龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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原子の時代における根源的な「問い」(ハイデッガー『放下』より)

2013年01月03日 14時53分32秒 | 大震災の中で
つぎにハイデッガーは「原子の時代」について触れます。

3,原子の時代における根源的な「問い」について
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技術家はいたるところで原子力の平和利用を遠大な諸計画に基づいて実現しようとしている。
指導的国家の大企業コンツェルンは、原子力が巨大な企業になり得ることを、既に計算してしまっている。
人は、原子企業のうちに新しい幸福を認めている。
原子科学もそういうかけ声の外に離れてはいないで、この幸福を公然と告知している。

18名のノーベル賞受賞者たちがマイナウの島で
「科学、それは人間をいっそう幸福なる生活へ導いていく一つの道である」
という。

これは、省察から発した主張ではない。
原子時代ということの意味に思いを潜めて追思しているのではない。
私たちがこの科学が発するこのような主張に依って満足してしまうならば、現代という時代への省察からこの上もなく遠く隔てられているのだ。

次のように問う必要がある。

科学的技術が自然の中に諸々の新しいエネルギーを発見することができ、それらを開発することが出来たというこのことは、一体何に基づいているのか、と。

それは、の数世紀以来、基準となる諸表象の全てにわたってある一つの転覆的変動が進行中だということに基づいている。
その変動に依って人間が、今までとは別なある一つの現実の内に移し置かれるということである。

「世界の見方に関する根本的にして激烈なる革命」

今は世界は、計算する思惟がそれに向かってさまざまな攻撃を開始するところの対象であるかの如くに、現れてくるのであり、それらの攻撃には、何物も抵抗し得るはずはないのであります。自然は、他に比類なき巨大なガソリン・スタンドと化し、つまり現代の技術と工業とにエネルギーを供給する力源と化します。世界全体へ関わる人間の、根本的に技術的なるこの関わり合いは、最初17世紀において、しかもヨーロッパにおいて、しかもヨーロッパにおいてのみ、成立したのであります。

(このエネルギー革命に関する)

根本的な問いは、
我々は必要に足りるだけの燃料や動力源をどこか獲得してくるか、ではなく、決定的な問いは、この考える<表象>することができないほど大きな原子力をいったいいかなる仕方で制御し、操縦し、かくして、この途方もないエネルギーが突如としてどこかある箇所で檻を破って脱出し、いわば<<出奔>>し、一切を壊滅に陥れるという危険に対して、人類を安全にしておくことができるか、という問いであります。


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原子力時代における根本的な問いを一つ一つ重ねていく手際は見事。
そう、「檻を破って脱出」しちまったんですよ」とハイデッガーに教えてあげたいです。





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