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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 10月30日 石鹸

2023-10-30 17:09:05 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 10月30日 石鹸






 小学校の教員をしていた友人から聞いた話である。
当時友人が勤務していた小学校は、都市部と田園部が半々といった場所だった。
 ある初夏の頃、学校の校庭にある手洗い場の石鹸が盗まれるという小さな事件が続いた。
水道の蛇口の根元に縛り付けられた、赤いビニールネットに入ったレモン石鹸である。
新しいものに付け替えても、すぐに何者かがカッターのようなものでネットを切り裂いて、
中の石鹸を持ち去ってしまうのである。
 始めのうちは、

「 物好きもいるものだ。」

と職員室の軽い話題でしかなかったが、事件が頻発し目撃者がだれもいないという事で、
やがて校舎の内外を管理する教頭が乗り出してきた。
 教頭は、

「 いたずら者を捕まえて、しっかりと指導しなくては!」

と意気込んで、付近の見回りを強化したのだが、犯人の目星もつけられないまま夏休みになった。
休み中も犯行はぽつぽつと続き、一部の児童は”学校の七不思議だ!”と色めき立った。
 やがて秋になり運動会も終わった頃、台風がやって来て周囲の小川を氾濫させたり、
校庭のヘチマ棚を飛ばしたりと、この地域にも多少の被害をもたらした。
台風騒ぎの最中は例の石鹸盗難事件はなかったのだが、その後は1学期同様に続いたので管理する教頭を悩ませた。
 その頃、教頭は奥さんから自宅の雨どいの掃除を頼まれていた。
どうやら先の台風で落ち葉が雨どいに詰まってしまったようである。

「 雨水が溢れて困るから早くして!」

とせっつかれた教頭は、高い所は大の苦手で気乗りはしなかったが梯子をかけて渋々屋根に上ったところ、
我が目を疑った。
雨どいの中が黄色いのである。

「 まさか・・・・?}

と目を凝らしたがやっぱり黄色。
詰まっていたのは落ち葉ではなく、なんとものすごい数のレモン石鹸であった。
 しかもそれらを良く見ると使い古して小さくなったものではなく、
どうも学校で度々盗難にあっていた、あのレモン石鹸のようだった。

「 何で俺の家の雨どいにこんなものが・・・?」

と恐怖と冷や汗でクラクラしつつも、教頭は丸一日がかりで石鹸を全部取り除いたそうだが、
数えてみると60数個もあったという。
 結局のところ、未だに目撃者すらいないこの謎の石鹸騒動の犯人はというと、
どうもカラスしか考えられないのではという結論に達した。
 学校から教頭の家まで約3キロ。
自家用車で通勤していた訳だが、カラスが校庭の水道の所から嘴でネットを破り、
石鹸をくわえて、よりによって何故か教頭の家の雨どいに運んで・・・?
はたしてカラスにそんな芸当ができるのだろうか?
それとも別の何かの仕業なのだろうか?
 実際に他に六つあったかどうかは知らないが、そこでこの出来事は正式に”学校の七不思議”に昇格する事となったそうである。
その後、校庭の水道のレモン石鹸はポンプ式のものに付け替えられたのは言うまでもない。












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日々の恐怖 10月22日 不動産屋(6)

2023-10-22 09:13:43 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月22日 不動産屋(6)






 一昨日、男の姉がKさんに謝罪に来てくれたのだという。
そして男の奇怪な行動について話してくれた。
 姉が男から聞いた話によると、男は彼女が自殺をした後、部屋に篭りがちになっていた。
しかし夜になると誰からか見られているような不安な気持ちになる。
気になって窓から外をそっと覗いてみると、近くの道路に死んだはずの彼女がこちらを見て立っていた。
女性はしばらくそのままでその後、どこかに去っていく。
毎日それが続き、我慢できなくなった男は彼女の後を追うことにした。
 彼女に気づかれないよう静かに後を追うと、Kさんの住んでいるアパートに行き着いた。
しかし彼女は部屋の前まで来ると姿は消えてしまう。
彼女が部屋に入ったのだと思って、部屋の前まで忍び寄り、様子を伺うのだがどうにもならない。
どうにもならないイライラが、死んでまで自分に付きまとう彼女に対する怒りに変わり、
男は発作的にあのような行為をしてしまう。
そういう行動を何週かごとに繰り返していたようだ。
 神妙な面持ちで話をするKさんを見て俺は少しあきれた。
確かに気持ちの悪い話ではあるのだが、男は精神を病んでいたので幻覚を見ている可能性があるし、
なによりも心霊やオカルトを信じていないはずのKさんが、そんな話を鵜呑みにするのはおかしいと思ったからだ。
 そんな俺の気持ちを感じたのかKさんが、

