日々の出来事 10月11日 トロイの木馬
今日は、ハインリッヒ・シュリーマンが、トロイアの発掘に着手した日です。(1871年10月11日)
ハインリッヒ・シュリーマンは、貧しい牧師の子としてドイツに生まれます。
そして、7歳の時、世界史の中のトロイ戦争を読み、いつかこの遺跡を発掘しようと考えました。
将来、遺跡を発掘するには膨大な資金が必要になってきます。
だから、財産を作るため雑貨商の徒弟となり金を稼ぎ、さらに語学を身に付け、十数カ国の言葉を話せるようになりました。
このことが、商売上で役に立ち、主人に連れられて商売するうちにあちこちで顔が売れ、信用が増して独立、その後も順調に事業を拡大し財を成しました。
そして、シュリーマンは46歳の時、事業から身を引いて、念願の発掘に取り掛かります。
当時は、ホメロスのトロイア戦争は作り話と考えられ、シュリーマンの発掘は世間から冷ややかな目で見られていましたが、何と第1回目の発掘で城壁、宮殿址と財宝を掘り出して、世間を“すげェ~じゃん!”と驚かせました。
この発見は、少年のころの夢を追い続けたシュリーマンにとって、夢物語と思われていた世界を現実の世界に再現して見せた人生最良の瞬間であったと言えるでしょう。
トロイの木馬
☆今日の壺々話
と、言う訳で、シュリーマンを好きな人は、以下を読まないで下さい。
シュリーマンの“古代への情熱”は、シュリーマン自身が書いた自伝です。
人間、地位と財産を手にしますと、過去をどうしても美しく脚色しようとします。
発掘
「 あなたァ~、また、グ~タラ、グ~タラして・・・。
何を、やってんのよ?」
「 いや、グ~タラしていたのでは無いぞ!」
「 じゃ、何をしていたのよ?」
「 えっ、それは・・・・・。」
「 ちょっとは、教養を身につけるため、本でも読んだら!」
「 いや、ワシは小さい頃から色々な本を読んでおるぞ。」
「 ホントかなァ~?」
「 う、嘘じゃないぞ!
例えば・・・・。」
「 例えば、何よ?」
「 えっとォ~。」
「 あらっ、机の上にギリシャ神話がある!」
「 そ、そうだ、ギリシャ神話だ。」
「 これ、ホントに読んだの?」
「 そうだよ。
この本を小さい頃読んで、トロイア遺跡を発掘するのがワシの夢だったんだぞ。
ワシは、この夢を実現するため、働いて来たんだ!」
「 うわ~、スゴイのね!
で、何時から発掘に取り掛かるの?」
「 も、もう直ぐだよ。」
「 スゴイ!!
ロマンがあるのね~!
みんなに、お話してあげようっと!
ルン、ルン、ルン!!」
社交界に顔が利く、美貌と教養を併せ持つ30歳年下の妻が感心しながら、部屋を出て行きました。
「 あ、行っちゃった・・・。
えっと、困ったなァ~。
カァちゃん、みんなに言いふらすぞ。
数時間後には、サロンで注目の的だ。
今さら、ウソとも言えないし・・・・。
くっそ~、どうしようかなァ~。
う~ん・・・・。
穴堀りかァ~。
面倒くさいなァ~。
でも、やるしか無いかなァ~。
カァちゃん、怒ったら怖いしなァ。
まあ、発掘したら財宝がザクザク出てくるかも知れないし・・。
まあ、いいか・・。
どうせ、やるしかないもんな・・・・。」
数年後です。
「 やったァ~!
出たァ~!
ムフフフフフフフ!!
