分を回収する方法、②搾汁した柿渋原液を加熱しながら限外濾過
膜を利用して低分子成分を除去し、柿タンニンを精製する方法、③発酵酵母の選別・改良やクロ
マトグラムを用いる方法が提案されているが、①は有機溶媒や化学薬品を多量に用いてタンニン
成分を収集する技術であるため、処理が煩雑で危険であり、食品等に応用する場合でも、安全性
の面で問題が残る。②は専用品種を必要とすることは従来法と同じであり、果実を破砕する際に
生じる糖、ペクチン、蛋白等とタンニンの吸着を防ぐことが出来ない、③は発酵法は従来技術の
欠点である時間のかかる点が改善できず、クロマトグラムを用いる方法では、回収効率が悪く、
コスト高になる欠点がある。

本法は、柿果実中のタンニン細胞に集積したタンニンを、自然及び/または人工的方法で水不で
溶性にしてからタンニン細胞を収集し、果実が持つ細胞骨格分解酵素を働かせて果実を軟化させ
粉砕し、タンニン細胞のみ回収し、細胞分解酵素によりタンニン成分のみを分離し、加熱及び/
または超音波処理することで再び水に可溶性にして抽出することを特徴とする柿タンニン抽出方
法であり柿がタンニン細胞に特異的にタンニンを集積する性質を利用して、柿タンニンを簡便か
つ効率的に抽出する方法特許である。

【特許請求範囲】

  1. 柿果実中のタンニン細胞に集積したタンニンを、自然及び/または人工的方法で脱渋する
    ことで水不溶性にする脱渋工程と、果実が持つ細胞骨格分解酵素を働かせて果実を軟化さ
    せ、タンニン細胞の収集を容易にする軟化工程と、軟化した果実を粉砕する粉砕工程と、
    粉砕した果実を遠心分離してタンニン細胞のみ回収するタンニン細胞分離工程と、回収し
    たタンニン細胞を酵素処理して不溶性タンニンとその他の細胞成分を分離する酵素処理工
    程と
    、分離した不溶性タンニンを酸性水または水中に分散させ、加熱および/または超音
    波を作用させる事で再び可溶性にする可溶化工程により、抽出することを特徴とする柿タ
    ンニン抽出方法。
  2. 酵素処理工程における細胞分解酵素が、セルラーゼ及び/またはヘミセルラーゼ及び/ま
    たはペクチナーゼである請求項1記載の方法。

※ DPPH (2,2-diphenyl-1-picrylhydrazyl.)  ラジカル消去活性法
※ 参考特許:WO 2009123183 A1 抗ウイルス剤および抗ウイルス用組成物

※ 水不溶性の柿(カキ)成分乾燥粉末中の縮合型タンニン含有量測定法 岐阜県産業技術センタ 横山真一郎他



柿は、「柿が赤くなれば医者は青くなる」と言われるほど栄養価の高い果実柿の研究開発は盛ん
で、後発部隊が入る余地は少ないように観られるものの、柿の果実だけでなく、お茶のように、
柿のh葉の栄養価や医薬効果が期待できる成分――柿の葉茶には豊富なビタミンCが含まれており、
その量は緑茶の約20倍、レモンの約10~20倍というビタミンC宝庫、また、加熱に強いプ
ロビタミンCで、温かいお茶で飲んでもちゃんとビタミンC摂れるう優れもの、そのほかに、カ
キタンニン、クエルセチン、ルチン、カリウム――が多く含まれ捨てるところが全くないのがそ
の魅力である。わたし(たち)「ZWZero Wast:廃棄物ゼロ)倶楽部」(例えば、瀬田シジミ
の貝殻焼成カルシウム化など)の重要科目でもあるが、アルコールの解毒促進作用(あるいはア
ルコール吸収抑制作用)が確認され、生理医学的な定量評価できれば、前出の濱崎貞弘の著書の
『柿づくし』の世界が実現する。これは面白い。

  会津 身不知柿の由来【会津物語】

 
JESEA:特集|福島沖地震分析】

16年11月22日、福島県沖を震源とするM7.4、最大震度5弱の地震が発生した。「週刊
MEGA地震予測」ではこの地域を含む「東北・北関東の太平洋岸、奥羽山脈周辺」エリアは、現
在レベル4だが
、 特に「東北・北関東の太平洋岸」は地震の常襲地帯として、以前よりフォーカ
スして
いる。では、なぜ「地震の常襲地帯」なのか。 それは、東日本大震災後の地殻の動きが大
きく関わっていると考る。

1.東日本大震災後、東北の太平洋岸の地殻がどのように動いてきたか

震災前から今年初めまでの隆起・沈降をグラフにまとめている。下図3県は地震で大きく沈降し、
その後隆起を続けるがその進行速度(グラフの傾きの角度)は地域によって異なりる。 隆起の
進行速度の違いが新たなひずみを生んでいると考えられる。この付近に地震が多く発生している
原因の一つである。

2.海底基準点

以前、海上保安庁の海底基準点のデータを特集したが、以下はその最新版。このデータによると
宮城沖1は西北西に70センチメートル変位しているのに対し福島沖は南東に71センチメートル
変位している。2点の異なる方向の変位の中間地帯にひずみが貯まっていると考えられる。また、
福島沖は二年前と比較して10センチメートル沈降している。陸地は隆起しているので、ここに
もひずみが貯まっていると考えられる。今回の地震は正に異なる方向の境目で発生している。
 



尚、鮮度5以上の発生確率がきわめて高いレベル5の地域は、南関東周辺。
茨城県沖で震度3、房総半島南方沖、千葉県北西部、茨城県南部で小地震が起きた。隆起沈降図
を見ると、駿河湾沿いは沈降している。三宅島が隆起しているのに対し、八丈島は沈降している。
ひずみが貯まっていますので要注意。R3データによると山梨県の上九一色で、1週間で1セン
チメートルの大きな沈降が見られた。東西変動図を見ると、三宅島以外の伊豆諸島と伊豆半島南
端は西変位している。三宅島および内陸部は東変位です。ひずみが貯まっているので要注意。ま
た東西ベルト地帯には茨城県北部、栃木県南部が含まれており要注意。異常が大きいのでレベル
5を続ける。 

【考え込む団塊:年金抑制法案の採決を強行

TPPもそうだったが、年金抑制法案もよくわからないまま採決された。

公的年金の支給額を引き下げる新しいルールを盛り込んだ年金制度改革法案は25日の衆院厚生
労働委員会で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決された。民進、共産両党は審議継続
を求めたが、与党が採決を強行した。政府・与党は同法案の今国会成立に万全を期すため、11
月末までの臨時国会の会期を延長する方針。今国会では、環太平洋経済連携協定(TPP)の承
認案と関連法案に続く採決強行となった。年金制度改革法案は29日に衆院を通過する見通しと
いう。

 Nov. 26, 2016

法案に盛り込まれた新ルールでは、これまで賃金が下がっても物価が上がれば年金が据え置かれ
ていたシステムを変え、新たに賃金の下げ幅に連動して支給額も下げる。2021年度から導入
する方針だ。また、支給額が上がる場合でも増加額を毎年1%程度ずつ目減りさせる「マクロ経
済スライド」のルールも、18年度から強化する。こうした減額ルールを設けるのは、将来の年
金水準を維持する狙いがある。安倍晋三首相は25日の委員会で「いわば将来の年金水準確保法
案だ。世代間の公平性が確保され、若い世代が安心して今の高齢者の年金を支えることができる」
と説明。野党側は「老後の実態を見ていない。このまま年金を削って年金の役割を果たせるとは
思えない」(長妻昭・元厚生労働相)と反発したという(朝日デジタル、2016.11.25)。

採決後、民進党の蓮舫代表は記者団に「安倍内閣は強行、強行、また強行。首相の思うがままに
立法府は動くと勘違いしている。政権のおごり、上から目線が非常に残念だ」と述べ、与党の対
応を批判した。一方、現在の会期では参院での審議時間が確保できないことから、自民党の二階
俊博幹事長は首相と会談し、会期を延長する方針を確認。政府・与党は12月半ばまで延長する
方向で調整に入った。与党の採決手法をめぐっては、首相側近の萩生田光一官房副長官が野党の
抵抗ぶりを念頭に「田舎のプロレス」「茶番だ」などと発言。野党の反発を招いて国会が混乱し
た。萩生田氏は25日の衆院決算行政監視委員会で「『不適切だ』というご指摘があれば、真摯
(しんし)に受け止め、おわび申し上げたい」と述べ、改めて陳謝したとも伝えている(同上)。

   Nov. 26, 2016

● 物価スライドか平均賃金スライドかはっきりしない

それにしても、物価上昇にスライドさせ、物価下落にスライドさせるなら理解も出来るが、平均
賃金が下落にスライドさせるというなら、賃金上昇にすれば年金の支給額をあげなければおかし
いし、支給額が多いから何が何でもカットするとというなら、復興税などがカットされ、電気
は原発事後以降上昇し続けているし、消費税増税分も目減りしている。そこに、子供たちの賃
金は格差拡大で、親の年金頼りというのが中流下の実態だ。景気が良くなったというが、消費税
増税後は一向に消費は伸びていないという。依然、ロスト・ダブルスコアの霧のなかにいる。そ
のなかで、さらに、物価上昇とは比例させないという、これはある意味、自民党の常套手段であ
る「なし崩し」による年金支給者を登らせて梯子を外すような行為、あるいは老齢者の首を閉め
る行為に等しいではないか。

Oct. 27, 2016

● マクロ経済スライドの発動を可能にするとは?

それにしても、特によくわからないのが 今法案の、このマクロ経済スライドを部分的にではある
がデフレ
下でも発動できるような改定項目も含まれている。現在のマクロ経済スライドは賃金や
物価の伸びが低かったりマイナスだったりすると、フル発動できないという弱点がある。このた
め、これまでほとんど発動できず、現高齢世代の給付削減が進まず、将来世代の給付が当初想定
より一段と低下していくという悪循環に陥っているという(「民進党の"年金カット法案批判は
見当違いだ」東洋経済オンライン 2016.10.27)。これは部分的には理解できるが、科学技術や生
産性向上で物価が低下する良いデフレなら問題ないが、格差拡大(賃金カットなど)で引き起こ
されるデフレや不況による悪いデフレなら、それは政策としてそちらの方を真っ先に解決するの
が正当な政策だろう、百歩譲って長期のデフレで不況を脱出できないなら、年金受給高齢者の合
意形成も容易だろうと考える。民主党の岡田克也副総理が「「調整をやらないで先送りすれば(
中略)先の世代ほど負担が重くなるわけですから(中略)物価が上がった下がったに関係なく(
マクロ経済スライドの発動を)やっていけるような仕組みを議論すべき」(同上)が発言してい
るというなら、それは元岡田克也副総理の認識に甘さ?があったと考えるから、同社の主張には、
わたし(たち)は不同意である。

 

それでは、年金受給者の暮らしはどうなるのだろうか?

すでに、昨年4月分の年金が支給される6月から変わることになるが、新しい抑制策が始まるこ
とになった。この新たな抑制策は「マクロ経済スライド」というもので、これまでの年金制度の
考え方を大きく転換。これまでは、働く世代の生活水準に合わせて高齢者の生活も維持するため
に、物価や賃金が上がればその分年金額も上げるという仕組みだったが、今後は、制度を維持す
るために物価などの伸びよりも年金額の伸びを抑え、高齢者に我慢してもらうということになっ
た(「くらし☆解説「年金抑制策開始でどうなる?」NHK 2015.03.04


 Apr.4, 2015

● 審議されてた「年金制度改革関連法案」の内容

この国会に提出されていた「年金制度改革関連法案」の大きな柱は、①「賃金・物価スライド」
の見直し、
②「マクロ経済スライド」の強化の2つだという。まず、①の「賃金・物価スライド
」の見直しは、支払う側の制度。現在の年金制度では、物価が上がれば、若者世代の賃金も上が
ると仮定されて
いるので、年金支払い額も上がる。上げ幅は、賃金の伸び率に年金の伸び率わせ
る仕組みになっている。
ところが審議されている新ルールでは、

  1. 物価も賃金も下がった場合、賃金の下落に合わせて年金支払い額も下げる
  2. 物価は上がったけど、賃金が下がった場合は、賃金の下落に合わせて年金支払い額も下げる

と、物価と賃金を別のものとして、若者世代の負担を少なくしようとする制度だという。
次に、②の「マクロ経済スライド」の強化とは?こちらは受け取る側の制度で、まずマクロ経済
スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び等)に合わせて、年金の
給付水準を自動的に調整する仕組みのこと。
実は、少子高齢化対策として既に2004年に既に導入
されていた方法なのですが、次の世代が受け取る年金を確保するためという名目で、現在支給さ
れている高齢者への給付の抑制を18年度から強化するという。
そして大問題は、この給付額が
3割カット!という大きなカットになりそうだと言う(「年金制度改革法案(2016)可決って何
?わかりやすく簡単にまとめてみました。」MediaBox 2016.11.25)。



試算すれば30%もカットされるのか!これはたまらないというのが率直な感想。さらに、自民
党と公明党が強行採決するならそれはそれで理解できるが、維新の会までも賛成に回るなんて、
参議院選挙の全国区に投票したのに裏切られてしまった。もっとも、松井大阪府知事の「土民差
別発言擁護」以来、その程度の教養かと落胆させられこともあり考えを改めるざるをえなくなっ
た。

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デフレ脱却と未来国債

2016年10月16日 | 政策論

 

 

       

         あのころ自分はずいぶん年をとっていた。今はもっと若い。

               Ah, but I was so much older then, I’m younger than that now.