「 実は昨日の夜・・・・。」
「 えっ!また男が来たんですか?」

反射的に俺が聞くと、

「 いや・・・、違うんだけど・・・・。
やっぱいいです。」

と何か歯切れの悪い返事だった。
 腑に落ちず、さらに聞こうとしたが彼のあまりに青ざめた表情を見て気の毒になり、それ以上の話を聞くのをやめた。
結局、Kさんは次の部屋が見つかるまで知人の家に泊めてもらうことで終わり、彼と別れた。
実際に自分が心霊現象にあったわけではないですが、いわくつきの部屋にはこんなトラブルもあったという話です。











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日々の恐怖 10月14日 不動産屋(5)

2023-10-14 10:50:18 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月14日 不動産屋(5)






 俺は警察官から男の素性について聞いて驚いた。
男はKさんの部屋で自殺した女性と知り合いだった。
以前、男は女性と付き合っていたがしばらくして別れたとの事だった。
 しかし女性の方が未練があり、ストーカーになってしまったのだという。
女性はその後自殺、男も女性からの激しいストーカー行為に心を病んでしまい、病院の精神科に通院していたようだ。
 Kさんの部屋に行った動機に関しては、あいまいな事を言っていて良く分らないとのことだった。
結局、男は家族に向かいに来てもらい、そのまま実家で療養することになった。
事件はとりあえず解決し、Kさんも一安心した様子で別れた。

 翌日、仕事に行きMさんに昨日の出来事を話した。

「 幽霊の正体見たり、ですよ。」

俺は得意そうに言い、

「 いわくつきの物件は出る出るというけど、まあ大体現実はこんなもんだよなぁ。」

と二人で笑っていた。
 ところが男が捕まって三日後にKさんから連絡があった。
聞くと、部屋をすぐに解約して欲しいとの事だった。
理由を問いただしたのだがあやふやな態度をとられてしまいどうにもならないので、俺は本人に直接会う事にした。
 Kさんのところに行くと、青白い顔をした本人が待っていた。
解約の理由を俺が問い詰めると、Kさんがうつむき加減に理由を話してくれた。









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日々の恐怖 10月7日 不動産屋(4)

2023-10-07 09:37:26 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月7日 不動産屋(4)





Kさんの住むアパートまでは俺の自宅から自転車で十分位の所にあり、急いで現場に向かった。
 アパートの隣接する道路まで来て遠目に部屋を見ると、アパートの電灯の中に人影が見える。
自転車を降り、静かに歩いてアパートの入り口まで来ると、そこには黒い薄手のジャンパーに青色のジーパン姿の男が、
Kさんの部屋の前で何か怒鳴っているのが見えた。
 警察はまだ来ていなく、どうしようか迷って立ち尽くしていると、男が不意にこちらに顔を向けた。
男は人がいる事に気づいて驚いたが直ぐに顔を隠すように俯き、こちらに向かってくる。
そして入り口で立ち止まっている俺の脇をすり抜けるように男は立ち去ろうとしていたので、
逃げられると思い咄嗟に男の腕をつかんだ。
男は俺の手を振り払い逃げ出そうとしたので、今度は男の腰にしがみついた。
その拍子に男は前のめりになり、地面に俺と共に倒れこんだ。
 男はすぐに立ち上がったのだが、そのさいに片方のスニーカーが脱げた。
しかし、そのまま逃走。
俺も残ったスニーカーを掴み、後を追いかけたが途中で見失ったので追うのをあきらめ、一旦アパートに戻った。
戻ると警察官が来ていてKさんと話していた。
 俺が事の次第を警察官に話していたが、その途中で男が他の警察官に捕まったと連絡が入った。
その後、警察に行き事情聴取をされた男は素直に犯行を認めた。











