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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 8月7日 着信(1)

2016-08-07 19:20:34 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月7日 着信(1)




 私が特別変なものを見た、とか聞いたってことでもないんですが、なんか未だに後味のよくない体験だったもんで、話をさせてもらいます。
 一年くらい前の話なんだけど、当時私には付き合っている人がいた。
便宜上、仮にKとしとく。
 その前日の日から、連休だったこともあって私はKのマンションで二人きりの宅飲みをし、バカ騒ぎをしながらそのまま泊まりこんだ。
そして私が朝、目を覚ますと隣で寝ていたはずのKが何故かいない。
 ふと机の上を見ると、チラシの裏に急いで書いたような書き置きがあった。
細かい内容は覚えていないが、どうも休み明けまでに纏めなきゃならない書類を忘れたので会社に取りに戻る。
それから、適当にある物を食べていいことと、昼までには戻るってな感じのことが書かれていた。
 時計を見ると、丁度昼だった。
外は曇りなのか雨なのか、窓から入る光は鈍く暗かったことを妙に記憶している。
 そのときの私は少し空腹ではあったが、書き置きの文面どおりならそろそろ帰ってくる頃だろう。
Kが帰ってきてから一緒に食事をとろうと思い、私はKを待った。
 テレビを見ながらダレていると、携帯に着信があった。
Kからのメールだ。

“ も う す ぐ だ よ
ま っ て て ”

いつもはちょっと長ったらしくて絵文字を多用したメールを寄越すKだが、そのときの内容は完全にこれだけだった。
 よっぽど急いでいたのか。あるいは電車の中にいて、携帯を出しているのに引け目を感じてたった数文字だけでメールを送信したのかもしれない。
私は小心者のKなら有り得るな、などと思いながら少し笑った。
 一通目から10分程度経った時、二通目の着信があった。

“ き た よ ”

ホントそれだけだった。
 そういやKは長くて絵文字いっぱいの文章だけでなく、小難しい漢字が好きで、ひらがなばっかのメールってのも珍しかった。
それに、急いでるにしたって自分ちに帰るのに、来るって表現になんかズレたモノを感じた。
 ちょっと違和感があった。
一通目もそうだったけど、無駄な字間があったし、それに、もう着いてるならメールなんか寄越さず早く上がってくればいいだろ。
まぁそんなの些細なことだったし、私は軽く"じゃあ待ってるから"的な返信をしてKを待った。
そしたら三通目だ。

“ ご め ん
あ け て ”

私は鍵でも忘れて上まで入れなくなったのかと思った。
 言い忘れたが、Kのマンションは1階の玄関にロックがかかるシステムになっていて、自宅の鍵で開けるか、インターホンで住人に開けて貰わないと入れない。
 少し抜けたところのあるKは忘れ物などしょっちゅうだ。
でも、それならばインターホンで私を呼び、開けてくれと言えばいいのに、なぜ・・・。
徐々に大きくなる違和感。
 玄関口に立っているのは、もしかしてKではないのかもしれないと感じ始めていた。
せめて、一階でインターホンさえ押してくれれば顔を確認できるのに。














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