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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 2月11日 町内会長

2024-02-11 12:45:16 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 2月11日 町内会長






 23区内私鉄沿線住宅地での話。
10年ぐらい前に爺さん地主が死んで、50代の息子夫婦が越してきた。
越してきて1年ぐらい経ってから、奥さんの姿が見えなくなり、一人残された旦那の奇行が始まった。

・一日中、隣近所に聞こえるような大音量でクラシック音楽(主にベートーベン)を鳴らし続ける。
・庭に裸のマネキン人形を運んできて並べる。そして、金色に塗りたくってライトアップ。
・昼間は冬でも海パン一丁でベランダに出て、不思議な体操を何時間も踊り続ける。
・隣近所に対して罵声を浴びせまくり、洗濯物にホースで放水。

 うちの家からこの地主の家は良く見える位置にあったんだが、しょっちゅう隣近所からの通報でパトカーが来ていた。
そんな日々が3~4年続いて、ある日、迷惑行為がプツリと止んで、息子の姿が見えなくなった。
クラシック音楽だけは同じ曲がエンドレスで鳴り続けていたが、3日めに警官が乗り込んだところ、部屋の中で死んでた息子を発見、
パトカーが3台ぐらい来て捜査。(うちにも警官が事情聴取しに来た。その後、餓死なので事件性なしとされたと、町内会長から聞いた。)

 事件後3ヶ月ほどしてから、深夜に便利屋が家の中のものを何回かにわけて運び出す。
リフォーム屋が来て、外装を一新。
直後に50代夫婦が引っ越してくる。(この夫婦は地主一族とは全く無関係で、不動産屋から紹介されてきただけ。町内会長談)
とても穏やかなご夫婦で、近所にもきちんと挨拶をする常識的な人たちだった。
 引っ越しから半年後、また元地主の家からクラシック音楽が聞えてくるようになる。
この頃には夫婦の表情がおかしくなっていた。
奥さんはボサボサの髪の毛でブツブツ言いながら歩き、旦那さんは会社を辞め、庭を上半身裸でウロウロ歩き回り続ける。
引っ越してきてから1年ぐらいで息子夫婦がやってきて、夫婦を無理矢理連れ出す。
 その後、空き家に。
近所で”あの家は呪われてる”決定。
ずっと空き家になったまま放置され続ける。
空き家なのに、クラシック音楽が家から聞える怪異が何度かあった(お隣さん談)。

 一昨昨年、この空き家と近所一角をまとめて不動産会社が買い上げ、高級低層マンション建設計画が持ち上がる。
夏頃に一角は更地になったが、その後、リーマンショック。
建設計画白紙。
 1年ほど塩漬けにされてたが、不動産会社が代わり、建て売り住宅として工事再開。
問題の跡地工事中に相次いで事故発生。
大工さん2人が重傷。
工事一時中断。
中断中、マイクロバスに乗った15人ほどの謎の集団が訪れる。
巨大な護摩壇のようなものを設置し、数時間祈祷。(なぜか、町内会長も出席させられる)
その後、工事再開。
事故もなく無事に建て売り住宅完成、売り出し後は即完売。

 以下、町内会長によるお話。
地主一族は御稲荷様を信仰していたのだが、爺さんが死んでから、きちんと継承していなかった、と。
その後、何も事件は起きていません。
ちなみに、町内会長とは、同じ町内に住むうちの爺さんです。











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日々の恐怖 2月1日 服 

2024-02-01 09:39:44 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 2月1日 服  





 知人の祖母・Nさんが若い頃体験した話だ。
Nさんにはお気に入りの服があった。
生成り地に小花が少し刺繍された、可愛らしいデザインのワンピース。
 Nさんはその日も、お気に入りのワンピースを着て買い物に出かけた。
そして帰宅後はすぐに着替え、ワンピースをハンガーに通して鴨居にかける。
湿気を飛ばしてからしまう為だ。
そうしている内に、外出の疲れからか、ついうたた寝をしてしまったのだそうだ。
 しばらくして目が覚めたNさんは、ぼんやりとあたりを見回した。
すると、鴨居にかけたワンピースが、風もないのに揺れているではないか。
不思議に思い目をこらすと、裾から見え隠れする物がある。
生成りのワンピースより、もっと白い何か。
 それは音もなく降りて来た。
人の爪先であった。
凍りつくNさんをよそに、白い脚はゆっくりと降りて来て、その姿を現して行く。
爪先から甲、くるぶし、ふくらはぎ。
だがいつまでたっても膝は見えず、それが更に不気味だった。
 とうとう、力なく垂れた足先が床まで届いた。
その途端、脚全体がぐにゃりと曲がった。
まるで飴細工の様だったという。
 脚はなおも伸び続け、白く長く、畳に二筋のとぐろを巻いている。
これは一体何なのか。
恐る恐る視線を上げたNさんの目に飛び込んで来たのは、今まさに、ワンピースの襟元から出て来ようとしている、真っ黒な頭だった。
Nさんは我に返り、這う様に逃げ出したという。
このワンピースは、結局捨ててしまった。