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日々の恐怖 9月29日 不動産屋(3)

2023-09-29 20:41:44 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 9月29日 不動産屋(3)






 しかし、それから二週間ぐらいが経って、またKさんから以前と同じような事が起きたと言う連絡を受けた。
俺はただ事ではないと思い、彼に直接会って話を聞きくことにした。
それによるとKさんはその日の夜、二時ぐらいまでゲームをしていた。
すると突然、どこからか革靴のコツコツと鳴る足音が聞こえてきた。
足音はだんだんと近づいてきて部屋の前まで来ると止まり、その後ドアを激しく叩く音が聞こえ、それと同時に男の怒鳴り声が聞こえてきたという。
 男は、

「 いい加減にしろ!」
「 もう俺に付きまとうな!」

などと言っていて、十分ぐらいそれが続いた後、静かになったということだった。
 霊とかオカルトが平気なKさんもこれには参ったらしく、青ざめた表情を浮かべていた。
警察に通報しようかどうか考えたが、またその男が来るかもしれないので、その時に通報して現行犯で捕まえてもらうことにした。
 そしてさらに二週間後に、また男が来たのだ。
夜中の一時過ぎあたりに俺の携帯電話が鳴る。
Kさんからで、電話に出るとKさんが興奮気味に、

『 来た来た!聞こえるでしょ!』

そう言うと携帯電話を玄関に向けたらしく、コツ、コツと革靴が地面を叩く乾いた足音が聞こえる。
足音はだんだん大きくなっていき、しばらくして突然止まった。
少し間をおいて、

” ドンッ!ドンッ!”

とドアを激しく叩く音が、それと共に男の怒鳴り声が聞こえた。

『 ひぃっ!
やっ・・・・・、やばい!』

Kさんの押し殺した悲鳴のような声が携帯を通して聞こえてくる。

『 こっ・・・、これはもう警察でしょ!』
「 わかりました警察に連絡してください。
俺もそっちに行きます。」

電話を切り、部屋着であるジャージ姿のままで俺は自宅を出た。











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日々の恐怖 9月19日 不動産屋(2)

2023-09-19 19:49:56 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 9月19日 不動産屋(2)





 興味を持った俺は、Kさんに紹介する部屋の事について聞いてみた。
その部屋は一人暮らしの二十代の女性が半年くらい前に自殺した部屋で、事件後は誰も借り手がついていない物件だった。
実際に部屋を見てみたくなった俺はKさんの担当を代わってもらい、二日後にKさんと共に部屋を見に行った。
 部屋に行く途中、Kさんと話をしたのだが、彼は霊などのオカルトは全く信じていないようで、
以前にもいわくつきの部屋に住んでいたという。
その時も特に霊体験をしたことはなかったそう。
 アパートは築八年ほどの二階建てのごく平凡な建物だった。
以前は近くにある機械の部品組み立て工場で働く、一人暮らしの派遣労働者がほとんど入居者だったようだが、
不況の煽りを受け派遣切りがあったので、今ではアパートの入居率は2割ほどしかいない。
 目的の部屋は、道路から入って一階の一番手前の場所だ。
ドアを開けて中を見たのだが、何の変哲も無いワンルームの部屋だった。
Kさんからも特に意見がなかったのでその日のうちに契約が成立し、次の週には入居した。
 しかしKさんが部屋に住んで一週間ぐらいが過ぎたとき、突然彼から苦情の電話が来た。
Kさんの話によれば、彼が夜中に寝ていると突然、

” ドンッ!ドンッ!”

