大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 12月8日 A Beautiful Mind

2016-12-08 18:00:47 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 12月8日 A Beautiful Mind




 引きこもりの弟から聞いた話だ。
5年前、まだ全く正常だったころ、街中を一人で歩いていると突然一人の女性に話しかけられたそうだ。
 これがかなりの美人で、少し不審ではあるが悪い気はしない。
弟は下心もあってしばらくその女性との立ち話に付き合うことにしたらしい。
 驚くことに話も非常によく合う。
嬉しくていよいよ声のトーンが上がっていったのだが、その時になって、ふいに自分が通行人から奇異な目で見られていることに気づいた。
 あまりいい気分でもないので、場所を変えることを提案しようと女性に向き直ると、そこには誰もいない。
周りの人々は、携帯も持たずに一人で楽しそうに会話する弟に不審の目を向けていたのだ。
 それ以降、弟は幻覚を見るようになった。
バイト先で、

「 この荷物をどこそこへ運んでくれ。」

と言われたからその通りにしようとすると、店の外から店長が入ってきて、

「 その荷物はそっちじゃない。
あっちの倉庫においてきてくれ。」

なんて言うから、それに従う。
 そうすると後になって店長が、

「 何故、指示通りの場所に持って行かなかったんだ!」

と怒る。

「 あなたがそういったんじゃないか。」

と反論しても

「 馬鹿なことを言う。」

と一蹴され、その後も同じようなことが何度も続くので、とうとうバイトをクビになってしまった。
 道を歩くと必ず誰かに話しかけられるようになった。
その中には見知った友人の顔もあったが、それも幻覚であるときのほうが多かったという。
 道路を走る車の中にも幻覚の車が大量に混ざっているらしい。
信号が青に変わっても横断歩道の上を絶え間なく走りぬけていく車を、平然とすり抜けて歩いていく歩行者を見て、弟は家に引きこもることを決意したそうだ。

「 ストレスとか、鬱とかそういうのがあった訳じゃないはずなんだ。
ある日突然、何の兆候もなく世界がおかしくなった。
何を信じればいいのか、もうわからない。
この悪意のある幻覚が続く限り、俺はもう外に出られない。」

弟はそう言った。
 この話を俺にするのは、これで6度目だという。
俺はこんな話を聞くのは初めてだった。












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日々の恐怖 12月7日 太陽は沈まない(4)

2016-12-07 19:00:06 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 12月7日 太陽は沈まない(4)




2つ目。
 夢の世界で鳥に噛まれた傷は現実にもあった。
私は夢の世界を臨死世界だと最初は考えていたのだが、だったら体に出た噛み傷はなんだったんだ、と今でも思う。
 精神的に受けたと勘違いすると体には傷が浮かぶことがあると聞いたことがあるが、それだろうか。
ちなみに、倒れた時には全く外傷は無かったそうだ。
全身を鳥に噛まれていたらどうなったんだろうと思うと、今でもゾッとする。

3つ目。
 実は私が気を失っている間に一人、クラスメイトが自殺していた。
Kという男子で私とは殆ど関わりの無いいわゆる不良だった。
周りの評判もあまり良くなかった。
 どう評判が悪かったかは割愛するが彼の寄せ書きには、“太陽は沈まない”という記述があった。
彼が図書館で本を読んでいるところを見たことが無かったので驚いた。
 後日、読む気は無かったが学校の図書館でもう一度本を探してみた。
本は無くなっていた。
 その後、Kと仲の良かったSに話を聞くと、Kは私が気絶する前に読んでいた本を読んで見たかったようだ。
Sは止めたがKは聞かず、図書委員から聞き出して本を借りて行ったそうだ。
 だが、読んだ時点では何も起きず、何故か燃やしてしまったそうだ。
その後、徐々にKはおかしくなって行き、最終的には自殺したそうだ。
寄せ書きは、おかしくなる寸前に書いたものだった。

 その後は何も起きることなく、普通に大学を卒業して今は普通に仕事をしている。
読書は今でも大好きだ。
ただ一つ、作者不明の作品は読まなくなった。












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日々の恐怖 12月6日 太陽は沈まない(3)

2016-12-06 18:36:21 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 12月6日 太陽は沈まない(3)