そうだ、良いことを思いついた。
これで自伝を書こう。」
世界史の授業におけるM君の立場
先生「 この古代ギリシャの都市国家のことを、はいB君、ミニスカ何?」
M「 ポリス。」
先生「 はい、ポリスといいます。」
発掘
実家暮らしなんだけど、昨日、学生時代の物を整理してたら、黒歴史ノート発掘した。
そこには、中2の時、ビッシリと書き連ねた痛ポエムの数々が・・・。
↓ま ず タ イ ト ル か ら し て 酷 い 。
ロスト・マイ・シューズ
フラワー・オン・マイ・デスク
セクシー・モアイ
絶望のホワイトデー
ドリームファイト
葉緑体
歌詞も意味不明。
「君にご奉仕!恋は兼好法師!」とか。
「オカンの反撃、聖夜の惨劇」とか。
もはや、何を伝えたいのかわからん。
どう見ても電波でした。
本当にありがとうございました。
「 どんな悲惨な学生生活を送っていたか、 簡単にプロファイリングできるな。」
「 君にご奉仕!恋は兼好法師!とか、いじめられるのも分かる気がする。」
「 こいつジョイマンのジョイマンの方じゃね?」
歴史
イギリスに留学した時、そりゃもうあらゆる国籍の学生がいた。
その中のアラブ出身の奴が、自分が生まれ育って町は 400年の歴史があると自慢していた。
そこへオーストリア出身の奴が、自分が生まれ育った町は 600年の歴史があると自慢した。
アラブ出身の奴がショボーンとして、他の奴もそんなに長い歴史の街には住んでいないと単純にオーストリア出身の奴を感心していた。
ただ、その時の気分が忘れられないのか、ことある毎にオーストリア出身の奴は自分の町自慢を始めた、
600年の、600年が、600年も、600年、600年、600年、・・・・・。
さすがにみんながその自慢話に疲れて、彼に対する愚痴や不満を言うようになった。
そんなある日、そのオーストリア出身の奴が自分の所に来た。
「 おい!お前!お前は何処出身だ?」
「 俺は日本だよ。」
「 そうか!日本か!
俺は 600年前のオーストリアの首都から来たんだ!
お前は日本の何処から来たんだ?」
「 俺は 1300年前の日本の首都、京都から来たよ。」
その瞬間、周りの奴らがみんな立って、一斉に拍手をした。
オーストリア出身の奴が “1300年!?”と驚愕していると、他の奴らが次々とオーストリア出身の奴に近寄っていって、“600年の倍以上だなぁ”、“1300年には勝てないな、ははははは”と言い始めた。
そのオーストリア出身の奴は体を震わせて顔を真っ赤にした。
でも、何か喋ったり、暴力を振るうでもなく、その日はそれで落ち着いた。
次の日、オーストリア出身の奴が、また俺に話しかけてきた。
「 なあ、京都ってどんな町なんだ?」
「 京都は、日本でも最も古い町の一つだよ。」
「 ニンジャとか、いるのか?」
「 ニンジャは・・・・、京都にはいないかも。」
「 他の町には、ニンジャはいるのか?」
「 ああ、うん。
一応、戸隠って言うニンジャ集団や、甲賀って言うニンジャ集団の子孫は今もいるよ。」
「 そいつらは、何処に居るんだ?」
「 甲賀は、甲賀市って言うところにいるよ。
戸隠は、戸隠山って言うところだね。」
「 へえー。
京都には何がいるんだ?」
「 京都は天皇(皇帝)の町だったんだ。
それから貴族の町になって、さらに武家の町になったけどね。」
「 武家って言うと、サムライか!」
「 うん。
古代は天皇が力を持っていたんだけど、段々権力を失っていって、貴族が政治をするようになっていったんだ。
でも、貴族に対する不満がサムライ達に溜まっていって、貴族が倒され、サムライの社会が出来ていったんだ。」
「 サムライは何で“Samurai”って言うんだ?」
「 サムライは漢字の『侍』から来てるんだ。
これは元々は、天皇や貴族に仕える軍人のことを言ったんだ。」
「 なるほど。
軍人が天皇や貴族に反逆を起こしたのか?」
「 でも、天皇は倒されなかったんだ。
なぜなら、力がもうその頃には無くて、権威の象徴だったからだよ。
なので、実質的に力を持っていた貴族がサムライに狙われたんだ。」
「 サムライの社会は、まだ続いているのか?」
「 あはは、もう無いよ。
明治時代(Meiji)に無くなったんだ。」
「 どうして無くなったんだ?」
「 当時、アメリカの軍艦が日本に来て、日本中パニックになったんだ。
(ここで、アメリカは何時の時代もロクなことしねえなぁ、と突っ込まれる。)
アメリカと戦えと言う人と、アメリカと手を結べと言う人で日本の意見は真っ二つに分かれた。(ここで、アメリカは何時も他国に混乱を持ち込むなぁ、と突っ込まれる。)