という大きな音で起こされたという。
飛び起きてドアのほうに向くと、部屋の外で男が何か怒鳴ったりドアを叩いたりしていたそう。
こういった苦情は良くある事で、

「 どこかの酔っ払いが騒いでいるのだろうから大丈夫ですよ。」

と彼をなだめるように説得した。
Kさんもしぶしぶ了承してその場は収まった。










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日々の恐怖 9月12日 不動産屋(1)

2023-09-12 11:08:26 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 9月12日 不動産屋(1)





 俺は一年前から不動産の仕事をしている。
主な仕事は部屋の紹介など。
そこの不動産会社は高校の部活の先輩、Mさんが勤務していて、そのつてで紹介してもらった。
 ある時、二十代ぐらいの男性が部屋を探しに来た。
その男性、Kさんからいわくつきの物件を紹介して欲しいと言われたのだ。
突然の事に要領の得ない俺の様子をみて、先輩のMさんが間に入ってくれた。

「 お客さん、そうゆうものをお探しならこちらへ。」
「 後は俺がやるから大丈夫だ。」

と代わってくれた。
 Kさんが帰った後、Mさんが事情を話してくれた。
Mさんによると時々、Kさんの様にいわくつき部屋を狙ってやってくる客がいるのだそう。
目的は大体二つに別れていて、一つは怖いもの見たさや興味本位で、もう一つは家賃が安いからとの事。
Kさんは後者だった。
 この仕事をしていれば、いわくつきの部屋というモノにいつかはぶつかるのだと思っていたが、まさかそこに自ら住みたいという人がいることに驚いた。
しかしMさん曰く、Kさんの様に自らすすんで部屋に住みたい人は少なくないのだという。

「 霊とかオカルトを信じない人には、ただの格安物件だからな。」

とMさんは笑いながら話していた。









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日々の恐怖 9月5日 オッサンの家(6)

2023-09-05 18:21:31 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 9月5日 オッサンの家(6)





 それからは見知らぬ人達が家を出入りするようになった。
たぶん霊媒師だと思った。
その頃から家の中は変なお香の匂いと、訳の分からない念仏みたいのが聞こえ続け、近所から苦情が来る毎日だった。
 俺の高校の入学式にも両親は顔も見せず、家族バラバラで部屋で過ごす日々が続いた。
夏頃に異音と泣き声は無くなった。
どっかの霊媒師が成功したみたいだと俺は思ったが、誰も居間に寄り付かなかった。
 その後、俺は高校3年になり東京の大学に進学が決まり、母とオッサンと縁を切りたかったので
新聞奨学生の手続きをしてた2月の終わりに、また異音が鳴り始めた。
しかも今度は家中で聞こえるようになった。
 俺は話すタイミングはここしかないと思って、卒業式の次の日に弟と妹に兄から聞いた話をした。
当然、その夜に母とオッサンに呼ばれさんざん怒られた。
その頃、兄は連絡がつかなくなっていたので素直に兄に教えてもらったと話し、オッサンが母に言ってなかった前妻への暴力、
この家を出るために自分がタイミングを見計らっていた事などすべて話した。
母は前妻への暴力とかは知らなかったらしく激しく狼狽していたが、これ幸いに全て吐き出し、
そのまま家を出て友人の家に泊まり上京した。
 その後の顛末は、弟から聞いた話しでは母は実家に詫びを入れ、家に離婚届を置いて、実家に帰り家業の手伝いをしている。
弟と妹はそのまま母について行き、祖父の元で暮らす。
母が置いていった離婚届が提出されていなかったらしく、事後処理は弟がして大変だったようだ。
自分は大学入る際に、先輩に手伝ってもらいオッサンの戸籍から抜け、実父の姓に戻り何事も無く暮らしている。
 今回話そうと思ったのは、祖父が先日105歳で大往生し葬儀で実家に帰った際に、
オッサンが例の家の仏間で自殺したことを知らされたからだ。
ただ自分を含め家族はあの家から逃げ出したので、オッサンが一人でどうしていたかは分からない。









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日々の恐怖 9月1日 オッサンの家(5)

2023-09-01 12:07:55 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 9月1日 オッサンの家(5)





