満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『南極(人)』

2009-03-05 00:53:52 | 

皆様ごきげんよう。今日はエアロビクスでへろへろなので、さっさとお酒飲んで寝ちゃおうと思っております黒猫でございます。(酒飲む必要あんのか)

でも寝る前にちょろっと本のレビュー。

『南極(人)』(京極夏彦著、集英社)



今回はあらすじ的なものなくいきなり始めようと思います。だってあらすじつけにくいんだもの。



この十年くらいの間に京極夏彦が発表した、架空の小説家(?)・南極夏彦を中心としたおバカパロディの短編を集めた本・・・だと思います。

わたしは京極夏彦が好きなので、単行本化されているものは多分全部読んでいると思うんですが、個人的には『どすこい(仮)』に次ぐ「これはひどい」と思う作品でした。(多少なりとも褒め言葉を含むと思って下さい)

なんというか、新本格とかミステリとか妖怪とかホラーとか、そういう要素を期待して読むと心底がっかりさせられる作品だと思います。京極夏彦初心者の方、間違ってもこれと『どすこい(仮)』から入らないように。いいですかお客さん、『南極(人)』と『どすこい(仮)』から入らないように。大事なことなので二回言いましたよ。


駄目小説家・南極夏彦と、その担当・椎塚有美子と、貧乏籤担当の売れない作家・赤垣廉太郎が繰り広げる文壇的ドタバタコメディという感じなんですが、どの短編も著名な作品をもじったタイトルがつけてられていて(例:探偵ガリレオ→探偵がリレーを・・・)、そこから内容をあと付けで作ってるようなので、もうなんでもアリの滅茶苦茶です。滅茶苦茶ながらも一応ちゃんと終わらせてるところがすごい。
そしてメタ発言がすごすぎる。出版にあたり加筆しまくりです。「今読んでる読者にもわかるように」とかそういう発言多すぎ(笑)。
いいのかそれ。大丈夫なのか。
・・・こういうツッコミも多かったような気がします。


作品名だけではなく実在の小説家たちも名前を無残にもじられて登場している(例:浅田次郎→アーサー・駄次郎)んですが、全部はわからなくて残念。ま、この本のパロディの元ネタ全部わかる人はそうそういないと思うけど。

個人的に面白かったのは「こち亀」とのコラボ企画「ぬらりひょんの褌」です。
去年、こち亀30周年記念としていろんな企画があったんですが、その中の一環らしいです。ジャンプ本誌の企画しか知らなかったので初読でした。
やべえ30周年の中の10年はわたし確実にジャンプ読んでるとか思いつつ読みました(笑)。
京極夏彦の小説に秋本治(こち亀作者)の挿絵がついている感じで、内容も部長さんとか寺井さんなどのこち亀のキャラと、なんと京極堂(作中でははっきりとは言及されないが、ほぼそうだと思われる)のコラボがあって、両方の読者としてはとても面白かったです。しかし舞台が現代だったので、出てきた京極堂はお爺さん。ちょっとびっくり。そして関君・・・なんということでしょう。

中川財閥と榎木津財閥は財閥同士付き合いがあるらしいとか、京極堂の警察関係の知り合いは今じゃ出世して相当偉くなっちゃってるとか、あってもおかしくないかもしれない設定が面白かったです。
中野にはまだ眩暈坂があるんだなあ。見てみたいよ。


あと、なんか色々通り越して「とりあえず乙」(=お疲れ様)と言いたくなってしまったのが『独白するユニバーサル横メルカトル』のパロディの『毒マッスル海胆ばーさん用米糠盗る』。・・・なんかもうタイトルだけで無理矢理感ありまくりですが、内容もなかなかどうして、力ずくで頑張った感じでした(笑)。登場人物と「リング」の貞子と「呪怨」の香椰子とノブオ(だっけ?)を無理矢理にでも結びつけた手腕はお見事。
・・・乙。

しかし京極夏彦、楽しそうに書いてるなあ。楽しかったんだろうなあ。普段書くようなものじゃギャルもオタクも出せないもんねえ。


とにかく全編を通してくだらなさに拘った感のある一冊でした。
でも結局廉太郎はどうなったの?まだ続くの?このシリーズ。

・・・京極夏彦初心者にはお薦めできませんが、それなりの読者ならまあ、読んでみてもいいかもしれません、自己責任で。
でもやっぱ好みすご~~~~く分かれると思うけど。

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