なので、日本国内で頻繁に対立と内戦、陰謀と策謀が起きたんだ。
でも、それを平和的に解決し、サムライの社会を終わらせ、デモクラシーを達成しようとした一人のサムライがいるんだ。」
「 サムライがサムライを終わらせたのか?」
「 サムライの中にも、サムライの社会が続けば日本が滅びると考える人は多かったんだ。
でも、それを実行する勇気、見識、人脈を持っている人は限られていた。
ただ、たった一人の無名の志士がそれを達成するんだ。
この人物は英雄として、日本で最も良く知られた歴史上の人物だよ。」
「 そいつの名前は?」
「 本名じゃないけど、一番良く知られていた通名が“坂本竜馬”って言うんだ。
他にも時代を生き抜くために幾つか偽名を持っていたけど、この名前が一番有名だね。」
「 リョーマか、良い名だな。」
「 そう思う?」
「 良い名前じゃないか。
漢字(Kanji)はどう書くんだ?」
「 こう書くんだよ(竜馬の字をスラスラと書く)。」
「 難しいな。
これはもう暗号だ。
良くこんな暗号を覚えられるな。
(しばらく漢字に対する感想が続く)
・・・それで、この一番最初の字は?」
「 これが『竜』の字で、意味は Dragonさ。
次の『馬』が Horseだよ。」
「 Dragon Horseか。
カッコイイね。
時代を動かした人間に相応しい。」
「 とても優しい人だったらしいよ。」
「 サムライは優しい人なのか?」
「 そうとは限らないけど、優しい人も多かったよ。
サムライは忠義にとても厚い人達なんだ。」
「 もうサムライはいないのか?」
「 サムライと言うのは職業を言うから、その人達はもういないね。
一応、僕の先祖はサムライだけど。」
「 おお!?君はサムライの子供なのか!?」
「 僕のひいひいじいさんがね、サムライだよ。
当時ではかなり珍しいけど、ひいひいじいさんが写ってる写真を持ってるよ。」
「 おお、サムライの写真!ぜひ見たいな!」
「 じゃあ今度、親父に頼んでメールで画像を送るよ。
メルアドは?」
「 ああ、俺のメールアドレスは・・・・。」
「 僕のメールアドレスはここだよ・・・・。」
「 うん、ちゃんと紙に書いたぞ。」
「 そうだ。
これから一緒に晩御飯を食べに行かない?
俺のじいさんは第二次世界大戦でアメリカと戦ったんだ。
面白い話を一杯知ってるよ。」
「 ぜひ聞きたいね。」
こうして、僕とオーストリア出身の奴とは友達になった。
彼は日本に対して好意も不満も無い、単に“日本に興味が無い”存在だったけど、僕と話す内にどんどん日本に対して興味を抱いていった。
日本から送って貰ったスナック菓子や食べ物を彼にあげたら、とても美味しいと目をキラキラさせて、僕も一緒になんだか嬉しくなった。
留学して1年経って日本に帰る事になった時、そのオーストリア出身の奴が泣きながら一緒にイギリスに居ようと言ってくれた。
「 その申し出は、僕は本当に嬉しいけど、日本で仕事があるんだ。
帰らないと失職してしまうんだ。」
「 そうか・・・・・(残念そうに目を伏せて)。
君と出会えて本当に良かったよ。
君がアジア人かヨーロッパ人かどうかは関係無い。
君を一人の人間として、好きなんだ。
好意を持ってる。
ありがとうと言わせて欲しい。」
「 僕からもありがとう。」
「 君との付き合いは楽しかったよ。
僕の国、オーストリアは数多くの戦争で多くの歴史が失われたんだ。
僕の育った町、600年の歴史がある町は、僕だけでなく、オーストリア人が唯一確認出来るオーストリアの歴史なんだ。
僕はあの町を誇りに思う。
そして、日本が羨ましいと思うよ。
第二世界大戦が起きても、数多くの内戦を経験しても、日本には消せないほどの多くの歴史を持っている。
ハイテクな国と言うイメージが今まであったけど、歴史の深い国であることも、君と出会えて知れた。
日本が歴史と文化を大切にする国だと言うことを。
もしかしたら、オーストリアが目指すべき国の姿は、日本みたいに歴史の国であり、ハイテクな国なのかもしれない。
何時か日本に行く機会があったら、僕を招待してくれないか?
君と一緒に日本を旅行したいんだ。」
「 任せてくれ私の友達。
僕も君のことに好意を持ってるし、君との出会いは何物にも代えがたい物だと信じているよ。」
今年の冬、その彼が日本に来ることになってる。
楽しみだ。
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