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日々の恐怖 1月25日 足(2)

2024-01-25 10:16:25 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 1月25日 足(2)





 同じ先輩がやはり小学4年生晩秋の頃に体験した話です。
その日は風邪気味で学校を休んでおり、自宅の2階にある自室で布団にくるまっていた。
ぼんやりとベッド横の窓から外を眺めていると、家の前にある道に、
喪服のような黒い服と帽子をまとった髪の長い女性が、俯いて立っていることに気がついた。
 何故かその女性のことが気になり、彼女はベランダに出ていった。
なぜそのようなことを考えたのか、後になって振り返ってみてもよくわからないという。
 すると彼女がベランダに出ると同時に、その女性がふっと顔をあげた。
その顔は雪のように白かった。
比喩ではなく本当に肌が真っ白だったのだ。
 そしてつぶやいた。
そのつぶやきは離れているはずの彼女にもはっきり聞こえたという。

「 足が欲しい。」

気がつくと彼女は部屋で倒れていた。
時計をみると気を失った時から2時間ほどたっていた。
 ちなみに、その先輩は今でも五体満足で生活している。
また20数年の人生の中で、手足を失うような病気や事故が起きたこともないという。
彼女が幼い頃に遭遇したものがなんだったのかは未だにわからないそうだ。









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日々の恐怖 1月21日 足(1)

2024-01-21 10:40:59 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 1月21日 足(1)





 大学時代、一つ上の先輩(女性)から聞いた話です。
小学4年生の夏頃、学校から帰るときいつもある脇道からでてくる中年の男性がいた。
しかも常に彼女がその脇道を通りかかる時に出てきてぼんやりと立っていたという。
幼心ながら不気味に思っていた先輩はそのことを母親に相談した所、しばらく車で送り迎えをすることになった。
 1ヶ月ほど車で送り迎えを行った後、もうそろそろいいだろうと言いことになり再び徒歩での登下校になった。
そして実際、それからしばらくは何も無かった。
 しかし、その男は再び現れた。
彼女がいつものように帰り道を歩き例の脇道にさしかかったときだった。
ヌッと誰かが脇道から出てきた。
あの中年の男だった。
そしていつも黙って立っているだけだった男は、彼女の方をみてこう言った。

「 足が欲しい。」

気がつくと彼女は自宅の前にいた。
しかも、その間の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっていた。
それ以降、その男には一度もあっていないという。

「 そういえば、そのおっさん、腰から下がどんな風だったか、全然思い出せない。」

先輩は話の最後にそう語った。









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日々の恐怖 1月14日 輸入雑貨(3)

2024-01-14 19:36:02 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 1月14日 輸入雑貨(3)






 しかし、俺の主張に彼女は難色を示した。

「 あれが原因とは限らないじゃん。
違ってたらもったいないもん。」

どうしても捨てるのは嫌だと言う彼女と折衝を重ねた結果、とりあえず何日か俺が預かってみることで話が付いた。
俺はネックレスを持ち帰り、彼女がしていたようにベッドの脇に置いて眠ってみたが、特に悪夢は見なかった。
 だが、彼女の方は効果覿面だった。
ネックレスを手元に置かなくなってから、悪夢を見る事がなくなったのだ。
明らかな変化に、今度は彼女の方から処分を頼んできた。
 彼女は俺が鈍感だから影響を受けないのだと茶化したが、

