60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

消費税

2014年04月04日 08時35分51秒 | Weblog
 4月1日から消費税が5%から8%に上がった。通勤途中に時々利用している『EXCELSIOR CAFFE』のコーヒーが290円から330円(13.8%)に値上がっている。同じ系列のドトールも200円⇒220円(10%)の値上げ、この期に消費税以上の値上げは違和感を感じる。今まで店内に値上げの予告や説明は何もなかった。これではドサクサ紛れの便乗値上げではないのか。
 会社の近くの個人喫茶店は450円でそのまま、セブンイレブンのセブンカフェは100円で据えおきである。この機を利用して便乗値上げするところ、値上げしたくても踏み切れないところ、政策的に据えおくところ、コーヒー一つをとってもさまざまである。

 3月末にはトイレットペーパなど日用雑貨を買い込む主婦や、ガソリンスタンドに並ぶ車など、庶民のささやかな防衛策の駆け込み需要が報道されていた。そんなニュースを見ていても、我々老夫婦にとっては差し迫って買って置く物が見当たらない。やはり歳とともに不活性になり、購買意欲は落ち、加えて面倒臭さが先にたつのである。今回唯一買ったのは定期券、今まで3ヶ月単位で買っていたものを6ヶ月に延ばしただけである。 
 TVの討論番組でも、「社会保障の充実のためには増税もやむなし」、「増税すれば消費が冷え込み、反対に税収は伸びない」、「まだ無駄な支出が多いのだから、それから手をつけるべきだ」、「弱者には益々暮らしにくくなる」等々、この問題で立場の違う人達がどんなに議論しても、意見がまとまることはありえない。ここに至っては、やってみてその上で、何がどう変化しどう修正していくべきなか、考えていくしかないのであろう。

 「今後の経済動向などを見極めた上で、来年の10月1日からさらに10%に引き上げる」、そういう予定のようである。早いか遅いかは別にして、国の財政を考えれば、いずれ消費税は恒常的に上がっていくのであろう。アナリストによれば、近い将来ヨーロッパ諸国のように16%~20%にまで引き上げなければ、国の財政が成り立たなくなると言う。いま世界の消費税はどうなっているのか?、ネットで調べてみた。アメリカは一律の消費税というものはなく、州によって0%~9.75%までの州税や郡税があるだけである。中国では、領収書を発行する場合だけ消費税がかるが、一般の消費者には税はかからない。反対にヨーロッパはどこの国も高率で、ドイツ19%、フランス19.6%、イタリア21%、イギリス20%のようである。これらの分布を見ると、お国柄と税制には共通項があるように思える。消費大国といわれ、消費が活発なアメリカや中国は消費税が低く、一方伝統文化を重んじ堅実で質素なイメージのヨーロッパは消費税率が高い。

 日本は今までは消費税率も低く、アメリカ型の消費社会であった。しかし消費税率が5%から8%、さらに10%やそれ以上に上がっていけば、消費そのものにブレーキが掛かり鈍化していくのは必然のように思われる。そしてそれに伴って消費者の意識が変わってくる。例えば年間衣服費に20万円を使っていたとして、そこにヨーロッパ並みに20%(4万円)の消費税が掛かるとすれば、やはり使い捨てはやめ、良い物を買って長く着ようとするのではないだろうか。住宅にしても20%の税金を考えれば、おいそれとは建て替えず、古い家を丁寧に使おうと思うだろう。10%や20%もの余分な重さを抱えたままグングン消費が伸びるとは到底考えられないのである。やがて消費社会が終わり、我々の生活のあり様も次第に変わっていくはずである。量から質へ、物欲から精神的な豊かさへ、高速で回っていた社会から少しテンポが緩やかになってくると、自分らしい生活を楽しむヨーロッパ型の成熟社会に変貌していくように思うのである。

 私が生まれて物心ついた頃は戦後の物不足の時代であった。古新聞で習字を練習し、広告チラシの裏に絵を描き、包装紙や紐は取っておいて再利用する。服や靴下もツギハギは当たり前、靴底に穴が空いても新しい靴はなかなか買ってもらえない時代であった。そんな時代から消費は次第に活発になり、やがて大量消費時代に突入していく。そしてバブルの崩壊、長く消費低迷の時期が続いてきた。多分これからは日本も消費の成熟期になるのであろう。振り返えると日本の消費動向と、私の70年の消費マインドの変遷とが相似しているようである。そう考えると今回の消費増税も決して悪いものではなく、時代の流れだと許容できるのである。