 ある日、オッサンが納骨も終わって落ち着いたぐらいに、

「 今夜は帰らん。」

と言ってどっかに行った。
 兄が夜1時過ぎにトイレに行ったら、オッサンが血相変えて帰ってきて、仏間に飛び込んで念仏みたいのを唱えてた。
それで、また母親が出たんだなと理解したそうだ。
さらに、兄が中学に上がる頃から異音が鳴るようになり、赤ちゃんの鳴き声がするようになった。
家の中でしか寝れないし、原因不明の物音と赤ちゃんの泣き声にいたたまれなくなったオッサンは、霊能者にすがりまくったらしい。
 兄は、

「 ガキだったから分からないけど、親父は凄い大金使ったと思う。
効果が無ければ霊能者に電話でがなりたて、また新しい霊能者を探す。
そんなのが1年間ぐらい続いたよ。」

と言った。
ちなみに、兄はその頃から非行に走って家にあんまり帰ってなかったそうだ。
 そんなこんなでなんとか霊媒師を見つけ鎮める方法を教わり、今に至るらしい。
そしてオッサンは仏間から離れるように寝所を増築して、少しでも仏間から距離を取ろうとした結果、歪な増築を繰り返した家になった。

「 じゃあ供養されたんじゃないの?
まだ聞こえてるよ。」

と聞くと、

「 お祓いしてからかなり時間が経ったから、効果が無くなったじゃね?」

と無表情で兄は答えた。

「 とにかく、こんな家に関わった以上、長くいるとオマエまでなんかあるかも知れないから、高校でたらこの家を離れろ。
大学でも就職でも良いから家を出ろ。」

と言われた。
 最後に、

「 弟と妹にこの話をするかどうかはお前に任せる。
まだ2人とも子供だから慎重に時期を見計らって話せよ。」

と言って、再び鍵をかけた。










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日々の恐怖 8月25日 オッサンの家(3)

2023-08-25 13:48:53 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 8月25日 オッサンの家(3)






 そんな状況でもなんとか第二志望の高校に合格できて、中学最後の春休みになった。
たまたま自分一人が家にいた時に兄が帰ってきた。

「 探し物しにきただけだから。」

と言う兄に、半年ほど起こってる異音と泣き声について話してみた。
 兄はまじめに聞いてくれて、

「 ちょっと待ってろ。」

と言って居間の棚から知らない鍵を持ってきた。
そして、

「 誰にも言うなよ。」

と言って、2階の入ってはいけない部屋の前に連れてきてくれた。
 そして鍵を開けて入った。
俺はてっきり御札だらけとかの怖い部屋を想像してたんだが、いたって普通の和室だった。
ただ、襖の後ろに張られた1枚ずつの御札と、仏壇と異様なほどに供えられた人形を除いては。
人形の数は30~50ぐらいだったと思う。
 兄に、

「 誰の仏壇?」

と聞くと、

「 俺の姉らしい。」

と答えた。

「 らしい?」

って聞くと、

「 生後数ヶ月で死んだ。」

と答えた。
 それからの兄の話を要約すると、オッサンの最初の子供で早々に亡くなった事について最初の奥さん(兄の母)は、さんざん責められイジメられたらしい。
そして2年後に兄が生まれたのだが、娘が欲しかったオッサンは奥さんをさらにイジメたそうだ。
 イジメの内容は端折るが、奥さんは次第に仏壇のある部屋に篭るようになった。
普通に家事はするが和室に篭る時間が増えていく奥さんを、オッサンはさらに暴力と言葉でさんざん嬲り、それはヒドイ状況だったそうだ。
兄は自分に構ってくれず修羅場を続ける2人を、他人事のように眺めてたそうだ。











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日々の恐怖 8月22日 オッサンの家(2)

2023-08-22 08:41:48 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 8月22日 オッサンの家(2)





 オレ達が家に入ると、入れ替わるようにオッサンの息子(義理の兄)が家を出て行った。
兄は俺達兄妹に優しかったから、

” 自分達のせいで出て行ったのかな?”