「 だからって普通に捨てたりしないで、ちゃんとした人にやってもらってね。」

と俺の身を案じてくれた。
俺は彼女の言葉に従い、神社で禰宜をやっている知人に処分をお願いした。
そのネックレスを見るなり、知人は、

「 あ~、多分、これ遺品。」

と言った。
詳しく話せと言われて経緯を話すと、

「 なるほどね。」

と頷かれた。

「 前に似たようなの預かった事があって調べたんだけど、アフリカとかの貧困地域だと死者の遺品は遺族の大事な収入源なんだよ。」

宗教観もあるのだろうが、手元に置いて故人の思い出に浸る事よりも、明日ご飯を食べる事の方がよほど大事なのだろう。
 そんなわけで、遺品を安く買い取って物価の高い国に持ち込んで売ってるような露店ってのは結構あるそうだ。
最近だとネットオークションにも多いらしい。
一応、

「 俺が影響を受けないのは、鈍感だからですか・・・?」

と聞いたら、

「 それもあるかもしんないけど・・・・。」

と大笑いされた。

「 まぁ多分、女性の方が影響受けやすいんじゃないかなぁ。
何かが憑いてるというより”念が残ってる”って感じなんだけど、そういうのは女性の方が感じやすいし。
それに、これは女性の持ち物だっただろうから、同性の方が思いを共有しやすいのかもね。」

モノが手元を離れれば問題ないとのことだったので、ネックレスだけ供養してもらうことになった。
 かくしてアフリカの遺品ネックレスは、遥か極東の神社でお焚き上げ供養を受け、天へと還った。
輸入雑貨が持て囃される昨今だが、出処のはっきりしない物を買うということのリスクを痛感した出来事だった。












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日々の恐怖 1月6日 輸入雑貨(2)

2024-01-06 14:47:28 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 1月6日 輸入雑貨(2)






 結果的に上手く騙されたような気がしないでもなかったが、
彼女はああいう妙な小技を瞬時に繰り出せるほど器用なタイプではない。
あの時の嫌な感じはただの気のせいだと自分に言い聞かせ、

「 今後、記念日は月一回だけな。
それ以上は認めん!」

と彼女を小突いた。
 夕食を摂ろうと入ったレストランで、注文の品が来るまでの暇つぶしに、
彼女はさっきのネックレスを取り出し、さっそく首に掛けた。

「 どう?似合う?」

と笑ってみせる彼女は実に嬉しげだったのだが、胸元にかかったそのネックレスをまじまじと見直してから、

「 あれ・・・・?」

と首をかしげた。

「 なんか思ったより地味。
こんなだったっけ?」

そのネックレスはバッファローの角を楕円に削った黒と白の大きなビーズの間に、
緑と黄色の小さなガラスビーズが交互に挟まれているだけのシンプルなデザインだった。
確かに、これ以外で彼女が手に取っていたのはもっと派手なものばかりだったので、
俺も彼女がこれを選んだ時は意外に思ったのだ。

「 じゃあ、返品して他のに変えてもらわない?」

怖がらせたくはなかったので理由は明かさず遠回しにそう聞いてみたのだが、彼女の答えは、

「 う~ん、まぁシンプルな方が使い回しもきくし、これでいいよ。」

だった。
まあ、変な感じがしたのはあの時だけだったし、たいして気にするほどの事でもないかもしれない。
ちょうど頼んでいた料理が運ばれてきたのもあって、俺達はそこで話を打ち切った。

 その夜、彼女の部屋で眠っていると、夜中に彼女が突然ガバッと飛び起きた。
その気配につられて俺も目が覚めた。

「 何、どうしたの?」

眠い目をこすりながら彼女に尋ねると、彼女はしばらく俺の顔を見つめてから、

「 ・・・・なんだっけ?」

と訳の分からない質問で返してきた。
聞けば、怖い夢を見て飛び起きたのだが、内容をすっかり忘れてしまったのだという。
ああそう、と速攻で寝直す体勢に入った俺は、彼女にぶーぶー文句を言われながらも眠りに落ちていった。
 それからほぼ毎日、彼女は悪夢にうなされるようになった。
目が覚めるといつも内容を忘れているのだが、泣きながら目覚めることもあった。
あのネックレスが怪しいと思った俺は、あの日感じた不安をついに彼女に打ち明けた。

「 だからさ、やっぱ捨てたほうがいいって。
あれ買ってからじゃん、うなされるようになったの。」













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日々の恐怖 12月31日 輸入雑貨(1)

2023-12-31 19:50:22 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 12月31日 輸入雑貨(1)