                                                ボブ・ディラン

                                                    
                                                  May 24, 1941 ー

 

  Future government bonds

● デフレ脱却と未来国債

先月21日、日銀が金融政策決定会合で、金融政策の枠組みを、銀行などに流すお金の「量」
を重視する政策から、「金利」を重視する政策に転換したことに対し、「量」拡大を主張し
てきた「リフレ派」エコノミストらから批判の声があがっているという(毎日新聞 「リフレ
派、日銀政策批判 エコノミストも「金利」重視反発」2016.10.12)。これに対し、批判の
矛先は、リフレ派にもかかわらず政策転換に賛成した日銀の政策委員会メンバーにも向かい、
今後の政策運営にも影響を与えそうだという。
デフレ脱却のため、2%の物価上昇目標を目
指すのが、わたし(たち)リフレ派の立場っが、今月12日、長野県松本市の記者会見で、
原田泰審議委員(リフレ派日銀政策委員)が「やり方はいろんな議論がある」と政策変更に
理解を求めている。

ところで、9月21日の決定会合で日銀は、短期金利をマイナス0.1%、10年物の長期
国債利回りを0%程度に操作する「長短金利目標」を新たに導入する一方、従来「年間80
兆円ペースで国債を購入する」としてきた量的緩和の目標を「80兆円をめど」に後退させ
る。13年の黒田東彦総裁就任以来、大量の国債を購入しお金を世の中に流す量的緩和政策
でデフレ脱却を目指してきた日銀だが、国債保有額が400兆円に膨らんでも物価上昇率が
マイナス圏に低迷する中の政策転換である。

※ 参考:わが国の経済・物価情勢と金融政策 日本銀行政策委員会審議委員 原田 泰

 Oct. 12, 2016

前出の原田は、新たな枠組みで物価上昇率が安定的に2%に達するまで金融緩和継続を明言
したことが「量に対する強い公約だ」と述べ、量的緩和後退でないと強調するが、リフレ派
の元審議委員の中原伸之は、原田、岩田は敢然と反対すべきだった。日銀職員の説得と圧力
に負けたと厳しく批判し、また、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所長の
嶋中雄二も、自分が委員なら反対、今後の行動を注視していかないといけないと指摘。さら
に、政府
首相の経済ブレーンでリフレ派の本田悦朗・駐スイス大使は、日銀は次回会合で追
加緩和を行う必要がある。国債購入額はまだ拡大できると強調しており、円相場や株価の展
開次第でリフレ派の巻き返し強まる可能性もあるとの見方もあると、この記事は伝えるが、
ここは安易に、「インフレ目標値」を放棄し、政策の理念・ビジョン・戦略を転換すべきで
ない、なぜならば、日本列島はいまだ「デフレ不況」から脱し切れず「失われし30年」の
最中にあり、アベノミクスは中途半端にあり、やり残している課題(→国家公務員の給与を
上げることでなく、民間の平均所得水準の引き上げ)を実現すべきであるというのがわたし
(たち)の立場である

   Sep. 21, 2016


● デフレ脱却には緊縮財政と金融引き締め禁止

これと同調するかのように、「すべての政治家が一つだけ覚えておくべきことは、『デフレ
脱却まで緊縮財政と金融引き締めはやってはいけない』である」(「民進党は経済政策を見
ても前途多難だ」、ダイヤモンドオンライン 「高橋洋一の俗論を撃つ!」2016.09.22)で、
ここで高橋は、「安倍政権がまともなのは、金融緩和を継続していること、積極財政は14
年の消費増税で一時失敗したが、その後の再増税では過ちを繰り返さなかったことだ。それ
らの結果、GDP成長率今一歩であるが、失業率倒産率史上最低となっている」と述
べ体制擁護し「(民進党が)特に深刻なのは、金融政策について雇用政策の基本であること
を理解していないことだ。金融政策を活用しない政党が先進国に存在するだろうか。世界標
準から見れば、まともな金融政策を行わない民進党は明らかに雇用無視であり、左派政党
値しない。」と批判した上で「今の自民党と差別化するならば、金融政策を重要視して日銀
法改正でインフレ目標と雇用義務を加えること、歳入庁創設して税・社会保険料を一体徴収。
不公平をなくし所得累進課税を強化する方向がいい。所得再分配の強弱は、最高の累進課税
税率の高低や資産課税の取り組みで見てもいい。自由貿易、規制緩和では、労働者の権利保
護に配慮して、自由化一辺倒でない是々非々路線とする。エネルギー政策では、産業界に迎
合するのではなく、脱原発の方向で再稼働には慎重スタンスでいい」と民進党に提案してい
るほどである。

● キャッシュ・フロー改善の4原則

ここで、彼の提案は不十分で、現状のキャッシュフロー、つまり、「全国→東京→国際金融
資本主義」というの富収奪の経路依存」の流れの是正に、地方分権化税制(消費税の完全移
譲と逆進性制法人税――後の所得税、資産税、法人税は高橋提案と同調)導入を提案してい
る通りで、これを道州制の自治体ベースの範囲やこれに伴う新交付税制の検討となどと絡め
推進させる
ことを踏まえた上で、彼の論点を追ってみよう。

※ 参考:「全ての起業家に捧ぐ!キャッシュフローを劇的に改善する51の全手法|キャ
     ッシュ・フロー改善の4原則

※ 参考:「地方分権改革と地方法人課税の在り方について 佐藤主光
※ 参考:「<特集>財政の法と経済学からの分析」『フィナンシャル・レビュー』No.101
※ 参考:「ISFJ政策フォーラム2009発表論文|地方財政格差をいかに是正するか
 




 民進党は再分配が重要という。しかし、その実行が伴っていなかった。これを、厚労省
 が3年に1回行っている「所得再分配調査」から見てみよう。その調査では「ジニ係数」
 が計測されている。これは、イタリアの統計学者ジニが考案した社会全体における所得
 分配の格差を表す指標である。係数の範囲は0から1で、係数の値が0に近いほど格差
 が
少なく、1に近いほど格差が大きいことを意味する。所得再分配調査のジニ係数は2
 種
類あり、課税前・社会保障給付前の「当初所得」、課税後・社会保障給付後の「再分
 
所得」について計測されている。2001年から3年ごとの調査によるジニ係数の推
 移
は以下のようになっている。
 

 当初所得ジニ係数は増加傾向である。これは、高齢者ではそれぞれの社会キャリアが異
 なり、その結果所得格差が大きくならざるを得ないが、その高齢者世帯の割合が増えて
 いることが要因である。
一方、再配分所得ジニ係数は上昇に歯止めがかかっている。
 初所得ジニ係数と再配分所得ジニ係数の差の当初所得ジニ係数に対する比率は、所得格
 差是正効果を見ることができ、それを再分配改善率とすれば、上の表のように、調査の
 たびに改善している。
ただし、前回調査に比べた改善率アップを見ると、2010年
 他に比べて見劣りしているのがわかる2010年度予算・税制民主党政権時代だっ
 たが、そのほかは自民・公明政権である。

                           高橋洋一の俗論を撃つ!No.153 
                     『民進党は経済政策を見ても前途多難だ』


● 日本の再分配機能は国際的に見て本当に弱いのか

 

さらに、彼は 上図表のごとく、ジニ係数を国際比較し、こうしたデータから、国際的に見
ると日本の所
得の再分配機能は弱いというわけでなく、平均的なところであり、再配分機能
は強化されつつあると
いうのが事実(※データーで見る限りその傾向にある)であると指摘
していが
この分析結果に異論ない。 

※ プリンストン大のノーベル賞学者ナッシュを描いた映画「ビューティフル・マインド」を見てもらった
  ほうがいいかもしれない。ナッシュが大学院生の時に書いた論文はゲーム理論となって、ナッシュ
  が予想できなかったほど社会に役立っている。

● ノーベル賞を増やす基礎研究の財源は国債が最適

話は本筋とそれるかもしれないが、 また、彼はノーベル医学・生理学賞を大隅良典東大名
誉教授が受賞し、大隅が記者会見で「科学が『役に立つ』という言葉が社会を駄目にしてい
る。本当に役立つのは百年年後かもしれない。将来を見据え、科学を一つの文化として認め
てくれる社会にならないかと強く願っているとの談話を紹介し、現在の科研費、とりわけ基
盤研究の絶対額が不足しており、採択率がまだ圧倒的に低い。今の2、3倍になれば大学な
どの雰囲気も変わるとの意見(「ノーベル賞を増やす基礎研究の財源は国債が最適だ」 同上
高橋洋一の俗論を撃つ!No.154回 2016年10月06日 )に同調し、「こうした基礎研究が、そ
の後社会に役に立つかどうかは、誰も予測することはできない。はっきりいえば、基礎研究
で将来役に立つものはかなり少ない。しかし、大量に基礎研究しなければ、そもそも当たら
ないし、社会への貢献もない。この意味で、基礎研究は未来への投資の典型である。下手な
鉄砲でもいいから、数多くやれば、確実に一定の成果はあるものだ」と擁護し、最近、日本
人のノーベル賞が相次いでいるが、これは20~30年前の研究成果であり、今回の大隅の
受賞の業績は95年のもで過去の投資が今になって生きている事例とする。

科研費とは、科学研究費助成事業に基づく研究資金である。人文学、社会科学から自然科学
まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる独創的・先駆的な「学術研究」を対
象とする。学術研究とは、「人間、社会、自然の中に潜む真理を探究することを目標にした
知的な営み。自らの発想で自由にかつ責任を持って、原理や知見を徹底的に追究するという
固有の特色。」と説明され。大学関係者であれば、多くの人がお世話になっている。15年
度の予算額は2273億円で、採択率は低く、15年度の新規応募件数は10万7千件であ
ったが、新規採択件数は3万件と3割弱。今の時点で、科研費を増やせるだろうか。他の経
費を削って持ってくる方法は好ましくないので、こうした財源探しで最も本格的なものは、
国債を財源とすることである。基礎研究のように、懐妊期間が長く大規模で広範囲に行う
必要のある投資は、民間部門に任せるのは無理があり、やはり公的部門が主導すべきである。
その場合、投資資金の財源は、税金ではなく、将来に見返りがあることを考えると、国債が
適切と結論する。



失われた20年間でGDPがほとんど伸びなかったので、教育費の伸びはここ20年間で日
本はほとんどゼロであるという。これは他の先進国でかなり見劣る。これから10年先を考
えると、日本人ノーベル賞受賞者は徐々に減っていくのではないか。そのとき、後悔するよ
り、今のうちに、国債発行による基礎研究や教育投資を真剣に考えておくべきではないかと
の提案している。国民の合意形成を前提に教育投資を積極的に推し進め、国民福祉、ひいて
は、世界福祉に貢献できれば願ってもないことであり、これらは、このブログで「ピラミッ
ドの経済学」「百年国債は未来国債」「新楽市楽座」「双頭の狗鷲」などの政策論として問
題提起している通りでもあり同意でき、彼の提案には多くの読者が同意している。
 

 ● 今夜の一品

砂丘畑で作られるブランド里芋『砂里芋(さりいも)』。里芋は一般的には、粘土質の土質
が生育に向いているとされ、数ある野菜の中でも水分管理が重要な野菜だが、砂里芋は水は
けの良い砂丘畑で栽培され、通常とは真逆の環境で育ちます。 スプリンクラーでの灌水と、
栄養の徹底管理を行う事で、この環境でも栽培を実現。 厳しい環境によって、砂里芋は強く
育ち、次世代へ命を繋ぐために栄養を蓄え、 その結果、緻密な肉質となり、比重が重くなな
る 素材の味を余す事無く楽しむために、まずは「きぬかつぎ」で食べるのがオススメとか。
食感はねっとり、もっちりとしていて、口溶けが良く、上品な甘さが特徴とか。やはり「環
境ストレス制御」という生物工学を駆使し、品質改良できるのだとテレビを見ながら感心す
する。



● 百名山踏破計画の危機

一昨日の朝、いつものように腕立て伏せをこなし、デスクワークにはいると、突然、両肩に
痛みが走
り何だろうと考えしばらくすると、今度は腰痛が再発。それでも、翌日、竜王の約
束通り「湖華舞」へ走る。生憎、「米麹床モッツァレラ」は品切れとかで買って帰ることは
できなかっ
たが、アイスクリームとチーズセットを買い楽しんだものの、痛みは残り、自信
が回復するまで様子をみるしかなく、計画が立たない状態にある。どうしょう?!

