文学と美術のライブラリー「游文舎」では12月5日から13日まで、関根哲男の年末個展「原生」を開催している。
バーナーで焼き、焔で抉られた「美術手帖」を貼り付けた、90センチ四方のパネル作品が30点、壁面に展示された。この作品はこれまでの延長上にあるもので、ずっと関根作品を見てきた人間にはさほど驚きを感じさせないかも知れない。
しかし、床面に展開されたインスタレーションには、誰もが驚愕を覚えないではいられないだろう。泥で汚れたズボンを穿いた人間の下半身、それもズボンの裾から杭を突き出した下半身が200体、無秩序に積み重ねられている。
このインスタレーションを見て何を連想するかといえば、近くはパリの同時多発テロの惨状であり、北朝鮮からの脱北者の難民船であり、遠くはアウシュビッツのホロコーストや、満州開拓団員達の死体置き場であろう。あるいは農民一揆や、藤田嗣治の「アッツ島玉砕」を連想する人もいるだろう。いずれにせよそこには理不尽な理由で大量死する人間のイメージがある。
この200体の作品は、今年十日町市の「大地の芸術祭」と新潟市の「水と土の芸術祭」に出品されたもので、関根は今年の締めくくりとしてこれを「游文舎」に展示することを考えていた。しかし、どう展示するかは決まっていなかったという。
「大地の芸術祭」と「水と土の芸術祭」でこれらのオブジェは、一定の間隔を置いてかなり整然と配置されていた。そこにホロコーストのイメージなどはなかったし、杭も土の中に埋め込まれていて人の目からは隠されていた。
しかし、「游文舎」では杭が露出し、そこに破壊力が生み出された。新たなテロルの出現である。理不尽な大量死は現代の世界を象徴してもいる。それにしても象徴としてのテロルと呼ぶには、あまりにもなまなましい。