 今の彼女と付き合い始めたばかりの頃の話です。
とある駅前で彼女と待ち合わせをしていたのだが、その日は時間より早く着いてしまった。
近くに喫煙所があったのでそこで煙草を吸っていると、すぐ近くで黒人男性が露店の準備をし始めた。
 並べているのは、カラフルなビーズで作られたネックレスやブレスレット。
どれも鮮やかな原色が多用されており、大ぶりなビーズが多く使われた派手なものばかりだ。
退屈なので横目で品物を見ていると、その黒人が視線に気付いて声をかけてきた。

「 オニイサン、見テッテヨ。
コレ、アフリカ本物ネ。
ケニア、コンゴ、スーダン、イロンナ国ノヨ。
安イ安イヨ。」

いや俺そんなの付けないし、と断ろうとした時、運悪く彼女が来てしまった。

「 お待たせ~、あ、カワイイ!」

俺の顔もろくに見ないうちから、彼女の目は色とりどりのアクセサリーに釘付けとなった。
すぐに幾つかのネックレスを手に取ると、置かれた小さな鏡の前で自分の胸元に当て始める。

「 最近フォークロアが流行りなんだよね~。
私もこういうの一個欲しいなって思ってたんだ。」

まずい流れだなと思っていると、案の定彼女はキラキラした笑顔で俺を見つめた。

「 買って!」
「 やだよ、自分で買え。」
「 今日、記念日じゃん!買って!」
「 何の記念日だよ。」
「 付き合って、えーと・・・、5週間ちょっと記念日!」

凄まじく半端な記念日を提示され、俺は言葉を失った。
俺の沈黙を勝手に肯定と判断した彼女は、どれにしよっかな~とひとしきり悩んだ後、ひとつのネックレスを手に取った。

「 これ・・・・。」

と呟いた後、笑顔だった彼女の顔から、すっと笑みが消えた。
この瞬間、俺は彼女が別人に変わってしまったかのような感覚を覚え、言いようのない不安を感じた。
彼女はどこかうつろな表情でネックレスを見つめたまま、

「 これにする。
これがいい。」

と黒人に差し出した。

「 アリガトネ~、サンゼンエンネ~。」

と言いながら、黒人がネックレスを袋に入れて彼女に手渡す。
 正直俺は、このネックレスを彼女に買ってやりたくはなかった。
さっき感じた不安が頭を離れなかったからだ。
だが、黒人に、

「 オニイサン、サンゼンエン!」

と真顔で催促され、俺は流されるまま金を支払ってしまった。

「 ありがとう、大事にするね!」

そう言って振り返った彼女からは、先ほどの異様な雰囲気はすっかり消え失せていた。












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日々の恐怖 12月24日 病院の夜の巡回

2023-12-24 19:00:58 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 12月24日 病院の夜の巡回






 前勤めてた病院での話です。
夜中に巡回してたら、二人部屋からうなり声がした。
二人部屋の一人は入院したてで症状が重く、全然意識のないおじさんA。
もう一人も時々弱くうなるだけで、1ヶ月ずっと夢の中にいる寝たきりのおじいちゃんB。

” Bさんがうなったのかな?”

と思い訪室すると、寝たきりのはずのBさんのベッドが空だった。

” えっ?”

と思って部屋を見回し、巡らせた目が真後ろの開いたドアをとらえた時、 廊下の光を背にして立つガリガリのBさんがいた。
点滴抜いて左半身血まみれだ。
あごが外れるくらい口を開いて、目は前方斜め上を見ている。

” えっ、えっ、なにこれ?”

と混乱していたらBさん、

「 ぅうぅうううおおおーー!」

と雄叫びとともに、両手を横に広げて倒れ込んできた。
 突然のことに私は悲鳴を上げてしりもちをつき、しかし覆い被さるBさんがケガしないように必死で抱きかかえながら、
必死にもがいて振り向いたら、 意識のないはずのAさんが首だけこっち向けて、充血した目をカッと見開いて笑っていた。
吐いた。











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日々の恐怖 12月17日 モニター

2023-12-17 09:06:11 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 12月17日 モニター






 俺が警備員やってたのは、テナントがいくつか入ってるビルだった。
常駐警備員ってのは途中に待機時間あるくらいで、基本的に交代制の24時間勤務だ。
故に深夜ビル内の巡回や駐車場の巡回なんかもやるんだけど、必ず決まった時間に発報するパッシブセンサー(人影とかで反応する)箇所がある。
 先輩や隊長からは、