              

 

コメント
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昨日の友は今日の敵

2016年03月28日 | 政策論

 

 

   この社会に生きることのどこにいいところがあるのか、言われたら、どこにもないよと言うより仕方がない。

                                                               吉本 隆明

                                   

                                          Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924-16 Mar, 2012 

          ※ ひとは、時間軸を無限に外延し内省すれば漆黒の空に至る。そこから「生」の全を考え行動する。
                                                     

 


 【中国の思想: 戦国策Ⅱ】
 

  ● 目 次

   解題

   
   
   楚
   趙
   魏
   韓
   燕
   西周・東周・宋・衛・中山 

 

   斉

  釣をしていて周の文王に認められた呂尚(太公が待ち望んでいた人だから。太公望’といわれ、後世、釣り師
 の代名詞となる)を始祖とする斉の国は、現在の山東省にあった。紀元前十一世紀いらいその子孫が君臨してい
 たが、前三七九年、重臣の田氏がこれをうばって王となった。前四世紀後半、威王、宣王の代には学問のメッカ、
 百家争鳴の中心地となる。
 そ の国都臨溜は、春秋中期すでに戸数四万二千(『国語』)戦国時代になると戸数七万、男子人口二十一万、
 街のにぎわいは肩と肩がふれるほどだった(『史記』)という。が、その後ふるわず、前二二一年、秦に滅ぼさ
 れる。

  「蛇足をなす者、ついにその酒を亡えり」
  「猿、摺孤(びこう)も、木を錯てて水に拠らば、魚駈(ぎょべつ)にしかず」
  「狡兎は三窟あり」
  「いやしくも民なくんば、何をもってか君あらん」



 ● 本末転倒

    斉王・建は趙の威后のもとに使者をやって、ご機嫌を伺わせた。威后は手紙を開きもせずに、使者に問うた。
 「今年の作柄はどうなの? 民の暮し向きは? 王にも変りはない?」
  使者は不満そうな顔をした。

 「王の使いとして参りましたのに、王のことは二の次ぎ、まず作柄や民の暮し向きをおたずねになる。王を後
 まわしになさるのは、順序がまちがってはいませんか」

 「いいえ。作柄がよくなければ、民は生きられません。そうなれば、工も生きられません。根本を問わないで
 末節を尋ねるほうがまちがっています」

  威后は、身を乗り出して言葉をついだ。

 「斉に鎮座子という浪大昔がいたはずですが、元気ですか。あの男は、人々に着るものや食べるものを不自由
 ないようにさせる大。これこそ王を助けて民を養う人物です。どうして浪人などさせておくのかしら?それか
 ら、葉賜は変りありませんか。あの男はやもめを哀れみ、孤児や身よりのない老人をいつくしみ、貧乏人に衣
 食を補助しています。これこそ王を助けて民を洽める人物。どうして浪人などさせておくのかしら?また北宮
 の嬰兄子という女はどうしていますか。あの女は、耳飾りもつけず、お嫁にも行かずに、父母を養っています。
 これこそ民に孝行を教える手本です。どうして朝廷に入れてやらないの? このような人たちをほったらかし
 ておいて、どうして国を洽めることができましょう。それから於陵の子仲はまだ生きていますか。あの男は臣
 下としての礼をつくしません。自分の家の世話もみません。諸侯とも交わりません。あんな男がいては、民が
 役立たずになるばかり。どうしていつまでも生かしておくの?」

 〈斉王・建〉 建は斉の最後の王(在位・前二六四~二二一年)。龍二二一年、秦王政(始皇帝)によって国
        都臨溜をせめおとされ、捕えられた。秦は斉を最後に諸国併呑を完成する。

 

 


● 折々の読書  『China 2049』18 


                                  秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」     


                                                    マイケル・ピルズベリー 著
                                                    野中香方子 訳   

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピルズベリーが
自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづ
けてきたと認めたうえで、中国の知られざる秘密戦略「100年マラ
ソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及も随所にあり、これから
の数十年先の
世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となって
いる。 

 

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
     森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)  

 

   第3章 アプローチしたのは中国 


                                   東の呉と組み、北の魏と戦う-『三国志演義』(配元前200年)

                                         毛主席への覚え書き(1969)より引用  

  中国は、勢を読み、アフガニスタンとベトナムにおいてソ連による包囲を破るには、アメリカの支援が必要だ
 と考えたに違いなかった。ソ連による包囲は、毛沢東がアメリカからもらったものより、さらに多くもらうこと
 を正当化した。こうして郵は、アメリカからかなりの支援を取り付けた(注62)。

  1982年から89年にかけて アメリカとベトナム共和国軍は、中国、タイ王国軍、シンガポール、マレー
 シアの支援を受けて、カンボジアプログラムをバンコクで展開した。これは、アメリカから中国への11番目の
 プレゼントとなった。この内密の協力はむしろ公然と行われたために、20年にわたって、世間に気づかれなか
 った。USAID(アメリカ国際開発庁)は、カンボジアで非戦闘的な人道支援を進めるための二つの基金(提
 唱者であるフロリダ州選出の共和党のピル・マコラム下院議員と、ニューヨーク州選出の民主党のステファン・
 ソラーズ下院議員にそれぞれちなんで名付けられた)を提供した。レーガンは、これらのプログラムに年間20
 0万ドル相当の支援を秘密裏に提供するよう、CIAに命じた。ケネス・コンボイによると、その金額は198
 6年までに1200万ドルに膨らんだそうだ(注63)。このプログラムはタイが「プロジェクト328」と呼ぶ
 作戦と合わせて遂行された。中国、マレーシア、シンガポール、タイも、このブログラムに武器と資金を提供し
 た。シンガポールのリー・クワンユー首相さえバンコクを訪れ、秘密基地を視察した。わたしは1985年と8
 6年にその基地を訪れ、CIAの職員から簡単な説明を受けたが、その職員はCIA本部の極東部門の長を務め
 た人物だった。彼はそのプロジェクトを、冷戦という状況下にあって、中国と連携してソ連に立ち向かうための
 「不本意ながらやむをえない方策」と見ていた(注64)。

  カンボジアでのプログラム開始から2年後の1984年の夏、中国はソ連をアフガニスタンから追い出すため
 に、密かにアメリカに協力しはじめるが、やがてその規模はカンボジアでの協力の50倍に達した。
  当時、わたしたちは、勢と逆包囲について理解しておらず、アフガンの反乱軍を助けるアメリカの主要な武器
 供給源になることによって、中国がソ連の復讐というリスクを負うことになるとは考えてもいなかった。それに
 気づいたのは、中国の標準語(北京語)を話すCIAの優秀な協力者、ジョー・ディトレイニーだ(注65)。米
 中のつながりは極秘にされており、タイラーによると、この作戦を知っているのはCIA全体で10人足らずだ
 った。現在でも中国側は、当時このような武器の提供を行ったことを認めていない。著書『チャーリー・ウィル
 ソンズ・ウォー』でジョージ・クライルは、アメリカが中国に最初に注文したのは、AK47狙撃ライフル、機関
 銃、対戦車ロケット砲、地雷だったと記している(注66)。

  1984年、チャーリー・ウィルソン下院議員は、アフガン反乱軍への支援を増やすために、5000万ドル
 を獲得した。クライルによると、CIAはそのうちの3800万ドルで中国から武器を買うことにしたそうだ。
 1990年、ワシントン・ポスト紙は、匿名の情報として、米中が密かに協力していたこの6年間に、中国から
 買い入れた武器の総額は20億ドルを超えたと報じた。 

  米中の秘密協力はレーガン政権時にピークに達した。ニクソンとフオードはソ連の情報を中国に提供した。カ
 ーターは、チェスナット盗聴作戦を確立した。だが、秘密裏にではあるが、中国を戦略上の対等なパートナーと
 して遇したのはレーガンだった。米中が協力した三つの主な作戦は、アフガニスタン、カンボジア、アンゴラに
 おける反ソ勢力への秘密支援だった。当時わたしは、中将に相当する文民の位にあり、国防総省で政策の策定と
 秘密活動に取り組み、そうした諸々を政策担当幹部であるイクレに報告していた。イクレとわたしは、キッシン
 ジャーが1973年に中国を支援したことやカーター大統領がチェスナット・ブログラムを遂行したことを知る
 限られた人間だった。彼とわたしは、中国がアメリカの同盟国になることを本気で望んでいるのかどうかを調べ
 たいと思っていた。答えがイエスなら、アメリカの上級幹部はこの先何年も中国に肩入れすることになるだろう。

  わたしの任務は、イスラマバード、バンコク、アンゴラ南部を訪れ、反ソ勢力のリ-ダーから、計画と要望を
 聞き出すことだった。また、助言、承認、支援を得るために中国も訪れた。わたしたちはレーガン大統領にNS
 DD166(アフガンヘの直接支援を可能にし、支援内容を拡大させた)への署名を勧めた。アフガンでの抵抗
 運動の 高まりが、ソ達による報復を誘発しかねないからだった(注67)。アメリカは中国による状況の評価と、
 願わくば、支援を必要としていた。



  20年後、ジャーナリストのスティープ・コールは、「中国の共産主義者はCIAがまとめた武器取引で莫大
 な利ざやを稼いだ」と主張した(注68)。反ソ勢力に送るためにアメリカが中国から買い入れた武器の総額が2
 0億ドルを超えたという主張が本当なら、中国がアメリカから購入した軍装備品の5億ドル以上という金額は少
 なく思える
  中国は反ソ勢力のための武器をアメリカに売っただけでなく、秘密協力をどう進めるかについての助言もした,
 その助言
から、傾きかけた覇権国、この場合はソ達に対する中国の戦略がいくつか見えてくる。まず中国は、ソ
 連の弱みを見つける
ことを強調した。そして第一の戦略は、ソ達朗のコストを上げることだと説いた。アフガン
 とアンゴラの反乱軍にスティンガー
対空ミサイルを提供することをわたしが提案すると、それでヘリコプターや
 ジェット戦闘機を撃ち落とせば、ソ達にとては高く
つくと、彼らは大喜びした。

  第ニの戦略は、他者を戦わせることだ。言うまでもなく、「無為」という戦国時代の戦略である。

  第三の戦略は覇権国の同盟国を攻撃することだ。カンボジアの反乱軍は、ソ達の傀であるベトナムと戦った。
 アンゴラの反乱軍は、ソ連の航空機でアンゴラに送られ
たキューバ人を追放したが、もしスティンガー対空ミサ
 イルを持っていたら、その航
空機を撃墜していたことだろう。アメリカは中国と協力して、これらすべてと、そ
 れ
以上のことを行った。

  わたしは中国の代表に、さらに二つのことをするのは、あまりにも挑発的だろうか、と尋ねた。その一つは、(
 冷戦の問でさえ行われなかったことだが、アフガンの反
乱軍を支援して、ソ連領内で破壊工作をさせることで、
 もう一つは、アフガンの要求
に応えて長距離狙撃銃、暗視ゴーグル、同国に駐在するソ連高官の居場所を掲載し
 
地図を提供し、暗殺を成功させることだ。わたしの同僚は、中国もさすがにそれには賛成しないだろうと考え
 ていた。一方わたしは、中国の歴史書をたくさん読んでいた
ので、彼らは賛成するのではないかと予測した。し
 かし、そんなわたしでさえ、中国
がこの提案のどちらにも諸手を挙げて賛成した時には、あまりの情け容赦ない
 さまに
当惑した。
  スティーブ・コールは、ピュリツアー賞を受賞した著書『アフガン諜報戦争』で、アフガンからのこれらの要
 請を却下したのはアメリカ側だと述べている。CIAの法
律顧問が、それはほとんど「暗殺行為」であり、現地
 のCIA支局長が「手錠をかけ
られる羽目になる」と警告した、とコールは語る(注69)。そういうわけで、狙
 撃銃は
承認されたが、地図と暗視ゴーグルは承認されなかった。また、ソ連領内で奇襲攻撃を仕掛けるという案
 も、まもなく取り下げられた。中国側はその案をいたく気に入
り、傾きつつある覇権国に心理的ショックを与え
 ることができると、しきりに推した
のであったが(注70)。

