日々の恐怖 3月14日 風鈴(1)
昔です。
小学校高学年の夏休みです。
祖父母の元へ一週間ほど泊まりで帰省していた時の話です。
山奥の村落、20軒ほどが身を寄せ合うところで、村には私のような子供は一人もいませんでした。
住人はほとんどが高齢者ばかりのようで、過疎という言葉が当てはまる場所です。
かといって暗い雰囲気は無く、小さな訪問者に皆が親切にしてくれました。
「 ミノルの倅か、ほーかほーか。」
「 テービもねぇからつまらんろ。」
「 独楽回すか、独楽。」
「 後で、釣りいくべ。」
「 虫がいねぇんだろ、あっちは。
捕り方おしえんべか。」
どちらが子供かわからない。
でも、うれしかったことを覚えています。
二日目に祖父と釣りへ出かけました。
村の爺様ほとんどがついてきます。
山間の上流、比較的流れが緩やかな場所です。
気を使ってくれているのは分かりました。
竿の振り方や餌のつけ方、魚の居そうな場所などを教わり、十人いると十人が微妙に違います。
釣り始めて二時間もしないうちに、爺様たちは大宴会になっていました。
一人竿を振る私のところへ代わる代わるきては、微妙に異なるコツを教えてくれました。
「 あ、かかった!」
そろそろ飽きかけていたところ竿が引かれた気がしました。
引き上げて見ると、緑色の塊でした。
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