「 あのパッシブはオカルト発報だから。」

って聞いていたから、あまり気にしていなかった。
でも、発報あれば一応行かなきゃいけないのが警備員だから、一応行く、6階に。
 でもって毎度のことながら発報したんだが、俺は駐車場の巡回をしていた。
無線で、

「 また発報したよ、外から何か見える?」

って言われたから、

「 見て来ます。」

って言って、ビルの表に回って6階を見上げた。
 外から見て初めて気付づいたんだけど、6階のパッシブがある辺りが青く光っていた。
すごくビビって、無線で、

「 6階パッシブ近辺で光を見た!
急行して!」

って連絡してから、防災センターにダッシュで戻った。
 防災センターで各階のエレベーターホール、各フロアのモニターを確認してたら、6階に急行した先輩の後ろを、
何か青い輪郭の影みたいのがついて行ってる。
先輩に無線で、

「 先輩の後ろに何かいます!」

って言ったんだけど、先輩に無線届いていないのか全然気にせず歩いている。
でもモニターには、先輩の後ろの影がずっとついて行って、その後、先輩が角を曲がって消えた。
 先輩が戻ってきてからから経緯を話したんだけど、先輩から信じられない話を聞いた。

「 いつものことだと思って、6階に行かずにトイレ行って来た。」
「 えっ?
だってモニターに先輩が映ってましたから!
マジで影がいたんです!」
「 そんじゃモニターの録画見てみようぜ(笑)。」

なんて余裕かましてたから、ムカついて録画をみた。

「 ほら、これ、先輩・・・。」
「 いや、違うな。」

拡大してみたら、そこに映っていた警備員は、よく見ると先輩じゃなくて、俺だった。

「 え・・・?」

先輩に怒られた。

「 お前だろ、バカ!」

もう訳わからなくて、当時は6階に行くのが怖くなって、行くのを誤魔化していた。










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日々の恐怖 12月9日 二つ目の玄関(2)

2023-12-09 19:38:13 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 12月9日 二つ目の玄関(2)






 どうやら彼女の生まれた集落では、死者が彼女の家を訪ねることは、死者を送る一連の手順に含まれているようだ。
いや、送られるための手順といったほうが正確か。
 死んでから四十九日を終えるまでの間に、彼女の家を訪れることで、迷わず向こうへ旅立てる。
そんな風習というか、思想のようなものを集落全体で共有している。
なにがどうなってそんな話になったのかは、誰も知らない。
知らないが、そういう考えがある以上、軽々に玄関を変えるのも気が引ける。
古い玄関を残したのは、そういう理由らしい。

「 ドアのほうには来ないんだ?」
「 そう。
なんでか知らないけど、古いほうだけ。」

昔は普通の客も死者もそちらに来たから、区別はできなかった。
今は、普通の客はドアのほうに来るのでわかりやすいらしい。

「 昔は嫌だったな~、お客さんが来るの。
おばけかどうか、開けるまでわかんないんだよ。」
「 別に、なにもないんだろ?」
「 ないけど。
でも、なんかやだ。」
「 まあ、わかる。」

 見えなかろうが、いなかろうが、嫌なものは嫌だ。
たとえ見えなくても、そこにいるかもしれない。
たとえもういなくても、さっきまで確かにそこにいた。
そういうことが思い浮かんで、なんとも嫌な、うすら寒いような気分になる。
 そもそも、訪ねてきているのは本当に故人なのだろうか?
開けても誰もいないのなら、その正体は謎のままのはずだ。
ただ、昔からそう言われており、実際集落で死者が出たときに現れるから、そうなのだろうと思っている。
実は、まったく無関係な別のなにかである、という可能性が否定できないのでは?
そんなことを考えると、少々寒気がした。
 この話に関連して、鍵の話も聞いた。
件の玄関に取り付けられている、ねじ締り錠。
これは常にかけておかなくてはならない。
幼いころから、彼女は耳にたこができるくらいしつこく、そう言い聞かされたという。
 人が来たときだけ開けて、用が済んだらすぐ締める。
開けっ放しにしておいてはいけない。
誰でも開けられるようにしておいてはいけない。
必ず、内の人間が開けるようにしておくこと。

「 そうじゃないとね、入ってきちゃうから。」

そういう理由だそうだ。













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日々の恐怖 12月3日 二つ目の玄関(1)