と思うと兄に凄く申し訳なかった。
 その後もオッサンに虐待されるでもなく無事に過ごしていたのだが、俺が中3の夏に奇妙な事が起こり始めた。
それは、家族で居間にいると2階から異音が鳴り始めた。
今で言うと壁ドンみたいな音が。
居間の真上の2階の部屋は、

” 仕事道具があるから。”

という理由で立ち入りを禁じられ、鍵がかかってて入る事は出来なかったから、最初は

” 荷物が崩れたんだろう。”

ぐらいにしか思ってなかった。
 オッサンもネズミかなんかだと言ってたので気にしないようにしてたが、だんだん異音が鳴る頻度が増え、仕舞いには赤ちゃんの鳴き声が聞こえ始めるようになった。
オッサンに聞いても何も返事をせず、母も黙ったままだった。
結局、家族はバラバラに部屋で食事を取るようにして異音を聞かない様にしていた。








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日々の恐怖 8月20日 オッサンの家(1)

2023-08-20 11:31:34 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 8月20日 オッサンの家(1)





 お嬢様育ちで世間知らずな母が、俺と弟と妹を連れて父と離婚したのは俺が小学校低学年の時だった。
母の実家が地方都市のそこそこの名家っだったんで、自由で裕福な暮らしが出来ると思ったらしい。
 しかし祖父母は激怒し1年足らずで絶縁状態となり家を追い出され、地元でも評判の悪い土建屋のオッサンと再婚した。
オッサンはいかにも成金で趣味の悪い男だったが、両親に絶縁され頼る者が無かった母からすれば最高の男だったんだと思う。
 しばらくのホテル暮らしのあと、オッサンの家に引っ越す事になった。
オッサンの家は無理に増改築をしたのか、大きいのだが和風の家にプレハブ小屋みたいのを足した感じで、歪な感じだった。
しかしガキで何も知らないオレ達は、無邪気にデカイ家を見て喜んでいた。






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日々の恐怖 8月13日 故郷

2023-08-13 10:16:43 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 8月13日 故郷






 小学2年の夏休みだった。
8月の始めに一人でおじいちゃんの家に行った。
1週間くらい遊んで、お盆に母と弟が合流して帰るという方法だった。
 夏休みなので朝はラジオ体操があるわけだが、地元の子たちに混じってやるのがなんか恥ずかしい。
知らないやつらだし、スタンプだって違うだろうし。
 でも、いざ行ってみると、別に普通に受け入れられた。

「 スタンプカード違う!」

とかって最初に話しかけてくれたのが、5年生のお兄ちゃん。
そのお兄ちゃんとは帰るまでの間、ラジオ体操をやる家に集合してから開始までに結構話した。
 最後の日は、

「 来年もくる?」

って言ってくれた。
 結局その年以降は、おじいちゃんの家にお盆に行っても日帰りという方法になり会えなかったんだけど、
この間おじいちゃんの家に行ったときに、従兄弟と犬の散歩をしてたら、同じく犬の散歩をしている近所の姉妹が話しかけてきた。
 従兄弟と話してて、

「 隣の人は?」
「 従兄の兄さん」
「 昔ラジオ体操さ来てねがった?」

という流れになったので、

「 はい。」

って答えて、ちょっと話してお兄ちゃんの事を聞いてみたら、

「 誰だば?」
「 あの年、男一人だいな?」

 従兄弟や近所の姉妹のラジオ体操範囲だと、従兄弟が小学校にあがる年まで男の子がいなかったらしい。
期間限定とはいえ、

「 あなたの参戦が初の男の子だから覚えじゃーよ。」

と言われた。
 従兄弟も、

「 確かにうちの範囲ならんだよな。」

って。
 もう少し上の学年ならいるが、年が一致しないみたい。
姉妹が他の人たちに電話したり、ちょっとした騒ぎになった。
 俺と同じく、夏休みにおじいちゃんの家に来てた他の家の男の子なのでは?という説を俺が出したが、

