もちろんこれから刊行されるスピノザ全集も待ち遠しいけれど、まずは多くの人にこれを読んでほしいなあ。
最後に寄せられた國分功一郎氏の文章を読むと、國分さんが何と闘ってきたのか、そしておそらく、今なお何と闘っているのか、が分かる。
なにより、畠中訳スピノザを勉強しているの一人としてぐっとくるし、國分さんのファンとして泣けてくる。
國分さんは、畠中尚志についてはきちんと広く知られるべきだ、書かねばならないんだ、とずっと前に語っていた。
それをキチンとこういう形で日本中の皆が読める形で示したことに、彼の男気を感じる、といったらおかしいだろうか。
ぜひ一読をおすすめしておく。
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追加で。
読了した。
締め切りのある原稿をほっぽりだして読んだ。
泣けた。
畠中尚志にはスピノザの岩波文庫訳でずっとお世話になっていたけれど、改めてその生涯を知った上で畠中の文章を読み直すと、心が動かされる。
正岡子規とおなじ脊椎カリエスで寝たきりになり、かつ目の病気を病んで、口述筆記をしながら『エチカ』を訳出したところなど、目が潤んでくるのを止められなかった。
國分さんの解説文も素晴らしい。読んでいて熱い思いが溢れてくるのを感じる。
単なるスピノザの読者に過ぎない自分が「学恩」などというのはをこがましい限りだが、畠中氏の困難を抱えつつなされた訳業の素晴らしさに触れるとき、粛然とした思いを新たにせざるを得ない。
折しも、スピノザ全集が同じ岩波書店から発刊されるこの時期に、講談社学術文庫で畠中尚志の全文集が出ることに、特別な感慨を抱く。
互さん&國分さん、グッジョブ!です。
新しい全集が出たら、首っ引きでテキストを並べて勉強したい。生きているうちにちゃんと新全集は完結するのかな?
ヘブライ語文法の本が楽しみだけれど、読んでもわかるのかな?
スピノザにも他の哲学書と同様読み解けない難解な部分があって、だからこそ学問の対象にもなるわけだけれど、全く学会の外にあって、ほぼ寝たきりの在野の人が、その人のみがなし得た訳業によって日本のスピノザ理解が半世紀も支えられてきたことの重さは、いくら強調してもしすぎることはない。
あくまで静かな、しかしマグマのような熱量を秘めたテキストは、畠中氏のものであると同時にスピノザ自身のものでもある……そんな風にすら思ってみたくなる。