2023-12-03 13:47:23 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 12月3日 二つ目の玄関(1)






 彼女の家には玄関が二つある。
ひとつは、ドア。
ご家庭にある玄関ドアをイメージして貰えばおおむね合っているだろう、普通のドアだ。
もうひとつは引き戸。
星のような放射状の模様がある型板ガラスを使った、古い引き戸だ。
開け閉めするたびガラガラうるさいという。
 ドアが二つあるというと二世帯住宅を想像するが、そうではない。
彼女の家は普通の一軒家だ。
玄関が二つあるということと、それに付随して変則的な間取りになっている以外、特筆するところはない。
 なんでも古い家を壊すとき、祖父母の希望でわざわざ残したらしい。
つまり、引き戸のある場所が元々は玄関だったわけだ。
 それを残して新しい家を建てた。
そしてわざわざ新しい玄関も作った。
そういうことらしい。

「 なんだってまた、そんなことを?」
「 死んだ人が訪ねてくるからだよ。」

彼女が当たり前のようにそう答えるものだから、一層混乱した。

 曰く。
集落で死人が出ると、初七日から四十九日を終えるまでの間に、彼女の家に故人が訪ねてくる。
夜明け頃。
あるいは夕方が多いそうだ。
 薄暗いなか、がしゃがしゃと引き戸を叩く音がする。
見に行くと、ガラスの向こうに人影がある。
型板ガラスなので、細かいところはわからない。
ぼんやりとした、人型の影だ。
それがじいっと立っている。
 ねじ締り錠を回し、引き戸を開ける。
そこには誰もいない。
ついさっきまで、人影があったはずなのに。
そういうことが、あるのだそうだ。

「 そのあとは?」
「 亡くなった人の家に電話して、来たよ~って連絡してたかな。」
「 なんのために?」
「 それは、よくわかんないんだけど。」












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日々の恐怖 11月24日 Reserved seats(2)

2023-11-24 15:13:15 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 11月24日 Reserved seats(2)






 私が頷くのを見届けてから、彼は話しはじめた。

「 いや、大した話ではないんですけどね。
親父が定食屋を改装してこの喫茶店をはじめてから、なぜだかあんなことになったんです。
あの予約席のプレート、いくら片付けても、朝になったら勝手にあそこに置かれてるんですよ。     
 もちろん、誰も触ったりしてませんよ。
プレートを捨てても、いつの間にかあそこに戻ってきてるんです。
 それにあの席、妙にひんやりとして寒気がすると思ったら、
別の時は、今しがたまで誰かが座ってたような温もりが残っていることもあって。
正直、気味が悪いんです。
 一度椅子ごと撤去したこともあったんですがね。
次の日私が来たら、店の窓ガラスが全部割れていて、それも内側から。
 その後も雨漏りやら空調の不調が続いて、結局椅子を戻したんです。
そしたら、店内の不具合もピタリと止まって。
その後はもう、あそこの席は初めからないものとして、無視することに決めました。
放っておけば、特に害はないのでね。」

思いがけない話が聞け、私はますます呆気にとられた。
予約席は亡き戦友のもの、という話に勝るとも劣らない、不可思議な話だ。

「 お父様は、何かご存知だったのでしょうか?」
「 何も知らなかったと思いますよ。
僕と違って真面目なもんだから、あの席をどうにかしようと、真剣に考えてましたね。
ここは俺の店なんだから俺が座ってやる、なんて言って、一日中座ってたこともありましたよ。
席がひんやりしてたもんだから次の日風邪を引いて、それが元の肺炎で亡くなりましたけどね。」
「 それは、それは・・・・。」

私はかける言葉が見つからなかった。
 彼の言い方だと、先代の死はまるであの予約席のせいなのだが、店主はあまりにもあっけらかんとしていた。

「 その、戦友云々の話がどこからきたかはわかりませんけど、そんないい話になっているんなら、
大歓迎ですよ。
親父も僕も、そこの席の由来を聞かれた時はいつも適当にはぐらかしてましたから、
お客さんの間で憶測が憶測を呼んだ結果なんでしょうけど。」

店主はそう言って笑った。
私はコーヒーを一口含み、この店主にこの味が付いていれば、どんな噂が出回っても客足に影響はないだろうと、心中頷いた。













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日々の恐怖 11月20日 Reserved seats(1)