「 男いねがったんだって!絶対!」

と一蹴。
 女の子を男だと勘違いしたのでは?という説が出るも、髪はみんな伸ばしてたそう。
そのまま回答が見つからずに解散し、従兄弟に、

「 ま、記憶ってアテにならね~はんでな。」

とからかわれた。
 近隣で鬼の子の伝承があるわけでもない。
近くの川で亡くなった子もいるがもっと小さい子だし。
周りが女の子ばっかで俺が生み出した幻だったのか?
スタンプ貰ってたけど。









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日々の恐怖 8月7日 異国の悪魔(2)

2023-08-07 11:20:51 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 8月7日 異国の悪魔(2)






 親父は、

” これは身ぐるみはがされるかな・・・・・。”

と思ってたらしいんだが、(インドネシアに限らず、日本製の物とか日本人が不用意に持ち歩く多額の現金目当ての奴らなんかはいっぱいいる)仲間の大事には変えられないんで了承した。
 別室に連れて行かれ、ポケットの中身を全部出させられた。
あ、この時点で親父は雨と泥でめちゃくちゃになったスーツは既に脱いで手に持ってる状態、本人は下着だけだったらしく、オマケで掘られるかもとかビクビクしてた。
 結局そんなことはなかったんだが、シャーマンの目にとまったのが定期入れ。
日本で通勤してる時に使ってる定期しか入ってないんで、おかしいなと思ったそうだが、中身を見せろと言われたので見せた。
 そしたら、シャーマンは定期の後ろに入ってた俺の写真を持って、これのお陰だと言い始めたんだ。
そもそも、親父の怪我だけが不自然に軽いので、シャーマンは何か強力なお守りを持ってると思ってたらしい。
 シャーマン曰く、国ごとってか地域ごとに神様とか悪魔は違ってて、日本(ていうか親父の住んでる付近)では、俺の写真はただの俺の写真にすぎないが、たまたま事故った場所にいる悪魔が俺に近い波長を持つやつだったと言った。
 それで、その悪魔は俺の写真から感じる波長を仲間だと思い込み、親父の怪我は結果軽く済んだって事らしかった。
俺は小さい頃、親父の仕事の関係でインドネシアに住んだことがあるから、そういう波長になったのかもって言われたらしい。
 まあその後、親父の同僚さんたちや現地ガイドさんも病院に送ってもらって順調に回復したらしいし、親父も実家でピンピンしてるが、異国の悪魔に仲間と間違えられた俺は、未だにこれを素直に喜べずにいる。












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日々の恐怖 7月30日 異国の悪魔(1)

2023-07-30 11:33:49 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 7月30日 異国の悪魔(1)






 十数年くらい前、俺の親父がインドネシアに出張した時の話。
親父は語学堪能な人だから、現地のガイド、中国支社の人、日本の同僚の三者通訳みたいな感じで行っていた。
 郊外の工場行った帰り、夜になってきた頃にスコールにあって、街灯もガードレールもなく舗装もされてない山路を車で走ってたらしい。
二台に分乗してて、親父は後続の方に乗っていた。
すると前の車がスリップ、親父の乗ってた車もそれ避けようとして横転した。
 前の車は山肌を回転しながらズルズル落ちて、みんな骨折してたり手足ザックリ切ってたり、死人はいないけどかなり酷い状態だった。
後続の方もガラスはめちゃくちゃで、負傷っぷりはおんなじ感じの中、親父だけが奇跡的に右手の側面を削っただけで済んで、血もそんなに出てなかった。
 ガイドが言うには歩いて二十分くらいのところに集落があるらしく、親父は仕方なく一人で集落へ向かった。
一本道だから迷いはしなかった。
それで、とりあえず集落の人に事情を話して金を握らせて車出して貰い、怪我人を運んで来てもらう事に成功した。
 親父はその間、集落にもしかしたら医者がいるかもと探してたが、シャーマンみたいなのしかいなかった。
シャーマンって結構気難しい人が多くて、この集落にいる奴も最初は外国人は帰れって感じだったようだ。
でもシャーマン、なんとなく親父の何かが気になったらしく、親父の持ち物を全部見せれば他の怪我人をそれなりに治療してやるし、
朝一で街の病院へ連れてってやる、って言い出した。










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