  1985年、アメリカは中国のマラソンを支援するために、武器さえ提供するようになった。レーガン政権が、
 10億ドル超の六つの主要な武器システムを中国に売る手
はずを整えたのだ。その狙いは、中国の陸軍、海軍、
 空軍を増強し、さらには海兵隊
の拡大を支援することにあった(注71)。そして1986年3月、レーガン政権
 は、遺
伝子工学、知能ロボットエ学、人工知能、自動化、バイオテクノロジー、レーザー、スーパーコンピュー
 ター、宇宙工学、有人宇宙飛行に焦点をあてた中国の八つの国立
研究センターの設立を支援した(注72)。ほど
 なく中国は、1万を超すプロジェクトで
著しい進歩を遂げた。それらは中国の了フソン戦略にとって極めて重要
 なものだった
が、西側諸国の支援がなければ、到底なし得なかったはずだ。レーガン政権は、中国を後押しすれ
 ばソ連に対抗できると信じ、レーガンをはじめとして誰もが、積極的に
自由化を進めているという中国の主張を
 信じようとした。

  仲間に支援してもらってソ連の包囲を破るという中国の戦略は成功しつつあった。1989年、ソ連はアフガ
 ニスタンから退却し、まもなくベトナムもカンボジアから
撤退した。では、アメリカと中国は、信頼の土台を築
 き、真の同盟国になれたのだろ
うか。なれた、と当時のわたしは考えていた。しかし、戦国時代の原理に則れば、
 中
国はついに真の覇権国と向き合うべき時を迎えていた。その相手は、アメリカであ 勢の重要な要素の一つは、
 包囲を仕掛けてくる敵を迎え撃つことだ。1989年2
月、鄭小平は、北京でジョージ・H・W・プッシュ大統
 領と会談した折に、「ソ連によ
る包囲は、中国にとって致命的な脅威だった」と語った。おそらくそれは本音だ
 った
のだろう。だが、今、囲碁の形勢は逆転し、弱体化したソ連を中国が包囲しつつあった。そして、ソ連が衰
 退しはじめ、アメリカの覇権が拡大しつづけている時に、中国
が勢をどう読み取るかは、誰にも予測できなかっ
 た。
  

武力という悪魔が跋扈する『国家覇権戦略』に取り憑かれるとどうなるか?国家主義という大魔王は罪なき民の生命
が奪う――現代中国史から「
覇権」に翻弄される世界をこの著書は炙り出す。そのひとつが「払暁の友は、昨夜の敵」
の中ソ(ロシア)間の内ゲバを通し、中越戦争、カンボジアの大虐殺、アフガニスタン紛争、9・11、イラク侵攻、
北アフリカ・中東紛争と南沙諸島紛争まで貫く。鬱陶しくも興味深い読書時間を提供してくれる。

                                             この項つづく

      

注63  Conbov.Cambodian Wars, 288.
注64 同上、226-27.
注65 Mary Louisc Kclly,"Intelligcnce Veteran Focuses on North Korea.” NPR, Octobcr 13, 2006.以下のサイトで入手可能,
    http://www
.npr.org/templates/story/story.php?storyld=6259803.
66. Crile,Charlie Willsu's Wαe,and Conboy, Cambodian Wars.
注67. NSDD 166, US Policy. Programs,and Strategy in Afghanistan,March 27, 1985,以下のサイトで入手可能。
    http://www.fas.org/irp/
offdocs/nsdd/nsdd-166.pdf
注68.. Steve Coll, Ghost Wars: The Secret History of  the CIA, Afghnistan, and Bin Laden, from the Soviet Invasion to Septem
           10, 2001(New York: Penguin Press, 2004),66.

注69.  同上、137.
注70.  同上。このすべてでわたしが果たした役割は3冊の本に記されている。レイモンド・L・ガーソフは「マイケル・ピルズベ
    リーは当
初、1975年秋のフォーリン・ポリシー誌のかなり話題になった記事で、中国への武器輸出と、中国との広範囲
    にわたる軍事安全保障関係
を提案した。当時知られていなかったのは、ピルズベリーが中国当局者と内密の会談を
    行ってきたことだ。(中略)彼の報告書は秘密文書と
して、国家安全保障会議、国防総省、国務省の10名あまりの幹部
    に回
覧された」としている,Raymond L.Garthoff,Dètente and Confronation: American-Soviet Relations from Nixon to
           Reagan (
Washington,DC: Brookings lnstitution, 1983),696. マフムード・アリによれば、「ランド研究所の中国分析家、
           マイケル・ピルズベリ
ーは(中略)1973年夏、中国の国連監視団という名目でアメリカに来ていた人民解放軍将校たち
           と密かに会った。(中略)国防総省の命によ
るものだ」。Mahmud Ali,US-China Cold War CoLLaboration; 1971-1989.
          
(New York: Routledge, 2005),81.アフガニスタンからの退却についてソ連と交渉した国連事務次長、ディエゴ・コルド
           ベスに
よると「当初、スティンガー・キャンペーンの陣頭指揮をとったのは、国防次官フレッド・イクレと、攻撃的なアフガ
           ニスタン問題の調
整官、マイケル・ピルズベリーだった。(中略)スティンガー支持者は最終的に勝利を収めたが、官僚
           は  最後の最後まで激しく抵抗した」。
Dicgo Cordovcz,Out of Afghanistan: The Inside Story of theDiegoCordovez, Out
           of Afghanistan: The Inside Story of the
Γ・(New York: Oxford university Prcss, 1995),195.クリントン大統領の副司法
           長官、フィリップ・ヘイマンは次のように潜いた。「秘密行動委□会は3~4週間ごとに集まった,その存在は公には知ら
           れていなかったが、こうした委員会はアイゼンハワー以来、全政権で運営されていた。例えば、ケネディ政権では、40
           委員会と呼ばれていた。秘密行動についての情報はすべて「VEIL」
というセキュリティーシステムで保護されていた」。
    Philip Heyman Living the Policy Process(Ncw York: Oxford univcrsity Prcss, 2008),44.
注71 KarI D. Jackson,Mernorandum for the lnteragency Group on U.S--China Military Relations,Subject: U.S.-China 
           Military Relations: A Roadmap,September 10,1986,Department of Defense,lntermational Security Affairs,
           Douglas Paal file. Reagan Presidential Librarv.
 
注72.  同上。以下も参照。Feigenbaum,China's Techno-Warriors.      

 

  ● 今朝の朝食              

懐かしい、万平ホテル製のランチョンマット、山中漆器の榛(ハンの木)のプレートに「マッシュパンプキンと卵の
厚巻きオープントーストのルッコラとミニトマト添え」を戴くことに。ハンの木のプレートが 新鮮だったので慌て
てデジカメする。 
                     

 

 

 

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遠近両交・非攻結合論

2016年03月27日 | 政策論

 

 

      日本では80何パーセントかの人が、自分は中流だと思っているわけです。食事の世話
                 くらいは誰かがしてくれるわけで、そういう社会になっているから自立が遅れる面があ
                 ります。どこからの時点で意志的に働きに出て、持続性のある仕事につく転換点がくる
                 はずで、結婚だったりするのでしょうが、いまの社会ではそれが割合に遅くてすむとい
                 うことなのでしょう。

                                                                               吉本 隆明

 

                                   

                                          Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924-16 Mar, 2012 

 

        ※ トップテンの富裕層が2%の所得を寡占する時代にあって、中流階級にいると錯覚
          する人が80数パーセントもいるとは驚くばかりであるが、多角的な視点からの分
          析が必要。 
 

 

 
 【中国の思想: 戦国策Ⅱ】

 

  ● 目 次

   解題

   
   斉
   楚
   趙
   魏
   韓
   燕
   西周・東周・宋・衛・中山

 

   秦

  黄河上流、函谷間の西、当時なお未開の地にあった秦(都は咸陽)が他国から。"虎狼の国"としてその富強
 を恐れられ
たのは、孝公のとき、商君を用いて大改革を行なってからのことだ。中央集権国家となった秦は、
 以
後、張儀の連横策、范睢の遠交近攻を国是とし、着々と勢力を拡大する。勇将白起の力も大きかった。そし
 てついに、前221
年、始皇の手で天下を統一した。

  「貧窮なれば、父母も子とせず」
  「人の世上に生まるる、勢位富厚、けだしもって忽せにすべけんや」
  「わが妻たらば、そのわがために人を罵らんことを欲す」
  「王、遠く交りて近く攻めんにはしかず。寸を得れば王の寸なり、尺を得るもまた王の尺なり」
  「一臣のために屈して天下に勝つなり」

    ● 遠交近攻 

       ――いくつかの勢カがいりまじっているとき、だれと結んで、だれと戦うか。自己保存のために
         は容赦は無用だ、として説きおこす戦略のすさまじさ。

  范睢が秦の昭王に説いた。

 「お国はまことに天険の地、北には甘泉、谷口、南には泥水、澗水、西には贈、蜀、東には函谷関、商阪の要
 害があります。また戦車は子柄、勇卒百万を擁しています。この武力をもって諸侯に当たるのは、名犬・韓盧
 がびっこの兎を追うようなもの。天下に覇を称えるのも難事ではありませぬ。それなのに、国境の守りを固め
 るばかり、あえて函谷関以東に出撃なさらぬのは、宰相穣侯の補佐がよろしくないからであって、王の落度で
 もあります」
 「どうして落度だというのか」
 「隣接の韓・魏をとび越して、遠い強国の斉を攻めるのは愚策であります。少々の兵力では、斉は破れません。
 かといって大軍をくり出せば、本国が危い。そこで、ご自分の兵はなるべく出さないで、韓・魏の兵を使おう
 となさる。それでは義にはずれています。
  また、同盟国が信頼できないのに、それをとび越して斉を攻めるのは、上策とは申せません。むかし、斉が
 楚を攻めたとき、さんざん相手をけちらして、大いに領土拡張の勢いをみせながら、結局わずかの土地も確保
 できずに終わりました。いかに領土が欲しくても、遠すぎて守り切れなかったからです。しかも、戦いで疲弊
 し、君臣の不和をまねいた斉は、諸侯に攻められて破れました。こうして、斉王は恥を天下にさらしました。
 それというのも、遠国の楚を討つことに熱中し、近隣の韓・魏をふとらせてしまったからです。まるで山賊に
 武器を貨し、盗人に食糧を与えるようなものではありませんか。
  王よ、遠国と結んで近隣を攻めるのがよろしい。一寸の地を得ればその一寸が、一尺の地を得れば、その一
 尺が、確実に王の領土となります。この良策を捨てて遠国を攻めるなど、誤りもはなはだしい。
  それにこういう例もあることです。かつて趙が五百里四方もあった隣国の中山を併呑した際、他の諸国の介
 入をいっさい許しませんでした。それというのも他の利を得ていたからこそできたのです。
  
かの韓・魏は、中原に位置する国、 まさに天下の要です。天下に絹を称えようとするなら、まず韓・魏と
 結んで中原に進出し、楚と趙に圧力をか けるのです。趙が強ければ楚が、楚が強ければ趙が、秦になびきま
 しょう。両国ともになびけば、斉は必ず恐れて、鄭重に朝貢を請うてまいります。そうなれば、韓・魏を滅ぼ
 すのは難しいことではありません」
 「魏と親しくしたいが、なにしろ信頼のおけない国なので、因っている。どうしたものか」

  范睢は答えた。

 「こちらから朝貢してはなりません。土地を与えて機嫌をとってもいけません。攻撃するにかぎります」
  昭王は、魏の邢丘を攻めた。邢丘が陥ると、魏は朝貢を詔うた。范睢はさらに昭王に説いた。

  秦と韓の国境は、刺繍の糸のように交錯しております。秦から見れば、韓は木食虫、腹の病であります。ひ
 とたび変事が起これば、韓ほど厄介な国はありません。韓を味方につけておくべきです」
 「そうしたいとは思うが、相手がきかなければ、どうする」
 「韓の榮陽を攻めれば、成皐への通は不通になります。太行山の道を分断すれば、上党の兵は南下できません。
 そのすきにどっと榮陽を攻める。相手は三分され、滅亡は必至です。韓はそれがわかっています。従わないは
 ずはありません。韓が従えば、天下に剖を称えることができましょう」
 「なるほど」
 と、昭王は答えた。



 〈范睢〉 魏の人、宇を叔といった。長い間不遇な生活を送ったが、秦に行って昭王(在位・前306~25
 1年)に上書したことがきっかけとなって認められ、宰相にとりたてられる。かれが秦の昭正に説いた遠交近
 攻――遠国と結んで近隣を攻める――は、この後、秦の国是となり、秦の勢力拡大に大きな助けとなった。中
 原〉 中国ともいう。一口に東夷・南蛮・西戎・北秋と称された四方の蛮族から区別して、黄河中流に建国し
 た国々が、"中国"となのった。戦国時代でいえば、韓・魏・趙などの位置したあたりで、今の河南省を中心と
  した地域である。

