Kyoko AIHARA's Diary (Writer&Photographer) 相原恭子(作家&写真家)のブログ 

ヨーロッパ紀行、京都花街と着物、ビールとグルメなどをテーマに執筆、撮影、国内・海外での写真展や講演等。今日も良い日!

2011年1月20日(木) ドイツへ ご冥福 シチリア島の思い出

2011-01-20 | ドイツ・ベルギー
今朝、郵便ポストを開けると、黒枠の封筒を発見。

ドイツのケルンでボールペン会社を経営する
Meutgens(モイトゲンス)夫人の訃報だった。86歳とある。
現地時間、20日(木)正午12:00から告別式という連絡だ。
驚き、哀しい。
「心より ご冥福をお祈りします。そして、日本であなたの事を思い出しています。」

彼女とは、シチリア島で知り合った。
私が30歳になったばかりの時に、シチリア島のタオルミーナの丘に建つ「Bristol Park Hotel」に滞在中、Meutgens夫妻とカトリックの枢機卿も、同じホテルに滞在していたのが縁だった。

夫婦でカトリックの熱心な信者で、ご主人の名前をとって、「Ludolf Meutgens 基金」を設立し、天文学的数字と思われるほどの私財をアフリカや各地へ寄付し、世のためになろうと一生懸命だった。


赤いブラウスが、モイトゲンス夫人。その左隣は、ご主人で、映画スターのような二枚目・モイトゲンス氏。

皆、私の親より歳が上だったが、お友達みたいに一緒にレストランへ行ったり、散歩したり、ホテルにあった骨董品のようなピアノを弾いて楽しんだりした。



あぁ、モイトゲンス夫妻の思い出と共に、シチリア島が思い浮かぶ。

あの時は、4月のうららかな日が続き、天国のような気候と風景だった。
私はドイツの仕事の後の「イタリア逃避(?)」であったので、
一人で、ショートパンツの下にビキニを着て、ナクソスの海岸へ出かけたり、タオルミーナのみやげ物屋を見て回ったり、ビーチサンダルで町なかを走り回り、エトナ山の写真を撮ったり、教会へ行ったり、バルでワインを飲んだりした。背中に羽が生えたように、物凄く幸せだった。

当時78歳の枢機卿は、私を見ながら、しみじみと 
「Goethe sagte, Jugend heisst betrunken ohne Wein. (ゲーテは言った。青春、それはワインなしで酔っていることだ)」
とつぶやいた。

ご主人のモイトゲンス氏は既に亡くなったが、夫人を訪ねて、ボン近郊の邸宅を訪ねたことが何度かあった。庭に小さなプールがあって、日当たりが良い家だった。
大富豪としては、遠慮がちな家だと近所の人が言ったが、確かにそうだった。
寄付はしても、贅沢はしない人たちだった。

「一人暮らしだから、ぜひ泊まっていって」と言われて一泊した。
その時、バチカンから、別の枢機卿がお茶を飲みに訪れ、皆で居間に座った。
「この人です。旅が好きなのは」とモイトゲンス夫人は、枢機卿に私を紹介した。

すると、「旅をしたあなたの独自の経験、それは誰も盗むことはできない。それを大事にして、これからも旅しなさい」とおっしゃった。

そして、以来、さらに私の旅は各地へと続いている。
・・・モイトゲンスさん宅の居間が目に浮かぶ。


この記事についてブログを書く
« 2011年1月19日(水) 春爛漫... | トップ | 2011年1月21日(金) お茶室... »
最新の画像もっと見る

ドイツ・ベルギー」カテゴリの最新記事