

入口正面には、何年、いや何十年経たのだろうか、太く、暴れ狂った、もはや人の手には負えない、そんな蔓を、自然そのままに置く。
一方、ギャラリー内には原野を覆い尽くさんばかりに野放図に我が物顔にはびこる蔓を、大きな円環のように組んで手なづける。それでも伸び続ける蔓との対話を楽しむかのように。いやむしろ蔓に導かれるように世界が作られていく。
今展ではギャラリーの二つの向かい合う壁面それぞれに異質の、大きなオブジェを吊し掛ける。円環のように組まれたそれは、吸い込まれるような空洞を保ちつつ、蔓をさらにはびこらせ伸ばそうとしている。野生そのもの、暴力的でさえある。一方向かいには裂け目を見せる蔓の塊。裂け目は異様なほどつややかで白く、なまめかしくもある。吸い込まれようとしているのだろうか、さらに膨張していくのだろうか。地底や海底や宇宙を思わせる。
折々手がけ続けてきた藤=Fujiの、ひとつの集大成であり、新たな展開の契機と見た。
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