古色蒼然とした武力(軍事力)を持って「遠交近攻」で領土を拡張し世界統一を図る帝國主義遺制から脱却するに
は、非軍事手段と
"遠近両交論"で互いの国を解く努力を行っているのだろうか?!と再考を迫まる。戦前は、抗日
戦争に邁進すべく国民党と手を結び(国共合作)し敗戦とともに国共内政再開の後政権奪取に成功する、戦後は、
抗米、抗日、抗ソナショナリズムをバネとして「帝國のロングマーチ」を続けているが、その野望は単一国家によ
る覇権か中米ロの邦連(トロイカ)覇権なのか?どちらにしろ、中国の帝国主義膨張による、長期亘る膨大な軍事・
経済負担と国内外の人権抑制に耐きれず体制崩壊が待ち受けている。それの回避行政システム――たとえばリコー
ル制に是正――よるの構築に成功できるのか、強権政治に保守反動するのか細心要注意である。


                                            この項つづく

 


● 折々の読書  『China 2049』18


                                  秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」     


                                                   マイケル・ピルズベリー 著
                                                   野中香方子 訳   

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピルズベリーが
、自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづ
けてきたと認めたうえで、中国の知られざる秘密戦略「100年
マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及も随所にあり、これから
の数十年
先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容とな
っている。 

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
     森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)  

   第3章 アプローチしたのは中国 

                                  東の呉と組み、北の魏と戦う-『三国志演義』(配元前200年)

                                        毛主席への覚え書き(1969)より引用  

  カーター大統領はまた、1979年ごろ、中国北西部に信号情報を傍受する基地を設立することを許可した。
 この件については、元CIA秘密諜報員で後に駐中大使になったジェームズ・リリーが回想録「チャイナハン
 ズ 元駐中アメリカ大使の回想1916~1991」に記している。

  「わたしがCIAから勲功メダルを授与された理由の一つは、北京にCIA支局を開設したことで、もう
  一つは、戦略情報の収渠を中田と協力する体制を整えたことだ,{中略)突拍もないアイデアだと思える
  かもしれない,何しろほんの数年前までベトナムで代理戦争をしていたアメリカと中国が、対ソの情報収
  集で協力しようというのだから(注55)」

  1978年、わたしは上院予算委員会で専門スタッフとして働きながら、国防総省の顧問も務め、そこでは
 相変わらず中国関連の機密情報を分析したり、報告書にまとめたりしていた。1980年、ロナルド・レーガ
 ンが2期目を目指して大統領選に立候補したとき、わたしは顧問団のメンバーに指名され、外交政策に関する
 最初の選挙演説の、草稿の作成を手伝った。草稿には、アメリカははるかに大きな脅威であるソ連を打倒する
 ために中国を助けるべきだという、顧問団に共通する見解を盛り込んだ,レーガンが選挙で勝つと、わたしは
 政権移行チームのメンバーに選ばれた,当時のわたしは依然として、中国といっそう協力すべきだと主張して
 いた。国務長官のアレクサンダー・ヘイグはそんなわたしに力を貸してくれた。彼はカーター政権下で進めら
 れた、中国との初期の交渉のすべてを知っており、国務長官として北京を訪問するとともに、中国への武器輸
 出を公に提案した。

  1981年にレーガン大統領が著名したNSDD(国家安全保障決定令)11は、人民解敗軍の戦闘能力を
 国際レベルにまで底上げするために、先進的な空軍、陸軍、海軍およびミサイルの技術を中国に売ることを国
 防総省に許可するものだった。翌年出されたNSDD12は、中国の軍嘔力と民生用核開発(原子力発電所)
 計画を拡大するために、核分野で米中が陥力することを提言した。
  レーガンは前任者たちの対中政策に強い疑念を抱いており、それを巡って政権内の意見は大きく対なした。
 レーガンは、わたしを含め、波の政隆を支える中国専門家の大半より鋭く、中国の本質を見抜いていた。しか
 し、表面的には、中国を強くしようというニクソン・フォード・カーター路線を踏襲し、1984年のNSD
 D140では「強く安全で安定した中国はアジアと世界の平和を保つ力になるはずなので、その近代化を助け
 よう」と述べている(暗示的だが、国家安全保障会議のスタッフはNSDD140へのアクセスを厳しく制限
 した。それは15部しか作成されなかった――おそらく、中国強化という異論の多い目標の概略が記されてい
 たからだろう(注56)。

  レーガンは、中国に武器を輸出して軍服力強化を支援し、台湾への武器輸出は削減しようとする指示書に署
 名した,しかし前任者と違って、重要な意味を持つ但し書きを添えた。それは「対中支援は、中国がソ連から
 の独立を維持し、拙誠的体制の民主化を図ることを条件とする」というものだ。しかし残念ながら、この但し
 書きを彼の顧問団はほとんど無視し、どういう理由からか、レーガン自身も無視した。加えて、レーガン政権
 は、遺伝工学から自動化、バイオテクノロジー、レーザー、宇宙工学、有人宇宙飛行、知能ロボット工学にい
 たる分野で中国が新たに設立した研究機関を、財政と教育の両面で支援した。さらにレーガンは、中国の軍事
 使節団が、アメリカの安全保障の核の一つである国防総省国防高等研究計画局、すなわちインターネットやコ
 ンピューター・ネットワークといったハイテクプログラムを開発した研究機関を訪問することさえ承認した。

  レーガン大統領の在任中、米中が交わした軍事に関わる密約は、以前なら考えられなかったレベルにまで
 した。米中は密かに協力して、反ソ連のアフガン反乱軍、クメールルージュ、アンゴラの反キューバ勢力に
 軍需品を提供した。中国は、ベトナムによるカンボジア占領にも対抗した。5万人のゲリラ兵の武装を含む、
 このカンボジア支援については、THe Combodian Warsという本で4名のCIA幹部が詳細を暴露し、議論して
  いる(注57)。ジョージ・クライルの著作、『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』では、他のCIA幹部が
 さらに大きな秘密を暴露した。それはアメリカが中国から武器を20億ドル分購入し、反ソ連のアフガン反乱
 軍に提供したというものだ(注58)。キッシンジャーの回想録は、アンゴラでも米中は秘密裏に協力したと語
  っている(注59)。

  中国はなぜ、これほど大規模な隠密作戦をアメリカと協力して行おうとしたのだろう。本当のことは、中国
 政府がその記録を公開するか、非常に高位の要人が亡命するまでわからないだろう。ともあれ、中国が、アメ
 リカの力とテクノロジーを利用して、自国を長明的に増強しようとしていたのは確かだ,その本意は、「囲碁」
 の戦略、すなわち、ソ連による包囲を阻止することにあったようだ。中国が了フソンで先頭集団に良い込もう
 としているとは誰も想像すらしていなかった。それは中国が一貫して、アメリカの保護を必要とする、防衛が
 精一杯の弱々しい国というイメージを巧みに装っていたからにほかならない。

  ニューヨーク・タイムズ紙の記者、パトリック・タイラーによると、10番目のプレゼントとして、アメリ
 カはソ連との国境沿いで中国と協力して情報を収集することを約束した。これは密かに「チェスナット作戦
 と命名された。1979年8月、カーターの副大統領のウォルター・モンデールが訪中した折に、国防総省と
 CIAはこの作戦で用いる機材を軍用輸送機で中国に運んだ,タイラーによると、中国はその輸送機、C14
 1スターリフターを、ソ連のジェット旅客機の隣に駐機させ、米中の協力がソ連に見えるようにしたという(
 注60)。

  タイラーによると、この時に作られた通信監視基地は、ソ連の防空施設からのレーダー信号や、航空交通に
 関する情報を収集するだけでなく、KGBの通信を傍受することもできた。また、ソ連の核兵器の警戒すべき
 変化も検知できた(注61)。そのおかげで中国は、仮にソ連に攻撃されても、態勢を整える時間の余裕を持て
 るようになった。1979年2月にソ連を後ろ盾とするベトナムがカンボジアに侵攻し、同年12月にソ連が
 アフガニスタンに侵攻するというきな臭い時代にあって、中国の安全保障は格段の進歩を遂げた。忍従の末に
 中国は、6年前にキッシンジャーとイクレとわたしが提案したよりずっと多くの支援を手に入れつつあった。

注55  James Lilley and Jeffrey Lilley, China Hands: Nine Decades of Adventure, Espionage, and Diplomacy in Asia (New
          York: Public Affairs, 2004), 214-15
.
注56. NSDD120で、レーガン大統領は、アメリカ政府に「特に技術移転の自由化により、中国の近代化への努力に支援を
          差し伸べるyう指示した。NSDD 120, "Visit to the US of Premier Zhao Ziyang,” January 9, 1984,以下のサイトで人
          手可能。http://www.fas.org/irp/offdocs/nadd/  NSDD140は、「強く、安全で安定した中国は、平和のため成長する
    力となりうる」と断言した。NSDD 140. "‘President's visit to People's Republic of China,” Apr.21,1984,以下のサイト
          で人手可能。http://www.fas.org/irp/offdocs/nsdd/nsdd-140.pdf.
注57.
Kenneth Conboy,The Cambodian ars; Clashing RMIES AND CLA Covert  Operation(Lawrence: Univcrsity Prcss of
          Kansas,
2013).以下も参照。Andrew Mertha,Brothers in Arms Chinese Aid to the Khmer Rouge, .1975-1979(lthaca.
          NY: CornlI University
Press,2014).
注58.  George Crile,Charlie Wilso's War: The Extraordinary Story of the Largest Covert Opertion in History (New York:
           Atlantic Monthly Press. 2003).
注59.  Kissinger、Ycarsof Renewal, 819.
注60.  Tyler,Great Wall, 284.
 
注61.  同上、285.テイラーは 注97 でカーター他8名の大統領の名を挙げている。

                                                                                                                                                                                  この項つづく   

  ● 乞うご期待!

The Musketeers  銃士隊 : 4月3午後11時スタート NHK

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次世代電力のフロンティア

2015年09月16日 | 政策論

 

 

     人は原理主義に取り込まれると、魂の柔らかい部分を失っていき
                        ます。  そして自分の力で感じ取り、考えることを放棄してしまう。

                                                                                    村上 春樹

 

 

 

【ネクストディケイド:縮小する電力市場】

● 今後、電力市場は縮小傾向に

日本のエネルギー分野では半世紀に一度と言われる大きな制度改革が進み、30兆
円と言われる巨大な市場の変革に関心を寄せているが、ビジネスチャンスには、市
場動向を冷静に見極める必要がある。

まず、市場規模について考えると、日本の電力市場は縮小傾向にある。これまで民
生分野のエネルギー消費は増加傾向にあったが、住宅やオフィスの規模、電力消費
機器の数、世帯数等の増大はピークを越え、今後は省エネルギーや人口減少の影響
が徐々に顕在化し産業分野では、円高の是正で国内回帰の動きがあるとはいえ、製遺
業が収益の中心を海外に据え地産地消の生産体制を整備していく方向性は変わらな
い。産業分野でも省エネルギ-は着実に成果を上げる。日本国内で電力消費が増え
る要素は見当たらないという(「電力市場のフロンティアを目指せ」井熊 均 環境
ビジネス 2015年秋季号)。
 
つまり、電力市場への新規参入者は、市場規模が減退する中で、電力会社に挑むこ
とになる。現状では、PPS が電力会社より安い単価を示すことで顧客を獲得できる
が、いくつかの理由で、電力会社のコスト競争力を回復する。(1)一つは、原子
力発電所の復帰である。九州電力の川内原子力発電所が再稼働を果たしたことで、
原子力規制委員会が示した基準をクリアした原子力発電所は順次復帰することにな
る。国が行ったコスト検証によれば、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け
て、原子力発電所のコストは大幅に上昇したが、中には損益に直接反映されないコ
トも含まれているため、原子力発電の復帰によるコスト効果は見た目以上に大き
ことを挙げている。(2)2つめは、火力発電でも電力会社のコスト改善が効果
上げる。電力自由化を控えてコスト競争力の高い石炭火力が次々と建設されてい
が、多くは電力会社に電力を供給することになる。LNG火力については 東京電
と中部電力の提携等によりLNGの調達力が向上し、発電単価を押し下げる。さ
に、原子力発電の停止と安定供給に関する責任意識で稼働させてきた老朽火力が
次停止され、発電効率の低い発電所ヘリプレース(置き換え)される。

● 新規参入者が目指すべきもの 

こうした観点から、10年後の電力会社のコスト競争力は今よりも格段に高くなる
と考えるべきだ。再生可能エネルギーを除くと、新規参入者の電源の殆どはLNG火
力になるから、対抗するのは容易ではない。電力取引等監視委員会が設立され、公正
な電力市場が作られている。くが、公正で中立的であるほど、電力市場の勢力は集約
されていく。電力に限らず力のある者が勢力を拡大し、少数の強力な事業者が影
力を持つのが市場の姿だ。そこで不自然に事業者を増やすことは、必ずしも国民

点に敵った政策にはならない。電力市場における新規参入者の政策的な存在意
義は、
少数の電力会社による過度の寡占を防ぐことに尽きる。一方で、強力なエネル
ギー
関連企業が誕生することは、エネルギー資源の調達力の向上、新興国等におけ
るエ
ネルギーインフラ市場での競争力の向上などにより、日本経済に貢献できる。
産業
政策の観点に立てば、国際市場で競争力のある強力な事業者の輩出を目指すこ
とは
妥当なのだ。