 それと同時に、釣り人がバケツに入れていた魚を鳥に向かって投げた。
魚に群がる鳥。
 釣り人は、方角を指差すと、

「 急げ!」

と叫んだ。
その方向に全力で駆け抜けた。
 途中一度だけ振り返ると、太陽が近づいて来ていた。
釣り人や鳥、景色も蒸発していった。

 そこで私は目を覚ました。
気付いたら病院のベッドの上だった。
近くにいた看護師さんに話しかけるとすぐに医者を呼んでくれた。
 話によると私は本を読みながら突然倒れ、一週間ほど病院で寝ていたそうだ。
枕元にはクラスメイトが製作してくれた寄せ書きがあった。
 間も無く両親が到着して、二人とも号泣してしまい、宥めるのが大変だった。
その後、精密検査等を受けつつ療養し、二週間ほどで退院した。

 退院した後、気付いたことが3つある。

1つ目。
 夢の世界で助けてくれた釣り人は私が小さい頃に亡くなった叔父だった。
叔父と言っても遠くに住んでおり二度三度しか会ったことが無いそうだ。
昔のアルバムに一緒に写っている写真があった。
それからは毎年必ず墓参りに向かい、墓前で近況報告を欠かさず行っている。











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日々の恐怖 12月5日 太陽は沈まない(2)

2016-12-05 11:04:52 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 12月5日 太陽は沈まない(2)




 気味が悪かったのと、何か嫌な感じがしたので本を戻そうか迷ったが、気にはなったので本を読み進めた。
 流石に破いて並べる訳にはいかないので、数字の順に対応したページを行ったり来たりしながら読んで行くと、レモンの絵が表紙であり、次のページから出てくる太陽が徐々に姿を変えて、月を溶かし人間を溶かして、最後は太陽が人間の形になるという構図が完成した。
 “完成したところで”、だと思う。
遠くから何か叫ぶような声が聞こえて来て、同時に周りにいた人達が私をジロジロ見ている気がした。
目つきはなんだかギラギラしている。
 それで、居心地が悪くなって私は図書館を後にした。
外に出ると、普段は全くそんな事は感じないのだが、そのときは何だか空気が濁っている感じがした。

“ 気にしすぎだ・・・・。”

と思い、家までの帰路につくと、いつもと同じ道を通っているのに見たこともないような景色が広がっていた。
 そこを無意識に進む。
何故か不安感は無かったことを覚えている。
 しばらく進むと、見たこともないような防波堤で数人の釣り人が釣りをしていた。
海は墨汁のように真っ黒、空は赤に近いピンク色だった。
変な形の魚が釣り人のバケツの中を暴れまわっている。
釣り人は近付いた私に一瞬驚いたようだが、一瞥をくれるとすぐに釣りに戻った。
 離れようとした時ボソッと声が聞こえた、

「 喰われるぞ。」
「 え?」

そう言ったのも束の間、私はカラスのような鳥に手を突つかれた。











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日々の恐怖 12月4日 太陽は沈まない(1)

2016-12-04 19:11:46 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 12月4日 太陽は沈まない(1)




 もう十数年も前の話だが、思い出すことがある。
当時の私は友達のいないぼっち女子中学生で、放課後や昼休みは学校の図書館で専ら読書に勤しんでいた。
 小さい図書館だったために、一年くらい通うと興味のあった分野の本はおおかた読み尽くしてしまい、次はどの分野の本を読もうかと思案していると、一冊の本が目に入った。
タイトルは“太陽は沈まない”という本だった。
 今でも忘れない、図書館の一番奥の本棚の一番下の段に置いてあった。
本というよりは小冊子といった方が近いかもしれない。
 表紙は太陽に月が溶かされ、下にある人間界と人間も溶かされているような絵だった。
表紙を見たとき、何か不気味な感じはしたが、学校の図書館だしそれほど変なものではないだろうと思った。
 そして、内容もまた奇妙だった。
あるページには押し花がされていたり、あるページには文章で“太陽は沈まない、太陽が沈まないと隠れることができない。”と書いてあったり、またあるページからは変な絵が延々と書かれていた。
 どのページの絵にも太陽は書かれていたが、一ページだけレモンがテーブルに乗っかっているだけの絵があった。
そのテーブルには“ようこそ”と書いてあった。

“ おかしいな・・・?”

