日々の恐怖 6月5日 ワイの話(22)
幸い、貯金と失業保険でしばらくは暮らしていけたが、ワイはその先を考えることもせず、スマホの電源を落として誰とも連絡を取らずに、ただただ部屋にこもり、日々を過ごした。
そんなある日、突然、妹が部屋を尋ねてきた。
会いたく無かったので無視しようとしたが、情けないことにワイは相当、追い詰められていたようで、縋るようにドアを開けるなり妹に抱きついて、
“ ピーピー。”
と泣き出してしまった。
妹は何も言わずに普段とは違った表情で、ずっと泣いているワイの頭を撫でてくれた。
いつの間にか泣き疲れて眠ってしまったのか、目を覚ますと朝になっていた。
記憶は無いが、ワイはソファーで眠ったようでベッドには妹が寝ていた。
正直、昨日の、
“ ピーピー。”
と泣く恥ずかしい自分の姿を思い出すと、これから妹にどんな顔で話せばいいのかと考えると気まず過ぎる。
だが泣いて鬱憤を吐き出したせいか、妙にワイの気持ちは清々しいまでに晴れていた。
恥ずかしいので絶対に口にはしないが、ワイは心の中で妹に感謝した。
「 朝だぞ、起きろ!」
そう言いながら妹を揺すると、顔をしかめながらゆっくりと妹は上半身を起こした。
“ 小さい頃から妹は朝に弱く、中々起きれなかったなぁ・・・・。”
と思い出して、懐かしい気持ちになった。
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