● 三つのフロンティア

このように既存の電力市場での競争は新規参入者にとって厳しいものになる。その
中で、新規参入者が目指すべきなのは電力市場ヘフロンティアであるべきだ。電力分
野では3つのフロンティアを挙げている。(1)第一に、当然のことながら、再生
可能エネルギーである。しかし、今後の再生可能エネルギーの投資は限られたもの
にならざるを得ない。当面重要なのは、過大な買取価格によって認定さた7千万キ
ロワットもの太陽光発電をいかに有効に活用するかだからだ固定価格買取制度
歪んだ形で運営されたことは、持続性のある再生可能エネルギービジネスの芽を摘
むことになったのだ。その他の電源については、技術開発と地道な導入に焦点が当
てられるだろうからバイオエネルギー、地熱などを中心に地域密着型で持続性のある
モデルの立ち上げに力を入れるべきだ。

(2)第二に、需要制御だ。ITの飛躍的
な進歩によりあらゆる場所で安価に電力
需要の管理・制御ができるようになった。エ
ネルギー業界から目を広げれば、lndus-
try 4.0, 1ndustriaU lnternet、loT 
などの言葉で指摘されるように施設、設備のデジタ
ル制御は最も注目される事業分野である。社会基盤におけるエネルギーの重要性を
考えると、エネルギー分野で事業モデルを築いた事業者はこうした成長分野でビジネ
スを拡大できる可能性がある。エネルギーを次世代ビジネスの起点にするという考
え方だ。

(3)第三に、分散型エネルギーだ。10年代になって、家庭用燃料電源勁く、大
幅な性能アップと価格低減を実現しつつある。自動車分野ではトヨタの燃料電池自
動車ミライが画期的な価格で市場投入された。燃料電池のブレークの背景には大き
な技術革新のトレンドがあるから分散型エネルギーシステムは今後も価値を高める。
東日本大震災以降、自立的なエネルギーシステムヘの関心を高めた需要家の意識が
合わさって分散型エネルギーーがエネルギーー供給のでのシェアを拡大するのは間違
いない。エネルギー自由化の議論では、既存の電力市場の分け前にあやかりたいと
いう意識が垣間見えた。しかし、本来、新規参入者はイノベーションによってフロ
ンティア市場を切り拓くことで存在感をアピールして欲しい。上述したように、市
場動向を整理すれば、目指すべき市場が見えてくるはずだ。以上が日本総研の井熊
均氏の論点である。 

 

読み進めているうちに、『環境ビジネス』の記事なのかと疑ってしまった。つまり、
「総括原価方式」「ベースロード」の至上主義の「原発再
稼働先にありき」という
露骨な経理上のご都合で、「再生可能エネルギーが入りこむ余地をなるべく限定さ
せておきたい,可能なかぎり閉め出したい電力会社の経営姿勢」の代弁者ごとき発
言のように受けとれる。九州電力の川内原発とその黒字化発言の「証拠・根拠;evi-
dence
」等の資料を持ち合わせていないので、明確に反論できないの残件扱いとして
おく。
参考までに下表(出典:「東京電力の料金原価に基づく原子力発電の費用」
竹濱朝美)と関連部分の抜粋を参考に掲載しておく。


  原発は再生可能エネルギーより大きな負担 電力会社と原子力を推進する人
 々は、2012年7月から開始した再生可能エネルギー電気の固定価格買取制
 (以下,買取制と略す)が電力料金を高くすると批判している。しかし実際に
 は,原子力発電にかかる原価は,太陽光発電余剰電力買取制(以下,太陽光余
 剰買取制と略す)や再生可能エネルギー買取制の賦課金よりも、大きな負担に
 なっている。これについて説明しよう。

  前述のとおり、東京電力の原子力発電にかかる費用は新料金原価の11.7
 %であったから(表4、6),電力消費1 kWhあたり2.96円、1月で88
 8円になる(電力消費が300kWh/ 月のモデル家庭)。他方、太陽光余剰買
 取制の付加金は1 kWhあたり0.06円,再生可能エネルギー買取制の賦課金
 は、0.22円である(表7)。再生可能エネルギー賦課金は、原子力発電に
 かかるし、残りの半分は50年間の貯蔵後,再処理を行う場合でも、使用済み
 核燃料の処理費用は、1.3~2.2円/kWh必要とされている。原子力発電に
 は、現在の料金原価に加えて,使用済み核燃料処理の追加負担が1.3~2.2
 円/kWh発生する。これらを考慮すると,原子力発電に経済的優位性があると
 いう原発推進派の説明には重大な欺瞞があるだろう。

                 「5‐4 原発と再エネのコスト比較」
           (『東京電力の料金原価に基づく原子力発電の費用』)

※ http://e-shift.org/wp/wp-content/uploads/2013/04/130416_oshima.pdf
                                  

 
 

原則をここで述べてみても有効でないが上下図に考え方の原則を掲載。著者の「ベ
ース電源の推移」を参考に書き換えてみた。蛇足だが、脱原発派の旗手でもある広
瀬隆氏が、石炭火力発電――高性能で二酸化炭素除去付属――システムにご執心な
のでおや?メカ屋さんなのかと思ってしまったほどで、かといってクリーンエネル
ギーの伸長には期待しているようだが、個人的には、高性能小形水力発電に興味が
あるが、これは、超伝導や高性能磁石などのマテリアルイノベーションに加え、温
暖化を背景とし治水政策に組み込んだシステムを考えている(最近)。そう、「次
世代電力は俺にまかせろ!」と。
                                 

 

 

● 折々の読書 『職業としての小説家』3

 「これは村上さんが、どうやって小説を書いてきたかを語った本であり それはほ
とんど、どうやって生きてきたかを語っているに等しい。だから、小説を
書こうと
している人に具体的なヒントと励ましを与えてくれることは言うに及
ばず、生き方
を模索している人に(つまり、ほとんどすべての人に)総合的な
ヒントと励ましを
与えてくれるだろう――何よりもまず、べつにこのとおりに
やらなくていいんだよ、
君は君のやりたいようにやるのが一番いいんだよ、と
暗に示してくれることによっ
て。」と翻訳家で東京大学教授(昨年退任)の柴田元幸が本書の帯でこのように述
べている――紀伊国屋書店から村上春樹の新著『
職業としての小説家』が届いた。
早速、読み始めた。
  


    だからこそ小説家は、異なった専門領域の人かやってきて、ロープをくぐり、小説家
   としてデビューすることに対して、基本的に寛容で鷹揚であるのではないでしょ
  うか。「さあ、来るんな
らいらっしゃい」という態度を多くの作家はとってい
 ます。あるいは誰か新たにやってきたとし
ても、とくに気には留めません。も
 し新参者がそのうちにリングから振るい落とされれば、ある
いは自分から降り
 ていけば(そのどちらかか大半のケースなのですか)、「お気の毒に」とか「
 お元気で」とかいうことになりますし、もし彼なり彼女なりかかんぱってリン
 グにしっかり残ったとすれば、それはもちろん敬意に値することです。

  そして敬意はおおむね公正に、正当に払われることでしょう(というか、払
 われることを願っています)。
  小説家が寛容であることには、文学業界かゼロサム社会ではないということ
 も、いくぶん関係しているかもしれません。つまり新人作家が一人登場したか
 らといって、その代わりに前からいた作家が一人職を失うということは(まず)
 ないということです。少なくともあからさまなかたちでは起こりません。プロ・
 スポーツの世界とは、そうしうところか決定的に違います。新人選手か一人チ
 ームに入ったからオールドタイマーや、なかなか目のでない新人が一人自由契
 約になる、枠外に去る、というようなことは文学の世界にはまず見受けられま
 せん。またある小説か十万部売れたから、ほかの小説の売り上げか十万ち
 てしまった、というようなこともありません。むしろ新しい作家の本か売れる
 ことによって小説全体が活況を呈し、業界全体が潤うという場合だってあるの
 です。

  しかし、にもかかわらす、長い時間軸をとってみれば、ある極の自然淘汰は
 適宜おこなわれているようです。いくら広々としているとはいえ、そのリング
 にはおそらく適正人数というものかあるのでしょう。あたりをぐるりと見渡し
 て、そういう印象を持ちます。僕はもうこれでなんのかんの、三十五年以上に
 わたって小説を書き続け、専業作家として生計を立てています。つまり「文芸
 世界」というリングの上になんとか三十数年留まっている、昔風に表現すれば
 「筆一本で食べている」ということになります。まあ狭い意味あいにおいては
 ひとつの達成と言っていいかもしれません。

  その三十数年のあいだに、ずいぶん多くの人々か新人作家としてデビューす
 るのを目にしてきました。少なからざる数の人々は、あるいはその作品は、そ
 の時点でかなり高い評価を受けました。評論家の賞賛を受け、様々な文学賞を
 とり、世間の話題にもなり、本も売れました。将来を嘱望されもしました。つ
 まり脚光を浴び、壮麗なテーマ・ミュージックつきで、リングに上ってきたの
 です。

  しかし二十年前、三十年前にデビューした中で、いうたいどれくらいの人が
 現在もアクチュアルな現役小説家として活動しているかといえば、その数は正
 直言ってあまり多くありません。というか、実際にはかなり少数です。多くの
 「新進作家」たちか知らない問に静かにどこかに消えていきました。あるいは
 ――むしろこちらの方かケースとしては多いのかもしれませんか――小説を書
 くことに飽きて、あるいは小説を書き続けることが面倒になって、よその分野
 に移っていきました。そして彼らの書いた作品の多くは-当時はそれなりに話
 題になり、脚光を浴びたものですが――今ではおそらく一般書店で入手するこ
 とかむずかしいかもしれません,小説家の定員数は限られていませんが、書店
 のスペースは限られているからです。

  僕は思うのですか、小説を書くというのは、あまり頭の切れる人に向いた作
 業ではないようです。もちろんある程度の知性や教養や知識は、小説を書く上
 で必要とされます。この僕にだって最低限の知性や知識は備わっていると思い
 ます。おそらくというか、たぶん。本当に間違いなくそうなのかと正面切って
 尋ねられると、もうひとつ自信はありませんか。

  しかしあまりに頭の回転の素速い人は、あるいは人並み外れて豊富な知識を
 有している人は、小説を書くことには向かないのではないかと、僕は常々考え
 ています。小説を書く――あるいは物語を語る――という行為はかなりの低速
 ロー・ギアでおこなわれる作業だからです。実感的に言えば、歩くよりはいく
 らか速いかもしれないけど、自転車で行くよりは遅い、というくらいのスピー
 ドです。意識の基本的な動きがそのような速度に適している人もいるし、適し
 ていない人もいます。

  小説家は多くの場合、自分の意識の中にあるものを「物語」というかたちに
 置き換えて、これを表現しようとします。もともとあったかたちと、そこから
 生じた新しいかたちの間の「落差」を通して、その落差のダイナミズムの梃子
 のように利用して、何かを語ろうとするわけです。これはかなりまわりくどい、
 手間のかかる作業です。

  自分の頭の中にある程度、鮮明な輪郭を有するメッセージを持っている人な
 ら、それをいちいち物語に置き換える必要なんてありません。その輪郭をその
 ままストレートに言語化した方か話は遥かに早いし、また一般の人にも理解し
 やすいはずです。小説というかたちに転換するには半年くらいかかるかもしれ
 ないメッセージや概念も、そのままのかたちで直接表現すれば、たった三日で
 言語化できてしまうかもしれません。あるいはマイクに向かって思いつくかま
 まにしゃべれば、十分足らずで済んじゃうかもしれません。頭の回転の速い人
 にはもちろんそういうことかでぎます。聞いている人も「なるほどそういうこ
 とか」と膝を打つことかできる。要するに、それか頭かいいということなので
 すから。

  また知識の豊富な人なら、わざわざ物語というようなファジーな、あるいは
 よく得体の知れない「容れ物」を持ち出す必要もありません。あるいはゼロか
 ら架空の設定を立ち上げる必要もありません。手持ちの知識を5まく論理的に
 組み合わせ言語化すれば、人々はすんなり納得し、感心することでしょう。

  少なくない数の文芸評論家か、ある種の小説なり物語なりを理解できない―
 あるいは理解できたとしても、その理解を有効に言語化・論理化できない――
 理由はおそらくそのへんにあるのかもLれません。彼らは一般的に言って、小
 説家に比べて頭か良すぎるし、頭の回転が速すぎるのです。往々にして物語と
 いうスローペースなヴィークル(乗り物)に、うまく身体性を合わせていくこ
 とができないのです。だから往々にして、テキストの物語のペースを自分のペ
 ースにいったん翻訳し、その翻訳されたテキストに沿って論を興していくこと
 になります。そういう作業か適切である場合もあれば、あまり適切ではない場
 合もあります。うまくいく場合もあれば、あまりうまくいかない場合もありま
 す。とくにそのテキストのペースかただのろいだけではなく、のろい上に重層
 的・複合的である場合には、その翻訳作業はますます困難なものになり、翻訳
 されたテキストは歪んだものになってしまいます。