と思いながらも、脈絡が無いままののページを捲っていて気が付いた。
 各々のページの数字がバラバラで綴じられている。
つまり、その本はページ数がバラバラだった。
そしてレモンの絵は、本の真ん中にあったのにも関わらず1ページ目だった。












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しづめばこ 12月3日 P463

2016-12-03 19:40:17 | C,しづめばこ



 しづめばこ 12月3日 P463  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”



大峰正楓の小説書庫です。
大峰正楓小説書庫


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日々の恐怖 12月2日 チエ(5)

2016-12-02 21:23:46 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 12月2日 チエ(5)




 そしたら不意に、声が聞こえたんだ。

「 チエ、こんなとこにおったんけ。」

婆さんが登ってきたか、と思って、そこで俺は跳ね起きた。
 でも、そこには何もなかった。
チエも、婆さんもいなかった。
怖くて、そのまま寝ることにした。
気のせいだったと思うことにして。
 チエと婆さんは、婆さんの自室で死んでいた。
翌日の朝、俺が見つけた。
死因は窒息。
 婆さんの喉にはチエの髪の毛と千切れた服、目玉が入ってて、婆さんの口の中には、チエの頭部が入ってた。
そりゃ、飲み込めねえよ。
 明るい部屋ん中、陽が沢山差し込む中、婆さんがそんな感じに死んでるわけよ。
幸せそうな顔じゃなくてさ、いかにも苦しみましたってさ、目を血走らせて、失禁して、片手にチエの胴体を強く握って。
 婆さんの葬式は簡易的なものだった。
火葬だった。
チエも一緒に燃やした。
墓に収める時に、墓に歴代の先祖の名前あるじゃん。
そこには既にチエ(本物の叔母)って書いてあって、変な感じがした。
 それで、これは葬式にきた親戚の話だ。
叔母さんのチエさんの死因って実は原因不明じゃなかったんだ。
うちの婆さんが首を閉めて殺したらしい。
理由は知らん。
 そういや父方の親戚付き合いがないなって思ったら、婆さんは絶縁されたらしい。
何で逮捕されなかったのか聞いたら、誤魔化された。
もみ消したんだろうな。
 婆さんが死んで、今年で四回忌だ。
俺は高校に行ってない、何もしてない。
婆さんが死んでから、ずっとやる気が出ない。
いっそこのまま死にたいとすら思うよ、疲れた。
 今まで起きたこと、全部チエ叔母さんの呪いなら、この俺の状態もそうなのかもな。
俺の一族を滅亡させるつもりなのかも知れないなって思うと、ちょっと笑えるよな。











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日々の恐怖 12月1日 チエ(4)

2016-12-01 19:21:53 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 12月1日 チエ(4)




 別居している母親に相談しても、あんな人知らないの一点張りだった。
父親に話して、病院にって言っても、仕事が忙しいから連れていけない、お前が面倒みろ、と言われた。
 そればっかりだった。
その時、俺まだ中学生だった。
でもな、妹が死んでから、うちの家族、おかしくなっちゃったんだ。
御神酒やってなかった俺のせいだと思うと、やらざるをえなかった。
中学はもう、不登校になってた。
 チエは婆さんの手によってぼろぼろだった。
髪は引き抜かれ、服は脱がされ、切り刻まれ、汚い話だが排泄物を塗りたくられたりもした。
流石に可哀想だって思って取り上げても、翌日にはちゃんと婆さんが持ってる。
 色んなとこに隠したんだ。
トイレの棚、両親の寝室、あとは下駄箱とか。
 しかし、夜中に、

「 ちえぇ、ちえぇ・・・。」

って徘徊して見つける。
そして、またチエをボロボロにする。
見兼ねて、仕方ないから俺の部屋に置いとくことにした。
 夜中というか3時過ぎか、婆さんがチエを探す声で目が覚めた。

“ 俺の部屋、二階だし、まあ登って来れはしないし、呆けてから上がってきたことないし・・・。”

と安心しながら、チエを閉まったクローゼットを見ると扉が空いていた。
 確かに閉めた。
だって目につくとこに置いてたら、気持ち悪いだろ。
夜中見なくて済むようにって、クローゼットにいれたんだ。
ビニールまでかけて。
 でも、そのビニールはそこらへんに落ちてんだ。

“ ヤバイって、でもチエが・・・。”

もうパニックに陥った。
 布団の中で滝は汗だらけ、

“ 寝たフリするか、起きて確認するか・・・。”

とにかく怖かったんだ。
 そしたら、

“ キィ・・・・・。”

と、物音が聞こえた。
ドアを開ける音だ。
 位置的には、ドアでベッドでクローゼットだった。
俺はベッドで布団を被り、ドアを背にクローゼットの方に向いて寝ていた。
そのとき俺は、怖くてドアの方を見ることができなかった。










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