2023-11-20 20:52:22 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 11月20日 Reserved seats(1)





 雰囲気の良いジャズ喫茶だった。
中に入るとコーヒーのかぐわしい香りが漂い、音楽は耳に心地よい。
何時間でも居座れるような空間で、実際店内にはいつも、長居の常連客の姿があった。
 現在切り盛りしている店主は二代目で、初代は戦後の混乱期、小さな定食屋からこの店を始めたそうだ。
そして晩年、念願だったジャズ喫茶へ趣旨変更したらしい。
 この店のカウンターの一番奥の席には、いつでも予約席のプレートが置かれている。
しかし、実際に誰かが座っていることはない。
その席は、先代店主の戦友専用のものらしい。
 先代店主は戦時中、出征先で戦友たちと夢を語らった。
そして、いつか自分が大好きなコーヒーとジャズの店を開くから、その時はお前たち必ず来いよと約束したそうだ。
先代店主はなんとか生きて帰ることができたが、戦地で命を散らした者も大勢いた。
そんな戦友たちとの約束を守るため、先代店主は彼ら専用の席を作り、他の誰も座らないよう予約席のプレートを置いたのだという。
 それは、息子である今の店主にも引き継がれている。
雨の日や薄曇りの日には、その席にじっと腰掛ける若い男性の姿が、うっすら見えることもあるのだという。

店主はコーヒーを淹れながら、

「 なんですか、それは!
常連さんたちに担がれたんでしょう。」

と、私の話を豪快に笑い飛ばした。
知人から聞いた喫茶店の不思議話を、店主ご自身からも伺おうと、店を訪ねた時のことだ。
呆気にとられる私にコーヒーを出しながら、店主はまだクスクスと笑っていた。

「 うちの店の由来は、確かにその通りですけどね。
親父は若い頃病弱で、戦争には行かずに済んだんですよ。
だから、約束を果たそうにも戦友はいないんです。」
「 では、あの予約席は…?」

私が視線をやった先は、カウンターの一番奥の席だった。
そこには知人の話の通り予約席と書かれた金色のプレートが置かれ、椅子には上等そうなクッションが乗せられていた。

「 あぁ、あれはですね。」

店主は途端に渋い顔になる。
店内を見渡し、私の他にはまだ誰も客がいないことを確認した。

「 絶対に他言しないと約束してください。
客足に響くと困りますから。」












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日々の恐怖 11月11日 校庭を通る人達 

2023-11-13 12:15:34 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 11月11日 校庭を通る人達 






 生前小学校の教員をしていた祖父が大学生だった頃の話です。
ちなみに場所は宮城県です。
 先に学校を卒業して県内の小学校に勤めていた先輩に、

「 年末年始の宿直を代わってほしい。」

と頼まれた祖父は、先輩の頼みをバイト感覚で引き受けました。
 その小学校は村外れに建っていて、学校の西の方には村の人たちの作業場(木を切ったりとか何かしていたそうです)があり、
学校を挟んで、東の方には村の人たちの家がありました。
学校の北側に作業場と村の人たちの家をつなぐ道があって、校舎はその道の南側に建っていました。
 ところが、日が暮れると村の人たちは、西の作業場から東の自宅まで、校舎の北の道ではなく、
校舎の南側、つまり校庭の中を通って帰っていたそうです。
宿直係の祖父としては校庭に勝手に入られると困るんですが、村の人たちは、

「 北の道は験が悪いから。」

と言って校庭を通りたがります。
祖父は、よく分からないけど仕方がないと思い、

” 西門から入ってきた人影が東門から出ていく姿を確認できたらヨシ。”

と思っていました。
 そんな風に何日か過ごして、年が明けました。
その日は雪が降っていて、夜だけど変に明るかったそうです。
いつも通り宿直室で過ごしていた祖父は、東門(村の人たちの家がある方)から西門(作業場がある方)へ抜ける人影を見ました。
 いつもと方向が逆なのでおかしいと思ったそうです。
夜に作業場に行くのも変な話ですし、そもそも新年早々です。
不思議に思った祖父が外に出てみると、雪に残っているはずの足跡がついていません。
ぞっとしましたが、まあ敷地から出ていったからいいかと思い、部屋に戻って普通に寝ました。
 その後、戻ってきた先輩にその話をしましたが、先輩も、