  それはともかく、頭の回転の連い人々、聡明な人々か――その多くは異業種
 の人々ですが――小説をひとつかふたつ書き、そのままどこかに移動していっ
 てしまった様子を僕は何度となく、この目で目撃してきました。彼らの書いた
 作品は多くの場合「よく書けた」才気のある小説でした。いくつかの作品には
 新鮮な驚きもありました。しかし彼らか小説家としてリングに長く留まること
 は、ごく少数の例外を別にして、ほとんどありませんでした。「ちょっと見学
 してそのまま出ていった」というような印象すら受けました。

  あるいは小説というのは、多少文才のある人なら、一生に一冊くらいはわり
 にすらっと書けちゃうものなのかもしれません。またそれと同時に聡明な人た
 ちはおそらく小説を書くという作業に、期待したほどメリットを発見できなか
 ったのでしょう。ひとつかふたつ小説を書いて、「ああ、なるほど、こういう
 ものなのか」と納得して、そのままよそに移っていったのだと推測します。

  これならほかのことをやった方か効率かいいじゃないか、と思って。

  僕にもその気持ちは理解できます。小説を書くというのは、とにかく実に
 率の悪い作業なのです。それは「たとえば」を繰り返す作業です。ひとつの個
 人的なテーマがここにあります。小説家はそれを別の文脈に置き換えます。

 「それはね、たとえばこういうことなんですよ」という話をします。ところか
 その置き換えの中に不明瞭なところ、ファジーな部分かあれば、またそれにつ
 いて「それはね、たとえばこういうことなんですよ」という話が始まります。
 その「モれはたとえばこういうことなんですよ」というのがどこまでも延々と
 続いていくわけです。限りのないパーフフレーズの連鎖です。開けても開けて
 も、中からより小さな人形か出てくるロシアの人形みたいなものです。これほ
 ど効率の悪い、回りくどい作業はほかにあまりないんじゃないかという気さえ
 します。最初のテーマかそのまますんなりと、明確に知的に言語化できてしま
 えれば、「たとえば」というような置き換え作業はまったく不必要になってし
 まうわけですから。極端な言い方をするなら、「小説家とは、不必要なことを
 あえて必要とする人種である」と定義できるかもしれません。

  しかし小説家に言わせれば、そういう不必要なところ、回りくどいところに
 こそ真実・真理かしっかり潜んでいるのだということになります。なんだか強
 弁しているみたいですが、小説家はおおむねそう感じて自分の仕事をしている
 ものです。だから「世の中にとって小説なんてなくたてかまわない」という意
 見かあっても当然ですし、それと同時に「世の中にはどうしても小説か必要な
 のだ」という意見もあって当然なのです。それは念頭に置く時間のスパンの取
 り方にもよりますし、世界を見る視野の枠の取り方にもよります。より正確に
 表現するなら、効率の良くない回りくどいものと、効率の良い機敏なものとか
 裏表になって、我々の住むこの世界が重層的に成り立っているわけです。どち
 らが欠けても(あるいは圧倒的劣勢になっても)、世界はおそらくいびつなも
 のになってしまいます。

  あくまで僕の個人的な意見ではありますが、小説を書くというのは、基本的
 にはずいぶん「鈍臭い」作業です。そこにはスマートな要素はほとんど見当た
 りません。一人きりで部屋にこもって「ああでもない、こうでもない」とひた
 すら文章をいじっています。机の前で懸命に頭をひねり、丸一日かけて、ある
 一行の文章的精度を少しばかり上げたからといって、それに対して誰か拍手を
 してくれるわけでもありません。誰か[よくやぅた」と肩を叩いてくれるわけ
 でもありません。自分一人で納得し、「うんうん」と黙って頷くだけです。本
 になったとき、その一行の文章的精度に注目してくれる人なんて、世間にはた
 だの一人もいないかもしれません。小説を書くというのはまさにそういう作業
 なのです。やたら手間がかかって、どこまでも辛気くさい仕事なのです。

  世の中には一年くらいかけて、長いビンセットを使って、瓶の中で細密な船
 の模型を作る人がいますが、小説を書くのは作業としてはそれに似ているかも
 しれません。僕は手先が不器用だしとてもそんなややこしいことはできません
 か、それでも本質の部分では共通するところがあるかもしれないと思います。
 長編小説ともなれば、そういう細かい密室での仕事か来る日も来る日も続きま
 す。ほとんど果てしなく続きます。そういう作業かもともと性にあった人でな
 いと、あるいはそれほど苦にしない人でないと、とても長く続けられるもので
 はありません。




「小説家とは、不必要なことを
あえて必要とする人種である」と定義できるかもし
れません――の件で、こんなことは、わたしも感じながら仕事していたことがある
ぞと思いったが、反復仕事、やっつけ仕事、ルーチンワークの繰り返しの仕事以外
だけではないかと。つまり、「不必要なことをあえて必要とする」とは"高級"な行
為を行う人たちのことだと考えたわけだが、さて今夜はこの辺で切り上げよう。



                             この項つづく
 

 

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ステラ電池旋風

2015年09月14日 | 政策論

 

 

  忘れたいものは絶対に忘れられないんです。 /  村上 春樹

 

  

【超高齢社会論 16: 下流老人とはなにか】  
 

    【目次】

  はじめに
  第1章 下流老人とは何か
  第2章 下流老人の現実
  第3章 誰もがなり得る下流老人―「普通」から「下流」への典型パターン
  第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
  第5章  制度疲労と無策が生む下流老人―個人に依存する政府
  第6章 自分でできる自己防衛策―どうすれば安らかな老後を迎えられるのか
  第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
  おわりに   

   第6章 自分でできる自己防衛策―どうすれば安らかな
                    老後を迎えられるのか

  【いざというときの問題(予防編)】……「受援力」を身につけておく

  予防編の最後は、「受援カ」の育成である。
  受援力は、災害分野でよく聞く概念だ。たとえば災害が発生すると、各地からボラ
 ンティアが被災地に支援に入る,そのボランティア、つまり支援を提供する人々の意
 思や知識、ノウハウを生かすためには、被災地や被災者側がボランティアを上手に活
 用することが重要だと言われている。
  すなわち受援力とは、「支援される側が支援する側の力をうまく生かし、生活の再
 建
に役立てる能力」である。

  これは前述のブライドを捨てようという提案にも通じる,じつは支援したいと思っ

 ている人は地域に意外と多くいるが、それらの力を活用して、自分の生活をよりよく
 できるかは、受け手の意識にかかっていると言える。
  事実、10年以上生活相談を受けてきて感じるのは、支援を「しやすい方」と「し
 に
くい方」がいるということだ。支援しやすい方の特徴は、話しやすかったり、プラ
 ス
思考だったり、自分から積極的に問題の解決にあたったり、自分の問題を把握して
 い
たり、ある程度の支援方法や制度を学んでいたりする,気軽に相談に来てくれて、
 問
題が複雑化する前にアドバイスできる。

  一方で、支援が困難な方は、かたくなに心を閉ざしていたり、自暴自棄になってい

 たり、マイナス思考で問題解決に対して消極的だったりする。また、問題の所在が把
 握できずにやみくもに行動してしまう場合もある。これらが何よりも問題なのは、支
 援者との間に信頼関係が築けないということだ。するとたいてい、支援はうまくいか
 ない。受援カが弱い事例の特徴である,
  貧困に陥り精神的にショックを受けたとき、普通なら当たり前の感情が失われてし
 まうのもやむを得ない。しかし、専門家や支援者のノウハウを最大限活用して、その
 力を引き出せるか否かは、当事者の方たちの「貧困から立ち直ろうとする前向きさ」
 にかかっている。支援者が即座に支援をはじめられるか、あるいは信頼関係の構築か
 らはじめなくてはならないかによって、問題解決までの時間や道筋も異なってくる。

  問題が発生したら早めにに相談し、速やかに支援を受けられるような体制と心構え
 を自分のなかで整備しておく必要があるだろう。

                      幸せな下流老人の共通点

  ここまで下流化への対策と予防策をいくつか列挙してきた。これらを踏まえて準備
 しておけば、むやみにおびえたり、不安に思う必要はないだろう。
  じつはわたしが知っている貧困高齢者にも、幸せな人はたくさんいる。不幸せな人
 との違いは明らかに「人間関係」にある。現状において、わたしたちが下流老人にな
 らないための具体的な対策は、貯蓄や制度の知識を得ておくことぐらいだ。しかし、
 実際には貯蓄があっても、下流になるときは、なる。それは第2章、第3章でも示し
 たとおりである。人生とはそういうものであり、思い通りには進まない。

  だから、豊かな老後を送るためには、お金以外の部分、すなわち豊かな人間関係を
 築いておくことが大切だ。
  20~50代前半の人は仕事中心、経済優先の生活がある。家庭や友人関係などを
 省みることなく、ひたすらに働いているという人も多いかもしれない。
  だからこそ、老後が見えてきた50代後半からは、配偶者や子ども、家族、友人など
 の周囲の人間関係を大切にしたい。要するに、経済優先の生活から人のつながりを中
 心にした生活に、価値観をシフトチェンジしていく必要がある。それがやがて、自分
 自身を救うセーフティネットとして機能することになるだろう。そして、楽しみや生
 きがいを共有する心強いパートナーを得ることにもつながるのだ。

  人生は長いし、苦難が多いと思っている,その苦難を一緒に乗り越えるためにも、
 一人よりは二人、二人よりは三人と、自分の苫しみを理解してくれている人がいれば、
 下流老人の問題にも立ち向かえるだろう。
  わたしは本書において、「関係性の貧困」を克服することが重要だと繰り返し述べ
 てきた。関係性の貧困がなくなれば、誰かしらが声をかけ、手を差し伸べ、日常生活
 を充実させられる。

  わたしが知る限りでも、たとえば72歳の貧困男性が、中小企業の社長と居酒屋で
 知り合って仲よくなり、それ以降飲み友達になったという楽しそうな例がある。また、
  68歳で女性とお付き合いを始めた男性もいる。肢はファミリーレストランで、一
 人で食事をしている50代後半の女性に話しかけたそうだ。彼らはお互いに寂しさを
 抱えており、話し相手がほしかったという。いつもファミリーレストランで、お茶を
 飲んだり、おしゃべりをしたりと、日々の生活を楽しんでいるという。

  これらの事例をいくつも見ると、「幸福」をどう捉えるかは個人次第であると感じ
 る。最低限度の生活保障は必要だが、それと同時に、文化的な暮らしを維持できるか
 は、老後の人間関係が大きく左右する。
  あなたは、老後になっても付き合いたいと思う人、またはそばにいてくれる人が、
 身近にいるだろうか。そのような人々との出会いは、今からでも遅くないと思うし、
  そのような人々が身近にいてくれたら、きっと絶望や寂しさを分かちあえるだろう。
 そしてこの「分かちあい]が、人生の幸せや満足度に大きく影響することは、言うま
 でもない.

   第7章 一億総老後崩壊を防ぐために

  最後に、わたしなりの下流老人に対する提言をまとめておきたい。
  下流老人の問題が、人間のつくった社会システムの不備から派生しているものであ
 るなら、その社会システムを変革できるのもまた、人間である。これからのあるべき
 社会のビジョンを示しながら、わたしたちの社会をどのように構築し直していけばよ
 いのか、やや挑戦的、試行的に述べたいと思う。
  これらの提言がいくつかの議論を起こし、これからの社会保障や社会システムの発
 展にとって、建設的なものとなれば幸いである,

                   下流老人は国や社会が生み出すもの

  まずは政治ができることだ。「一億総老後崩壊」を防ぐためには、どんな政策が必
 要
か考えてみたい。わたしは政策によって、下流化はある程度抑制できると思ってい
 る
が、一億総老後崩壊時代の足音はすぐそこまで追っており、対策は「待ったなし」
 だ。

  まず、貧困は見えないのではなく、見ようとしていくこと。すでにわたしたちの周
 囲にあるという前提で制度を考える必要がある。そして、下流老人の問題を「自分事」
 として考えるよう意識を変えていくことから始めたい。
  しつこく繰り返してきたとおり、下流老人を生み出すのは国であり、社会システム
 である,下流老人やその家族だけの問題ではない。したがって当然ながら、対策を行
 う主体も国や政府であるべきだ。日本に貧困があることを認め、格差是正や貧困対策
 を本格的に打ち出すことが何よりも必要だと言えるだろう,

  貧困に対して真剣に向き合わない国に、未来はない。貧困による悲惨な現実を直視
 し、当事者の声から社会福祉や社会保障を組み立て直していくことが求められる。

                      日本の貧困を止める方策は?

  下流老人の問題が、今後ますます進行する理由の一つに、若年層や子どもの貧困が
 ある。ワーキングプアや非正規雇用の増加に伴い、働く世代の貧困も顕著に増加して
 いる。OECDが発表した「対日審査報告書(2012年版ごによると、日本の相対
 的貧困率は、16・1%(2012年)に達し、過去最悪の高さを更新し続けている。
 これはOECD加名国34か国のうち、6番目に高い数値だ。また、子どもの貧困も
 16・3%(2012年)と高い水準にある。

  これは多くの専門家も指摘しているが、若者の貧困、子どもの貧困は、その後の世
 代においても格差を固定する。家庭の経済事情によって十分な教育を受けられず、生
 涯低所得の仕事にしかつけない人々が繰り返し生み出される危険性がある。
  そしてこれは低年金や無年金問題、無保険問題の要因となり、将来の下流老人を生
 み出すことにもなるだろう。要するに、これ以上相対的貧困率が上がらないように抑
 制しなければ、社会が持続可能性を失ってしまう,速やかに貧困率の削減数値目標を
 設定し、そのための具体的な施策を行う必要がある,
  
  具体的には、貧困対策基本法の法制化をし、国民の防貧や救貧対策を国家戦略とし
 て強化する方向に議論を進めたい,課税対象については、資産や所得を総合的に含め
 て議論し、取れる層から徴収することで所得の再分配機能を高め、社会保障を手厚く
 していくことが不可欠だ。下流老人がいる一方で、金持ち老人が大勢いるのもまた事
 実であり、再分配による支えあいが必要なことは言うまでもないだろう。

  しかし、社会保障を手厚くするために再分配機能を高めれば、資産家や高所得者は
 海外に逃げてしまう、もしくは労働意欲が減退して課税効果が上がらないといった指
 摘もある,これについては引き続き、高所得者の逃げ場である「タックスヘイブン」
 の対策も含め、グローバルな睨点での議論が求められるだろう。

                    制度をわかりやすく、受けやすく

  また、下流老人になってしまったら、生活保護制度を中心に社会保障を利用する必
 要があるが、これまでに述べてきたとおり、生活保護には根強いスティグマ感(恥辱
 感)が植えつけられてきた。生活保護を受けるのは恥だと言わんばかりに、制度があ
 るにもかかわらず、利用しない(できない)人々は相変わらず多い。

  だが一方で、年金をもらうことに対しては何のためらいもないし、ごく当たり前の
 権利として受け取っている。介護保険も近年では徐々に一般的になってきて、ヘルパ
 ーやデイサービスなどを利用する高齢者も多い。
  介護保険制度を抵抗なく利用できる理由の一つは、介護保険料を支払っているとい
 う「権利意識」である。これまで保険料を払ってきたのだから、利用して当然(ある
 いは、利用しないと損する)と思うわけだ,しかし年金も介護保険も、保険料以外に
 一定金額の税が役人されている。もし生活保護受給者を一方的に批判するなら、年金
 の相当な減額や介護保険のサービス劣化も覚悟しなければならないはずだ。

  一方、生活保護は保険料拠出によらない「無拠出型」の社会保障であり、100%
 税が役人されている。だから反感が強いのだろうか。しかし、児童手当や児童扶養手
 当にしても、保険料を払わなくとも給付されるものだが、それらを受給している子育
 て世帯に、生活保護受給者ほどのスティグマ感があるようには思えない。なぜ生活保
 護だけに厳しい目が向くのか。ここからも貧困に対する特別の偏見や差別の目が垣間
 見られる。

  このような状況を打開するには、何よりも生活保護を受けやすく、わかりやすく広
 報していくことが求められる。政府や自治体は下流老人に対して、生活保護で救済で
 きることをちゃんと知らせ、窓ロヘ申請に来させる必要があるだろう。
 下流老人の「オカミ」意識は強い。「オカミ]から呼びかければ、生活保護申請に至
 る人々も増え、多くの人が救われるように思う。

  2016年からは、すべての国民の所得や税の納付状況などを、原則一元的に把握
 するため「マイナンバー制度」が本格実施される。これにより政府や自治体は、生活
 困窮者や下流老人の存在をよりはっきりとつかめるはずだ,納税や保険料徴収作業の
 効率化のためだけでなく、最低生活費に満たない状況で生活している高齢者への生活
 保護の広報や情報告知にも活用してほしい。

                           生活保護を保険化してしまう!?

  また、これはやや挑戦的になるが、そろそろ「生活保護の保険化」を検討してもい
 いのではないかと思っている。家族以外の誰かの手を借りることをとくに嫌う日本人
 が、なぜ介護保険制度のサービスは利用するのか、何が利用のインセンティブにつな
 がるのかを検討すると、ひとつの要因は、やはり保険料拠出にある。だったらいっそ
 のこと生活保護も保険化してしまえば、年金や介護保険などと同じように、「保険料
 を
払ったのだからサービスを受けて当然」といった発想を持ちやすくなるだろう。
  生活保護の財源は、すべての国民が月額100円(建前的金額)でも拠出するよう
 にすればいい。大切なのは、この保険料を支払うという行為を通じて「施し意識」か
 ら「権利意識」にシフトさせ、もっと気軽に受給できるようにすることである

  本来、生活保護など救貧制度は、無拠出型の給付であることが大原則であり、社会

 保障の鉄則である。しかし、ここまで根強い差別感情にさらされてしまうと、制度を
 しっかり機能させるには、並大抵の改善では効果が見られない。生活保護の財源拠出
 化・保険料化による制度利用の促進政策を進めることに議論の余地はあるだろう。
  生活保護への偏見や差別を残したまま、団塊世代や次世代の高齢者に対する新たな
 施策を打ち出さない状況が続けば、近い将来、孤立死や餓死はさらに拡大していくこ
 とになろう。団塊世代が後期高齢者(75歳以上)に突入するころには、生活保護制度
 を今よりも確実に機能させないと、多くの高齢者や下流老人の生活が破綻し、命が失
 われろ。
 「生活保護制度のごく一部保険化」というのは奇策であることに注意しながらも、生
 何が必要かを検討すべき時期にある。


                                            藤田 孝典 著『下流老人』

                                                   この項つづく

 

【エネルギー政策: ネクスト・ディケイド】

この10年は、誰も予期しなかった、世界史的なエネルギー変革が進展してきており、そ
の変化は加速している。
世界全体で5千万キロワットだった風力発電は、14年だけで同
模が増え、累積では原発の発電容量と肩を並べた。世界全体でわずか300万キロワッ
だった太陽光発電は、14年だけで4千キロワット増え、累積で原発の発電容量のほぼ
半分に遠した。14年に世
界で新設された電源の6割が自然エネルギーで、その投資額も
約36兆円と記
録を更新。今や自然エネルギーは、エネルギー供給、地球温暖化対策、産
業経済
投融資機会、雇用創出、地域活性化などで中心を占め、この間に国際自然エネルギ
ー機関も誕生したと述べ、日本の、国営・独占・大規模集中型の「エネルギー1.0」から、市場・
規制緩和の「2.0」へ、分散型でオープンな自然エネルギーの「3.0」へと移行し、確実なトレン
ドや変わらない要因を踏まえ、不確実で影響の大きな2つの要因外部的なコンチンジェンシ
ーと自らの挑戦を変数にし、次の「エネルギー4.0」を考察する(「加速する世界のエネルギ
ー変革」飯田哲也 環境ビジネス 2015年秋季号)。


そこでは、ジーメンスも2011年に原子力事業を
売却し再エネをエネルギー事業の中核
に位置づけ、世界最大級の電力会社エオンは214年末、今後の事業の軸を再エネにする会
社分創案を発表。
対照的に原子力は、世界的に新設は数えるばかりでいずれも遅延と高騰
ため金融機関に敬遠されつつある。アレバは建設中の原子力事業の損失などで14年に
6千億円規模の赤字を計上しEDFに事業売却。日本でも東芝、日立、三菱重工業とも原子
力事業の苦戦を指摘する。

● 逆走と混迷の日本

日本は、そうした世界の潮流に背を向けてきた。OECDでは例外ともいえる電力地域独
占が今なお続き、エネルギー市場や政策、政治にも大きな影響力を持っ続けている。エネ
ルギー政策もパワーエリートに閉じた中央集権で、06年の「原子力立国戦略」に象徴され
る原発と石炭中心の大規模集中独占型で、部分的に自由化された「
エネルギー1.5」に留ま
るとして、福島第一原発事故以後、日本のエネルギー政策は混迷の時代に入った。倍政
権誕生後は脱原発を望む多くの国
民の声を無視
し、原発輸出、エネルギー基本計画(14年4
月)、「長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)」(15年6月)と鮮明な原発回帰
を打ち出し現実離れすると指摘。 

15年12月のパリ気候変動サミットで京都議定書に代わる新しい長期的な枠組みが決まる
など、気候変動の制約が
強まり、自然エネルギーは、温室効果ガスの抑制とエネルギー安
全保
障、さらに産業経済の成長の3挙両得の中心的な施策であり、十分なコスト競争力だ
けでなく、コンピュータと同
じく「ムーアの法則」(技術学習効果)に今後も継続的に性能の
向上と価
格低下が続く。もう一つの重要な原動力は、地域コミュニティで地域資源の自然
エネルギーを活用し、自立す
る動きとまた、インテリジェント化の流れが世界を席捲して
いる。

デンマークやドイツ、スペインで風力や太陽光などの変動する自然エネルギーが50%や
時には百%を超える比率で入る電力系統運用では、もはや「ベースロード電源」という概念
が消え、代わって「柔軟性」がクローズアップ、市場活用、リアルタイム気象予測、需要側
の応答などを活用して「柔軟性」を高め、デンマークは「第4世代地域熱供給」というコン
セプトで、コー
ジェネや地域熱供給が電力市場へ柔軟に参加。同上飯田氏は、新たに「共
有経済」や「脱物質経済」の――かつてのシンプルライフや里山の暮らしが現代の情報通信を
駆使してアップデートされ――新しい社会モデルになりうる流れを加える。
 

● 日本は跳躍できるか
                          
片や日本は、ムーンウォークのように、既得権益の抵抗と官僚主義が「拘束衣」とで変革が
止まった状態と指摘する。公開され傍聴できるが形式張った「審議会方式」の実態は閉鎖的
で形式主義で硬直し原発・石炭中心主義、国家市場主義で、2~3年のローテーションで
着任官僚が全権で担当のエネルギー政策や施策を定めていくため、とても知を積み重ねる
エネ
ルギーインテリジェント化は期待できず、むしろ官僚のご都合主義で歪められる期待
できないときわめて悲観的で、それでも
閉鎖プロセスをオープン・イノベーションの場に
転換できるかにかかっていると結んでいる。 

 
【ステラ電池旋風】 

テスラ・モーターズは、家庭・法人・電力会社向けの蓄電池「テスラ・エナジー」を発表。
マスク最高経営責任者(CEO)が、カリフォルニア州ホーソンにあるテスラのデザイン
スタジオで記者会見。同CEOは「われわれのゴールは、世界がエネルギーを利用する方
法を根本的に変えることだ。
世界のエネルギー・インフラを完全に変えることだ」と強調。そのう
ち、家庭用の蓄電池の名称は「パワーウォール」。設置業者向けの販売価格は、10キロワット時
モデルが3500ドル(42万円)、7キロワット時のモデルが3000ドル(36万円)(インバーターや
設置費用は除く)。テスラは、蓄電池事業の粗利益率は第4・四半期は低水準にとどまるが、着実
な成長を続け、来年には採算性が好転すると予想する。調査会社IHS・CERAによると、世界の
蓄電池産業は12年は2億ドル規模だったが、17年までに190億ドルに成長する見通しだ。 

ただ、その実力はというと、国内メーカーとの比較資産では、大幅なメリットは期待でき
ないとの報告がある。例えば、テスラの家庭用蓄電池パワーウォール(7キロワット時)
の費用対効
果計算では、導入環境消費電力月平均:270キロワット時/蓄電池を使って
毎日3.7キロワット時を昼夜電力
融通/月額電気代で約2千円削減との前提で、以下の
様となる。

 

ただし、系統連携をせずテスラのパワーウォールで自給自足(オフグリッド)生活をした
場合のコ
ストをシミュレーションした例では、月の平均消費電力5百キロワット時の家庭
太陽光発電9キロワット時と、パワーウォール3台(21キロワット時)を総額約22
万円で設置を前提とすると以下の通りとグリッドパリティが達成さる。

 

ステラモーターズの技術開発経過を見てみると、メーカならではの技術蓄積があるようだ。したが
ってステラの価格の1/2以下に圧縮することも可能だと考えている。これは面白い。
 


 
特開2013-243913 高電圧バッテリパックの二次サービスポート

 

※ 関連米国特許  

 


 

 

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