「 へーそうなんだ。」

という感じで特に変わった反応はなく、無事にバイト代をもらって帰りました。
 ところがその数カ月後、先輩から連絡がありました。
先輩は、

「 東から西に行った人の顔は見なかったな?」

と確認してきました。
そして、

「 お前は卒業したら地元(群馬です)に帰って就職するんだろ?
もうこの村には来るなよ。
特に西側の作業場には絶対に行くな。」

と念押ししてきたそうです。
 祖父は、

” 言われなくても特に用ないし行かないけど・・・。”

と思ったそうです。
 祖父の昔話はそれだけです。
その小学校はとっくに廃校になりました。
私が、

「 昔は宿直の仕事があったんでしょ?
何か怖い話ないの?」

とねだった時にしてくれた話ですが、オチもないし、父も祖父からこの話を聞いたことはないそうです。
なんだかよく分からない話です。












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日々の恐怖 11月6日 子供の幽霊

2023-11-06 17:32:29 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 11月6日 子供の幽霊






 友人Kの家には子供の幽霊がいた。
右の頬に赤アザのある、小さい女の子だった。
歳は小学校低学年か、もしかしたら未就学児だったかもしれないというから、幼いと言っていい。
ごく普通のシャツとスカート姿だったけれど、季節を問わず、あかね色のはんてんを着ていたという。
その子はKが中学生の頃に現れるようになったそうだ。
 最初に見つけたのは中廊下だった。
L字の廊下を曲がっていく背中を見たのだという。
驚いて追いかけたが、女の子は煙のように消えていた。
廊下の先の部屋も調べたが、見つけることはできなかった。
 その日以降、Kの家の中では女の子がたびたび目撃されるようになった。
最初はKだけが見ていたが、そのうち家族も見るようになった。
 女の子は、家の敷地の中ならどこにでも現れた。
母親の家庭菜園を眺めていることもあれば、リビングで飼い猫にちょっかいを出していることもあった。
家族の誰かがそこへ来ると、あっという顔になって物陰へ隠れてしまう。
そしてそのまま消えてしまうのだそうだ。

「 視界から外れると、消えるんだよ。」

 ほんの一瞬、目を離せば、その隙に消えてしまう。
なにかの影に隠れて視界から消えると、そのままいなくなる。
そういう存在だったそうだ。
Kは躍起になって女の子を捕まえようとしたが、一度としてそれが叶ったことはなかった。
 女の子は、その幼い容姿からは想像もできないほど機敏だった。
あっという顔をしてから、逃げ出すまでがとても素早いらしい。
しかもずいぶん身軽で、助走もつけずにぽんと跳ねてソファーを飛び越えて消えたことがあるそうだ。
 女の子は、Kが高校三年生の時まで家にいた。
進学に合わせて上京することになり、荷物を整理していた時に会ったのが最後だという。
トイレに行って帰ってくると、自室に積んだ段ボールを見上げていたそうだ。
いつも通り、あっという顔で戻ってきたKを見た。
けれどいつもと違って、すぐには逃げなかったという。

「 俺、もうじき出てくんだよ。」

そのときは、何故だかKも捕まえる気にはならなかったそうだ。
代わりに、そんな風に話しかけた。
 女の子はしゅんとした顔で、段ボールの影に隠れて、消えた。
それきり、女の子は姿を見せなかったという。

「 家族も見かけなくなったって言うんだから、いなくなったんだろうな。」

Kはそう言っていた。
そうかもしれないと思う一方、私は別の可能性も考えていた。
 最初に女の子を見つけたのは、Kだった。
家族が見えるようになったのは、その後だ。
そしてKが家を去ると、家族が女の子を見ることはなくなった。
もしかしたら、Kの存在が女の子と家族を繋ぐ唯一の接点だったのではないか。
私は話を聞いて、そんなことを思い付いたのだ。
 女の子はいなくなったのではなく、接点を失って誰にも見えなくなったのかもしれない。
そして今もその家で、誰にも見られないまま暮らしているのかもしれない。
女の子は誰にも気づかれずに、一人、家の中にいる。
 もちろん、ただの空想だ。
証拠も確信もない。
だから彼にその思い付きは言わなかった。

「 その子、捕まえたらどうする気だったんだ?」

代わりにそう聞いてみると、Kは少し考えて、

「 名前を聞く・・・・、かなぁ。」

と答えた。












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